騒動の幕開け
IS学園の第二アリーナの上空でオレンジと藍色の機体が激突する。
「やぁぁぁっ!!」
「はっ!」
ガキンっ!と鋭く重い金属音が鳴り響きシャルの
夏休みが終了した九月三日、始業式が終わり早速ISの実戦が始まり一組と四組の合同授業と相成った。
「流石だね蜂也っ」
「それはこっちの台詞だ」
力任せに《アギト》を振り抜き《ブレッジ・スライサー》を吹き飛ばす。しかし直ぐ様『
織斑教諭より無作為に選ばれた生徒での対戦、と言うことなのだが…作為的なものを感じるのは俺だけだろうか?
その理由としては俺の機体《メリュジーヌ》が形態変化した《メリュジーヌ・プロヴィデンス》へ変化したことで火力・推力・機動力が他国のISと比較しても比べ物にならない程の性能になってしまったためだ。
合わせられるのが恐らく織斑の《白式・雪羅》と篠ノ之の《紅椿》ぐらいで正直一般的な機体では追随することも不可能なのだが如何せんあの二人はまだ機体を受領したばかりで本人の実力はあるもののライフル連射とビット引き撃ちで終わってしまうため論外。
そうするとシャルは特別で俺と何度も訓練をしていたりしているので必然的にこうなるわけで…。
「負けた方がお昼ご飯奢るってのはどうかな?」
「なら尚の事負けられなくなったわ」
シューターフローでの撃ち合いに発展し俺は機動ウイングを展開し
それに追随するように背面のマルチプラットホームから三角コーン…ではなく量子無線誘導式遠隔端末…長いから《ドラグーン》が解き放たれ次の行動へ移ろうとしているシャルめがけ飛んでいく。
一応これがどうして浮いているのかは反重力制御姿勢制御発生機をこのサイズまで落とし込んだものを搭載しているかららしい。
え、どうしてこんなものが二次以降で出てきたって?
実のところ手持ちぶさたで作ってた試作品がメリュジーヌの形態変化の際にリードされてそのまま装備に加わった…とい此処で解説しておく。
無から生まれたわけではないのでそこのところ。
まぁセシリアと戦ってたときに経験値としてあった、と言うことだ。
数十本の粒子ビームの嵐は並みのIS乗りでは直ぐ様撃墜してしまうだろうがそこは俺をよく知り恋人でもあるシャルは涼しい顔でAMBACを多用し光の嵐を駆け抜け弾幕の薄い場所へ躍り出た。
そのタイミングで《高速切替》によって持ち出した
「これならっ!」
「…ちぃ!」
模擬弾頭…しかし殺傷力は落としているが十分な威力がある《ラビットスティンガー》と《デザートフォックス》の弾幕が俺と《メリュジーヌ》へ殺到する。
『シャルロットに負けるのは癪だし…行っちゃうよマスターっ』
「頼むぜ相棒」
実際に《ドラグーン》を操作するのは俺ではなくメリュ子が操作しておりぶっちゃけ俺には空間認識能力はセシリアに劣ってしまうためだ。
俺たちへ到達するはずだった弾幕は直前で小型、大型の《ドラグーン》から放たれた粒子ビームの網により全て撃墜されてしまった。
「うそ…!」
「こっからがペイバックタイムだっ」
煙の中から再び合体した《アギト》の切っ先を構えて突っ込んでくる俺に驚くシャルだった直ぐ様に対応する。しかし回避しきれなかったのかSEを大きく削り息つく暇も与えない俺は《ドラグーン》の小型ユニットの先端を射撃タイプから突貫タイプに変更し《コスモス・C・カスタム》へ突撃した。
「くううっ………まだまだっ……きゃあ!!!」
即座に近接ブレードをコールするが質量と出力の違いから圧されてしまうシャル。
直ぐ様《瞬時切替》で装備を呼び出そうとするがそんな暇は与えないと俺は機体を《二重瞬時加速》をかけて背面から袈裟懸けで《アギト》を振り下ろす。
新学期早々の模擬戦は俺が勝利した。
◆ ◆ ◆
「やっぱり蜂也のIS…
前半、後半と俺の勝利で終わった模擬戦の授業が終わり後片付けを終えていつもの面々で食堂にきていた。
シャルは悔しそうに俺の機体の総評をしながら明太子パスタを巻き巻きしている。
「まぁまぁ…でか元々《メリュジーヌ》のコンセプトが『単騎で大多数の部隊を撃破する』って性能だからな…まぁ二次移行してから更に鬼畜度数が上がった気が…しないでもないが。でも正直シャルの技量が高すぎて気を抜くと此方もやられそうになるからやっぱシャルとの試合は身が引き締まるんだよ。」
「そ、そうかな…えへへ///」
俺は悔しがる恋人のフォローをしながら昼御飯を食べる。
今日は腹が減っていたので焼肉定食の大盛りだ。甘辛いタレと牛カルビが混ざり更にそこに薄味の野菜炒めが加わることでちょうど良い味わいになり箸が進む進む…新学期早々食堂で頑張ってくれている食堂のおばさまたちには足を向けて寝れない。
「はぁ…」
とこっちにも食堂で頼んだ日替わり定食を頼み俺に敗北して溜め息を吐く男が一人いた。辛気臭い顔をすんな飯が不味くなるだろうが。
「なんだ辛気臭い…そんなに負けたのが悔しいのか?」
同じ円を組んで食事をしているのは織斑と篠ノ之でいつもいるメンバーは織斑ラバーズの面々と席を合わせて食事を取っている。
余談だが夏休み中に一夏も告白して凰、ボーデヴィッヒにクロニクルと付き合うことになったらしい。この色男!と告白されたのは彼女たちの方かららしくその件について篠ノ之が得意気にしていたのをシャルと二人で苦笑いしたのを覚えている。
話が逸れてしまったが今はこの辛気臭い友人の話を聞くべきだろう。
「はぁ…それにしてもなんでパワーアップしたのに負けたんだ?セシリアとか箒には勝てたのに…」
結果として織斑は三回やって二勝したが一敗はシャルとの試合でボロ負けした。
「それはまぁ相性の関係だろう。凰と篠ノ之に関してはインファイター寄りだしセシリアに至っては射撃系統で光学装備を多用してるからお前の雪羅のええと…《霞衣》だっけかと相性が悪い。BTも光学系統装備だしな。」
俺がそう言うとセシリアが「うぐっ」と苦しんでいた。
「は、蜂也さん…た、確かに二次移行した白式は強敵ですわね…ですけどあれ程までに完封されてしまうのは私的にはショックと言いますか…。」
手に持っていたサンドウィッチを皿に戻し少し悲しそうな表情を浮かべるセシリア。
「それに織斑君の機体は射撃の自動照準のアセンブリが追加されたといっても慣れてる人…つまりわたしや蜂也みたく”経験値”があるのにとっては射線が予測できちゃくから慣れてないと…そこは…ね?」
「よしよし…それにお前の装備ただでさえ燃料バカ食いするのに残量計算しないでバカスカ荷電粒子砲なんて撃ってたらSEなんて直ぐに空っ欠になるに決まってるだろうが。」
セシリアの頭を撫でながら説明すると簪とシャルからジト目で見られた。
俺悪く無い?
「あんたの機体は強力な分エネルギー喰うんだからそこら辺しっかり頭に叩き込んでおかないと直ぐ試合で《活動限界》判定食らっちゃうわよ?」
凰がラーメンを啜りながらそう言った。
「エネルギーか…わたしの《紅椿》も同じエネルギー系統装備で統一されているが一夏ほど大食らいではないぞ?」
塩鯖定食の白飯に箸をつけながら疑問を浮かべている。
その件については俺が説明した。
「ああ。その事か。それなら《紅椿》は新開発の大容量パワーエクステンダーバッテリーと最高効率の生体電気発動機が搭載されてるのと《展開装甲》が組み合わさって最大の稼働効率を実現したんだと。」
その事を説明すると簪がたぬきうどんを啜りながら疑問をぶつける。
「ええと…蜂也君それは一体誰から…?」
その答えを持っていたのは当然あいつなのでその名前を出す。
「束」
「「「「「「あぁ~…。」」」」」」
一斉に頷くなよほらビックリして他のテーブルの子達此方を見てるじゃないか。
俺が出した人物名に篠ノ之は頭を抱えていた。
「そ、そうか…しかし未だにおね、んんっ…姉さんが男を好きになるなんて信じられん…。」
「事実なんだよなぁ…世界にも公表しちまったし。」
「それだとわたしが名護をお義兄上と呼ばなくてはならないと言うことか…?」
ふむ、箒が義妹になるのか…
『お義兄さんおはようございます。』『姉さんの様子はどうですかお義兄さん?』
少し面白くなるからダメだなこれ。
「こんな歳の近い妹要らねぇ…と思ったけど篠ノ之って結構妹キャラだから甘やかすな俺が。」
「なっ!?」「お、おい蜂也!」「蜂也さんっ?」「蜂也君?」
「いやいや…冗談だっつーの。まぁ義妹になるのは本当だけどな。」
篠ノ之、織斑、セシリア、簪が反応していたが俺が「冗談」と言うと収まってはくれた。
織斑は気が気じゃないと言ったような雰囲気だったがそこまで篠ノ之のことを心から愛してるなら原作の一夏箒のカップリング大好きマンとしては安泰ではある。
「まぁペアを組むならば私とだな一夏。《サイレント・ゼフィルス》と《白式》は遠近で相性も良い。」
一夏の隣に陣取っているマドカがどや顔でペア宣言をしている。
それに反応したセカンド幼馴染み。
「それはどうかしらねマドカさん。一夏と組のはあたし。幼馴染みで彼女だし、甲龍は近距離も遠距離もこなすから白式と相性が良いのよ。」
いつのまにかセカンド幼馴染みと入れ替わり一夏の頬をむに、と突っつくサード幼馴染み。
「何を難しい顔をしている。迷うことなど無いだろう一夏。お前はわたしの幼馴染みで恋人なのだから私と組め…それとも私と組むのはイヤか?」
その言葉に反応するファースト幼馴染みで第一夫人。
「それを言ったらわたしもなのだが…元々わたしの《紅椿》と《白式》は対で同時運用を目的とした機体で開発された機体だ。そっちの方が良いだろうし…尚且つ…その絵になるからな。」
最後のは欲望駄々漏れですぜファースト幼馴染み。
そんなことを思っていたら俺の恋人たちも負けじと自慢してくる。
「それならわたしの《打鉄弐式》は蜂也君と同じ《マルチロックオンシステム》を採用してるから殲滅力はピカイチ…それに恋人だから。」
メガネを掛けた普段はクールな恋人がアピールしてくる。意地らしくて可愛い。
「それでしたらペアを組むのはわたくしセシリア・オルコットですわ。蜂也さんの《ドラグーン》とわたくしの《ブルーティアーズ》が合わされば一網打尽ですしそもそもにおいてわたくしの機体は遠距離型…相性は抜群…それに恋人ですので♪」
英国淑女が自信満々に此方にアピールしてくる。素直に可愛い。
「あら♪聞き捨てならないわね~ペアを組ならわたしに決まっているじゃない。蜂也くんの動きとわたしの動き方って似てるから合わせやすいわよ?それに蜂也くんはわたしの恋人でもあるから。」
水色髪のお姉ちゃんが自信満々にペアを組むことを主張している。可愛い。
「まぁそれを言うならわたしだよ。蜂也のは全領域対応型でわたしの《コスモス》も対応型だから苦手無く戦うことが出来るよ?セシリアのブルーティアーズも簪のマルチロックオンも強力だけど種が割れちゃうと対応されちゃうからね…それにわたしは蜂也の恋人だから。」
正論で他の子を刺さないでくれブロンドの優等生…可愛い。…ってかなんか四人の間で視線で火花が散ってるように見えるのは気のせいじゃないな…。
「一緒に戦う、って言うのなら僕が適任だよねマスター?だって僕は君と一緒にいるわけだし?」
お前はオンリーワンだから大丈夫だ。安心しろ。
「は~い。」
って……ん……?聞き覚えのある声が脳内ではなくすぐ側で聞こえた
しかも俺のすぐ後からだ。
俺は
直ぐ様に後を振り返るとそこにはよく見知った”相棒”の顔があり「イタズラ成功!」と言わんばかりの表情を浮かべている。
「なんで出てきたんだよメリュ子…。」
「だってさ?『皆で誰がマスターとあとそこにいる少年のパートナーを決めよう』的な会話をしてたから君の相棒わ枠としては参加しないわけにはいかないわけで。」
「だからってお前此処で出てこなくても良いだろ…皆ビックリしてるじゃねーか…特にシャル達が。」
シャル達を見ると突如現れたプラチナブロンドの美少女が俺の首に抱きついている光景を見ればイヤでも視線が向くし三人から「その女の子はダレ?」という視線で人が殺せてしまうほどの眼力がそこにはあった。
このままにしておくとミサイルとレーザーとパイルバンカーが飛んで来そうなのでメリュ子を離して立ち上がる。
「お前ら落ち着け…ほらメリュ子自己紹介しろ。」
「はーい…マスター。僕の名前は《メリュジーヌ》…マスターの恋人であり相棒だ。よろしくねシャルロットにセシリアに簪にかた、いや楯無、そしてようやく会えたねお義母様。」
「「「はい?」」」「わぁ…すごい!本当にメリュちゃん!?…わー髪サラサラで…ほっぺぷにぷに…可愛い!」
「なんで大事な所抜けてんだお前ぇ…!ちょ、落ち着けお前らっ!」
「蜂也…恋人は増やしても良い、って言ったけどわたしの知らないところでこんな子に手をつけるなんて聞いてないなぁ…。」
「蜂也さん…わたくし、信じていましたのにわたくしたちという存在があろうと言うのに…浮気ですか?」
「蜂也くん…貴方はわたしだけのヒーローだと信じていたのに…闇に落ちちゃったんだね…情けだよ…介錯してあげる、ね?」
「蜂也くん?これはどう言うことかしら?あの日わたしに言ったことは嘘だったのかしら?去勢しちゃうゾ?」
「これも言うなれば束さんと蜂くんの愛の結晶と言えなくもないけど…まぁいっか!」
それぞれに部分展開しパイルバンカーにブルーティアーズに夢現を出現させて襲いかかろうとしていたので例のあのポーズをとってなだめる(ジュラシック的なあのポーズ)が全員ハイライトが無くなっていた。ハイライトが無くなって良いのは凌辱作品だけにしてくれ…今にもその怒りの矛先が此方に向いてきそうだった。
って刀柰、お前のそれは洒落にならんから勘弁してくれ…刀柰にあのキャス娘の格好してもらうと捗るかも知れない(現実逃避)
ん?ちょっとまてさっきから別の声が聞こえるんだけど?
「全く…マスターがそんな不埒なことをすると思ってるの?仮にも君たちはマスターの恋人なんだろ?マスターの声を聞かないでどうするのさ。」
「そうそう。君たちが蜂くんの信じなかったら誰が信じるの?というか嘘言ったことあるかい?」
そうメリュ子に言われた三人は「うぐっ…」と反応を見せて武器を下ろしてくれた。
いや助かったんだけどさ…
「そもそもお前が巻き起こした責任だろうがっ…とそれと束。良いのか此処にいて?」
「たまには外の空気を吸わないとだしね。」
メリュ子の眉間を圧すと「ふにゃっ!」と短い悲鳴をあげて眉を擦って此方に抗議の視線を向けていたが無視することにした。
それと束がいつのまにかセシリアと位置を変更し隣に陣取りおっぱいを腕に圧し当てている。
そっちの方を見ると「にはは」と笑みを浮かべている。本当に可愛いなうちの白兎。
「なにするのさぁマスター~…はぁ…わかったよちゃんと説明するよ。…こほん。では改めまして僕がマスターの”IS”《メリュジーヌ》だ。宜しくしなくても良いけど僕もマスターの恋人なので宜しく。あ、疑ってる顔をしてるね…それなら証拠を見せてあげるよ。マスター?」
俺が右手を突き出すとメリュジーヌが淡い光の輪郭を描き出し眩い光を一瞬だけ放ち待機状態の《拳銃》へ姿を変えた。
その光景にシャルロットを含め全員が驚いてた。
直ぐ様人間体…メリュジーヌとして俺の隣に座る。
まぁ明かす必要はないと思っていたのでそのままにしていたんだが丁度良いタイミングで束が助け船を出す。
俺を跨いでメリュ子に対して何処からか取り出した不思議な聴診器をあてて「ふむふむ」「ほうほう!」と興味津々な様子で触診しその情報を分かりやすく説明した。
「メリュちゃんが実体化出来たのは蜂くんとの”経験値”を取り込んだことで機能拡張…つまりは《メリュジーヌ》としての《単一仕様》が発現した状態ってことで今実体化してるのさ」
束のコメントが決定打になったのか恋人たちは納得してくれた。
「まぁ博士がそう言うなら本当なんだろうし…蜂也が嘘を言ってるとも思えないから…信じるよ。」
「にわかには信じられないですが…先程の待機形態へ戻る光景を見せられてはそれに博士とご本人が仰っているのです。信じる他無いでしょう。」
「わたしも信じられないけど目の前で待機形態に戻るのを見せられたら信じるしかないよ。」
「わたしも簪ちゃんと同じく目の前でそんなものを見せられたら信じるしかないわね。ISは未だに解析されていない事象が未だあるらしいから…信じる他無いわね。」
織斑達も似たような感想を述べていた。
こうしてメリュ子…メリュジーヌは正式に俺たちの仲間内に認知されることになった。
呼び方も”メリュジーヌ”だったり”メリュ子”、”メリュちゃん”と呼ばれたりしていた。
そんな中シャルがふと束に対して疑問をぶつけた。
「博士。蜂也のメリュちゃんが実体化できたってことはやはりISには意識があるってことですか?」
その言葉に全員が束の方を見ていた。
束はその言葉に頷いて俺を見た。
「そうだね。シャルロットちゃんが言うようにISには”人格”が存在する。といっても私が作ったんじゃなくて元から”あった”といった方がいいかな?蜂くんならよくわかると思うけど。」
「ああ。皆も臨海学校で俺が篠ノ之と束をISの意識共有領域に無理矢理介入してぶっ倒れたのを知ってるだろ?」
「「「「「「あ。」」」」」」」
合点が言ったのか声を揃えていた。
「その時に篠ノ之の《紅椿》の意識領域にダイブしたときに居たんだよ。《紅椿》の人格がな?」
そう言うと興味深そうに篠ノ之が訪ねてきた。
「そ、そうだったのか…どんな見た目をしていたのだ?」
「えーと確か…”ちっちゃい篠ノ之”だった。」
「「「「「「「ちっちゃい篠ノ之?」」」」」」」
「わ、わたし?か。」
「ああ。小学校の初等部ぐらいの見た目だったな。可愛かったぞ?…会わせることも出来るがあれはすげー疲れるからな今度にしてくれ。」
俺の腰ぐらいの大きさのちっちゃい篠ノ之だったと動きで表現した。
「そ、そうか…姉さんとの仲介はお前のお陰だったんだな…ありがとう。」
そう言って篠ノ之は腕に巻いている白と赤の交差した紐に鈴が付いている待機形態をそっと撫でた。
『どういたしまして。もう一人のわたし。』
ん?今紅椿の声が聞こえたんだが…。篠ノ之には聞こえていないらしい。
『未だ私の声を聞くのには少し経験値が足りませんので…今聞こえているのは蜂也さんだけです。いつか…会えると良いですね。』
そうだな。
そんなこんなでメリュ子の登場でどうなるかと思った昼食だったが思わぬ助け船で事なきを得ることが出来た。
俺たちは午後の授業のために残った昼食を急ぎ平らげて向かった。
午後からもISの関連授業が盛りだくさんだ。居眠りをしてしまわないように気を付けよう。
◆ ◆ ◆
翌日。
SHRはキャンセルされ一限目を使い全校集会が行われた。
当然ながら壇上に立つのは俺の恋人であり生徒会長の刀柰。今日もその美貌と凛々しさが似合っている。
俺と一緒の時は甘えてくるようになったのは猫みたい…と思ったのは俺だけで良い。
「それでは生徒会長から説明をさせていただきます。」
壇上の刀柰の隣に立つのは同じく生徒会の虚さんだ。
気の引き締まるその一声にざわついていた体育館内は静寂へと変わった。
「やあ、みんなおはよう。」
(やっぱり刀柰は可愛いなぁ…。)
とそんなことを壇上に立つ刀柰へ向けると此方に気がついたのか微笑んでいた。
「ふふっ…」
やめてくれ刀柰。めちゃくちゃドキドキするから。
「さてさて…では今月度に開かれる一大イベントであるIS学園文化祭…通称《成層祭》なんだけど今回特別なルール…というよりもちょっとしたお遊びを加えることにしたわ。その内容が、というと…。」
刀柰がお馴染みの扇子を取り出し横へスライドさせるとそれに応じるように空間投影ディスプレイが展開された。
そこにはポップな字体で表記されたタイトルが表示された。
それを見て俺は「ああ、やっぱりやるのな」と頭を抱えた。
「名付けて、『各部対抗織斑一夏争奪戦』!」
ぱん!と小気味良い音を響かせながら扇子が開くと空間投影のディスプレイに織斑の写真がデカデカと映し出されていた。
「はっ…?」
「え、」
「「「「「「「「「え~~~~~~っ!!?」」」」」」」」」
「うおっ」
割れんばかりの声は体育館を揺らした。あ、いや誇張表現無しでだ。
ポカンとしている織斑に全校生徒の視線が集まる。こわっ。
M○S2のタンカー任務でこういうのを見たことがあったな…それも指令の演説とかだっけか?と関係ないことを考えていると刀柰が収集を付けるために扇子を大きくパチンと音を立ててしまうと静寂が戻る。
「はい、静かに。《成層祭》では毎年各部活動毎に投票を行ってその順位に応じた部費の追加…特別助成金が出ている仕組みなのは二年生以降の生徒は知っているので説明は省かせてもらうけど…しかし!今回それだとつまらないと思いまして生徒会長と学校の先生達と協議して確定したのは…。」
そう言って刀柰は呆然とする織斑に対して扇子の切っ先を突きつける。
「織斑一夏くんを部活へ入れちゃおうぜ☆ってことになりました♪」
その事に部活動入部者から雄叫びが上がる。
織斑は俺を見るがただただ俺は肩を竦めるしかなかった。
◆ ◆ ◆
「お、おい蜂也!どう言うことだよこれっ」
全校集会が終わり教室へ戻るその道すがら俺は織斑に問い詰められていた。まぁ当然といえば当然なんだが。
「あーその事か…実はな楯無のところに『俺とお前を部活動に入部させろ』って嘆願書が結構届いてたらしくてな…それで今回あのような策に踏み切った、ってことらしい。」
「は、はぁ?!…なんでそうなった……ん?なんで俺の名前が乗っててお前の名前がないんだよっ!」
む、そこに気がついたか意外に鋭いんだな織斑。
「それなんだがほれ。」
俺は織斑に懐からパスケースを手渡す。
「なんだこれ…学生書?……『IS学園所属1-1名護蜂也…IS学園生徒会副生徒会長』…っ!?」
「そう言うこと。一応この学園生徒会活動も部活動の一環として認められてるからそれで俺は今回の騒、もとい催し物の”景品”されてないってことだ。」
「ず、ずりぃ…と、というか選挙をしないで副会長とか選任して良いのかよ…。」
がくりと肩を落とす織斑の肩を叩く。
「まぁ一応生徒会長が副会長を決めて良い、って流れがあるからそれでだよ。」
「まぁ会長さんお前の彼女だもんな…くそー…。」
「まぁお前が変な部活に行かないようにフォローしてやるから。」
そんなこんなで教室に戻ってきた俺たちは普段通りの授業に入る。
そして授業は進み食堂で食事をとって午後の授業が終わり放課後の特別HR。今はクラスの出し物を決めるためにわいのわいの、やいのやいの、と盛り上がっていた。
司会進行はクラス代表である織斑が務めていた。
しかし案の定、クラスの全員が出した意見が原作でもあったが酷かった。
特に男の俺が追加されているので+αだ。
黒板にかかれた文字列。
『織斑&名護のホストクラブ』『織斑&名護のポッキーゲーム』、『織斑&名護のツイスターゲーム』…としょうもない内容の意見しか上がっていなかった。
「…却下だっ!!」
「「「「「「えぇ~~~~~!!」」」」」」
大音量の5,1CHかよといわんばかりの立体音響でブーイングが轟く。
「あ、アホかっ!誰が嬉しいんだよこんなのっ!」
「私達は嬉しいわね!断言する!」「そうだそうだー!」
「そうだそうだー!女子を喜ばせる職務を全うせよ!」
職務ってなんだよ。
「織斑一夏と名護蜂也は一組の共有財産だ!」
「他のクラスからも言われてるんだって…『織斑くんと名護くんが居ると売り上げ絶対一位になるじゃん!』ってうちの部の先輩もいってるんよぉ…。」
「助けると思って!」
「メシア気取りで!」
「最上級の神の才能で!」
クロトダーン、ってやかましいわ。何か違うのが混ざってるがそろそろ釘を刺しておいた方が良いかもしれない…後で笑ってるあいつらが怖い…。あ、いやトッテモステキナエガオデスヨー?
此処で俺が挙手を選択した。織斑にとっては”これが蜘蛛の糸か”と地獄に垂れ下がってきた1本の糸だと思うだろう。
正直この悪のりは嫌いじゃないがこの流れを断ち切らないとな。
「はいっ蜂也っ!」
俺があてられるとクラス全員の視線が集まる。生徒だけでなく山田教諭と今日は参加している織斑教諭の視線も集まった。…めちゃくちゃやりづらいけど仕方がないか。
「水を差すようで悪いんだけどさ…俺たちに恋人達いるのわかってるよな…?ほら見てみろよ後にいるこのそうそうたるメンツを」
「「「「「「あ…。」」」」」」
親指を後に向けて刺すとソコには…。
「「「「「…………。(ピキピキ)」」」」」
背後には俺たちのラバーズ…その表情は笑みを浮かべているものの明らかに”怒っている”という表現が似合っておりその様子を見たクラスの女子達は騒ぐ元気が無くなったのか静かになった。
織斑は「助かった…」という表情を浮かべていたが安心するのは未だ早い。
此処は妥協点を探さなくてはならない場面でまたなぁなぁで俺たちが供物にされる未来しか見えないからだ。
しかし、山田教諭が『織斑&名護とのポッキーゲーム』の意見を聞いたときに顔を赤くしていたのを俺は見逃さなかった。
なにやってんすか山田教諭…。ひとまずそれをおいておいて次なる意見…原作で出た「メイド喫茶」の意見をまさかの篠ノ之が出したことで教室の空気が一変。
和風な美少女がそんなことをいうものだから洋風な”メイド”という単語にクラスの女子が反応できずにフリーズしているとソコは友達であるシャルがすかさずフォローした。
「良いんじゃないかな?それならクラス全員の女子も役割が与えられるわけだし蜂也と織斑君には厨房とフロアを担当して貰えば良いわけだし。」
その見事なシャルの援護射撃はクラスの女子にクリーンヒットした。
「名護くんと織斑くんの執事服姿…いいっ!!」
「あ、メイド服はどうする!あたし演劇部衣装係だから予算を貰えれば製縫と仕立てできるけど!」
めちゃくちゃすごくないそれ?
一気に盛り上りを見せるクラス女子一同。意見が纏まりそうなのを見て織斑は一息吐いた。
此処で俺は一応の助け船を出す。
「それなら衣装の伝が俺にもあるから聞いてみるとするよ。執事服もだけど。」
『あーあのときのメイド喫茶ね。マスター。』
そう言うこった。
かくして一年一組の出し物は『メイド&執事喫茶』に確定したのだった。
感想&お気に入り&高評価宜しくお願いします。
山田先生をヒロインに追加…?
-
して欲しい
-
しなくても良い