唐突に新ISが出てきますがその伏線は1巻のゴーレム襲撃編を見ていただければと…。
刀奈に連れられ男子更衣室に放り込まれた俺は用意されていた衣装を見て愕然とした。
「…マジで着んのかよ…。え、あいつってそう言う趣味あんの…?」
丁寧に置かれた衣装を見て絶望的に呟く俺だったがその衣装の下に置かれていた”アレ”を見てしまい溜め息を付くが事前に”役作りだからちゃんと着てね?”と言われたことを思いだし頭を抱えた。
「マジかよ…。」
数分迷った状態で覚悟を決めてその衣装に袖を通した。
が、流石に”アレ”を着用するわけには行かないので《偽装魔法》を使用して”他人からはそう見える”ようにした。
「仕方がない…男を見せますか…まぁこんなん着てる時点で男としてどうかと思うけどなぁ…」
”アレ”を付けるのに抵抗は有るのに”これ”を着るのには抵抗がないのは少しおかしいと思った。
◆ ◆ ◆
「これは…想像以上に………いいっ!」
着替えが終わり更衣室を出ると刀奈が待っており俺の姿を見た瞬間に抱きつかれてしまったがその表情が余りにも危険なものになっていた。
おい、涎でてんぞ。ちょ、掛けんな!
「お姉さん、ちょっと危ない扉開いちゃいそう…!」
「着るんじゃなかった…!」
「あん♪そんなこと言わないで。とっても似合ってるわよ。下手な女子より可愛いわよ?」
「嬉しくないんですけど。あと男だからな?」
「あれ?声も変わって…おっぱいがあるわ!」
でかい声で言うなよ。
「まぁ…そいつは魔法でな。」
ちなみに下の大事なウェポンはそのままな?
「なるほど…彼氏くんが可愛くなっちゃったわ♪」
恋人の性癖が開拓されてしまった事に少し後悔しながら舞台袖…第四ステージに移動しチラリと見るとかなり豪勢であり客席も満席であり時折歓声が聞こえる。
「さて、そろそろ始まるわよ。あ、あとこれも着けてね?」
「王冠?なんで?」
「まま、ちょっとした余興よ。」
「あのさ…台本とか話の流れとか聞いてないんだけど…(まぁ知ってるけどな…なんで俺に王冠?)」
「大丈夫よ。基本的にはこちらからアナウンスするからその通りに進めてくれればいいわ。あ、勿論台詞はアドリブでお願いね。」
「…わかったよ。あ、ちょっと待て。」
「なに?どうしたの?」
「なんで俺がこれを着なくちゃならないんだ?」
「え?似合うと思ったからよ。」
嘘だな。それならこいつを着る必要はないはずだ。
そんな思いを乗せた視線を向けると刀奈は観念したように俺に抱きつき耳元で囁いた。
「いっつもエッチの時に先にイカされて悔しいからそのお返し。」
ほぅ?じゃあ今度の時は容赦しないからなお前?
「ふふっ…さぁ、幕開けよ!」
そういって刀奈は舞台袖から奥に消えていった。
直後にブザーが鳴り響き照明が落ちる。
するするとステージの幕が上がり照明が点灯するとステージ上のセットが露になる。
そこで刀奈のナレーションが入った。
「むかしむかしあるところにシンデレラという少女がおりました。」
此処までは普通の出だしなんだよな…。
そんなことを考えながらステージの方を見ると王子様スタイルの織斑が一番目立つセット…舞踏会の場所にたっている。
此処からとんちきな設定に変わるんだよなぁ…。
「否、それは最早名前ではない。幾多の舞闘会を勝ち抜け群がる敵兵を薙ぎ倒し、灰塵を纏うことさえ厭わない地上最強の兵士達。彼女を呼ぶに相応しい称号…それが
なんだその地上最強の男みたいなテンションは。
「今宵もまた血に飢えたシンデレラ達の夜が始まる!王子には婚約している姫がいるにも関わらず敵国の将軍、それも女と偽り男の姿で恋に落ちてしまう!その事を知ってしまった王子は突き放すどころか逆に駆け落ちをする覚悟を決めて国を捨てる準備を進める…王冠に隠された機密情報をあろう今宵もその機密文章と真実の愛を巡り舞踏会というなの死地で舞い踊る!」
あ?ちょっと待て今”敵国の将軍で男と偽って女”って言ったおい、しかもまさかこの王冠って…。と思っていると織斑が凰に襲いかかられていた。
「もらったぁ!」
「うわぁぁぁぁっ!?」
白地に銀のシンデレラドレスが美しいが持っている獲物が物騒すぎた。
訓練の賜物か織斑は危なげなく回避している。
「寄越しなさいよ!」
「ってちょい!死ぬ、当たったら死ぬ!」
「死なないわよ!刃は潰してあるから!」
それは質量で当たったらヤバイのでは?
とおもっていると織斑は近くにあったテーブルをひっくり返し遮蔽物にして浮かび上がったトレイをキャッチし顔に飛翔していた獲物を弾きそのまま凰に返すと足で蹴り上げた。スカートが翻るがスパッツを着用しており釘付けになっていた。
その勢いのまま凰が織斑へ踵落としを叩き込むが腕をクロスし防御した。
うんうん。順当に強くなっているな生身でも。
と関心をしている場合ではなかった。
(………って…やばっ!?)
織斑と凰が戦闘しているときに戦場を俯瞰するような錯覚を覚え俺は慌てて飛び出すと同時にポータルから日本刀を取り出し駆け出す。
織斑が凰から距離を取ると同時に真隣が撃ち抜かれ立て続けに織斑の王冠を狙って狙撃が迫った。
その狙撃を姿勢を低くして遮蔽物にハリウッドダイブしてやり過ごし直ぐ様駆け出した。
俺はホッと息を付いて織斑のお守りをすべく気配を消して近寄った。
◆ ◆ ◆
(此処なら安全…って訳じゃないわな。)
織斑は狙撃と凰からの攻撃を回避するためにひたすらに逃げていた。
セットの物陰に隠れていたが直ぐ様狙撃がやってきては物陰から追い出されあるものを使って銃撃を防いでいく。
そっちに気を取られれば今度は鈴の体術が襲いかかりそれをいなすのに必死だった。
ハリウッドの映画さながらの殺陣は客席からの拍手が飛んできていた。
「ははっ…どうも…っておわっ!」
(悠長にファンサしとる場合かよ…。)
律儀に返事を返しているとその隙は逃さないとばかりにスナイパーライフルの狙撃が織斑を襲い思わず身を屈めて遮蔽物へ飛び込む。
そして素早く走り出すと開けた場所…セットの置いていないステージへたどり着く。
「げぇっ!?い、行き止まりかよ!?…しまっ!?」
さっきまでの狙撃は一夏を追い込むための攻撃だったらしくまんまと嵌まってしまう織斑。
此処は流石にフォローに入るとしますかね…一応演技した方がいいか?
「伏せろ、織斑!」
織斑の耳には聞いた事の無い俺の加工した女子生徒のハスキーな声が届きその通り伏せるとスナイパーライフルの
銃撃を《次元魔法》のポータルから取り出した日本刀で切り伏せ向こうにする。
「だ、誰!?」
俺の姿を見て…織斑がまぁ驚くの無理はない。
俺の今の格好はというと…。
「あ、あんたさっきアナウンスされてた敵国の将軍って奴か…?」
軍帽を被り肩まで掛かるセミロングに切り揃えられた艶々とした黒髪。
ぱっちりとした瞳で整った顔立ちに紺色の軍服の上からでも分かる程の双丘にパンツスタイルであるがゆえの女性特有の柔らかな曲線を現している。
タイト目だからかより強調されている感じがしている。
「ああ。」
そう俺はなぜか”女装”をさせられているのだ。いや、強いられているんだ!!(迫真)
おっといかん…劇を進めなくては。
「ゴホン……そ、そうだ。貴方と恋におちた敵国の将軍…ライザとでも呼んでくれ。」
「そこは日本風なんだな…助かった……ってうおっ!」
しかし、悠長に話している場合ではなく今もスナイパーライフルからの狙撃を受けている状態で俺は刀を構えて飛んでくる銃弾?を弾き飛ばしていた。
「此処から逃げるぞ王子。貴方の退路は私が切り開きます。」
「お、おうサンキューな!…ライザさん!」
…なんでこいつは俺の手を握ってきたんだろうか…普通逆じゃないか?しかしこうして俺と一夏は一緒に逃げて再び客席があるステージに戻ってきたときには客席から歓声が響く。
そこで刀奈のアナウンスが入った。
『王子はやっとの思いで敵国の将軍、いや将姫と再会することが出来ました…!しかし追われているのは王子だけではありません!その敵国の将姫にも身分と性別を偽って永遠の愛を誓い合った姫がいたのです!』
おい、ちょっと待て…その”姫”って言うのはもしかして…。
はっ…!?
「ライザさんあぶねぇ!」
「はぁ…!?」
その事について考えているところに攻撃を受けてしまいセットに一部が破損してしまう。”銃撃”によってだ。
「はち……ら、ライザは返して貰うよっ!」
その勇ましき叫び声と共に現れたのは同じ白地に銀のあしらいが美しいシンデレラ・ドレスを身に纏うシャルでした。
「ちょ、落ち着いて!」
あれ、口調変になってんな俺…じゃなかった。
シャルが手に持つフランス特殊部隊が持つ
「死んだらどうするんだよ!?」
「死んだらどうするんですか!?」
「大丈夫だよ?当たっても死なない特殊な弾丸を博士に用意して貰ったから!」
なにやってんだあの天才白兎《束》ーぃ!!てかこれ俺の恋人たちもぐるなの?
そんなことをおもっているとシャルは再び銃を構えて発砲する。ええい余りにも手数が多すぎる!
仕方がないと刀に《硬化魔法》と《分身魔法》に質量を付与し刀で弾き返す。
「う、嘘っ!?」
「このまま押し切らせて戴こう!」
俺が抵抗すると思っていなかったのか一瞬の動揺をしていたが素早く対応してきた。
というか俺がこの姿なのは伝えてたのか。織斑には知らせないようにしてるのは何故なのか…?
銃撃を刀で防ぎきるという変態防御方法で防ぎきりあと少しでシャルへ到達する、そのときだった。
「(殺気…!)うおっ!?」
次の瞬間に俺は後ろへ飛び退くと立っていた部分が砕け散る。
「この攻撃は…メリュ子か!?」
「ヒドイよ…ま、…ライザ…僕と誓い合った愛は偽りだったって言うのかい…それなら…。」
西洋剣を両手に装備しこちらに構えるメリュ子。こちらも同じシンデレラ・ドレスを身に纏う。
…しかしに金髪と銀髪と良い本当にシャルとメリュ子は似合うな。
次の言葉で思わず素に戻ってしまったが。
「此処で殺しちゃうしかないよね?」
ハイライトの消えた琥珀色の瞳が此方に向いた。
こえぇぇぇ!!
その瞬間にメリュ子が踏み込み俺へと剣激を叩き込む。
「ちぃっ!」
カキィン、キィン、ガキィン!と本当の剣と刀を使っているような剣激音が響き合い観客席は興奮している、が…。
(ちょっと待て…!マジものの剣じゃねーかよ!メリュ子めこれ演技じゃないな!?)
「あははははっ!…頑張らないと死んじゃうよ?ライザぁぁぁぁ!!」
立て続けに俺の王冠ではなく首を狙ってきてないかこの相棒!?
一旦距離を…と思った矢先に嫌な予感がして力を込めてメリュ子を押し返すと間に置かれてた壺のオブジェが破壊された。
銃撃によるもの…となれば。
「セシリアもかよ…!」
サイレンサーを装備しているのか銃撃とマズルフラッシュの光が見えない。
さらに連射性能の高い
となると織斑を狙ってたのはボーデヴィッヒか?と考えている場合じゃねぇわ。
前にはシャルにメリュ子、そして狙撃手にセシリア。うーんこれは…無理ゲーでは?
「ふふっ、私がいることをお忘れ無く♪」
「うおっ!?」
ライフルの銃撃に気を取られていると背後からの気配と声に気がつかなかった。
その場で屈むと何かが通りすぎる…刃節…蛇腹剣かよ!?
「君の王冠を戴いちゃうわ♪」
目の前には刀奈がこれまたシンデレラ・ドレスを着用し手には蛇腹剣を持っていた。
おいそれはISの装備じゃねぇのか…と思ったが形が違うのでISの装備じゃないようだ。
てかおい。俺の背後にあったオブジェ真っ二つになってるじゃねーかよ。
「大丈夫よ。刃は潰してあるから。技量で割断しただけよ?」
なお悪いわ!
「逃げるぞ!」
「な、なんなんだよこれはぁ!?」
そうして俺達は互いの恋人たちに追いかけ回されるという文字にすると大丈夫か?と心配されそうだが問題ない。
これが今起こっていることなのだから。
◆ ◆ ◆
(((((逃がした…!!!))))
ヒロイン達はそれぞれの武器を構えマガジンを装填しなおしたり狙撃地点を『
((((今回は是が非にでも勝たせて貰う!!!))))
女子組にだけ与えられた秘密の景品。それはー
『名護と織斑、それぞれの王冠をゲットした子には同室同居の権利を与える』と言うものだった。
最初こそキョトンとしていた一同だったが、
『生徒会長権限で可能にするわ。』
という刀奈の言葉を聞いて、一部を除いて全員が奮い立った。
特にシャルロットは『蜂也と一緒にいた部屋に他の女の子が住む』というのが嫌だった。
他の恋人たちは『一緒に住める…!?』と息巻いていた。
参加している刀奈は生徒会長権限で同室にしてもよかったのだが他の恋人から顰蹙を買う恐れがあったのでその強行策は取り止め同じステージで戦うことにした。
全員が全員、装備を整え逃げた二人を追う。
蜂也側の恋人たちは同じことを思っていた。
((蜂也の)蜂也さんの)蜂也くんの)蜂也くんの)マスターの)蜂くんの)女装姿いい…!))))))
と刀奈のせいで全員が新たな扉を開いてしまっていた。
◆ ◆ ◆
そして再び大立回りして追跡を回避し続けると今度は別のところで行き止まりにぶつかってしまった。
どうやら誘導をされていたらしい。
「げぇ!?また行き止まりかよ!?」
「誘われたか。流石だな。」
「感心してる場合かよ!?」
「あ、ヤバイ。」
迫り来る銃弾と斬撃が王冠(命)を貰い受けようと到達した…。
その時だった。
「はち、じゃなかったライザちゃん伏せて!」
「一夏伏せろ!」
突如として前に現れたのはなんだかよく分からない近未来的な杖を装備した束と日本刀でライフル弾を切り裂いた篠ノ之の姿が。
少し赤み掛かった艶のあるロングヘアーの束にいつもの黒々とした艶々しいロングの黒髪をポニテにした篠ノ之が俺達を守るように立ち塞がる。
その姿は皆と同じくドレス姿であった。
しかし、束も篠ノ之もスタイルがいいからかシャル達の外国の子達と比べても遜色無いほどにあっている。
うーんこれだと俺達がヒロインみたいじゃないかこれ?
「ほ、箒!?い、いったいこれは…」
「そんなことよりも此処から逃げるぞ!姉さん!」
「うんうん!わたしの将姫に手を出そうだなんて不届きな連中だなぁ…こうしちゃおう!」
束が手に持つ近未来的な杖を構えると先端が光を収束し始めた。
「おい束!それって大丈夫な奴なんだろうな…!」
「大丈夫!ただのフラッシュバンだから…ちょっと気絶するくらいだよ!」
「っておい。」
「いっくよー!ス○ー○イト○○イカー!!!」
「おい!!?」
俺の脳内にどこぞの白い管理局の悪魔が脳裏に浮かんだがそれすらを掻き消すほどのすさまじい閃光がステージを埋め尽くされた。俺は咄嗟に対閃光魔法を施すと無事だったが
「「「「「きゅ~~………」」」」」
俺達を除く全員が放たれた光で目を回してしまい倒れている。
よくよく見てみるとステージの照明も落ちている…というか停電してないかこれ?
どうも原因は束が使用したこの…”例のロッド”が原因らしい。
…停電、電光掲示板、なんか忘れてる気がする。
「ど、どうなったんだ…?」
一夏が閃光に咄嗟に腕をクロスして防いでいた。まぁあんまり意味はないんだがな。
「全員気絶しちまったよ…束も含めてな。」
「ええ…?」
「それより此処から離れるぞ。一応楯無が言うには俺達が一定時間まで逃げきれれば勝ちらしいし。」
「そ、そうだったのか…。」
伝えてないのかよ…む、アレだけの閃光を喰らったというのに起き上がろうとしてるシャル達。
今のうちに逃げておくか…。
「こっちだ。」
「お、おう。」
俺達はセットの下へ潜り込むとそこには通路があり突き進んでいった。
◆ ◆ ◆
「着いたぞ。」
「はぁ、はぁ、はぁ…いったいどうなってるんだこの劇は…」
「…全くだな。」
俺が織斑を誘導し俺が先ほどまで使用していた更衣室へ到着した。
到着したさいに織斑が「あ、ここ俺が使ってた更衣室…」と言っていたのを聞いて時間差で俺達が使用していたことに気がついた。
「しかし、暗いな…停電かな。」
織斑の言う通り未だに束が使った道具のせいで電源が落ちて非常電源に切り替わっているのか非常灯と一部の投光器が灯っている状態だ。
辺りを見渡していた織斑が俺と視線が合う。ん、なんだ?
「なぁ、あんた一体誰なんだ?同じ学年…でも見たこと無いし。」
ああ、なんだ俺だとやっぱり気付いてないんだな…んじゃここでネタばらししようと考えたその時だった。
「ーーーーーっ。」
俺が次の言葉を発しようとしたときに俺達しかいない更衣室にヒールの音が響き渡った。
思わず身構える俺の前に立つ織斑。なるほどそういうスタンスがモテる秘策か。すごいな。
俺もその音なる方向へ視線を向ける。
「………。」
その女は笑みを顔に張り付けたようにニコニコとしている。
金髪にビジネススーツ姿…間違いない精神干渉解けちまってるなこれ。
しかし…こうしてみると気持ち悪い不自然な笑みだな。
「えーっとあの…。」
織斑がその女へ声を掛けるとその調子のまま懐から”拳銃”を取り出した。
「失礼しました。私こういったものです。この機会に貴方の”白式”を頂戴したく思いまして。」
突拍子の無いことを言われ硬直する織斑。
「は?」
間の抜けた声を出す織斑の様子をみて躊躇い無く引き金を引く女性は相変わらずその笑みを顔に張り付けたままだ。
「織斑っ!」
パァン!と音が鳴りきる前に《加速術式》を発動させ織斑の前に割って入り《障壁魔法》で銃弾を防ぐ。
9mm弾程度ならば俺の障壁を突破させることは出来ない。
連続的に更衣室に金属を弾く音とマズルフラッシュの光が轟く。
拳銃を向けられて引き金を引かれた瞬間という非常事態にようやく気がついたのか織斑がアクションを起こした。
「ライザさんっ!?やめろぉぉぉぉ!!」
緊急呼出でのISスーツごと”白式”を呼び出し刀を振りかぶるが回避されてしまう。
回避したスーツ姿の女の顔は”変わっていた”
口調も顔も。
「あームカつくぜ…テメーらみたいなクソガキと喋ってるとストレスがたまるなぁ…だが待ってたぜ”そいつ”を使うのをよぉ…。」
ようやく笑みを崩した女は蛇を思わせるような切れ目に今度は邪悪、と整った顔立ちを言わんばかりの笑みで歪める。
俺的には美人なのにもったいねぇなぁ…とは思っているがこいつの性根は恐らくドブ川よりも醜い。
「ようやっとこいつの出番だからなぁ!」
「!?」
「……。」
スーツを引き裂いて女の背後から飛び出したのは「爪」だった。
その配色は黄色に黒、紫というあからさまに毒々しく禍々しいカラーリングで刃物のような先端がキラリ、と煌めく。
「くたばりなっ!」
背中から伸びた八つの装甲足…その先端が開くと銃口が現れた。
「くそっ!掴まっててくれライザさん!」
「ちょっと待て…うわっ!!」
反撃しようか、と考えていたところに織斑からのまさかのお姫様だっこをされて共に中に浮かぶ白式は脚部スラスターを全開にして叩きつけ一斉射から逃れる。
「ほう?やるじゃねーか。」
叩きつけた反動で天井に到達する前に制御し織斑は《雪羅》のプラズマクローをコールして素早く斬り付ける。
その瞬間に女のIS装備の装甲脚が数本切り落とされる。
…こいつって切羽詰まると強いのな。まぁ原作だと避けられてたから訓練の賜物なのかは分からないが成長を見せてくれていた。
「何が目的なんだあんたは!」
斬り付けたあとに素早く
「ちぃっ!ガキが生意気なっ…ああん?知らねーのかよ。悪の組織の一人だっつーの!」
いや、織斑には何がなんだか分からんと思うんですがそれは…。
後退しながら移動する白式に装甲脚の銃口が弾丸を発射する。
それを素早く呼び出した『雪片弐型』のもった左手を高速で回転させて丸で盾のように弾き返している。
その戦闘スタイルに驚いたのか流石の女も。
「ちっ、ずいぶんと器用な真似をするじゃねーか…おらぁっ!!」
その攻撃をかわしながら織斑は俺の心配をしてきた。
「大丈夫かライザさん!?」
うーん俺が戦ったほうが早いんだが…意外や意外。織斑はしっかりと基本に則った戦い方をしており既に相手の装備を破壊したり致命傷を受けないようにしているのが原作とは相違していて少し楽しい。
それならば…俺も少し演じるか。か弱い女の子を。
「ああ。大丈夫。それよりも強いんだな織斑は。」
俺が微笑んで褒めると織斑の表情は何故か赤く染まった。
「な、なに言ってんだよ…男が女を守るのは当然だろ?」
なんだろう…。織斑をからかうの面白いな。ならばと発破を掛ける。
「そうか…ならしっかり守ってくれよ?」
「あ、ああっ!」
決意を決めたのか頷く織斑。
遮蔽物からクローモードからライフルモードに切り替え荷電粒子砲を女…蜘蛛女にしておこう。が放たれた荷電粒子砲を危なげなく回避しロッカーが爆散する。
「ようやく出てきやがったかクソガキ!」
「一体何が目的なんだあんたは!」
「だから言ったろ?おめぇのISを奪いに来たんだよ。」
「ふざけんー」
「ふざけてねぇっつうの!ガキが!さっさとこのオータム様に奪われやがれ!」
女…やっぱりオータムだった。
オータムは完全なIS展開状態…アメリカから奪った《アラクネ》を身に纏うと某ライダーの蜘蛛怪人のような見た目になりPICの細やかな操作で織斑の一刀を潜り抜け同時に装甲脚からの射撃を繰り出す。
「くらいなっ!」
八門…ではなく六門の集中砲火。
装甲脚の関節が通常の銃機は考えられないフレキシブルな動きを発揮し左右から迫る。
その攻撃を織斑は俺を抱えたままの状態で真上に飛んだ状態で回避してバク宙を決めて天井に脚を付けて直ぐ様懐へ飛び込み《雪片弐型》の光刃襲いかかる。
しかし、オータムもバカではないのか振りかぶった《雪片弐型》の《バリヤー無効攻撃》が発生していない刀の鍔部分を受けきった。
「くそっ!」
(あー惜しい!)
必死に振りほどこうとする織斑だったがガッチリと押さえられているからかびくともしない。
そうこうしているとオータムは左手に量子格納していたマシンガンを構築して銃口を俺へ向けてきた。
「先にてめーよりこの女を穴空きチーズみたいにしてやるぜ。」
構えたマシンガンが弾丸を吐き出し俺と織斑を襲う。
が、左手の手甲部分からエネルギーシールド『霞衣』を展開し銃撃を無効にする。
「ライザさん!ちょっと手荒になるけど…ごめん!うおぉぉぉぉぉ!!」
「なにっ!?」
白式は俺を抱えたまま前方にスラスターを吹かし後方宙返りを決めて武装を一旦解除し俺を左手から背中へ移動させた。
目が回りそうになったがしっかりと織斑の背中に抱きつくような形になりそのまま左手をクローモードに切り替えと同時に右手に《雪片弐型》を生成、更に
織斑の必殺技になりつつある《零距離雪羅》と《零落白夜》の攻撃により後者が突き出されたオータムの機体の装甲脚を全て切り落とし前者が無防備なった胴体へ零距離での荷電粒子砲が叩き込まれた。
「終い…だぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
薄暗いロッカールームに閃光が満ちる。
次の瞬間に凄まじい音を弾き出した。
「がぁ”っっ!?」
織斑の攻撃をまともに喰らったオータムは吐血しロッカーを巻き込み吹き飛んで壁に激突した。
同時に織斑の《白式》もエネルギーが底を尽き始めているのか《雪片弐型》は普通の日本刀に《雪羅》は光を失って普通のマニュピレーターへ変化している。
「はぁ…はぁ…はぁ…。だ、大丈夫か?ライザさん。怪我は?」
織斑が肩で息をしている。
当然だろう。突如として襲われ相手の対策もないまま少女を守りながらの戦闘…疲れない訳がない。
しかし…本当に勝ってしまうとは…本来なら織斑がオータムに敗北し
「…ああ。ありがとう。とっても強いんだな君は。」
「へ…?あ、ああ。当然だろ。」
率直な感想を述べると一瞬だけ呆けた顔を浮かべたが恥ずかしそうにしている。
お前…中身俺だからな?
俺達はその場から立ち去ろうとした、その時だった。
「があぁぁぁぁっ!?」
突如として身が引き裂かれているかのような絶叫をあげる織斑。
次の瞬間には俺にも衝撃が走る。
「かはっ………!?」
吹き飛ばされる俺はロッカーに叩きつけられる。
頭からぶつかったので普通は死んでいるがオートでの《物質構成魔法》を発動し気絶した振りをしながら織斑の様子を見れるようにロッカーにもたれ込む。
…うーん。少し遊び過ぎたかもしれん。
やっぱりオータムが手にもっているのは
少し気を抜きすぎたかもしれない。…そろそろ手助けしてやるかな。
(あ、やべ。)
ISを起動させようと思ったが今メリュ子が気絶していることに気がついた俺は少し絶望した。
うーん…これ使ったらあとで怒られそうだけど織斑に《魔法》見られるよりましか。
首から下げたストラップネックを煌めかせた。
◆ ◆ ◆
電撃が全身を貫かれる中俺は隣を見る。
「…!?ぐっ…あああああっ!!!」
そこにはオータムに吹き飛ばされ力無く項垂れているライザさんの姿があった。
気絶しているのか本当に力が抜けている状態で倒れ込んでいる。最悪の想定…当たりどころが悪くて死んでいる可能性すらもあったが…想像したくなかった。
守れなかった、それだけで俺の心を暗く重い感情が支配していく。
目の前の女は俺の苦悶に呻く姿に嘲笑を浮かべているのが更に拍車を掛けていた。
(この女だけは……っ!)
動けないはずの激痛の中、俺は拳を握りしめた。その握り締めたその指の隙間から血が流れ出す。
「さて終わりだな…ふははっ…ははははっ!!」
電流が収まり俺に取り付けられていた装置が外れる。
同時に俺は糸から解放された。
(今だーー!!)
俺は力を込めて全力で目の前の女に殴り掛かる。だが。
「あたらねぇよガキ!”ISの無い”お前じゃなぁ!!」
「ぐあっ!?」
逆にカウンターで腹部を殴り飛ばされロッカーへ激突する。
その痛みにやっと気がついた。”白式を装備していない”事に。
「な、何が起こったんだ…おい…白式!」
俺の体には構築済みのISスーツだけが残され白式の装備も装甲も全てがなくなっていた。
「はんっ…お前の”白式”はこっちにあるぜ?」
「なんだと…!?」
オータムが手にしているのは菱形のクリスタル…それはISコアと呼ばれるISの心臓部とも呼ばれるターミナルユニットであり白式は二次移行を果たしているので通常のものは丸形のものなのだが強い輝きをはなっており一目で分かる。
先ほど俺に取り付けられたのはIS操縦者とISを分離させる
ははっ…こんなことを思いながら誰に聞かせることもなく解説している自分に少し笑ってしまった。
睨み付ける顔を踏み潰された…めちゃくちゃ痛いがそれよりも怒りの方で頭が一杯だった。
自分の不甲斐なさでISが奪われてライザさんに怪我をさせてしまった。
「か、えせ…!!」
「あ?」
「返せ!それは…俺のISだ!」
痛みで体はズタボロのはずだが”怒り”が俺の体を突き動かす。
その脚を払い除けISを奪い返すために動き出す。
「だからよぉ…おせぇんだよ!!」
再構築されたISの装甲脚が再び俺をロッカーへ叩きつける。
背中の当たりにぶち当たり一瞬息が詰まった。
何度も、何度も、何度も、吹き飛ばされようが装甲脚のブレードに腕を切り裂かれ血が出ようも諦めずに俺の力の象徴である”白式”を取り戻すために人間の限界値を越えてオータムへ食らいつく。
しかし、ISと人間。
そんなものの実力差などとっくに分かっていた。
それは人間がウ○トラ○○に挑むようなもので無謀だ。ましてやこっちは武器が無い状態だ。
…それでも俺は諦められなかったし許せない。
もしここで動きを止めてしまえば自分の弱さを肯定してしてしまう、そんな気がしているからだ。
「が、ぁっ…ああ…。」
しかし、そんな意思に反して体は行動を拒む。
脳が”動け”と命令しているのに体が動かなくなってしまった。
そして今俺はISの腕に首ごと持ち上げられ宙に浮いている状態だ。締め付けられているので頭に酸素が回っていない状態だ。
意識がボーッとする。
「見上げた根性だなガキ。流石…とでもいうとおもったかぁ?キャハハハッ!!お前の行動は無駄無駄無駄…無駄なんだよぉ!!!」
「クソっ…がぁ…!!ぐぐぁ…!!」
ISの手から逃れるために必死に掴み外そうとするが力が入らないのか只俺の手が震えているだけだ。
「じゃあなガキ。俺様の目的果たしたから…っちそいや連れ帰ってこいって命令だっけか……面倒だからここで殺しておくか。男は”もう一人”居たしな。そいつを連れ帰ればいいだろう。」
「なん…だと…っ!?」
「じゃあな。ガキ。」
背面に蠢く装甲脚のブレードが俺の頭蓋を刺し砕こうと飛来する。
「ぐ、がっ……!」
俺は顔を背ける、という選択をせずにオータムの顔を睨み付けた。
(こんなところで…俺は!!)
俺の命が散る、その時だった。
俺の頭蓋を刺し貫こうとしたブレードが俺の眉間で止まった。
(は…?)
それだけでなくブレードが断ち切られ俺を掴んでいたオータムの腕もろとも断ち切られていた。
次の瞬間に俺は拘束を解除され地面に落とされ鮮血が更衣室とロッカーを汚し絶叫が響いた。
「あああああああっ!?!?…こ、こいつは…何が起こってやがる…くそがぁ!!…てめぇの仕業かガキ!」
俺ではない”誰かを”睨み付けるオータム。
「かはっ…はぁはぁ…!?い、一体…。き、君は…。」
やっと息が据えるようになった俺は呼吸を整えその視線の方向へ向ける。
俺の前に立ちふさがるように立っていたのはライザさんだった。
「ら、ライザさん…?」
その手にはISで使用する大型のバスターソードを部分展開した機会腕1本で握っていた。
恐らくあの一撃でオータムの腕ごと断ち切ったのだろう。凄まじい技量だ。
こっちを一瞥だけして直ぐ様オータムへ振り返った。
「来い。《ディアナ・ノヴァ》」
そう告げるとライザは光に包まれその身をISに包む。
「すげぇ…。」
「なんだ、そのISは…データにねぇぞ、くそったれっ!!」
その見た目はまるでRPGで出てくる人竜の戦姫のような姿で雄々しくもあり美しい。
ライザさんの身姿を相まってそう思えた。
「なにもんだてめぇは!?」
「……。」
腕を切り落とされわめくオータムに反応せずライザさんはなにも告げずに只々、バスターソードの切っ先をオータムへ突き付け突撃した。
山田先生をヒロインに追加…?
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して欲しい
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しなくても良い