※この作品はR-18です。

魔法使いとブロンド美少女   作:萩月輝夜

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第1巻『IS学園入学~クラス対抗戦』
異邦人と少女と


遥か未来の世界。

どこかはわからないが『魔法』がお伽噺の存在ではなく技術の一種として認定された世界にて一人の少年が旅の準備をしていた。

 

「さてと…こんなもんで良いかな。」

 

少年の背後にはお土産などエトセトラ…様々なお菓子や特産品がおかれていた。

これらは全て世話になった人達へのものだ。

 

「突然現れたらビックリするんじゃなかろうか…俺行方不明になるとは言っていたけどな。」

 

少年を行方不明”扱いにしてくれているというのは元の世界に戻ってくる際に約束していた。

 

「連絡できないし…まぁ弾丸ツアーでこっちに戻ってくれば良いか。」

 

通信ができないのでいつ行く、と連絡できないのが欠点なのだが贅沢は言っていられない。

俺にもこっちでやる用事があるからな。

少年の魔法も改良の余地があることは良いことだ。と、そう自分に言い聞かせ拡張領域にお土産に道具各種と調整器具、身の回りのものをぶちこみポータルへ飛び込んだ。

 

だが少年は浮かれていたのかもしれない。

開いたポータルの色が普段使いしているモノではなく”あのときの事件”に巻き込まれたときと同じ色をしていたというのに彼は気が付かずに飛び込んでしまっていたのだ。その結果…

 

「…ってまたかよぉぉぉぉ!!?」

 

気づいた時にはもう後の祭りだったのだ。

 

「いっつぅ…あ?」

 

ポータルから弾き出されるとそこには北欧のような一軒家のリビングで、ベッドに横たわり余命僅かな美しい白人女性とその子供だろうか?可愛らしい少女が涙を浮かべてベッドに縋り付いているところに遭遇してしまったのだった。

 

「またこのパターンか…。」

 

少女が突如乱入してきた極東人へ涙を浮かべ此方を困惑した表情で見ている。

俺は独り言のように呟き取り敢えず床へ伏せっている女性を《瞳》で確認することにしたのだった。

 

◆ ◆ ◆

 

この場に父はいない。

父は仕事で忙しく、今倒れている母親に逢うことが出来ていなかった。

命の灯火が消えそうだと言うのに。

 

「ううっ…お母さん…」

 

少女は泣きじゃくりながらベッドに寝ている母親へ話しかける。

その声に反応して少女を見る母親の顔はとても苦しそうで怖がっているように見えた。

それは自分が大切にしている宝物を残して居なくなってしまうことにだ。

 

「シャルロット…そんなに不安そうなお顔をしないで?あなたは笑っているお顔の方がよく似合っているもの。」

 

「お母さんがそんな様子なのに…笑えないよ…!」

 

「…お母さんをあまり困らせないで。最後に見る顔があなたの泣き顔なんて嫌よ。だから、ね?」

 

「お母さん…!」

 

母親が遠くへ旅立ってしまわないように病に犯され白くか細くなってしまっている手を握るがシャルロットへ握り返す力も弱々しい。

命の反応が次第に弱まっているのを肌で感じ取っていた。

 

目の前の母の命の灯火が消えかかる、そんな時だった。

 

「どわああああああっ!!」

 

すさまじい物音を立ててリビングの本棚に激突している少年が突然現れた。

 

「へっ?」

 

「ど、どうしたの…。」

 

本棚に突っ込んだ少年はでんぐり返しの状態から勢いをつけて立ち上がり辺りを見渡していました。

その光景に母親と少女は言葉を失った。

 

「…っ痛ぅ……また失敗して変なところへ飛ばされたか…?って、あ。」

 

少年と少女の目が合う

 

「だ、誰?どこから入ったの?」

 

「めっちゃ母さんの声に似てる…。って、いや見た目が違いすぎるな…あ、ああ。いや怪しいものじゃないんだけど…。ん?後ろの人…。」

 

「っ!」

 

少年がシャルロットの声を聞いてなにかを呟いていたが聞こえなかった。

それより少女が地元の言葉を使っているのだが少年は明らかに日本人の見た目なのに関わらず使っている言葉に対して反応していた。

少年の視線が後ろに居る母親へ向けられたのに気が付いてシャルロットは目の前に立つように立ち塞がった。

その行動を見た少年が苦笑していた。

 

「お母さんは何かの病気?」

 

「そ、そうですけど…。」

 

「そうか…。」

 

少年はそれだけ呟いて掌をお母さんへ突き出すように構えた。

 

「な、何をするの!?」

 

「ここであったのも奇妙な縁…だな。ちっとばかし黙っててくれ。」

 

少年は答えを待つ前にその体から金色のオーラを出して数式のサークルと幾何学模様の魔方陣が展開し”ナニか”を発生させてその光は母親を包み込んだ。

すると目の前にはみるみる顔色と血色がよくなっていき病気によって痩せ細っていた体は元気な時な姿へ戻っていく母がそこに居た。まるでシャルロットは逆再生された映像をみているようだった。

 

「これでよし…。」

 

幾何学模様と黄金色のオーラが消えたときに目をつぶっていた母親が目を覚ました。

 

「ううん…あら…シャルロット?」

 

「お母さんっ!!」

 

起き上がれない筈の体が起き上がれたことに本当であれば驚くべきなのだろうが、今は嬉しさが勝ってシャルロットは母親へ抱きついてしまう。

若々しくなったその身体で優しく抱き止めた。

 

「もう大丈夫なの?!」

 

「ええ、身体がとっても軽いわ…不思議ね…。まさか貴方が治してくれたの?」

 

シャルロットに抱きつかれたまま視線を先ほどの少年へと向けられた。

少年を見る目はまるで神を見るような眼差しでシャルロットも釣られて自然と視線が誘導される。

ばつの悪そうな表情を浮かべて頬を掻いて返答した。

 

「そんな大したものじゃないんで気にしないでください。それじゃ…」

 

「ま、待ってください!!」

 

立ち去ろうとする少年の手をシャルロットがとっさに握って留めた。

 

「…えーと。」

 

「…」

 

とっさに手を握り黙ってしまった少女に困った少年を見かねた母親が声を掛ける。

 

「ここで会ったのも何かの縁ですし、お茶を御馳走されていってくれないかしら?」

 

「え、いや悪いっすよ…てか俺が言うのも何ですけど不法侵入者っすよ?もてなされるより追い出される方が自然だと思うンすけど?押し入り強盗かもしれないっていうのに」

 

ジロリ、と睨み付けるようにそんなことを言う少年に微笑みを浮かべながら母親はこう言った。

 

「泥棒さんだったらそんなことは言わないわよ。さぁ此方にいらしてくださいな。貴方お名前は?」

 

少年は観念して名前を名乗った。

 

「名護蜂也っす…。」

 

「名護…珍しいお名前ね。日本の神社のような名称のようで素晴らしいわ!」

 

「は、はぁ…」

 

「お母さん…」

 

妙にテンションの上がった母親に妙に恥ずかしくなってしまったシャルロット。

 

「さぁお茶の準備をしましょう。シャルロット?ハチヤさんを此方へご案内してあげて」

 

「うん、分かった…。ごめんなさいハチヤさん。お母さん日本が大好きでその…」

 

「ああ、まぁそういうテンションになるのは分かるから大丈夫だぞ。」

 

「ありがとうハチヤさん。」

 

「さん付けしなくていい、シャルロットさん。」

 

蜂也がそういうとシャルロットはクスり、と笑ってこう答えた。

 

「わ、わたしも”シャルロット”でいいよ”ハチヤ”」

 

そういってシャルロットは少年の手をとってテーブルまで移動したのだった。

 

 

次元魔法(ディメンジョンオーバー)》の移動事故により指定した座標とは別の世界へと弾き出されててしまった訳なのだが、そこでブロンドの姉妹…ではなく母娘の住居へと侵入してしまった際にベッドに横たわる少女の母親の状態を《瞳》で確認すると非常に危険な状態であることがみて取れたのだった。

 

(末期の大腸がんか…ここまで進行していれば助かる手立てはない…が、それはあくまでも医療での話。”魔法”であれば関係ない。)

 

本来であれば人に見せる魔法ではない《物質構成魔法(マテリアライザー)》を躊躇い無く使用することにした。

 

「な、何をするの!?」

 

目の前の少女が狼狽えるが少し黙っていてほしい。

慌てる少女を無視して”魔法”を発動した。

平行同位体への上書き処理が完了し床へ伏せていた少女の母親は健状体へと戻った。

目の前には少女と母親の仲睦まじい光景が広がっていた。

母親が此方へ話しかける。

 

「大丈夫なの!?」

 

「ええ、身体がとっても軽いわ…不思議ね…。まさか貴方が治してくれたの?」

 

 

「そんな大したものじゃないんで気にしないでください。それじゃ…」

 

「ま、待ってください!!」

 

普通の人間、いや”魔法師”ではあるが話がややこしくなるので黙っておくことにした。

好感度が高いうちに今居るこの世界のことについて聞いておきたいと思い質問すると快く教えてくれるらしい。

 

「勿論よ。あなたは私たちの命の恩人…シャルロット、ハチヤさんをご案内してあげて。」

 

「こっちだよハチヤさん!」

 

「お、おう。」

 

快くこの世界について教えてくれるとのことなのでシャルロットと呼ばれた女の子に手を引かれてリビングにある椅子へ誘導された。

笑顔が似合う可愛らしい子だなという印象を受けた、しかしどこかでみたことのあるような顔だとそのとき思った。

席についてシャルロットの母親が用意してくれたお茶をいただきつつ俺が迷い込んだこの世界について語ってくれた。

西暦的には俺が居た時代よりも70年前であり歴史の流れは大きくは変わっていなかった。

ただ一つ相違点があるとすれば。

 

「”魔法がない”か…。」

 

この世界は”魔法”という技術が確立されていないということだ。

 

「あなたが私に使ってくれた奇跡はこの世界には存在しないけど…」

 

「けど?」

 

「今この世界は”IS(インフィニット・ストラトス)”というモノが世の中に流布しているのよ。」

 

その話を聞いて俺は頭を抱えた。

 

(シャルロット…IS…ここはそうかぁ…そうだよなぁ…。)

 

頭を抱えて昔図書館で読んでのめり込む位にはまったライトノベル…『IS(インフィニット・ストラトス)』の世界へと迷い込んでしまったということだった。

 

親父。俺まさかの二度目の異世界転移しちまったよ…。

 

◆ ◆ ◆

 

「自己紹介がまだだったわね。私はマリア・デュノア。此方が娘のシャルロット・デュノア。二人で慎ましくこの家に住んでいるわ。」

 

「シャルロット・デュノアです!お母さんを助けてくださってありがとうございました!」

 

此方へ笑顔を向けているシャルロットに俺は頭の中で思案していた。

本編では母親は亡くなっており、その後にデュノア社へ引き取られる事になっていたはずだが社長とは夫婦なのだろうか?

行儀よく俺へと頭を下げる日本式の挨拶に少し驚いたが、日本語が公用語になっているらしいこの世界ではおかしなことではないんだろう。

しかし、慎ましく、といっても確かにフランスの片田舎にあるような家屋ではあるが、所々に新築したような箇所と最新の家電機器が置かれているのが気になった。

それを考えると本当に物語の世界に入り込んでしまったのだと頭痛を覚える。

 

「大丈夫…?」

 

心配そうに俺の顔を覗き込むシャルロットに気が付いた俺は慌てて反応する。

 

「いや、一気に情報が頭の中に入ってきて疲れただけだよ。ありがとな。」

 

「っ!////」

 

急に顔を真っ赤にしたシャルロットは俯いてしまった。

ナニか気に触るようなことを言っただろうか?

 

「あらあら…シャルロットったら…ごめんなさいねハチヤさん。この子恥ずかしがり屋で貴方の微笑みが魅力的だったからね。」

 

「お、お母さん!」

 

シャルロットが慌てている。

気持ち悪いって言われてる俺の微笑みを「素敵な笑顔」って言うのさすが英国圏ジョーク。

良い性格しているなと思ったが不快ではないのは流石だろう。

 

「ハチヤさんの事を教えて貰える?あなたが使ったその”魔法”についても知りたいわ。」

 

「わ、わたしも!」

 

「それはいいですけど俺からも質問いいですか?」

 

「ええ。いいわよ?何が聞きたいのかしら?」

 

「マリアさんの旦那さんはデュノア社社長のアルベールさんであってます?」

 

「あら、どうしてそう思うのかしら?」

 

「デュノア、と聞いてそう思っただけですよ。それにフランスの一般家庭にしては住居のグレードが高い気がして。」

 

俺がそういうとマリアさんは驚いた後に不敵な笑みを浮かべた。

 

「…貴方は名探偵になれるわね。そうよ私の旦那さんはデュノア社社長のアルベール・デュノアよ。」

 

「そうでしたか。」

 

「本当は病院にいて私が病に犯されて最後のお願いで地元で療養していたんだけど…でも、貴方が私を救ってくれたから彼もビックリして電話口で大喜びしていたわ。此方に来るといっていたから。お礼を言いたいって。」

 

その事を聞いて本編とは差異があるようだ。

俺がシャルロットの母親を救ったからなのだろうか?

 

「そうですか…俺やっぱ帰りますね。」

 

「い、いかないで!」

 

立ち上がろうとしたらシャルロットに手を握られて上目使いで抵抗された。

小説で見ていたけどやっぱかわいいな…流石は原作者のイチオシだけはある。

しかし実際にそれをシャルロットの整った表情で困り眉を見せつけられると罪悪感がスッゴい…!

 

「くっ…」

 

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

「シャルロットも貴方に懐いていることだしもう少しゆっくりしていってくださらない?ね?それに貴方の”魔法”というのもみてみたいわ?…それとも”魔法”というのはFate的に秘匿しなきゃならないものなのかしら。」

 

「いやそういうのじゃないですけど…てか知ってるんですねマリアさん。」

 

「私日本のクールジャパン文化大好きなのよ。」

 

「まぁ、見せても問題はないですけど。」

 

「わ、私もみたいなハチヤの魔法。」

 

二人にせがまれて単一魔法を見せてあげるとシャルロットとマリアさんが喜んでいたのは印象的であった。

魔法を見せて再び元の世界へ戻ろうと思ったのだがマリアさんに引き留められる。

 

「夕食をご馳走になっていって。」

 

流石にそれは、と思い断ろうとしたがシャルロットとマリアさんが悲しそうな表情を浮かべていたのもあってか、さすがの俺はそれを無下にすることはできずにご相伴に預かることになって、更に泊めて貰えることになった。

いや、手厚すぎじゃないか?

何か裏があるのではないかと確認するが、善意で此方をもてなしてくれているようだったので素直にその好意に甘えることにしたのだった。

あと妙にシャルロットに懐かれた。

寝る前にこの世界について既に原作改編が起こりラノベの知識だけでは対処できない恐れがあると感じた俺は持ってきていた端末を起動させて情報収集を開始した。

 

◆ ◆ ◆

 

翌朝。

俺はまたしても事件に巻き込まれることになった。

 

昨日お借りした一室から起床しリビングへ降りると、そこにはマリアさんとシャルロットがスーツ姿の男性とハグをしている光景があった。そして、サングラスを着用し護衛している屈強な体格の黒服二名がそこに居て階段から降りてきた俺を護衛の一人が胸元から黒光りする拳銃を取り出そうとしていたので、俺はすぐさま魔法を使用しバラバラにしてから身体技能を使い、一人を組伏せるとハグをしていたマリアさん達が驚いていた。

 

「ハチヤくん?!」

 

「ハチヤ!?」

 

スーツ姿の清潔そうな男性も此方に気がつき黒服へ叱責した。

 

「何をやっとるんだお前達!その人は妻の命の恩人なのだぞ!…うちの部下が失礼なことをした…君がハチヤくんだね?ありがとう私の妻と娘は君によって助けられた」

 

「え?…あ、はい。」

 

そういって俺の両手を握り涙をながさんとしそうな勢いだったがとどまっていた。

 

「おっと失礼…私はアルベール・デュノア。マリアの夫でシャルロットの父だ。」

 

「名護蜂也っす。」

 

「色々話したいのだが本社へと向かう車中で話したいのだがいいかね?」

 

「へ?いや俺は…。」

 

「なにも君を誘拐するつもりはないよ。本社でなければ君へ報酬を渡せないのでね。いいかな?」

 

別に謝礼をもらうためにマリアさんを救ったわけではないのだが…困った表情をしているとマリアさんと目が合う。

『受け取ってあげて』といわんばかりのアイコンタクトだったため、俺は不可抗力であったがアルベールさん達へついていくことになったのだが…。

その行動こそが間違いだったと後で知ることになる。

 

◆ ◆ ◆

 

どこかの暗い一室。

そこにモニターとターゲットが通る道路が記された地図が置かれており、一名の少女の写真が張られていた。

『target』と記されている。

 

「目標はこの少女。今日、この少女がデュノア社に引き取られるということだ。」

 

「ふーんなかなか見た目の整ったガキじゃねーか。身体の方もそそられるねぇ…」

 

その写真をみた一人の男がそのような感想を述べた。

 

「この少女をさらってデュノア社へ身代金を要求する、四百万ユーロ(日本円で約4億)だ。」

 

一人の男が口笛を吹いた。

 

「ヒュ~!部隊の運営資金としては持ってこいだな。」

 

「この少女は社長の一人娘だ。拐われたとなれば黙ってはおるまい。」

 

「んじゃ…身代金を要求し終わったら”お楽しみ”してもいいだろ”?」

 

一人の男が下舐めずりした。その事を聞いた同じ組織の男も同調した。その事にリーダー格のような男が待ったを掛ける。

 

「身代金を受け渡す前に”壊さない”程度ならいいが加減しろ?」

 

「こいつの”お楽しみ”は大抵の女をぶっ壊してきたからな…このガキが耐えられるか?」

 

「それを調教してやるのも”お楽しみ”の一つだろ?」

 

部屋内に男達の下衆な笑い声が響き渡り、同じく部屋のなかにいた戦闘服を着用した女性が嫌悪感を示す。

 

「これだから劣等性別は…!」

 

今回の作戦は彼女がキーマンとなっていた。

 

◆ ◆ ◆

 

デュノア社のリムジンに乗り込み本社がある場所へ向けて移動をしていた。

前後には防弾防爆仕様のバンが護衛として随伴している。

ちょっとした有名人…いや有名人か。

物々しい車両に囲まれ走行していた。

乗っている最中にアルベールさんに事の経緯を聞かれて説明するとすんなりと納得してくれていた。

俺が言うのもなんだが『胡散臭い』と思わないのだろうかと聞いてみると

 

「”IS”という摩訶不思議な機械があるのだからおかしくはないだろう?それに科学も発展しすぎると”魔法”に見えるというのは言われているしね。まぁ君の”魔法”は神に近い権能…といえばいいのか。」

 

「そんな立派なもんじゃないっす…!?」

 

不意にこの車両に悪意が殺到する。

 

「伏せろ!」

 

「ハチヤ?!」

 

近くにいたシャルロットに覆い被さるように伏せると前方の車両が大きく吹き飛んだ。

リムジンの運転手も気がついたのか素早くハンドルを切って二次被害がでないようにしていた。後方のバンが素早くリムジンに立ち塞がるように。

 

「夫妻とお嬢さん、ハチヤ殿をお守りしろ!」

 

バン内部から小銃や拳銃を持ち出し襲いかかってきた襲撃者と対峙するがそれは無謀であった。

 

「あれは…?」

 

リムジン内部でシャルロットを守るために覆い被さり素早く起き上がった俺は目を疑った。

アルベールが答えてくれた。

 

「あれはわが社で生産している第二世代型IS…『ラファール・リヴァイヴ』だ…最近ISコアと本体が持ち出されたと聞いたが…まさか私たちが襲われるとはな。」

 

「あれがISか…。」

 

外で銃撃戦が繰り広げられるがISの圧倒的な機動性と火力によりその数を減らし銃声が少なくなっていく。

ロマンではあるが実際に対峙することになればそうも言っていられない。

さらに此方へ近づく悪意を補足した。

明らかにリムジンを狙っているのがわかっていた。

 

(数は…5…狙いはシャルロットか夫人か。)

 

隣で不安そうにしているシャルロットを安心させるために頭を撫でる。

 

「え…?」

 

「大丈夫だ。アルベールさんは奥さんと娘さんを。」

 

「どうするつもりかね?」

 

「決まってますよ。一宿一飯の恩義ってね。」

 

「ハチヤ…。」

 

シャルロットが不安そうな表情を浮かべるが心配は無用だと言い聞かせるように話しかけた。

 

「不安そうな表情するなって。んじゃ行ってくる。(大分近くまで来てるな…護衛の人たちはもう…ちっ)」

 

私服の上着を開けてホルスターに入れてある特化型CADを一丁引き抜き扉から勢い良く飛び出した。

テロリスト達の狙いはうまく行ったと断言しても良かったが予想外な人物が乗っていたことで失敗する未来しかなかった。

 

 

「このリムジンにターゲットが乗っている。」

 

リムジンのドアに近づく襲撃者達は警戒して扉に手を掛けた。

そのとき。

 

「なっ!?…ぐあっ!!」

 

扉を開けようとしたテロリストは車の扉ごと吹き飛ばされた。

 

「…っ!撃て!!」

 

むくり、と出てきた少年に目を離すことが出来なかった、いや離せなかったというべきか。

しかし、彼らもプロであったので直ぐ様戦闘態勢に切り替えて自動小銃で応戦するが弾丸が重力に負けて落ちていく様を見せつけられた。

 

(殺しのプロがそれじゃな…お粗末。)

 

敵から見れば拳銃のような魔法を発動させる道具から発せられた魔法により全員が地に叩き伏せられた。

重力系統の魔法をシングルアクションで発動させたのだ。

 

「ぐあ!!」

 

「ぐおおっ!!?」

 

「がぁ!?」

 

「あああっ!!」

 

「うおっ!?」

 

「なっ…!?奴は一体…情報にないぞ?くっ…!?」

 

気がついたリーダー格の人間が射撃をしてくるが当然ながら弾丸などでは殺すことが出来ない。

 

「…」

 

ため息をついて圧縮空気弾をぶつけた。

 

「がふっ…!?」

 

そのあまりの勢いに一撃で気絶してしまった。

 

「…!」

 

直ぐ様重力制御による魔法をリムジンへ向けた瞬間リムジンへ『ラファールリヴァイブ』の携行火器の弾丸がばら蒔かれるが弾かれる。

直ぐ様離脱し上空を見上げるともっていた火器でリムジンを護衛していた人たちを肉塊へ変えた鋼鉄の機鎧が浮かんでいる。

 

『劣等性別がぁ…!!私たちの邪魔をして…!お前達も本当に役に立たない木偶の坊ども……!!死になさい!!』

 

外部出力のスピーカーで喋っているのだろう。

乗っているパイロットは地に伏せている仲間である襲撃者達と少年へ向けて憎悪を向けているのに対し鼻で笑った。

 

「性別に劣等も優勢もないだろ。それぞれ得意な分野があるんだ。それも分からなく機械に使われているようじゃ知能も猿以下だな。」

 

「~~~!?」

 

声にならないほどの怒り声をあげて此方へ突っ込んでくる。

銃撃を捌ききるがISの速度の方が早いのか攻撃がなかなか当たらない。

 

(ちっ…どうする。《崩壊魔法》をつかっちまえば確実に絶対防御を貫通させる自信がある…そうなると中の人間は死ぬだろうな…)

 

殺さないように対処するのは至難の技だった。

そこで考えた。

 

「はっ!せっかく優性種であるあんたが乗ってても唯のガラクタかぁ?」

 

煽って調子を崩そうと。

 

『…なに?』

 

「現にそうだろ?生身の人間で尚且つお前さんが言ってる”劣等性別”って言ってる男に一発も当てられてないんだからなぁ?」

 

『貴様ぁ……!』

 

煽られたのか携行火器で狙いも定めずに此方へ打ち込んでくるが当然当たらない。

もう一押しだと最後に発破を掛けた。

 

「どうしたよ、唯の人間なんだ…当てて見せろよ?ああ、そうかISが無けりゃ喚くことも出来ないもんな?それじゃどっちが”劣等性別”か分かんねぇぞ?」

 

『殺す殺す!!』

 

そういって手にもっていた携行火器を手放しショートブレードを拡張領域からコールしたのだろう。

先程よりも素早い動きで此方へ突貫してくる。

恐らくは刺突するつもりなのだろうがそれが狙いであった。

接近してきたその瞬間にハイパーセンサーとリンクしている視覚と聴覚に閃光魔法を叩き込む。

 

『~~~~!!?』

 

失明してしまうほどの光量を目に受けて押さえるような動作をした。

声にならないほどの悲鳴を挙げて地上へ墜落するが絶対防御が発動しているため死にはしないだろう。

直ぐ様機体へ向けて複数展開した光の丸鋸をぶつける。

すさまじい音を立てて装甲とエネルギーが削り取られていく。

 

『や、やめて…!このままじゃ死んじゃう…やめて!!』

 

パイロットが懇願するが攻撃の手を緩めない。

 

「…!」

 

『やめてぇぇぇぇぇ!!!』

 

ついに装甲が破壊されてエネルギーが尽きたのか蜂也へ「待った」の手を掲げているが女性を見る目は冷たいまるでゴミを見るような瞳だった。

ほぼ戦意喪失している女性へ追い討ちを掛ける。

 

「やめてと言っているあんたは、この人たちの言い分を聞いたのか?」

 

足が光鋸で破壊されて半壊し形を保てなくなり人の足が現れる。

 

『ひっ!?』

 

「そういって何人の無関係な人間を殺してきた?」

 

手部分も破壊され半壊し人の手が露出する。

 

『もう…許して…!』

 

女の股からは液体が流れ出す音がする。

恐らくは恐怖で失禁したのだろうが意に介さない。

無慈悲に裁きの言葉を告げた。

 

「許されよ。ってか?許すわけねぇだろ?」

 

光鋸が女の頭部を吹き飛ばした。

 

『あぐっ…。』

 

女はパタリと力無く倒れる。

 

「ちっ…どんだけこの世界民度低いんだよ…。」

 

蜂也の視線の先にはISが着座姿勢で待機し外へ投げ出され倒れ込む女の姿があった。

その地面に血は…流れていなかった。

頭部のHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を光鋸で消し飛ばしただけだった。

その下に保護されていた人間の頭は無傷だった。

 

襲撃者とIS搭乗者を含めて全員が無傷という異例の事態が発生した。

それも、生身の人間が。

 

更に追い討ちを掛けるように事態は進む。

 

「ぐうう…!」

 

カチャリ、と物騒な音が耳に入る。

 

「ハチヤ!!」

 

「…待て!くるな!」

 

リムジンからシャルロットが飛び出してきた。

よほど心配だったのだろうがその行動は迂闊だった。

シャルロットの背後に拳銃を構えた男が狙いを定める。

それは蜂也ではなくシャルロットを狙ったものだった。

 

「きゃあっ!!?」

 

蜂也は何を思ったのか駆け寄ってきたシャルロットを抱き抱え着座姿勢のままになっているラファールリヴァイブを壁代わりにしようと近づいた瞬間不思議なことが起こった。

 

 

『ふーん、なかなか面白そうな男の子だね。君になら乗られても良いかも!…君なかなかに面白い経験をしてきたんだ…』

 

俺の脳内に無邪気な少女の声が聞こえてきた。

 

「は…?」

 

そう呟くと銃を構えたまま動かない襲撃者と驚いた表情を浮かべて腕に収まっているシャルロットがいた。

 

「俺、加速魔法かけた…いや止まってるんだ。」

 

腕に収まっているシャルロットに触れている感触がまるで固い置物を触っているような感触を覚える。

 

「というか俺ISを纏ってるのか…?でもこれラファールじゃないよ、な?」

 

半壊したはずのラファールリヴァイブが修繕…ではなく別物と化していた。

緑を基調とした色合ではなく黒色の装甲に変わり分割線には紫と黄金色の発光色が走る。

全体的に鋭角的なシャープなデザインに変更されている。

 

更に装備には本来実弾火器しかないはずのラファールリヴァイブに”光学系統の身の丈以上の暴力的な大剣”が担がれていることにあった。

逆に内蔵火器はなくなっていた。

 

「こいつは…?」

 

『あ?気に入ってくれた?』

 

「…!誰だお前は?って言うのは野暮なんだろうな。」

 

不意にこの止まった空間が塗り替えられていく。

先ほどのフランスの風景ではなく”蒼”。大空の蒼窮がその場を支配して宙に浮いている。

そんなことが出来るのはこの空間では”1機”しかいない。

 

『あはは!わかってるじゃないか!ものわかりの良い男の子は好きだよ?』

 

目の前には蜂也よりもかなり小柄な少女が立っている。

しかしその輪郭は泡沫の夢のように淡く輝いており、辛うじて判別出来る程度だ。

 

「そうかい…んで?誰なんだお前は?」

 

『改めて…こほん。僕はそうだな…うーん…』

 

「どうした?」

 

IS?が唸り声を挙げて悩ましげだ。

質問をするとその原因がわかった。

 

『僕って名前がないんだよね…だからさ君が決めてくれる?』

 

「俺がか?”ラファール・リヴァイヴ”じゃダメなのか?」

 

『それはガワの名前だ。おいおい、”女の子”にその対応は酷いんじゃないかい?』

 

ISにダメ出しをされて若干のイラつきを覚えたがそこは我慢することにして思案する。

透き通るよう語り掛けてくる尊大な声でありながら愛らしい印象を覚えた。

そして昔、遊んだことのあるゲームのキャラクターにそっくりだったこともありこの名前をつけることにした。

 

「…わかった。じゃあお前は今日から『メリュジーヌ』だ。」

 

『なんだいその名前…僕は地方のマスコットキャラじゃないんだけど?』

 

目の前の幻は不満げにしていた。

蜂也的にはぴったりだと思っていたので少しショックだった。

 

「ええ…駄目か?かなり昔の作品のキャラクターにそっくりだったからそれにしたんだけど。」

 

『…まぁ君にしては良い名前じゃないかな?』

 

「長いから”メリュ子”で」

 

『褒めてあげたのにそれ!?…全く。まぁ良いか、これで僕の存在が証明されることになるね。』

 

呆れているような声色だったがその色に喜色も含まれているのも感じられた。

直ぐ様目の前にいた泡沫の幻の輪郭はこの蒼い空へと顕現した。

その姿は蜂也が思い浮かべていた者とそっくりだった。

 

『宜しくね”マスター”?僕を使いこなしてみせてよ。この世界で生きていくには僕の力が必要だろう?君がもっているその”異能”は目立ちすぎる。それこそ”魔女狩り”の対象だ。』

 

「お前を使えている時点で”イレギュラー”だと思うがね。」

 

『この世界ではISというのは”日常”だよ。』

 

「そうかい…んじゃまぁ使わせて貰う。」

 

『楽しみにしてるよ。マスター?』

 

目の前には愛らしい笑顔を浮かべた銀絹のような髪の長い”妖精”のような美少女が立っていた。

 

光が収束し元の場所に戻ってきた。先程の光景と同じく襲撃者が此方を見て銃を構えたまま驚愕している。

 

「戻ってきたのか…!?」

 

蜂也がISを纏った姿がそこにはあり、銃撃を仕掛けた男は発砲したがそれはISの装甲の前には無力であり防がれてしまう。

 

「ぐあっ!!?…がふっ」

 

直ぐ様蜂也はシングルアクションの空気圧縮弾で拳銃をもった男の意識を飛ばした。

撃たれると思ったシャルロットは怖くて目をつぶっていたが呼び声で目を開くと驚きの光景が広がっていた。最初こそ言葉を失ったが頬を紅く染めて感謝を述べた。

 

「ふう…大丈夫だぞシャルロット。」

 

「え!?どうしてハチヤがISを…?男の子のはずなのに…でもハチヤだからかなぁ……///あ、ありがとう(ふぁ~…かっこいいなぁ…ハチヤ。)」

 

目の前で様々な”奇跡”をみせた少年に対してシャルロットの印象と好感度は天元突破していた。

 

「?このままつかまっててくれ。撃たれた人たちを回復させる。」

 

「う、うん!」

 

シャルロットを抱き抱えたまま倒れている護衛達を復活させる。

全員が死んでいるというわけでは無いので直ぐ様”もとの状態へ戻った”

 

全員を復活させたあと伸びている襲撃者達を捕縛したのちにアルベールが話しかけてきていた。

 

「妻や娘ならず私や部下の命を救ってくれてありがとうハチヤくん。」

 

「いや気にしないでください。」

 

「そういうわけにも行かない…。それに君は男でありながらISを動かしてしまった。ISの登録履歴がIS国際委員会に知られるのも時間の問題だ。それにその機体は…」

 

「ああ、すみません色々とこうなっちゃってまして…」

 

(ゴタゴタに巻き込まれる前に《次元魔法(ディメンジョンオーバー)》で元の世界に帰ってしまえばいいんだけどな…ラウラとか本編で出てきたキャラとか見てみたいし)

 

そんなことを思っているとアルベールから提案がなされた。

 

「いやそれは構わない。むしろいい傾向だよ…その新機体はわが社の救世主だ…。それでなんだがハチヤくん、君をシャルロットと共にデュノア社の広告塔を兼任したテストパイロットをやってみないかい?」

 

「?俺そんなに見た目良くないですけど?」

 

「ハチヤ…それ本当に言ってる?」

 

「ああ。」

 

「?」

 

シャルロットにジト目を向けられたが蜂也は頭に疑問符をつけるしかなかった。

 

「ははっ!君はやはり面白いな…それでどうだろう?そうなれば君もこの世界で活動しやすくなるのではないかね?安心してくれたまえ。君のバックには我々デュノア社がつこう。国際IS委員会にも手出しはさせん。」

 

その提案に二つ返事で頷いた。

 

「わかりました…ですが少し条件をつけさせてくれませんか?」

 

「なにかな?」

 

蜂也が男性IS操縦者ということを公表するのは待ってほしいと待ったを掛けた。

この後の展開を知っているものとしてはなんとしても”ファースト”は避けたかった。

アルベールに要求したものは

1つ、自分以外の男性装着者が見つかるまでは公表しない。

1つ、シャルロットの護衛としてIS学園に潜入すること。

1つ、ISを開発研究できる設備を本社で使用させてもらえるようにすること。

1つ、今乗っている機体は自分で整備するので他人が触れることがないようにして貰うこと。情報はデュノア社のみに手渡すこと。

1つ、シャルロットに危ない目に合わせないように自分が無茶をすることを許すこと。

 

以上の五点を告げるとアルベールは快諾してくれた。

 

こうして蜂也は本社へ案内されてデュノア社に新設された『アハト・ワークス』の主任研究員として活動し始めた。

蜂也の発明はデュノア社の遅れていた次世代機開発を他国よりも一歩、二歩進んだ企業へと進化させた。

それを加速させたのは蜂也が搭乗した『ラファール・リヴァイヴ』が変化したISの情報が大きい。

同時にシャルロットも自身の力でフランス国家代表候補生を勝ち取った。

そして、シャルロットが高校一年生になろうかという日に日本で事件が起こった。

 

そう、『世界ではじめて男性でありながらISを装着、操縦できる人物が発見された』ということだ。

その人物はもちろん”織斑一夏”

 

世界に激震が走ったが、それを契機と見たアルベールと蜂也は公表した。

 

『フランスでも男性でありながら装着、起動できる人物が見つかった』と。

 

戸籍情報がなかったはずだが、そこは上手いこと偽装し作成していた蜂也は既にフランス国籍を取得しており、尚且つデュノア社のテストパイロットとして地位を確立してたため変な横槍が入ることはなかった。

かくして蜂也とシャルロットはIS学園へ向かうことになるのだった。

ISの産みの親である人物と作中のキャラクターと会うために蜂也は学園へ。

そして、シャルロットとの学生生活を楽しむために学園へと。

 

「行くかシャルロット…いや”お嬢様”か?」

 

「もう蜂也ってば…それじゃお嬢様のエスコートよろしくね。」

 

「はい、承った。”お嬢様”」

 

かしずくようにシャルロットの手をとるとその表情は嬉しそうであった。

 

「えへへ…」

 

「?」

 

シャルロットの手を取り二人は飛行機に乗って日本にあるIS学園へと飛び立ったのだ。

 

 




思い付き投稿です。
…そろそろ本編書かないとなぁ(遠い目)

山田先生をヒロインに追加…?

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