※この作品はR-18です。

ゴブリンスレイヤー ―灰の剣士―R-18   作:カズヨシ0509

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ドーモです。
此方も更新いたします。

時間軸としては、本編前夜編の第155.5話のR18版となります。
あの特別室にて何が行われていたのか。そういうお話です。

注意:R18ですが、どちらというと暴力的な描写が多いです。エロはあまり期待しないで下さい。また版権キャラを貶めていると思わしき描写も多分に含まれています。気分を害す方は、読まない事をお勧めします。

では投稿致しますドゾ。( ゚ ω ゚ )


第18話―王侯の剣士とホムンクルスの少女(本番アリ)―

 

 

 

 

 

 

何時しか抑える事も忘れ、衝動赴くままに行動する事がある。

最初は自分でも”どうかしてる”なんて思ったものだ。

だが日が経つにつれ、それも些細な事だと意識さえしなくなった。

この溢れ出る感情はなんだろう?

この感情に従えば、何も恐れる事はないって思えるんだ。

だから僕は決心した。

必ずアイツを僕の傍に置き、振り向かせてやる。

アイツだけじゃない、アイツもだ。

この湧き上がる衝動に従えば、どんな迷いさえ断ち切れそうだ。

アイツ等は僕の…僕だけのモノなんだ…。

ヤツ等のような下賤な下々が触れていい女じゃないんだよ、不敬にも程がある。

特にヤツ…貴様だけは万死に値する。

僕を誰と心得るか!?

王侯貴族にして次代を担う高貴な王子なるぞ!

 

とある王侯貴族の剣士より、抜粋。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

デエェェ ―― 深みの聖堂 ―― ェェェエン――

 

違和感がないとはこの事か。

華美の女魔神が持つ特集能力『空間生成』で生み出された仮初の一室だが、見事という他ない構造だ。

貴族らしい品格を備えた内装に、高価な数々の調度品も人の上に立つに相応しい数々が揃えられていた。

 

「ほぅ…この部屋…お前が創り上げたのか?」

「そうよぉ~ん、見直してくれたかしらぁ~ん♪」

 

 一々言動に品性と風紀の乱れを感じさせる華美の女魔神だが、眼前の部屋を目にした事で彼女の感性を改める余地が生じた。

 

「成程、人…ではなく、お前は魔神だったな。まぁお前への評価は改めてやる」

「あらん、魔神なんて此処(四方世界)の住民が勝手に付けた呼び名よん。元の世界じゃあ、あたくし達こそが人類種なんだからぁん」

 

 彼女の姿は人型ながらも、この世界の只人とは少々形状がかけ離れている。

背には翼、尾骶には尻尾、頭部には角、どの視点から鑑みようと異質な姿形は誤魔化せようもない。

しかし華美の女魔神は、自分達こそが基の世界の人類種だと主張する。

 

「まぁいい、どのみち僕には関係ない事だ。コイツに服を着せる、さっきのを寄越せ」

「ん~?あなた仮にも王子様でしょ~ん?そんな物の頼み方を普段からしていたのぉ~ん?」

 

「…一々小うるさい女だな…、それじゃあお前が着せろ。その服もお前が作ったんだろ?例の能力で」

「ざんねぇ~ん。あたくしの能力は空間を生み出せるだけでぇ~、衣類は買って来たのぉ~ん♪もちろん、あ(・)の(・)街(・)のお店でねぇ~♪」

 

――コイツ何時の間に…!怪しい気配なんか感じなかったぞ…!?

 

華美の女魔神の能力は、あくまで空間生成で部屋の構築もそれを応用したに過ぎず、衣服は普通に購入し手に入れた物だ。

しかも購入先というのが、あの西方辺境街の店舗だと語った。

だが彼女ほどの怪しい者が侵入していれば、誰かは感付く筈なのだ。

悔しいが、灰の剣士ならば鋭敏なソウルの察知能力で看破できる。彼だけでなく、ソラールやジークバルドなどといった連中も高い察知能力を有していた。

だが誰一人として察知出来ていないという事は、彼女が何らかの変則的な方法を執ったのだろうか。

 

…いやよそう。

 

いま連中の事を考えるのは、興が削がれる。

今も全裸の上に上衣を羽織っているだけのホムンクルスの少女。

どのみち事に及ぶのだが、今は真面な形で性行為に及びたい。

華美の女魔神の美的感覚がどれ程から定かではないが、同じ女には違いない。

急かす様に衣服を着せる事を求めた王侯の剣士。

 

だがホムンクルスの少女にも便宜上、呼び名が必要となるのではないか。

何時までもホムンクルスの少女では、些かの不便も生じどうにも歯切れが悪い。

だがいくらエルメルリア=フリクセルを再現したとて、この少女をル(・)ル(・)ア(・)と呼ぶには今少しの抵抗を禁じ得なかった。

 

「エルメル…お前はエルメルと呼ぶ事にしよう。エルメル…それでいいな?」

「んん?エルメル…ルルアって呼ばないのねぇ~ん?」

 

「そうだ。まだルルアと呼ぶには少し早い。お前は今からエルメルと名付ける…異論はないな?」

 

 上衣を開け再び裸身を晒すホムンクルスの少女に対し、王侯の剣士はエ(・)ル(・)メ(・)ル(・)と呼ぶ事に決めた。

肉体そのものはエルメルリア=フリクセルと同一だが、この少女を真にル(・)ル(・)ア(・)と呼ぶのは元の人格を移植してからだ。

 

「エル…メル…?…うん…、それ…好き…エルメル…あたくし…エルメルが…好い」

「あたくし…?…もうお(・)前(・)の(・)性(・)格(・)が入ってるじゃないか…!」

 

「知らないわよぉ~ん?どんな形で、あたくしの精神が発露したかなんてぇ、あたくしに予想つく筈ないでしょぉ~ん?文句なら、アイツ(仮面の錬金術師)に言ってねぇ~ん」

「…くッ…ルルアの人格を移植するまでは目をつぶってやる」

 

 エルメルという呼び名を気に入ってくれたのか、たどたどしい口調ながらも控えめな笑顔を向けてくれた少女。

やはりルルアを再現しただけの事はある。

声質も表情も、自分が望む彼女そのものだ。

しかし一人称だけは、どうにも受け入れ難く違和感が拭えない。

あ(・)た(・)く(・)し(・)…などどいう華美の女魔神の影響が早くも現れていたからだ。

確かに疑似的な人格を形成させるため、エルメルには華美の女魔神の精神も、ある程度は封入させた。

これからも追加でエルメルには、華美の女魔神の精神を封入させる予定だがこうも早く影響が発現していたとは。

まだ純真無垢ともいえるエルメルが、この華美の女魔神に似た人格を宿してしまう未来像を想像してしまった王侯の剣士。

それは少しばかり困る。このエルメルは、何れ自分の望むルルアに成って貰わねばならないのだ。

些か腑に落ちない現実だが、元のルルアの人格さえ移植してしまえば今の些細な影響など塗り替えてしまうだろう。

そう信じ、彼は傍に有るチェアへと腰を下ろす。これも魔力で生成したのだろうか、本物と寸分違わぬ木材の匂いが鼻を掠めた。

 

「……」

 

 それにしても流石はルルアを再現しただけの事はある。

今も彼の視界には、衣服を着付けて貰うエルメルの姿が広がっていた。

薄い桜色を基調とした上品なドレスで、何処となく婚礼式のウェディングドレスを彷彿とさせる。

また下着も用意されていた様で、純白のレース付きのショーツとブラジャーが華美の女魔神の手で着けられようとしていた。

思わず凝視してしまうエルメルの裸体。

ルルアも衣服の上から分かる程に豊かな胸部を備え、彼女が激しく動く度に胸部は上下に揺れ動き、秘かに彼の情欲を刺激していた。

正確にはルルアとは違うといっても、エルメルの肢体はルルアと何一つ劣る部分はない。

白くも耽美な肌、胸部には豊穣に実った二つの乳房に桜色の突起物、股間部も薄毛一つ生え揃っておらず、その光景が無防備に眼前へと曝け出されているのだ。

もう直ぐだ、もう直ぐ、この躰を自由にできる。

そう考えただけで、自分の股間も熱が籠り血流が凝縮されるのを感じる。

 

そんな美麗で無垢な彼女の躰を、あ(・)の(・)剣(・)士(・)は(・)…(・)ヤ(・)ツ(・)は(・)――。

 

――許せんッ…!

 

確証は無い。直接見た訳でも聞いた訳でもない。

だが、あの宿での二人の言葉を聞く限り、何らかの形で濃厚接触していても不思議ではない気配を察する事は出来た。

もしルルアやエーファがヤツを意識などしていなければ、少なくとも自分を比較対象に出したりなどしない。

(本編前夜編 第142,5話話参照)

 

「あらん?怖い顔しちゃってぇ、この娘が怯えちゃうわよん?」

「――…ッ!?まだ終わらないのか」

 

 つい表情に現れていたらしい。

秘めていた激しい殺意と憎悪が溢れて出ていたのを、華美の女魔神に勘繰られてしまい彼は咄嗟に平静を取り繕う。

 

「はぁ~い、お・ま・た・せ♪…どう、ピッタリでしょぉん?」

「……!!」

 

 何時しかエルメルの着付けも終わり、自慢げに披露する華美の女魔神。

まるで女神さながらのエルメルに、言葉も我も忘れ見惚れるしか出来ない王侯の剣士。

とにかく似合う。

やはりエルメル…いやルルアには、ピンクが非常に合う。

この世のピンクは全て、彼女の為に存在するといっても大袈裟ではないだろう。

それ程にエルメルのドレス姿は、王侯の剣士を魅了して止まなかった。

 

「ルルア……綺麗だよ…、ああ…僕の…僕だけのルルア…ルルアぁ…」

「綺麗…?似合う…のね…?」

 

 本当に美しく可憐の一言だ。それ以外の言葉など無粋も無粋。

感嘆の言葉で唯々ドレス姿のエルメルを褒め称える王侯の剣士。

先ほど彼女をエルメルと名付けたのは他でもない王侯の剣士だが、今だけはルルアと呼ばせてもらう。

少々舌足らずな拙い言語能力だが、これは彼女が未だ無垢である事の証とも言える。

これから少しづつ教育していけばいいのだ。

自分の良く知るルルアの魅力を彼は存分に知っていたが、眼前の無垢なルルアも何と捨てがたい事か。

このまま自(・)分(・)色(・)に(・)染(・)め(・)上(・)げ(・)た(・)い(・)という欲が、胸中を暴れ回っていた。

 

「え…と…、貴方は…だぁれ…?」

 

 だがやはりルルアとは若干の毛色が異なるのは否めず、エルメルは控えめで微かな笑みを浮かべ王侯の剣士に素性を訪ねた。

 

「我が名は、オーレル。クリストフ=オーレル=アーランド。…お前の愛する王侯貴族…王子にして、何れ大陸いや…四方世界最強の剣士へと至りし者」

 

 仮面の錬金術師が語っていた、無垢というのも強(あなが)ち嘘ではないらしい。

だが彼は、とある憎き例の剣士の事を敢えて訪ねてみた。真に無垢であるかどうかを再確認する為だ。

 

「灰の剣士…ヤツの事は知っているか?」

「……?は…い…?誰…ソレ…?」

 

「クククク…クフフフ…そうかそうか…、知らないか…それなら良いんだ。ククク…、そうさ、お前はこれから先もヤツの事なんぞ知る必要はない。この僕だけを見てればいいんだからな、ハハハハ…!」

「そう…なの…?オーレル…オーレル…で良い?」

 

「ああ良いとも、僕はクリストフ=オーレル=アーランド。…オーレル。お前が唯一愛する男だ」

「うん…オーレル…オーレル」

 

 これだ…これで好い。

この瞬間をどれほどに待ち焦がれた事か。

真のルルアではない事は既に分かり切っている。

だがそれがどうしたというんだ。

目の前のコイツも、間違いなくルルアなんだ。

僕の求めたルルアが、漸く形に成りつつある。

しかも、あの憎い剣士の事など露ほどにも記憶していない。

加えて自分の求めにも素直に応じてくれる、ときたものだ。

こんな…こんな事が叶おうとは、正に錬金術とは魅惑の果実という他ない。

 

「んねぇ…あたくしには何も無いのぉん?部屋も服も、あたくしが用意したんだけれどぉ…?」

 

 エルメルに意識が向き過ぎ、華美の女魔神の事など蚊帳の外に追いやっていた。

少々不貞腐れ気味で睨み付け、王侯の剣士に不満を向けて来る。

 

「ハハハ、すまんすまん。ちょっと浮かれ過ぎた。お前には感謝している、改めて…有難う」

「…へぇ…殊勝ね❤。そんな顔も出来たんだ…フフ❤」

 

「お前こそ、口調が普通に戻っているぞ。だが今は、コイツと二人っきりで自由にさせてくれ」

「後で、あたくしも参加するわよん❤体力残しておいてねぇん❤」

 

 初めて真面に礼を述べられたのではないか。

言葉を交わせば、何時も鋭い目つきで睨み付け辛辣な言葉ばかりを吐く、あの傲慢で高飛車な王侯の剣士が初めて穏やかな笑顔を自分に向けてくれたのだ。

その素顔は正に『王子』と称するに相応しい。

本当に同一人物なのかと疑わしくなる程に、今の彼は穏やかな笑みを浮かべ真っ当に感謝を向けてくれている。

そんな彼を見た華美の女魔神は、熱を帯びた吐息を漏らし思わず魅入ってしまった。

そして心が綻んだのか、ついつい本来の口調に戻ってしまう。

だが王侯の剣士は、一刻も早くエルメルと秘め事に至りたかった。

後で自分も参加するという旨だけを伝え、華美の女魔神は自らの魔力で生成したチェアへと腰掛け、予め購入しておいた酒の入ったボトルをグラスへと注ぐ。

 

「お酒は飲んでいかないの?気分が昂るわよぉん♪」

「後で頂く。僕は素面(しらふ)で愉しみたい。…では後でな…と、仕切りが無いんだな、この天蓋付きの寝台」

 

 事に及ぶ前にアルコールを摂取し気分を盛り上げるという手法も存在するが、彼は日頃から素面で秘め事を致す側だ。

だがこれは建前で、実際は酒には非常に弱く直ぐに酔いが回る体質でもあった。

一度酔えば自意識が鈍り、真面な判断力も鈍り記憶さえ曖昧となる。そうなってしまえば、男女の秘め事も愉しめなくなるではないか。

それ故、彼は屋敷でも娼館でも素面で夜を愉しむ事を徹底させていた。

だが酒の事よりも、秘め事の舞台となる寝台に少々の問題が見受けられる。

天蓋付きの寝台だというのに、仕切り用のカーテンが設けられていない。

これでは第3者から丸見えではないか。

流石に他者に見られながら秘め事に及ぶ趣向までは、彼も持ち合わせていなかった。

 

「ヤ~ねぇん、後回しにされるんだから、その分見て楽しませて貰うわよん❤どんなぁ、おプレイをなさるのかしらぁん、王子様はぁ❤」

「///…お前には後で激しくスルからな、覚悟しとけ…!」

 

 駄目だ、華美の女魔神に付き合えば付き合う程どうにも調子を崩されてしまう。

これ以上は埒が明かないと判断し、エルメルの手を引きながら寝台へと身を移す。

少々視線が気になるも、どうせ華美の女魔神とも交わる事は確定しているのだ。

イケすかない部分はあれど、アレも女の魅力を充分に備えており、豊満な肢体、妖艶ながらも若々しい美貌、経験豊富であろう寛容な姿勢、どれを差しても一級品なのは彼とて認めていたのだ。

散々揶揄われた分、激しく喘がせてやろうと決めていた彼。

 

「さぁエルメル…ルルア、こっちに来るんだ」

「はい…オーレル…」

 

 意識を切り替えた彼は、寝台に身を寄せ戸惑うエルメルを引き寄せた。

 

やっとこの時が来た。

 

胸を焦がす程に焦がれた瞬間を迎え、彼の鼓動は高なるばかり。

否が応にでも緊張で震える手にじっとりと汗が滲み、特に何をするでもないエルメルを抱きしめた。

 

「あ…ぅ…?」

 

 これがエルメルの…ルルアの温もりなのか。

初めて躰を密着させたが、衣服越しとはいえ伝わる体温は本物同然だ。

互いの温もりが、貴族服を、ドレスを通し、全身へと迸る。

 

ああ、もう我慢なんてしなくていい。

僕は何を躊躇っているんだ。

僕(・)の(・)望(・)む(・)彼(・)女(・)が、目の前に居るじゃないか。

可憐な素顔に長い細やかな銀色の髪を称えた少女の吐息が、彼の顔を微かに撫でた。

未だ且つてない程に、両者は顔を近付けていた。

 

「顔…赤い…オーレル…?」

「あ、ああ…///」

 

 思わず視線を背けてしまう。

どうしてこんなにも小恥ずかしい?。

この女はルルアであり同時ルルアではなく、しかし僕の要求など拒む筈ないんだ。

多少強引に迫ったとしても、コイツは絶対僕を受け入れるに決まっている。

 

それが分かっていながら、彼は一歩を踏み出せないでいた。

可笑しい。これではあの時の…、童貞の時と同じじゃないか。

 

彼の初体験は、屋敷に努める侍女が相手をしてくれた。

彼女は経験者だったが、気遣いと配慮に長けた才女で此方の無茶な要求も嫌な顔一つせず全て受け止めてくれたものだ。

しかし彼は気付いていない。

相手をしてくれた侍女は懐の深い女性だったのだろうが、それ故に彼は受け止めてくれる事に慣れ切ってしまい女性に対する配慮が欠落していたのである。

その様な体験が続けば当然、女(・)は(・)男(・)の(・)要(・)求(・)を(・)無(・)条(・)件(・)で(・)受(・)け(・)入(・)れ(・)る(・)も(・)の(・)だ(・)と思い違いを引き起こしてしまうのである。

屋敷時代の彼は、名誉と王侯貴族の品位こそ損なうような蛮行は避けていたが、夜は決まって激しい性行為を繰り返していた。

次第に侍女は体調を崩し、その原因が彼の無茶で激しい求めに応じた為だという事に気付く事は終ぞなかった。

その後、次々と仕える侍女が代わり、その度に彼は荒々しい情欲を彼女たちに発散していた。

 

女は男に奉仕するもの。

 

その様な間違った思い上がりを指摘してくれたのは、奇しくも商売女達であった。

最強の剣士を志すため、屋敷を出た彼は暫く禁欲的な生活を送っていた。

しかし寄る性欲は募るばかりで、どうしても堪え切れない時に限り娼館を利用する事にしていた。

だが、その時でさえ商売女相手に滾る情欲をぶつけてしまう。

金をつぎ込んでいるのだから、黙って要求に従うのは当然。

その様な傲慢な考えを押し付け、仕方なく女達は彼の求めに応じていた。

だが気丈な商売女に当たり、彼の考えは真っ向から否定されてしまった。

 

人を相手にしているのだから、人として扱うのは当然の振る舞い。況してや高貴な身分ともなれば、なおさら蛮族染みた愚行など捨て去るべきである。

 

真正面から見据える高潔な姿勢に、彼は反論さえ出来ず恥を搔きながら店を後にした過去があったのだ。

 

――今更ながらに思い出すとはな。…チッ、忌々しい。

 

苦々しい過去を思い出した彼は、少し呼吸を繰り返し気を鎮める。

眼前の彼女は決して拒む事はないだろうと分かっていたが、とにかく特別な存在には変わりない。

あの商売女の説教を思い出すのは少々癪だが、最初は穏やかに接する必要があるだろう。

何せ相手はルルアを模したとはいえ、無垢な少女そのもの。

いや下手をすれば、ルルアよりも幼く純粋ともいえるのだ。

 

彼は極力ゆっくりと顔を近付け、今も状況を理解していないエルメルの唇を奪った。

 

「…ン…ふ…フゥ…ン…ンン…?」

 

 何とも子供染みた口付けだ。

唯々唇を触れ合わせるだけの軽い口付け(フレンチキス)――。

こんな児戯(じぎ)などとっくに卒業したんだ、早くコイツの中を味合わせろ。

そう急かしたいのは山々だが、下手に焦れば彼女が怯えてしまうかも知れない。

エルメルの口内を味わいたいという逸る気持ちを無理やり抑え、暫し彼女の唇の感触を味わう事に専念した。

 

「ぅふぅ…んぅん…ンン…ン…んフ…んく…?」

 

 それにしても柔らかく生暖かい感触だ。

初めて口付けを交わした感触を思い出す。いや、あの初体験以上に魅惑的な感触だ。

軽い児戯も同然の口付けと侮ってはいたものの、初体験の感動を思い出した彼は唇の感触に没頭してしまう。

また当のエルメルは、何が行われているかも理解せぬまま無抵抗で行為を受け入れていた。

 

それでも慣れというものは生じてしまい、物足りなさを感じていた王侯の剣士。

エルメルの反応を見た限り、こういう知識は備わっていないのが分かる。

口付けという行為の意味は疎か、あまり快感さえ感じていない様だ。

であるなら、多少強引に次へと進めても拒まれる心配はないだろう。

そう見切りを付けた王侯の剣士は、彼女の口内へと舌を強引に抉じ開け捻じ込んだ。

 

「――ンン…!?ふぅうぅ…!?ンンふぅぅ…!?」

 

 これが無垢なアイツの味なのか。

何と甘美で何と魅惑の脈動だろうか。

日頃から貪りたい程に待ち焦がれたアイツの唾液は、脳内が蕩けるような興奮の味がする。

舌の侵入に半ば混乱し身を捩ろうと抵抗するエルメルの様子など、彼は意識の奥へと追いやり夢中で口内を堪能した。

舌を乱雑に暴れさせれば、その度にビチャリビチャリと粘液音が口内に広がる。

エルメルも王侯の剣士も口端から涎が零れ、彼女の口内は舌で激しく蹂躙されていた。

 

「むチュ、ヌチュ、ちゅぐ、ちゅるん、ン…!?んぶぅ…ブフぅ…ブぁハァッ…!?…ハァ、ハァ、ハァ、ハァ…くる…しいよ…オーレル…」

「何だ…、抵抗するのか…?この僕の口付けだぞ…?もっと悦んで受け止めないか…!」

 

 強引というには些か生易しい、口内の凌辱とも取れる彼の深い口付け。

しかしエルメルは苦し気な表情を浮かべ、力の限り本能的に振り払った。

これは不慣れが故の酸素を求めての行動である。

しかし彼は明らかな不快感を露わとし、エルメルを叱責する。

 

あり得ない――。

この僕の口付けを拒むなど――。

今まで相手をしてきた屋敷の侍女たちも、商売女たちも僕の口付けを喜んで受け入れてくれた。

特に口付けを好む女は、この段階で股座をイヤらしく濡らしていたというのに、どうしてコイツを抵抗したりするんだ?

 

みるみる間に彼の表情は、憤怒と憎悪に彩られ狂気的な容貌へと変化する。

 

「ケホ…コホ…ハァ、ハァ、ハァ…」

 

 一方彼女の方はというと、今も咳き込み必死に呼吸を整えていた。

 

「駄目よぉん、その娘は完全純粋とも言える処女なのよん。なんにも知らないんだから、少しは察してあげなさいな♪」

「…クッ、まぁいい…。今回だけは許してやる…!」

 

 せっかく気分が盛り上がっていたというのに、肝心のコイツが抵抗するようでは台無しだ。

端から見ても分かる程に、端正な顔立ちを歪ませる王侯の剣士。

だが離れた位置で見ていた華美の女魔神が、彼の態度を嗜めた。

そもそもエルメルはホムンクルス体で、成人女性の身体つきながらも宿る精神は無垢な子供と大差ない。

一応初期段階で一定の知識と疑似人格を構築はしたが、それでも見た目通りの振る舞いを期待する方が酷というものである。

男女の行為に関する知識は皆無に加え、人格さえ純真無垢で大人しいエルメル。

呼吸を求めるあまり抵抗したのは、寧ろ当然の生存本能とも言えるのだ。

対する王侯の剣士は数々の女を抱いてきた経緯もあり、それなりの経験と知識を誇れるだけの自負があった。

だが、彼には徹底的に欠如している部分がある。

 

   ―― 純粋無垢な女を抱いた経験が無い ――

 

この一言に尽きた。

彼の端正な見た目とは裏腹に激しく乱暴な攻めを受け入れてくれた多数の女性たちは、全員が経験豊富で寛容も備えていた。

つまり彼は思い違いを引き起こしていたのである。

女たちが悦んで受け止めてくれていたのは懐の広さゆえであり、彼の技巧によるものではなかったのである。

 

つまり彼は、無垢な処女(エルメル)に対する配慮が欠落しており、彼女が抵抗もなく受け入れてくれる事が当然と思い上がっていた。

だからこそ許せない。

エルメルの本能的に見せた抵抗が。

拒む筈がないと信じて疑わなかった彼女による、まさかの裏切りに少々の衝撃と憤りを覚えてしまう。

 

だが華美の女魔神が挟んだ言葉で、多少の落ち着きを取り戻した王侯の剣士。

そうだ…時間は、たっぷりとある。

確かに彼女の言う事も道理で、少々乱暴に迫ってしまった感は否めない。

エルメルの抵抗は本能的なモノと気持ちを切り替え、もう一度仕切り直しを試みた王侯の剣士。

 

「よし、もう一度だ。今度は暴れるなよ?」

「…うん、はい…」

 

 分かってはいるのだが、彼(・)女(・)は(・)ル(・)ル(・)ア(・)本(・)人(・)で(・)は(・)な(・)く(・)模(・)倣(・)体(・)な(・)の(・)だ(・)。

感情に乏しい反応に違和感を感じざるを得ないが、今度こそ彼女の肢体を味わうとしよう。

不本意な抵抗はされたが、彼女の口内を充分に味わう事は出来たのだ。

再び向き合った彼は、彼女の豊かな胸へと手を伸ばしドレスの上から揉み解す…のではなく揉(・)み(・)拉(・)い(・)た(・)。

 

「――あぁッ…!?ふぅッ…!?くぅッ…ひぃ…あぁぅッ…!?」

 

 やはり同じだ。

先程と何も変わっていない。

再びエルメルは身を捩り、彼の手から逃れようと藻掻いていた。

 

――アイツ…、人の話を聞いていたのかしら!?痛がってるじゃないのッ!

 

胸の感触に夢中で彼は気付いていないが、華美の女魔神の表情は険しく変容していた。

彼女は眉間にしわを寄せ、乱暴に揉み拉く王侯の剣士を鋭く睨み付ける。

 

現にエルメル自身は、快楽など感じてはいなかった。

目をきつく閉じ歯を食い縛りながら、尚も激しく身を捩じらせている。

目尻には小粒の涙滴を浮かべ、快感ではなく痛覚に悶えていた。

 

「ハハハハ…どうだルルアぁ!?僕のテクニックは気持ち好いだろぅ?…いや言わなくても分かってるぞ、そんなに好いんだなぁ?泣くほどにぃ?良いぞぉ、もっと、もっとだぁ…!よがり悶えいい声で鳴くんだぁ…、ウアッハハハハッ…!」

 

 本当に相手を視ているのだろうか、この王子は?

明らかに彼女は痛覚を訴えているというのに、当の彼は目を見開き口端を吊り上げ豊かな乳房の感触を愉しんでいた。

 

「成程…本物のルルアって娘が、コイツから離れる理由が分かったわ…」

 

 疑念から憤りへ、そして冷徹へと表情を変える華美の女魔神。

最初こそ王侯の剣士と交わる事を心待ちとしていたが、もうその様な感情は微塵にも湧かなかった。

彼女の双眸には、苦痛を訴えるエルメルと、無視を決め込み乱暴を働く王侯の剣士が単純に投影されているだけだ。

 

王侯の剣士…、最初からこ(・)う(・)だと考えたくはない。

あの仮面の錬金術師は言っていた。

眼前の男は心の均衡を崩した事が要因となり、獣(・)の(・)病(・)を発症してしまったのだと。

今の暴力染みた行為も、内に巣食う獣性に起因するものだろう。

だがそれが全ての理由だとも思えない。

今の行為も激情も、普段から秘めていた残虐性や暴虐性が足場として発露した結果とも解釈できる。

つまり王侯の剣士の乱暴狼藉も、元から秘めていた獣性が表層意識と化したに違いない。

そう見切りを付けていた華美の女魔神は、忌避の視線で王侯の剣士を見据える。

 

それを立証するかのように、彼の表情は崩れに崩れ目付きも表情も狂気に彩られていた。

抱える瞳も、人のソレとは言い難く蕩けている様にも思える。

辛うじて人の体を成しているともいえるが、所業も気配も人というよりは獣(・)を漂わせていた。

 

「いた…い、痛い…よ、止めて…やめて…、止めてぇ…オーレル……あぁぐぅ…!」

「クハハハ…、そうか…そうかぁ…!?嬉しいかぁ…ええッ!泣く程に嬉しいんだルぉッ!そうさぁ…ソウサァァッ…!僕がぁ…このボグガァ相手なんだぁ…!気持ちよぐって濡れ濡れじゃないがぁッ…ぎぃやぁはハハハッ…!!」

 

 胸を揉み拉く様も既に愛撫とはいえず、握り潰すといった方が正しい。

乳房の豊かな身肉に彼の指先が埋もれ、不規則に形を変え柔肌に赤い痣が形成された。

柔く白い乳房の至る所に爪が食い込み、赤い鮮血が滲み出ている。

尚も激痛を訴え大粒の涙を零していた彼女の衣服は、見るも無残に破り裂かれ布切れが寝台に撒き散らされた。

 

「――ヒぎぃやアァァあッ…!?」

 

 突如としてエルメルは咄嗟に目を見開き、断末魔の絶叫で喚き散らした。

 

「――おぉおぉおぉォおぉオオっ…!?これが、これがぁ、ごれがぁぁ、ゴデガァハハハぁ…!ルルアのぉ…ルるアのォッ…膣内かぁッ…!?ぐぅわぁッハァぁッ…!!」

 

 何の前触れもなくエルメルは大股に開かされ、彼の陰茎が中心部へと減り込んでいた。

碌な前戯も無いため、彼女の秘所だが当然ながら一滴の愛液も分泌されてはいない。

その乾いた披裂を無理に抉じ開け、彼の肉柱が捻じ込まれていたのである。

 

「あ…が…!?は…ぎ…ぐ…!ガァ…ぁぁ…ああぁ…!?イだ…イ゛ぃ…!!」

 

 もう性交ではなく暴力だ。

満足に濡れてもいない処女の膣内に、男の肉竿を無理やり突き入れればどうなるか。

膣内の肉壁は多大な摩擦係数により出血が生まれ、人生に一度きりの純な被膜も呆気なく突き破られた。

瞳は一点を中心に不規則に泳ぎ、真面な言葉を発する事も出来ず、断続的な呼吸を繰り返すだけのエルメル。

披裂に捻じ込まれた陰茎による、余りの激痛を味わうエルメル。彼女の膣内からは、止めどなく鮮血が流れ落ちていた。

 

「グわぁッハはは…!ちゃんとぉ、濡れてるじゃないがぁッ…!気持ちいいだろぉ…ギモぢいい筈だぁ…ッ…、ギモぢいいでぇいえぇえぇッ…ぐぁアァァ…!!」

 

 もう自意識を保っているのかどうかさえ怪しい、王侯の剣士は暴力的な激しい腰使いで抽挿を繰り返す。

その度に彼女の膣内から水音が溢れ出たが、それは愛液によるものではなかった。

無理な摩擦と破瓜による出血が愛液の代役を果たしているだけに過ぎず、エルメル自身は微塵にも快感などには見舞われていない。

だが王侯の剣士は、彼女の苦痛など気にも留めず腰使いに腐心するのみ。

口走る言葉さえ、人に似たナニカへと置き換わりつつあった。

 

「気持ちい筈DAぁ…気持ちいいッDEェイエヨォォ…僕はギMOぢいいZOォァォァォッ…!?」

「いだいぃ…イダイぃよぉォ…、もう止めでぇぇ…やめでぇ…!」

 

「なぁにぃ…イダイだッでぇぇ!?フザケルナぁあぁッ!?気もぢいいはZUなんだぁぁ!?ボォグはァ、ぎぼぢい゛ぃ゛ぞぇぁォぁぁ…!?」

「気持ち…イイ…気持ちいい…からぁ…、もう止めでぇぇ…!痛いぃッ…イダイぃ…イダイぃッ…!!」

 

「バガを言うな゛ぁぁッ…!ゆるざんぞぇぁッ…!?GOバむんでぇ…YUるざれなぃぃ゛ィッ…!!」

「――ゲぁッ!?ブげぇっ!?がぶぅっ!?ごぅぁアッ…!?ぼぐぇッ!ぶぅおッ!」

 

 腰を掴む手の爪は更に柔肌に食い込み、時には裂傷さえ負わせ、次第に身体中至る箇所が赤い道筋に染まってゆく。

あの可憐で優美なドレスは、彼女の躰に付着するだけの布切れと化している。

嵐の如き激しい暴力に晒されたエルメルは、唯々苦痛を訴え助けを乞う。

対する王侯の剣士は、快感の言葉を彼女に強要し引き出そうと躍起になる。

しかし彼女は只管に激痛に喘ぐのみ――。

とうとう激昂した彼は、握り拳をエルメルの顔面へと何度も叩き付けた。

エルメルリア=フリクセルを模倣した美しくも可憐な素顔は、拳の衝撃で忽ち内出血に見舞われ醜く腫れあがる。

 

「――ッ!!」

 

 これまで静観に徹していた華美の女魔神は、何かに突き動かされる様にチェアから立ち上がる。

 

「――お前ぇッ…!その辺にしたらどうだぁっ…!」

 

 瞬時に立ち上がった彼女は、暴力に染まる王侯の剣士の肩へと掴みかかる。

とてもではないが、これ以上静観に堪えられない。

女魔神である彼女に、義侠心でも備わっていたとでも言うのか。

混沌勢に組する彼女が、唐突に正義感を目覚めさせた?

それは彼女自身にも分からない。

ただ黙して見過ごしてはおけなかった。

か弱き純粋なる少女が、成す術も無く暴虐の渦に引き込まれるのが我慢ならなかったのだ。

彼女の元居た世界でも、暴力と殺戮に溢れ弱き者が搾取されるなど当たり前だったというのにだ。

何時もの相手を揶揄うような口調は鳴りを潜め、激しい攻撃的な声音で王侯の剣士を引き剥がそうと力を込める。

 

「邪魔をするなぁッ…!ぐぅわぁはハハハァッ…!!」

「――ぐぁッ…この力っ…!?」

 

 だが予想外に彼女は呆気なく吹き飛ばされる。

おかしい!?

自分の腕力なら只人など容易に御せる筈なのに。

彼女自身、身体能力も魔力の総量も平均的な下級魔神(レッサーデーモン)と大差はない。

だが、いくら彼女とて只人基準で換算すれば、大小鬼(ホブゴブリン)級の膂力を発揮する事が出来る。

たとえ王侯の剣士が達人級の実力を有すにしても、腕力まで只人の範疇を大きく凌駕するとは考え辛い。

 

――なに、何なの、アイツの変化…!?

 

再び体勢を立て直し王侯の剣士に目を向けてみれば、彼の姿に変化が生じていた。

 

彼は衣服を身に着けた状態だが、その隙間から夥しい量の体毛がはみ出ているではないか。

まるでや獣の無秩序な体毛が、全身から生え出ていたのだ。

やがて大量の体毛は素顔まで覆い隠し、あの端正な面影など微塵も残す事無く猛獣そのものへと変形していた。

 

「――ぐぅルルルゥアァァっ…!」

 

 獣の雄叫びなのかルルアと叫んでいるのか判別の付かない、言葉にも似た只の発声音。

だが彼の変化は、これだけでは終わらない。

 

――今度は、なにっ…!?どうなってるのッ!?

 

彼の身体にナニカが作用しているのは間違いない。

だが、その正体に彼女が気付く事はなく、尚も続く変化に戸惑うだけだ。

 

全身は体毛に覆われ獣人染みた姿へと変化した王侯の剣士だが、今度は全身を覆うように青黒い金属物が次々と形成されてゆく。

その様は宛ら全身を覆う甲冑にも似ており、気が付けば彼は騎士風の姿へと変化していた。

まるで鉄紺の重甲冑を纏う騎士そのもので、鎧の外側には更なる青黒いソウルを噴出させている。

これでは赤黒いソウルを噴出させる、あの鉄茨のエレメールと同様ではないか。

 

理屈抜きで彼女は理解する。

 

ああ、この男はたった今、完(・)全(・)に(・)呑(・)ま(・)れ(・)た(・)のだと。

 

だが感傷に耽っている場合ではなかった。

 

「ルルアぁ…ルルアぁ…僕のモノだぁ…!!」

 

 もう理性が有るのか無いのかさえ判別も付かないが、王侯の剣士…いやここは『鉄紺の獣騎士』と呼称した方が正確だろう。

鉄紺の獣騎士は、飽きる事なく壊れかけたエルメルに獣欲をぶつけんと動き始めた。

 

「コイツ…大概にしなぁッ…!」

 

 あの吐き気を催す小鬼(ゴブリン)じゃあるまいし、眼前の獣騎士は尚もエルメルを蹂躙せんと腰を抱きかかえた。

天蓋付きの寝台は乱れに果て、至る箇所に鮮血の跡が点在している。

自分でも上手くは言えないのだが、このままコイツの好きにさせるのは癪に触って仕方がない。

余りに品性の欠落した獣の如き暴虐を食いとめんと、彼女は力ではなく魔力を行使する事にした。

衣服に仕舞い込んでいた得物を取り出し、鉄紺の獣騎士へと撃ち放つ。

 

   ―― 蛇腹剣 ――

 

それが彼女の獲物だった。

蛇腹状の刀身を持つ剣で、剣状から鞭状へと可変させる変形武器の一種。

鞭状へと変化させた刀身片で、鉄紺の獣騎士を巻き付けた。

 

「女ぁ…邪魔をするかぁッ…!」

「チッ…さっきよりも力が増している様ねッ!」

 

 何とか腕ごと上半身を拘束できたが、先ほどよりも更なる膂力の増大が顕著だ。

単純な腕力では敵おう筈もないが、都合の良い事に鉄紺の獣騎士は意識を此方に向けてくれた。

自由な下半身のみで寝台から跳躍し、彼女に飛び蹴り(ドロップキック)を喰らわせる。

 

「――ぐふっ…けどっ…!」

 

 かなり強烈な衝撃だが彼女は耐え抜き、魔力を電撃へと変え蛇腹状の刀身へと送り込む。

 

「――グルぅぅううッ…それで拘束した積りかぁッ…!」

「――まさかッ…♪そらよッ!」

 

 自分の拙い電撃如きでコイツを拘束できるとは、自惚れてはいない積りだ。

これは単なる牽制で、彼女は空いた手で豊かな胸の谷間から小瓶を取り出し投げ付けた。

 

「ごォォおぅうぅぅ……きぃさぁまぁ…!?」

「アイツの秘薬を使うのは不本意だけど、こんな場面で役に立つとはね…!」

 

 彼女が投げ付けた小瓶には、拘束の魔力が込められた薬品が詰められていた。

鉄紺の獣騎士に小瓶が着弾した事で、割れた瓶から黄金色に輝く液体が付着する。

すると急激に鉄紺の獣騎士の膂力は弱まり、いともアッサリと片膝を突いたではないか。

彼女が投げ付けた小瓶だが、言うまでもなく仮面の錬金術師が拵えた秘薬である。

 

「狭間の地の拘束具を基にしたらしいけど、ア(・)イ(・)ツ(・)も…どれ程の力を持っているのよ、四方世界の只人の癖に…!まぁいいわ、今の内にそぅれッ!!」

「――ぐブゥぁあぁぁッ…!?」

 

 得体の全く知れない仮面の錬金術師へ意識を向けつつも、彼女は更なる魔力で電撃を送り込み戦闘力を封じた。

 

「…フゥ…手間をかけさせるんだから。全く難儀な王子…いえ、今は只のケダモノね…クソがぁッ…!」

 

 焦げ付いた臭いを漂わせ膝を突きつつ動きを止めた鉄紺の獣騎士へと、唾を吐きかけた華美の女魔神。

もう彼女の瞳には、眼下の王子をケダモノとして蔑む感情しか宿していない。

 

「ハァ…もう一つの手間も済ませないとね…。ホントめんどくさいわぁん…」

 

 空間生成の応用で鉄紺の獣騎士を囲い完全に動きを封じつつ、寝台の上で息も絶え絶えのエルメルへと向かう。

普段の口調へと戻る華美の女魔神。

 

「あたくし、回復の魔術なんて覚えてないのよねぇん。止血で手一杯だわぁん」

「ヒュ~、ヒュ~、ヒュ~……」

 

 虚ろな瞳で酸素を取り入れるがやっとのエルメルに対し、止血と応急処置を施す華美の女魔神。

 

「ま、これで良いでしょ。…ってなんでぇ、このあたくしが、こんな事しなくちゃなんないのよぉん。ホント不愉快だわぁんッ!」

 

 心底面倒くさそうな口調で愚痴を零す彼女だが、エルメルへの視線を外す事はなかった。

取り敢えずの応急処置も済み、エルメルを抱きかかえた彼女は、拘束した鉄紺の獣騎士を空間ごと引き連れ特別室から出た。

 

「ちょっと不快だわ…!コイツも…アイツも…!」

 

 退出の際、鉄紺の獣騎士を睨み付けつつ脳内では仮面の錬金術師へと怒りを向けていた。

 

「憐れよね…この娘も…」

 

 また抱きかかえたエルメルは眠る様に意識を失い、華美の女魔神は憐憫の眼差しを向ける。

彼女の胸中には、複雑な思いが混沌の坩堝の如く循環を繰り返していた。

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

あたくしって、人を見る目が無いのかしら。

あんな奴に少しでも魅力を感じていた自分を、心底殴りたくなってきたわ。

まぁでも、間違いを犯さない人なんて誰一人居やしないわ。

この世界もそうだし、あたくしの居た世界でもそうだった。

それにあの男は、獣の病なんてものを発症して必要以上におかしくなってるみたいだし、普段は冷静な生き方をしている様ね。

ならば、もう少し様子見といこうかしら。

ただいま絶賛暴走中だけれど、若しかしたら、あたくしの知らない魅力をまだ隠し持っているかも。

だけど元に戻るのかしら、あの男の変わり様は普通じゃないわ。

 

異界より流れ着きし華美の女魔神より、抜粋。

 

 

 

 

 

 




ゲーム中本編での彼は、高飛車な部分は見受けられど決して暴力的な人物ではありません。今回の過剰な暴虐性も、負の感情が悪手となり連鎖した結果だという事です。
まぁそれ程までに、彼女への想いが強い証拠ともいえますね。

ちょっとエロ描写は少なめでした。凌辱(どちらかといえばリョナ)は初めての試みです。

如何だったでしょうか?
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。  
デハマタ。( ゚∀゚)/
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