※この作品はR-18です。

魔法使いとブロンド美少女   作:萩月輝夜

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最新話です。
未だにランキングに居座ってるのは皆様のお陰です。

原作では2巻相当の場面なのですが今回のお話は7巻のイベントを持ってきています。
蜂也ヒロイン登場のためです。
原作が前後しますがお気をつけて下さい。

感想&高評価ありがとうございます。
誤字脱字報告も合わせてありがとうございます。

あと切る場所が分からなくて長くなった…(20000文字強…。)


シスターズ・アンジャッシュ

シャルロットと蜂也はイチャつきながら一夏の強化訓練をしている最中、ラウラが模擬戦を仕掛けてきたりと本編に沿った動きをしていたが特段問題もなく本日の訓練は終了した。

 

更衣室でシャワーを浴びて寮の自室へ戻ってくると室内にはシャワーの水音が響く。

どうやらシャルロットが自主練を終えて先に部屋のシャワーを使用しているらしい。

 

室内に入り冷蔵庫から飲料水のペットボトルを取りだし一口つける。

ほどほどに冷たい水が運動後の体に染み渡っていく。

 

「ふぅ…。」

 

喉の潤しサイドボードにペットボトル置いてベットに腰かけて後ろに倒れる。

このまま夕食まで眠りに着いてしまいそうになったが蜂也は気になることがあった。

 

「(ラウラの性格が変わってるな…なんか妙に一夏と仲が悪い…というよりも親しい感じだったからレールカノンぶっぱなしたりキツい物言いじゃない…これだとタッグトーナメントでVTシステム周りのイベント消えたか…?織斑教諭が現役の選手だからか。それとも誰かが”何か”を仕掛けて来るか…だな。それに簪が既に登場してるからなぁ…あ~あ、時系列がめちゃくちゃだ。)」

 

ラウラのイベントが軒並み消失してしまっていることだ。

そもそもにおいて最初期に蜂也がシャルロットと出会いこの学園に入学してきており、在学中に恋仲になってしまった事で色々な事が辻褄を合わせるためにこのような事態に陥っているのだと蜂也はそう推測した。

 

(なら…学年別タッグマッチトーナメントで敵が何を仕掛けてくる?誰を狙ってくる?)

 

そう思案していると部屋で響いていた小さな水音が止んでいたと同時に脱衣所のドアが開く。

 

「ふぅ…きもちよかったぁ~やっぱり自主練習後のシャワーはいいね。あ、お帰り蜂也。」

 

「ん?上がったのか。」

 

脱衣所から出てきたシャルロットが帰ってきていた蜂也へ声を掛けた。

 

「うん、あ、ごめんねシャワー此方の使っちゃって。」

 

「いや、いいよ。更衣室のシャワーより部屋の方が落ち着くだろうし。」

 

そう言って立ち上がり冷蔵庫から水の入ったペットボトルを取りだし手渡す。

それを「ありがとう」といって受けとるシャルロットは蓋を空けて中身を呷り出す。

蜂也はシャルロットの飲む姿も可愛いと思った。

ペットボトルをサイドテーブルに置いたのを確認して後ろ抱き締めてしまう。

 

「あっ…もうどうしたの?」

 

「ああ、いやシャルロットは可愛いなって。」

 

「…もう、でも今はダメ?夕御飯食べそびれちゃう。」

 

シャルロットも抱き締められたことで蜂也と同じことを想像していたのだろうが抱き返してくる。

シャワーを浴びた後だからか彼女本人の甘い匂いと洗剤の清潔感溢れる匂いがしていた。

 

「そうだな、ただ時間一杯までシャルロットを抱き締めていてもいいかな?」

 

「うん、わたしもそうしていたい。ねぇ…キスして?」

 

「ああ…。」

 

こうして食堂が締まる一時間前までそうしていようと思いキスをせがまれ唇同士が触れ合う…と思ったのだがそれは中断された。

 

『蜂也さん、デュノアさん?いらっしゃいますでしょうか?』

 

セシリアの訪問によってそれは中断され蜂也の腕の中にいるシャルロットが若干不機嫌になったが「仕方ないかぁ」と諦めて少し離れた上で寮の扉を開ける。

 

「ごきげんよう蜂也さん。あら?デュノアさんはいらっしゃらないのですか?」

 

「わたしもいるよオルコットさん。それでどうしたの?」

 

「御夕食を取られていらっしゃらないようでしたのでご一緒にと思いまして…ご迷惑でしたか?」

 

少し寂しそうな表情をするセシリアに対して蜂也とシャルロットは妙な庇護欲を掻き立てられてその事を否定し三人で食堂に向かい食事を取ることにしたのだ。

その先に座った際にもセシリアは蜂也の左隣に座り密着させてくる。

少し困ったような表情を浮かべる蜂也とああは言っていたが少し複雑でシャルロットも密着してきていた。

 

◆ ◆ ◆

 

翌日。

クラスメイト達が会話をしているのに思わず聞き耳を立てた蜂也だったが耳を疑ってしまった。

それは原作でもあった忘れていた出来事だった。

 

「『学年別タッグマッチトーナメントで優勝したら男性操縦者と付き合える』…誰だよこんなアホな噂を流したの情報の発信源は…箒?」

 

「な、なんで俺の方を見るんだよ?」

 

その噂のせいで両名は女子達からの妙な視線から逃れるために屋上へそれぞれ缶コーヒーと緑茶缶を持った蜂也と一夏はそんな話をしていた。

 

事の発端となった原因は箒にあると思った蜂也は一夏の方に視線を向けると顔を紅くして否定していた。

それもかなり大袈裟にだ。

なので蜂也は聞いてみることにした。

 

「お前、箒に告白されたな?」

 

「なっ!?」

 

図星だったようで慌てていた。

 

「やっぱ告白されたか…それで?おkしたのか?」

 

そういうと先程の慌て具合が嘘のように落ち着いたものになり真面目な表情になる。

 

「いや、告白はされたけど…まだだ。」

 

「それはなんでよ?」

 

一夏がどんな対応をしたのかが単純に興味本意で聞きたかった。

 

「…まぁ彼女持ちの奴に聞いて貰った方がいいか。実は…。」

 

「ちょっと待て。」

 

「ん?どうした?」

 

一夏の言葉に蜂也は引っ掛かった。

 

「お前…どうして俺が彼女持ちだって知ってるんだ?」

 

「はぁ?蜂也お前デュノアさんと付き合ってるんだろ?学園に来る前から。」

 

「え?」

 

「は?違うのか?」

 

「ああ。いや。有ってるんだがその…」

 

「?」

 

「お前そういうのに機敏だったんだなって…」

 

「張っ倒すぞ蜂也…!」

 

話は戻る。

『ゴーレム襲撃事件』の折りに鈴から話の流れと結末を聞いていた通りの内容で一夏的には両方とも幼馴染みで大事な存在で弱いままの自分では付き合う資格はない、というような考え方をしているようだった。

それに箒も鈴も好きだからこそ一夏は答えを出せない、と言うことらしい。

 

「って…事なんだけどさ…これってやっぱり最低だよな。箒も鈴も俺は…好きなんだ。だからこそこないだみたいなことがあったら、俺は二人を守りきれるのか…って。」

 

「…。」

 

「なぁ、蜂也はどう思う?」

 

「逃げだな。」

 

「え?」

 

一夏の蜂也からの回答は予想だにしないものだった。

 

「”弱いから受け入れられない”は逃げだぞ。だったら”強くなって受け入れて死ぬ気で守れるようになる”が一番男らしい。箒と鈴の数年の想いに恥をかかせるなよ。それにお前に守られるほど特に鈴は弱くないだろ。こんな時代だ、女の子の一人や二人受け入れられるぐらいでかい器になりたいよな?」

 

「はぁ!?…だから二人も一緒に娶るなんて無理に決まって…」

 

「いや、意外にそうでもなくてな…。」

 

シャルロットが言っていた”例の法律”を告げると一夏の表情は驚きに埋め尽くされていた。

 

「まじ…?」

 

「ああ。いつ施行されるかは分からんが…近い内だろうな。因に俺はもうシャルロットから許可貰った…と言うより降りたんだけど。」

 

「は?」

 

「『蜂也がどうしても気になる娘がいたらいいよ。わたしがもちろん審査するけどね?』ってな。心が広いんだが狭いんだかうちの彼女様は分からん。」

 

「す、凄いな…。」

 

「まぁ…そう言うところに惚れたのかもな…と言うわけで早めに答え出しとけよ織斑。」

 

そういうと丁度チャイムが鳴り響き二人は大慌てで教室へ戻る。

一夏の表情には覚悟を決めたような表情が浮かんでいた。

 

◆ ◆ ◆

 

授業が終わり昼休み。

蜂也は一年四組へ足を伸ばしていた。

 

「ええと…此処だな。」

 

近くにいた教室から出てくる女子生徒が男子に気がつくと驚いたような表情を浮かべている。

 

「うそ!一組の名護くんがどうしてうちの教室に?」

 

「ああっ!一組の名護くんだ!」

 

「え?うそうそ!?なんでなんで!?」

 

わらわらと人が集まってきてしまってこまった表情を浮かべる二人だったが昼休みの時間は有限であることを思いだしこの教室にいるであろう人物に掛け合って貰うために話しかけた。

 

「ああ。少し用事があってね…更識…じゃなかった簪いるかな。」

 

「「「え、更識さん?」」」

 

女子の声がハモった。

 

「更識さんに男…」

 

「しかも名前で呼んだ…。」

 

「しかも、名護くんに…?」

 

「「「!?!?」」」

 

(なんでそんなに驚いているんだ?)

 

互いに顔を見合わせて大慌てでモーセの海割りのごとく彼女が座る席までの道を作り出した。

そこには席に座り自分のISの待機状態を大切そうに見つめながら投影式のディスプレイを見ながらキーボードを叩いている。

一人の女子生徒が蜂也に問いかける。

 

「あのう…どうして名護くんは更識さんに用事が?」

 

「ああ。実は簪のISを見る機会があってさ…それで俺も技術者だから彼女の機体が気になってさ。色々あって機体の完成まで付き合うことになったんだ。」

 

そういうとクラスの女子は納得していた。

「そういうわけだから…」と言って女子生徒の壁を掻き分け作業している簪の側に行き近くにあった

 

「……。」

 

カタカタカタとキーボードを素早く打ち続ける音が響いている。

キーボードは昔ながらのメカニカルキーボードでありベーシックなタイプで決して七色に光るタイプではない。

改めて目の前でキーボードを叩いている簪を見る。

 

髪は日本人にしては珍しく水色に近い黒髪のセミロングで癖毛は内側に向いている。

ずっと投影型のディスプレイを見つめている目は人よりも細いがその瞳にはやる気がある。

顔に掛けている長方形レンズのメガネが彼女の冷徹さ…ではなく知的さを引き立てている。

知性がある美少女に他ならない。

 

本来ならば女性の体を見てはイケないなのだがそれは男の悲しい性であると蜂也は自分に言い聞かせる。

大人しい性格をしているのにも関わらずシャルロット程度の大きさの魅力的な果実が制服越しからも分かるほどで腰のラインもくっきりとしている。

黄土色のパンティーストッキングに黒地のオーバーニーハイブーツを着用していた。

その衣装を見て蜂也は内心で「破いて脱がしてみたいな…」と男の欲望が漏れ出そうになったが掻き消した。

 

欲望の視線を簪に向けていた蜂也だったが作業に集中しているせいか視線に気がついていないのに無防備だな、と思いながら横顔をずっと見ていたかったが昼休みは有限であることを再確認して声を掛ける。

 

「簪。」

 

「…へ…っ!!?」

 

横に立ち声を掛けると驚いた様子でタイピングしていた指が止まった。

 

「こんにちわ簪。」

 

「ど、どうして貴方が此処に…?いるの?」

 

「この間、開発手伝うって約束したろ?その話をしたくて四組まで来たんだけど…とりあえずお昼に行かないか?」

 

「…どうして?」

 

「時間。」

 

教室内の時計を指差すと簪はそれを確認して慌てる簪。

 

「え、あ、ああっ!」

 

「根を詰めるのはいいけど…限度があるぞ?昼飯食いに行こう。」

 

「で、でも…」

 

そう提案するが作業が途中だったのか行きづらそうにしていた簪だったが体は正直だった。

 

ぐぅ~。

 

「あ…///」

 

簪の腹の虫が鳴いて「食べさせろ」と懇願していた。

 

「ほら、お腹の小さな簪が暴れてるぞ?行こうか。」

 

「う、うん…///(ううっ…蜂也くんに恥ずかしいの見られちゃったよ…!)」

 

その光景をクラスメイトの女子達が驚いた表情と同時にニヤニヤした表情で見ている者が見ていたものが居たというがそれよりもお腹が空いている蜂也と簪は食堂へと向かった。

 

 

食堂に入り券売機に並ぶ蜂也と簪。

 

「お、空いてるな。簪は水を汲んで席を確保しておいてくれ。俺は二人分注文して持ってくるよ。」

 

「わ、分かった…。えと…それじゃ。」

 

「この時間だとすぐ出来るのがいいよな麺類か…簪は『かきあげうどん』でいいんだよな?」

 

「え?どうしてわたしが注文したかった物を…?」

 

「言ったろ?俺は《魔法使い》だってな?まぁ、冗談はさておき麺類のがいいかな?ってな。」

 

「くすっ…変なの。じゃあお願い…ね。」

 

「ああ。」

 

簪は自分が注文したかった『かきあげうどん』を注文しようとしたのだが自分が注文したかった好物を言い当てられてビックリしたが蜂也のその回答にクスり、と笑ってしまった。

その笑顔を見て蜂也は配膳台へと二人分の食事を取りに行く。

水を二人分汲んで用意して席で待つ簪は先程の事について考えていた。

 

「(でも…蜂也くんはどうしてわたしの好物を言い当てたの?麺類でも様々種類があるはずなのに…)」

 

食堂の麺類のメニューはそれこそIS学園の特徴でもある多国籍な人種が多くそれに対応するために品数も多い。

麺の種類も両手両足の指では足りないほどだ。

 

「まさか…ね。」

 

簪の脳内に一瞬蜂也は本当に”魔法使い”ではないか?という疑問が沸いたがそれはお出汁のいい匂いによって掻き消された。

 

「お待たせ。それじゃ食べようか?」

 

二つのトレイを器用に持ちながらテーブルにたどり着いた蜂也から料理を頂き席に着く。

蜂也はガッツリ系のラーメンの大盛りだった。

 

「うん、ありがとう…それじゃ…」

 

「「いただきます」」

 

二人は料理に手を着けて食べ進める。

しばらくして蜂也から簪へ声を掛ける。

 

「んぐ…ところで機体の着手には今日から進めるか?」

 

うどんをちゅるり、と飲み込んで簪が頷く。

 

「うん、出来れば学年別タッグマッチトーナメントにまでは間に合わせたい。」

 

「だとするとあと十日ちょいか…まぁ仕事の突然仕様変更されて夜勤のデスマーチに比べれば全然マシだな。」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「なんで簪が謝るんだよ?俺がやりたくてやらせて貰ってるだけだし。気にするな。」

 

「…!うん、ありがとう蜂也。」

 

裏表の無い心からの言葉に簪は心揺さぶられていた。

心持ちが少し明るくなりながら注文した食事に手をつけて食べ終わる頃には昼休み終了の時刻が近づいてきていたので食器を返却コーナーへ戻し食堂で放課後整備室で落ち合うことを約束して解散した。

 

「…」

 

その光景を食堂の座席から同じ水色のショートカットの少女が見つめていた。

バサり、と扇子を開くと『見敵必殺ッ!』と書かれていた。

 

 

放課後に整備室に向かおうとしたのだがその前にシャルロットに引き留められ蜂也は事情を説明したのだが…

 

「…というわけなのでシャルロットさん。少し放課後はオクレマス。」

 

「へぇ…早速浮気なのかな?蜂也君?」

 

顔は笑っているのだが若干の目のハイライトが死んでおり丁寧語になっているシャルロット。

蜂也は恋人に対して説明する。

 

「何で君づけ?いや、だからこれは友人のIS作成を手伝うのであって全くもってそういう感情は無いからな?」

 

「ほんとに?わたしの瞳を見て誓える?そう言えるかな?」

 

アメジストの瞳が蜂也の瞳を見つめてくる。

簪に対しての感情は今のところ友達のそれであり恋愛感情はない。

確かに美少女と一緒に二人だけで作業する、というのは非常に心が踊るものではあるのだが、と蜂也は思った。

 

「勿論。シャルロットに誓って。」

 

嘘はついていない。実際に他国のISに理由をつけて触れられるのは良いことだ。

蜂也はシャルロットの瞳を見て真摯に頷いた。

それを見たシャルロットは溜め息をついた。

 

「はぁ…まったく僕の旦那様は浮気性なんだから…可愛い女の子がいると直ぐに目移りしちゃってさ…」

 

「お、おいシャルロット此処教室…。」

 

近づくシャルロットに首に手を回される。

かなり密着してしまっておりこれを見られれば黄色い悲鳴が上がること間違いなしなのだが。

 

「大丈夫だよ。皆其々自分のやるべきところへ向かったからさ。」

 

教室内は蜂也とシャルロットの二人だけだった。

 

「これは分からせる必要があるよね?」

 

夕焼けが二人を照らす。

 

「んっ…んちゅ…」

 

「んっ…ちゅぱ…」

 

教室内でキスをする二人。

フレンチキスをした後にシャルロットが蜂也へ言葉を告げる。

 

「他の女の子と一緒にいるのは良いけど…わたしがして欲しいことを今日の晩、愛してくれるなら許してあげる。」

 

愛らしい表情から一転し艶かしい表情を浮かべるシャルロットの姿に生唾を飲む蜂也。

 

「シャルロットが寛大な心の持ち主でありがたいよ…本当に。」

 

そういうと満面の笑みに切り替わり笑顔で許してくれるのだった。

 

「頑張って仕上げてきてね更識さんの機体。」

 

「やる以上は完璧に仕上げてくるさ。」

 

お許しが出たところで蜂也は約束していた整備室へ向かうのだった。

 

 

(見られてるな…いったい誰だ…?)

 

整備室へ向かう道中、背後から視線を感じて背後を振り返らずに歩みを進める。

 

(これは…敵意じゃないな…嫉妬に近い…のか?)

 

視線を向けないで背中で気配を感じとると廊下の柱の影から水色の髪がぴょこりと顔を出していた。

向けられる気配が敵意…嫉妬に近いものだった。

 

(敵意を隠しきれていないな…水色の髪…まさか、な…。)

 

この状況で今蜂也が想像しているような人物であれば今の簪と会わせるのは不味いと考えた蜂也は背後で此方を見ている女の子を撒くことにした。

 

「……」

 

此方を見つめる視線が続いているのを確認して蜂也は走り出した。

 

「…!!」

 

いきなり走り出した蜂也を追いかけるために物陰に隠れていた少女も走り出す。

その背後を振り返ると蜂也が想像した通りの少女が此方を追ってきていた。

 

(やっぱり…更識楯無…いや”刀奈”会長か)

 

楯無もアスリート並みの速度で蜂也に迫るが追い付けなかった。

それは楯無も感じていた。

 

(くっ…気づかれた?って早すぎない!?わたし結構全力で追いかけてるのに全然追い付けないっ!)

 

楯無はしなやかな脚を動かしている追い付けないのは当然だった。

顔だけを後ろに向けながら脳内で謝罪した。

 

(悪いが今君に捕まるわけには行かない…少し卑怯だがな。)

 

移動の際に加速術式を展開し常人の数倍の速度で走っていたからだ。

楯無と距離が空いたことを確認して階段の物陰へと入る。

蜂也は《次元魔法》を使用し簪のいる整備室へジャンプした。

 

「此方は行き止まり…観念なさい!…ってい、いない!?」

 

少ししてから蜂也が入っていった階段のデットスペースへ追い付いた楯無は驚愕していた。

既にターゲットである蜂也の姿が何処にもないのだ。

まるで煙のように。

 

「いったい何処へ行ったのかしら…しかも尾行に気がつくなんて…いったい彼は何者なの…。」

 

階段の下の空間で考えを巡らせる楯無だったがどうしても答えが見つからなかった。

 

「近づいても逃げられる。こうなったら直接…会いに行くしかないかな?」

 

追跡を中断し蜂也に接触するため次なる手を考案する楯無は踵を反してその場を後にした。

 

一方で楯無からの追跡を撒いた蜂也は簪の待つ整備室の扉の物陰にポータルを開き現れた。

 

「さて…撒いたな…ってこの魔法つかれるからあんまり使いたくないんだけどな…ん?」

 

移動しながら整備室へ入室すると整備ハンガーに掛けられた待機状態の《打鉄弐式》が掛けられている。

その前に移動式の仮想端末装着型座席に座り機体のデータを調整しているのだろう。

驚かせないように声を掛けた。

 

「ごめん、簪遅れた。」

 

声を掛けると画面から目を離して明るい表情を浮かべていた。

 

「あ、蜂也くん。う、ううん全然待ってないよ。」

 

「それじゃあ早速…早い内に機体を仕上げしちまおう。」

 

「うん!」

 

こうして二人は《打鉄弐式》を完成まで持っていくために協力して手に掛かった。

 

「…」「…」

 

しばらくして整備室には投影型キーボードを叩く電子音が響き渡り無言が続いていた。

キーボードを叩き異常箇所を見つける蜂也の独り言が聞こえる。

 

「各駆動部の反応が少し鈍い…生体電気の流体パルス分配率が悪いのか…ならこうして…。」

 

未完成の機体の問題点を直ぐ様洗いだし解決するその手際に簪は見とれていた。

 

「ん…コアの適合異相率が低い…俺の機体とコンセプトが似てるから参考になるな…。」

 

呟く蜂也を見ながら作業をする簪はいつもより手の動きが遅い。

しかし、それでだけが理由ではなかった。

 

(蜂也くんの横顔かっこいいな…この整備室で二人っきり…。)

 

真面目な表情で仕事を進める蜂也に簪はときめきを覚えていたからだ。

 

(蜂也くんと二人っきり…ん?)

 

しかしその事を自覚した途端簪は顔が紅くなっていくのを覚えた。

整備室には男子と女子が一人ずつ。

蜂也は今現在端末での調整が終了し工具を使って機体本体に触れて整備している。

汗を拭う姿は非常に様になっていた。

 

「簪、そこにあるレーザーカッターを取ってくれないか?」

 

「う、うん。」

 

「ありがとう。…って俺の手じゃ此処に届かないな…打鉄系列だからラファールとは内装が違うのか…簪此処の調整をお願いできるか?」

 

「わ、わかった。」

 

まさに”男の子”という感じで簪は視線を外すことが出来なかった。

 

(わ、わたし…とんでもなく大胆なことをしているんじゃ…!?)

 

しかし、意識の散漫さが大きな事故を引き起こすことになった。

レーザーカッターを受け取り梯子を使って機体へよじ登る簪。

しかし、呆けていたせいか登った拍子に整備ハンガーの機体解除の制御装置を脚で蹴ってしまった。

機体が直立姿勢から着座姿勢へ移り変わり機体が大きく動いてしまいぐらつく。

 

「え…?」

 

機体は整備室の地面から整備ハンガーの高さも含め2.5メートル弱ある。

本来の心身の状態ならば簪は問題なく着地をすることが出来たであろうが今の精神状態では受け身を取って着地する

 

「かはっ…!」

 

「…!簪!」

 

…ことは出来ずに地面へ叩きつけられる。

 

更に悪い状況が続いている。

機体が制御装置から完全に外れ地に伏している簪に機体が倒れ込んできた。

 

「…っ!!」

 

思わず手で目を覆う簪。ISの重量は凄まじく怪我では済まない。

機体が迫り絶望する。

機体が完成しないまま自分の機体に圧殺される。

しかし、そんなことは訪れなかった。

 

「えっ…?」

 

倒れ込んでくる機体の重量が簪を襲うことはなかった。

何時まで経っても重量による痛みが来ないことに怪訝に思った簪は顔を隠した手を退けるとそこには驚きの風景が広がっている。

 

「…大丈夫か?簪。」

 

先程まで端末の付近に移動していた蜂也はいつの間にか簪の前に経ち倒れ込んでくる機体を前に手を片手に”宙に浮かせて”簪の機体の激突を回避していたのだ。

 

「え…蜂也くん…?」

 

そう声を掛けると「やっちまったなぁ…」という表情で簪を見ていた。

蜂也が口を開いた。

 

「悪いけど…簪。ここであったことは秘密にしておいてくれよ?よっと…!」

 

そういうと倒れ込んできていた機体を難なく軽々と整備ハンガーへと押し戻す。

まるで”魔法”のように機体を軽々とだ。

 

「うそ…」

 

驚愕と安堵に腰を抜かす簪に蜂也は手を差し伸べた。

 

 

「いっつ…!」

 

「脚、怪我してるな…腫れてる。背中も打ったけど…息苦しくないか?」

 

「(蜂也くんに…脚…触られてる…触られてる部分が熱い…。)う、うん…息苦しくないよ…足は…いっつ…。」

 

整備室の椅子に簪を座らせた蜂也はハイサイブーツを脱がせ黄色のタイツ越しに触診していた。

簪は患部の熱さが怪我のせいもあるが蜂也にふれられている為更に熱いのだと簪は感じていた。

顔が真っ赤になっているのを隠すために俯く。

 

「…仕方がない。あまり他人の目に触れるのは良くないんだが…俺がやってれば簪に怪我をさせる必要はなかった。」

 

「う、ううんわたしが呆けていなければ…。」

 

「いや、良いんだよ。…これから起こることを黙っていてくれ。」

 

そういうと患部に触れながら蜂也の手が光る。

その瞬間に熱さと痛みが引いていった。

蜂也が《物質再生魔法》を使用したためだ。

簪はただただ困惑するばかりだったが。

 

「あのとき言ったこと…本当に?」

 

「ああ俺は…”魔法使い”だよ。だけど…内緒にしててくれよ?」

 

「…///」

 

大ケガを負うかも知れなかった自分を救ってくれた自分(更識簪)を見てくれる理想のヒーロー(名護蜂也)が目の前にいる。

茶目っ気にあのポーズをする蜂也に簪は自分が思い描くヒーロー像を重ね彼への想いを募らせていくのだった。

 

「さぁ、もう大丈夫だ…機体を完成させよう。」

 

「うん…!!」

 

蜂也にそういわれ満面の笑みを浮かべて完成に到達できるように作業に共に取りかかる。

夢中になって作業した結果整備室の窓の外は暗闇が支配しており遅い時間になってしまったが機体駆動系と制御システムは完成した。

今二人は真耶と学校に来ている千冬にお願いし夜間だがアリーナを使わせてもらうことになった。

二人はISスーツに着替えピットのカタパルト前に立つ。

蜂也は待機状態の拳銃を掴み、簪は待機状態の指輪を祈るようの握り込み展開した。

素早く展開された暗色の機体と銀灰色の機体が現れる。

機体を装着した二人はカタパルトへと接続し月明かりの照らされた夜間のアリーナーへ飛び出す。

先に蜂也は発進してその後を簪が続く。

今日こそは成功させると、彼が手伝ってくれたこの機体で飛んで見せると簪は決意しカタパルトへ接続する。

 

「更識簪…《打鉄弐式》、行きます!」

 

電磁カタパルトによって射出された銀灰色の機体は月明かりに照らされて美しいシルエットを描き出す。

素早く機体の調整を行うために仮想スクリーンとキーボードを呼び出し確認する。

 

「…。」

 

その光景を保護者のような視線を向ける蜂也だったが簪は自分の機体を確認するためその視線には気がつかなかった。

 

「全システムオールクリーン…異常動作見られず…!やった…やったよ蜂也くん!」

 

各部レスポンスと制御システムのが全て問題なし(オールクリーン)の表記になっていることが嬉しくて一緒に宙を舞っている蜂也に抱きついてしまった。

 

「お、おい簪…落ち着けって。」

 

「え?あっ…ご、ごめんなさい!」

 

「それじゃ、高速移動と高速戦闘機動(コンバット・ハイマニューバ)の確認もしちゃおう。これが終わればほとんど完成したようなもんだしな。」

 

「うん!」

 

こうして二人は月明かりが照らす上空で機体の駆動系の最終確認をするのだった。

 

 

「今日はありがとう…蜂也くん。」

 

「おいおい、まだ駆動系と機体制御のプログラムが完了しただけで武装関連はまだ完了したわけじゃないぞ。」

 

「そう、だね…また明日も一緒に作業してくれる?」

 

「?当たり前だろ。完了するまで付き合うさ。それに完成しきった簪の機体見たいし。」

 

「うん、ありがとう…蜂也くん。」

 

「?なんで感謝されるのかはわからないが…頑張ろうな。」

 

「うん。」

 

そう告げると嬉しそうな簪を見て蜂也もつられて笑った。

 

このまま雑談しそうな勢いであったが、時間はアリーナの時間ギリギリを越えていたため許可を出してくれた真耶や千冬に迷惑を掛けてしまうのでピットで別れ其々に更衣室へと向かう。

 

更衣室へ到着し、汗を含んだISスーツの上着を脱ぎ捨てタオルで汗をふく。

ワイシャツを羽織って少し着崩してベンチに腰かける。

不意に視線を柔らかいもので塞がれる。

 

「だ~れだっ。…ちょっ!?」

 

「…。」

 

本来ならば頬を突っつかれている筈だったがキャンセルされた。

 

声を掛けられた瞬間覆われそうになった瞬間手を掴み前方へと投げ飛ばす。

流石にいきなり投げ飛ばされるとは思っていなかったようでその声色は驚きに染まっていた。

 

(まさかこのタイミングで来たかぁ…。)

 

そんな状態で襲いかかってきた少女にあきれた感じで話しかけた。

 

「…一体俺に何の用ですか、更識生徒会長?」

 

「あ、あらら?わたしのこと知ってたの?」

 

少女は驚いた様子を見せていたが直ぐ様調子を取り戻す。

 

「IS学園の生徒会長ならば知っていて当然でしょう…。」

 

「あん♪お姉さんのこと知ってて嬉しい…わ……///」

 

口元を扇子で隠し開くと『お見事!』と書いてる。

蜂也は正直簪のIS整備で多少と言えど疲れているのでこの元気が有り余っている生徒会長の相手をしたくなかった。

しかし、目の前の楯無の様子が可笑しかった。

 

「ん…?どうしたんですか?生徒会長。顔を紅くして体調でも悪いんですか?」

 

「えーと…その…前を隠してくれるとうれしいな~なんてお姉さん思っちゃったりして…///」

 

視線は蜂也の胸の部分に集中していたのを蜂也は感じ取った。

視線を下げると楯無の視線は蜂也の鍛え上げられた胸筋へと注がれていた。

別段恥ずかしくはないのだが目の前にいる楯無が”隠して欲しい”と言うことなので隠すことにした。

しかし視線は蜂也の胸筋へと注がれているのを扇子越しに見ているのはバレバレだった。

 

「(意外とムッツリなのか…?)え?…ああ。すみません。さっきの拍子でボタン外れちゃったみたいで。」

 

「あ、い、いえ!此方の方こそごめんね…////」

 

(この人初すぎないか…?)

 

蜂也は目の前の生徒会長が少し心配になった。

それはともかくとして何故このタイミングで話しかけてきたのかが気になった。

 

「それより会長がどうして此処に?俺になにか用事でも?」

 

「こほん!そうだったわまさか「だ~れだ♪」をしようとして投げ飛ばされると思っても見なかったから動揺しちゃった…名護くん。」

 

先程のおちゃらけた雰囲気は何処へやら、学校の頂点に立つものの威厳を再び纏って蜂也を真っ直ぐに見据えてくる。

 

「…。」

 

蜂也は楯無の目を見てどんな質問が来るのかと身構えた。

口を開く。

 

「簪ちゃんと貴方…一体どういう関係なの?」

 

「…はい?」

 

蜂也は思わず聞き返してしまった。

 

「事と次第と返答によってはお姉さん容赦はしないけど…」

 

「どんな関係…ってわざわざそんなことを聞くためにこんな夜遅くの男子の更衣室にやってきたんですか会長は…?」

 

「早く答えてくれるかしら?」

 

自分でもこの時間に克つ男子更衣室に押し掛けてきたことに疑問を思っていたところに蜂也の問いかけをされるが本人にとっては大問題だった。

かわいい妹が見知らぬ男子に取られてしまうと。

 

しかし、目が本気だった。

彼女の納得の行く回答をしないと此処でNiceboatされてしまう可能性を感じた蜂也は正直に答えた。

 

「友達ですよ。気の合う友人です。(まぁ実際はめちゃくちゃ可愛いから例の政策が施行されるなら妻に迎え入れたいぐらいにはめちゃくちゃタイプの女の子だけれどもさ…。いまそんなことこの生徒会長言ったらISのガトリングランスで蜂の巣にされるわ…。)」

 

「はぁ!?うちのかわいい簪ちゃんと一緒にいてそれだけ!?なんかこう…簪ちゃんを見てたら誉めて誉めて誉め殺しして照れてるそんな姿を見て抱き締めたいとか…ないわけ!?」

 

蜂也は真面目に答えた。

しかし理不尽に姉である楯無に切れられた。

というより実の姉がそんなことを思っていて良いのかと疑問に思ったが先程の楯無が言ったことには首を大きく縦に振らざる得なかった。

 

「それには100%同意します。会話したときにいい点を挙げまくったら恥ずかしそうにしていたのはなんかこう…得も言わぬ魅力を感じましたね。」

 

「でしょう!?簪ちゃんのいいところなのよね~…って君?簪ちゃんにそういう感情を抱いているの?抱きたいって!?肉体的に!?」

 

「友達にそんな感情抱いている方が問題でしょうよ…仮に俺がそう思って、」

 

「いたら君をこの世から消すわ。」

 

「えぇ…?」

 

食い気味に台詞に被り起こった様子で扇子を広げると『ぶっ殺!』と文字が先ほどから変わっておりそれを見た蜂也は脳内の片隅で「どういう技術何だろうか…」と思ったが楯無の理不尽な怒り方に困ってしまった。

 

「無茶苦茶じゃねぇかよこのシスコン会長…」

 

「なにか言った?」

 

「いえいえ…なにも言ってませんが。それに俺と”簪”は只の友達ですから。」

 

「そっか…友達かぁ~…ねぇ名護くん?」

 

「はい?」

 

「今、簪ちゃんのこと呼び捨てにした?」

 

「はい。そう呼ばれたい、と本人からの希望だったので…会長?」

 

その事を告げると顔を俯き扇子を持った手がプルプルと震えていた。

 

「…よ。」

 

「…は?」

 

楯無が何かを呟いたようだったが蜂也には聞こえなかったのでもう一度聞き返そうとしたがそれはいらなかった。

 

「わたしの簪ちゃんを取り戻すために勝負よ!」

 

「…ええと、どうしてそうなるんですか?」

 

「男の子の貴方が簪ちゃんと仲良くできているのが普通にムカつくからよ!」

 

その言い回しに少しイラっと来た蜂也は楯無に反論する。

 

「自分で簪を実家の問題や面倒な役割に関わらせないためにつっぱねといてそれはないでしょう。」

 

家庭の事まで話す程に親密になっている事に蜂也に驚いていた。

そして嫉妬した。

 

「ぐっ…もう、そんなことまで聞けるくらい親しくなっていたのね。」

 

「只の推測ですよ…つまりはそれが本当という認識でいいですか?」

 

「なんだか貴方の掌で転がされているような感じがするわ…」

 

納得がいかないといった表情をしているが蜂也は事前知識で知っているので後出しのじゃんけんで負ける筈がないのでそれはしかたがないでしょ?といった感じだ。

 

「で?一体何で勝負をするつもりなんですか?ISを使って?」

 

「話が早くて助かるわ…でもISでの戦闘はわたしが有利よ?だから柔道で」

 

その発言を蜂也は遮った。

 

「いや、ISで勝負をしましょう。更識会長。」

 

「…わたしの話を聞いてた?」

 

「だからですよ。ロシア代表である貴方と”モスクワの深い霧”の性能を確認しておきたいと思ったので。(生身でやりあったら会長を怪我させちまう…親父に習った”あれ”を使うには相手がよっぽど頑丈じゃないと。ISならそんなことを気にせずに戦えるからな…。)」

 

蜂也の意外にも好戦的な態度に楯無は不敵な笑みを浮かべた。

 

「へぇ…いいわ。貴方のお望み通り”IS”で勝負をつけましょう?わたしも貴方の腕前を確認しておきたかったから。…ねぇ名護くんは知ってるかしら?」

 

「何がです?」

 

扇子で口元を隠し告げた。

 

「私はIS学園の生徒会長、即ち学園の長たる存在は”最強であれ”よ。」

 

そういわれ蜂也は口元を歪めた。

 

「会長の座は興味ないですが…その”最強”とやらに挑んでも良さそう…がその日程は後でもいいですか?ちょっと待ち合わせがあるんで。」

 

「へ?あ、ちょ、ちょっと!名護くん!?」

 

「それじゃ。」

 

壁に掛けられている時計を見て部屋にいるシャルロットを待たせていることに気がつき

楯無の返答を待たずに更衣室から飛び出し走り出した。

 

「ちょ、ちょっとってば!…ってもういない!?」

 

蜂也は寮の自室へ自己加速術式を展開し戻った。

因にだが帰るのが遅かった罰として寮の自室でシャルロットの矯声が静かに響き渡ったのは此処だけの話。

 

◆ ◆ ◆

 

翌日、食堂にて。

蜂也と簪だけの二人きりでテーブル席について食事をしながら帰りがけに会ったこと、事情を説明する蜂也。

 

「…と、言うわけなんだが。」

 

その事を告げると簪は恥ずかしそうに手をつけている天ぷらうどんに視線を落とす。

 

「うちのお姉ちゃんが御免なさい…。その…」

 

「気にするなよ。会長は簪の事が心配だったんだろ?俺みたいにポッと現れた男性操縦者に怪しく思うのは仕方がないことだろうし。かわいい妹に近づいてきたのが男なら俺でもそうする自信がある。」

 

「////…そ、それで、蜂也くんはどうするの?勝負を受けるの?いくら蜂也くんが強いと言ってもお姉ちゃんは生徒会長でロシアの国家代表なんだよ?お姉ちゃんとあの機体に勝てっこないよ…。」

 

「…こう言っちゃなんだけどさ…簪は会長の事大好きだよな?」

 

「え?」

 

「あ、いやさ。簪って会長に対して卑下するところあるけどぞんざいに扱ったり、強い言葉で貶したりしないよな?どちらかと言えば…尊敬してたり、愛情を持ってるって感じがするんだけど…あ、ご、ごめんな。」

 

最後に謝罪の言葉を付け加えたが遅かった。

簪は自分でも思わなかった姉への想いを蜂也に看破されて恥ずかしくなって箸をおいて顔を覆ってしまった。

 

「あ、あぅ…///」

 

「ご、ごめん…。(なんだろう…簪が恥ずかしがってるの見たら…もっと恥ずかしがらせたくなった…。)」

 

蜂也の中で簪に対してヤバイ心が動き出そうとしていたのをキャンセルし謝罪する。

顔を覆う簪に蜂也は声を掛けた。

 

「簪、会長への想いを言葉にして伝えてみたくないか?」

 

「え?」

 

「俺にいい考えがある。」

 

その台詞を聞いた簪は某司令官を思い出したが目の前にいる少年ならば本当にどうにかしてくれそうだと思ってしまった。

 

 

「ふぁぁ…ね……よぉ」

 

「しゃんとしなさい。」

 

「ふぁい…」

 

楯無に会うために生徒会室へ向かうと中から聞き覚えのある声が聞こえた。

いきなりは入るのも失礼だと感じた蜂也はノックをする。すると中から返答が返ってきた。

 

「どうぞ。」

 

先に会話した楯無とは違う声が聞こえてきたので別人だろうと判断し生徒会室へ続く重厚なドアを開いた。

ドアは軋むことなくすんなりと開かれた。

 

「ようこそ、生徒会室へ歓迎するわ♪名護蜂也くん。」

 

「初めまして名護蜂也くん。私は布仏虚…こら、本音。同級生の前ではしたないわよ?」

 

「おはようございます会長に虚さん。…それにのほほんさんも。」

 

「わぁ~はっちだ。」

 

間の延びた声で話しかけてくる本音を一瞥し楯無へ顔を向けると早速本題に入った。

 

「…で何処で勝負をするんですか?アリーナ?それともグラウンド?」

 

「話の早い男の子は嫌いじゃないけどせっかちさんなのはお姉さん嫌いになっちゃうぞ?」

 

自分のペースに持ち込もうとしているのだろうがそうはいかないと蜂也は反撃する。

 

「簪の件で血相変えて勝負を挑んできたのは何処の誰でしたっけ?」

 

「本当に可愛くないわね…君って。」

 

頬を膨らましいじける楯無。

煽れば響くような性格は蜂也にとって弄りがいがあると思った。

 

「弄ぶのは好きですが弄ばれるのは嫌いなんですよ俺は…それで?」

 

「…場所は学園の地下アリーナを使用するわ。会長権限でね。」

 

そういって楯無は扇子を開き『権力』と書かれた字に変えた。

 

「どうして地下なんです?普通にグラウンドでやった方がいいのでは?」

 

「君は地面に転がされるのを大衆の目の前に晒したいの?それを考慮しての場所だったんだけど。」

 

無自覚に強者マウントを取ってくる楯無が可愛いと思ってきた蜂也は返答する。

 

「それは貴方が転がされることを想定してですか?無様な格好を見せなくていいですね。」

 

「本当に可愛くないわね君は!?」

 

思わず机から立ち上がり反応する楯無に蜂也はにやにやと笑みを浮かべてそのやり取りを虚と本音は驚いた表情で見ていた。

 

「会長が殿方にこんな風に責め立てられるのは初めて見ました…」

 

「はっちって…かわいい娘苛めたくなるタイプ?」

 

「ひどい言われようなんだけど…まぁ確かに会長は美少女だから苛めたくなるのは分かる。」

 

楯無が顔を紅くして咳払いをする。

 

「(調子狂うわね本当に…////)んんっ!…さて地下アリーナに行くわよ名護くん。虚ちゃん、準備して頂戴。」

 

「畏まりました。」

 

「…」

 

蜂也は地下アリーナへ向かう前に何処かへ一報を入れた。

 

◆ ◆ ◆

 

こうして生徒会室にいる四名はIS学園の地下アリーナへと向かうことになった。

地下アリーナに到着した蜂也と楯無はISスーツに着替えフィールドに立っていた。

地下でありながら試験に使用される第二アリーナと同じような広さと高さを誇りこれならばどんだけ動き回っても問題無いようだ。

 

互いに向かい合うと先程の和やかさは成りを潜めた。

 

「来い、《メリュジーヌ》。」

 

「来なさい、《ミステリアス・レイディ》。」

 

共にISを展開し全身装甲(フルスキン)の黒色の機体とドレスのような水色の美しい機体が現れる。

楯無が駆るロシア製の専用機『ミステリアス・レイディ』と蜂也の『メリュジーヌ』は戦いのゴングがなるのを待っていた。

 

相対する楯無は蜂也のISの見た目を見て疑問を口に出す。

 

「今さら全身装甲(フルスキン)機?ずいぶんとレトロなのね?」

 

「レトロってまだ十年ちょっとしかたってないのに郷愁に浸るのは早すぎますって…この顔を隠すのにロマンがあるのに…それにこの機体の見た目は簪は好きだって言ってましたし。」

 

「あぁ…簪ちゃんが好きな特撮ヒーローに見えなくもないわね…どちらかといえば機動戦士の方じゃないの?君の見た目は。」

 

「あれ、簪の趣味把握してたんですが?」

 

「小さい頃はよく一緒にテレビ番組を見てたものだったのよね…私は○リキュア、簪ちゃんは○ーパー戦隊とラ○ダーが好きだったけどニチアサ枠は一緒に見てたわね。…いつからか見なくなってしまったけど。今度一緒に見るのも有りかも知れないわね。」

 

「見ましょうよ。きっと仲良くなれるきっかけになると思いますけど。」

 

「…参考にさせて貰うわ。」

 

本気で蜂也の提案を実行しようとしていた。

 

仮面の下で苦笑する蜂也だったが楯無には『メリュジーヌ』表情に隠れていて見えていない。

目に当たるデュアルアイが点灯するだけだ。

 

楯無はガトリングランス(蒼流旋)を利き手に持ち、蜂也はバスターソード()をサンライズパースで構える。

 

『ねぇ。名護くん?』

 

『なんです?』

 

『賭け事しない?』

 

楯無が個人間秘匿通信(プライベートチャンネル)で話しかけてくる。

その提案に蜂也は「やはり来た…」と内心で喜んだ。

 

『…因にどんな賭け事を?』

 

「そうねぇ…私が勝ったら君を生徒会に入れちゃおうかしら?」

 

『…忙しい身なんですけどね?そしたら俺が勝ったら会長に何か一つ言うことを聞いてもらいましょうか。』

 

『やん♪か弱い乙女にどんな酷いことをお願いされちゃうのかしら?』

 

『安心してください。確かに会長は魅力的ですけどそんな願い事はしませんのでご安心を。公序良俗に沿うお願い事ですよ。貴女にしかできない、ね。』

 

『それが一体どんなお願い事か気になるけど…叶いそうもないわ?』

 

『お願い…と言うより命令を聞き入れてもらいますよ!』

 

『へぇ…じゃあ相手をしてあげるっ!!』

 

ブザーが鳴り響き試合開始が告げられる。

瞬間両機体が加速し互いの武器がぶつかりあう。

 

キィン!!ギリギリギリリ…!!!

 

数度交差し蜂也は主武装であるバスターソードで楯無のガトリングランスを片手で受け止め弾き切り返す。

で切り付けるが少し擦れる程度で十分なダメージを与えられたわけではないが確実にプラクティスモードの楯無のISのシールドバリアーを削る先制攻撃であった。

片手で弾かれ先制攻撃を受けた楯無は表情には出さなかったが驚愕する。

 

「(嘘でしょ…!?結構本気でたたきつけたんだけど?それに初撃を貰っちゃうなんて…!?)ふっ!!」

 

楯無もガトリングランスで突きや斬撃、銃弾による攻撃を織り混ぜ攻めるが蜂也は冷静に対処し質量のあるバスターソードを素早く振って応戦している。

 

「良い機体ね!!私のISには負けるけどっ…ねっ!!」

 

彼を動揺させるためにあえて挑発的な言葉と攻撃をぶつけるが彼は冷静だった。

 

「学園最強…その程度で?よくも名乗れたもんですね。」

 

「言ってくれるわっ…!!」

 

蜂也にその程度か?と言われ一瞬頭に血が登りそうになるがそこはロシア代表、場数はこの学校にいる生徒を除けばこなしてきている。カッとなる心を鎮火させて次なる攻撃に移行するために膠着してた蜂也を後方へ飛ばしガトリングランスの20㎜の弾丸が蜂也に降り注ぐ。

しかし次の瞬間対峙していたはずの蜂也が視界から消え去った。

その瞬間楯無の機体に接近を示すアラートが表示された。

 

「後ろっ!?」

 

アラートがなる前に感づいた楯無は背後を振り返る。

既に後ろに回り込んでいた蜂也が襲いかかる。

 

即時旋回瞬時加速(クイックターンイグニッションブースト)!?」

 

その瞬間アラートの警告音と手に持つ『蒼流旋』が蜂也の手に持つバスターソードの刀身がマグマなような赤色を帯びて両断されてしまった。

 

「ビーム兵器!」

 

特殊合金で生成されたガトリングガンをバターのようにスライスできるのはビーム兵器のみだ。

ガトリングランス内部の20MMの弾丸が残っている為楯無は不味いと思い手を離すと火薬と機械部分に案の定誘爆した。

 

楯無は主力装備の一つを失ってしまったが焦ること無く蛇腹剣(ラスティーネイル)をコールした。

 

「はっ!」

 

刃節を外し鞭のようにしならせ不規則な動きで蜂也に襲いかかる。

迫り来る刃をいなしながら楯無へ突貫を仕掛けるが同じ手を食う程楯無は無能ではなかった。

 

「なにっ!?…ちっ…!」

 

手元を狙われ蛇腹剣が巻き付き電流が流れ出す。

それは蜂也も知らない(原作にない)機能であったが冷静に手を離しバスターソードが機械部分に誘爆し爆発した。

悪態をつきながらも素早く左手に装備されたラウンドシールドから近接ブレード(不朽剣)を引き抜き右手に装着されたのパルスガンを連射しつつ突撃する。

 

電気によって加速された弾丸の群れが楯無の「ミステリアス・レイディ」が襲うが水のベールのようなものが展開し弾丸が霧散していく。

 

「水のヴェール…アクアナノマシンか!」

 

「御明瞭♪お姉さん花丸あげちゃう!」

 

武器を構えながら空いている右手で口元に人差し指を当ててウインクを蜂也に向けていた。楯無のそのポーズはやけに似合っているなと全身装甲(フルスキン)で隠された裏側でそう思った。

 

「此処はありがとうございます、って言った方がいいですかねっ!」

 

そう呟いて武器を両手にもって突貫した。

腕部パルスガンがフルオートで弾丸を吐き出しシールドエネルギーを削り取るために楯無の機体へと殺到する。

 

しかし先ほどの水のベールを張って弾丸は叩き落とされた。

 

「ねぇ、名護くんこの会場暑くない?」

 

「…なんの話です?」

 

唐突にこの会場の温度について話しかけてきた楯無を不思議に思った瞬間ISに搭載されているAIから指示が入る。

『急激な温度上昇を確認。敵攻撃と判断。』その音声が入った瞬間目の前にいる楯無が指でスイッチの動作を行う。

 

熱き情熱(クリア・パッション)えいっ♪」

 

カチりと親指を押す動作をした瞬間爆発し凄まじい熱量が蜂也を襲う。

 

「くっ…!!」

 

会場に楯無のISである「ミステリアス・レイディ」の特徴である水を使ったナノマシン散布攻撃であった。

攻撃を受けたISの状態は防御のために使用したラウンドシールドが全損し防御手段を失ってしまった。

さらに腕部パルスガンも破損し使用できる武器は少なくなる。

SEもかなり削られてしまっている。

 

AIからの音声案内が入る。

 

『ダメージ中破、一部装備使用不可。シールドバリアー残量残り半分を切りました。装甲値エネルギー分配再設定…完了。戦闘続行に支障なし。《ラッシュモード》起動。』

 

その報告を受けて生きている武装で攻略する手順を脳内で素早く構築し蜂也は機体内部に搭載された戦闘プログラムを立ち上げていく。

 

徒手空拳の構えでスラスターウイングを点火し瞬時加速を仕掛け楯無に突貫する。

同時に非固定式装置(アンロックユニット)の一部が展開する。

 

「(こちらが追い込まれた…ならっ!!あれを使わざるを得ない)っ!!」

 

突貫してくる蜂也に楯無は素直に驚いていた。

 

「(私のクリア・パッションを受けて活動限界にならないって一体どんな性能してんのよ…!!いいえ機体の性能だけじゃない…彼自身の技能が凄まじいのね…良いわ…楽しくなってきた!!)来るわねっ!!」

 

楯無はこのまま突撃し近接攻撃を仕掛けてくると踏んでラスティーネイルの刃節を戻し直剣に戻し応戦しようとするのだが突撃を仕掛けていた蜂也の《メリュジーヌ》が目の前でまたしても視界から消失し更識は悪態を付く。

 

「この期に及んでかくれんぼ?…でも二度も同じ手は食わないわ!」

 

蛇腹剣の刃節を外し周囲で振り回す。

蛇腹剣の刃先が蜂也を捉えた、がその刃先硬質な物が砕かれる音を撒き散らす。

 

「…嘘っ!?くうぅっ…!?」

 

「はああっ!!」

 

腕部に先程まで無かった装備が装着され蛇腹剣を砕いたのだ。

続けて激しいラッシュが残る刃先を砕いていく。

 

非固定式装置(アンロックユニット)の一部が腰辺りまで下がり《ラッシュモード》と呼ばれる対人戦闘特化型に切り替わりIS本体の装甲の百倍近い硬度があるガントレットを装備し殴り抜ける、という脳筋仕様へと変化しているのだ。

この状態では出力の装甲値からブースターへと供給されるため出力が向上、近くにいてもその姿を捉えることは難しい。

 

急激な速度上昇と攻撃力に楯無は困惑していた。

 

「(どういうこと!?速度が急に上がって…威力も…!?)っく…!!重いわねっ!」

 

手持ちの装備と水のヴェールでいなしていくが被弾を防ぐことはできていない。

確実に致命傷になりかねないダメージを受けつつあった。

 

動きが鈍くなるのを確認した蜂也はラッシュの速度を早めていく。

咄嗟に楯無も蛇腹剣で防ぐが《メリュジーヌ》のナックルバスター(崩顎)の威力も相俟って楯無のISのシールドエネルギーは大きく削られる。

 

楯無の不敵な笑みが消えて動揺を見てか蜂也はあえて余裕そうな声色を告げる。

 

「どうしました?随分苦しそうですよ?」

 

楯無は言い返すように表情の見えない全身装甲で覆われた頭部のデュアルアイを睨み付ける。

 

「生意気っ!」

 

「悪いですががネタばらしは一切無しで。」

 

「それは、残念ねっ!!」

 

SEが尽き掛けている『ミステリアス・レイディ』は利き手を持ち上げナックルバスターを弾き飛ばす。

 

「はぁっ!!」

 

楯無は弾かれた蜂也に向かい半壊している蛇腹剣を振って当ててくる。

その楯無の対応力に蜂也は驚いた。

 

「やりますね会長!!」

 

「誉めてくれてありがとっ!伊達に国家代表してないわ!なら早く…倒れてくれないかしらっ!!」

 

「それは出来ない相談です!」

 

切り結びは離れまた切り結び二人はだんだん楽しくなって表情に笑みが浮かぶ。

しかし流れは蜂也が握っていた。

 

「…っ!!、そこだ」

 

《メリュジーヌ》に搭載された背面ウイングスラスター点火して瞬時加速を掛ける。

しかし、それはただの瞬時加速ではなかった。

 

「連装瞬時加速《リボルバーイグニッションブースト》っ!?」

 

”六連続の瞬時加速を寸分の狂いもなく発動させる”神業じみたその技能は国家代表といえどもアメリカ国家代表イーリス・コーリングだけしか成功させていない超高難易度の技能であり楯無も成功させたことがない技だった。

それを学生の内で成功させてしまった対峙している少年に対して楯無は笑いを浮かべるしかなかった。

 

「あははっ♪君は…本当に。」

 

楯無はしまったという顔をしたがもう後の祭りだった。水のヴェールでも展開できていればまた結果は違っていたかも知れないがこの距離ではバリアは張れない。

蜂也の《メリュジーヌ》の《崩顎》が紅に染まりラッシュが叩き込まれる。

その瞬間、楯無のISは稼働限界(リミットダウン)を向かえ停止した。

 

「面白いなぁ~…”蜂也くん”は。」

 

 

「あーくやしい!!」

 

楯無は試合終了後地団駄を踏んでいた。

 

それを見てついぞ毒気を抜かれる蜂也。

 

「まあ、負けちゃったものはしょうがないっか…(うーん私国家代表だけれども公式戦じゃないし大丈夫よ…ね?)」

自分の結果に少し戦々恐々としていたが非公式の戦闘だ。御咎めはないだろう。

 

「先輩のお眼鏡にかないましたかね?」

 

蜂也がISを量子変換し収納する。

 

その表情を見て少し悔しかった楯無は認めたくはなかったが。

 

「悔しいけど認めて上げるわ。それと…」

 

「あ、俺が勝ったんですから言うこと聞いて貰いますね?」

 

「うぐっ…そ、それは…。」

 

楯無は自分で言い出したことではあったがまさか負けると思っておらずそんな条件を出してしまった数十分前の自分を殴りたい衝動に駆られたがもうあとの祭りである。

 

「さぁ~て…なんの言うこと聞いて貰おうかな…。(まぁ、作戦通りにあの事を聞いて貰おうと思ってるんだが…)」

 

そんなことを思案しつつ楯無を見つめる。

視線の先には試合のあとだからか顔が上気して紅くなり汗が肌を伝っている。

特注のISスーツを身に纏う楯無のプロポーションはグラビアアイドル顔負けのものでありただ立っているだけなのにその色香を漂わせていた。

蜂也が本能で動く人間ならば今すぐにでもそのスーツの下の柔肌を堪能していたことだろうがそういうわけには行かない。

 

「な、何よ…あ、エッチなのはダメだからね。」

 

視線に気がついたのか顔を紅くして胸元を隠す楯無。

 

「しませんよ…なんだと思ってるんですか。…決めました会長。」

 

「ん?わたしにして欲しいこともう決まったの?」

 

「いや、正確には俺がして欲しいんじゃなくてその子がして欲しいことをお願いしたいんですけど。」

 

「?どう言うこと?」

 

「まぁ、直接会って貰った方が分かりやすいですかね…入ってきていいぞ?」

 

そう言って外から地下アリーナへ続く扉が開き一人の人影が地に足をつける。

入室してきた人影に先程蜂也に見せていた表情は消え失せ真面目で少し罪悪感がある顔だった。

 

「かん…ざし…ちゃん?」

 

「お姉ちゃん…。」

 

「会長。」

 

「え、は、な、なに?」

 

明らかな狼狽に蜂也は笑いそうになったが此処は真面目な場面だと噛み締め予め約束していた願いを答えた。

 

「俺が会長に望む願いは『妹と和解…誤解を解いてください。』妹の簪が真っ直ぐな瞳で貴女を見てるんです。逃げないで下さいね?簪。」

 

「うん…わたし、頑張るよ。」

 

「頑張れ。」

 

楯無と簪が対峙する。

その光景を虚と本音がいるピットに移動し見ていた。

 

「お姉ちゃん。」

 

「…っ。簪ちゃん。」

 

「ごめんなさい。」

 

「へっ?」

 

唐突に頭を下げて謝罪する簪に楯無は動揺を押さえることができなかったがひとまず自分の大切な妹が自分に頭を下げている、ということをやめさせなければならなかった。

 

「ちょ、ちょっとどうして簪ちゃんが謝るのよ…謝らなきゃならないのはわたしの方なのに…誤解させたままにして」

 

「ううん。それはわたしを思っての言葉だったんだよね?『貴女は無能のままでいないさいな?』って…。」

 

「でもそれは…簪ちゃんを追い詰める言葉になってしまった…本当にごめんね…簪ちゃん。」

 

「大丈夫。その言葉は蜂也くんが補足してくれたから…ちゃんと理解してるよ。わたしは…お姉ちゃんみたいに頭脳明晰で運動神経抜群じゃないし美人でもないけど…」

 

「ふふっ、簪ちゃんはわたしの妹なのよ?可愛くて、努力家で、わたしよりも勇気がある世界一のわたしの妹よ。」

 

「お姉ちゃん…」

 

「簪ちゃん…」

 

近づき簪に抱きつく楯無を優しく抱き締めるそれを簪は抱き締め返した。

妹は勝手なイメージで、勝手に壁を作って、避けてきた。

姉も家庭の事情に巻き込まないために、危険に晒さないように、避けてきた。

意図が伝わらずにすれ違う。

そんな姉に必死に追い付こうと努力している妹の姿を影ながら見ていた。

タイミングが悪く、数年越しの誤解も面と向き合って言葉にしたお陰で氷解していった。

その証拠に二人の姉妹を隔てていた心の氷壁は淡く、確実に融解していくのだった。

 

「凄いですね名護さんは…あっさりとお嬢様たちの問題を…」

 

「かんちゃん…よかったね楯無お嬢様の誤解を解くことができて…。」

 

それを一緒に見ていた虚は驚き隣にいた本音も眠たそうな表情ではなく目を開きコメントしている。

それに驚く蜂也だったがその光景を見て安堵した。

 




堕ちたな…(更識姉妹)
しかし、彼女をいることを伝えていないので告白したところで振られるのがヲチなのですが…。
そこは超法規的に枠を増やそうという世界の思惑なんですね。(設定的に。)
蜂也的にはその枠が増えてもシャルロット頭一つ飛び抜けて愛されているので不毛な争いにはならないはず…。
今の時点では”例の施行”が実施されていないので”恋人枠”になるのですが今いるメンバーだとそれに宛がっても問題なさそうな…いやわからない。
全員嫁になったら蜂也は大変ですね(ゲス顔)

各ヒロインがジャンル事に分かれるのでHシーンで被ることはないですね。(着る衣装シュチュエーションは被るかも知れないけど。)

シャルロットは正ヒロイン、刀奈は甘弄られ調教、簪は妹甘やかし枠、セシリアは蜂也へのパパ甘え枠…。というほぼ純愛しかないなこの作品。

R-18の作品なのに機体の設定を作ろうとしている自分は異端。

山田先生をヒロインに追加…?

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