「《白式》を返還してもらおうか。」
オータムも間抜けではないのか咄嗟の反応を見せた。
よく片腕がもげている状態で対応したものだと感心した。
「このっ…クソガキがぁぁぁぁぁ!!よくも俺の腕を…!!」
《白式》のコアを仕舞い残った片腕にマシンガンを構築し乱射する。
痛みか怒りのせいか狙いが殆ど付いていない。
わざわざ当たる必要もないため避けながら《ベルディーダ》を振り抜くと手にもったマシンガンを破壊する。
「舐めるなぁ!」
残弾アリのマシンガンを捨て去ると誘爆したのか爆発して仕舞うがオータムは外付け武装のカタールを腰部から引き抜き片腕と装甲脚に器用に持たせ攻撃を繰り返す。
再構築したISのため装甲脚も全て復活して銃口から攻撃が殺到するが致命傷になりそうな攻撃だけを武装で防ぎその他は無視しながら多々対一の戦況を作り出す。
攻撃を全て凌ぎきっている。
「すげぇ…。」
織斑はその戦闘スタイルに目を奪われて放心していた。
「なんなんだぁ…!?なんだてめぇはよぉ!!」
攻撃が凌がれ片腕を切り落とされたせいか先程よりも苛立っているようだ。
「悪党に名乗る名前はない。でもまぁ…このISの名前だけ覚えていけ《ディアナ・ノヴァ》をな。」
ライザ《蜂也》が不敵に微笑む。
そしてそのISはここにいる全員が見たことの無い機体だった。
アーマーは全身を覆うように広く、特に胸部部分は重厚な装甲材によって守られておりまさに西洋騎士の鎧のようだ。
特徴的なのが”翼”だ。
肩部分に対になるように肩部分は紫と黒の翼があり腰部分には白い翼が発生し更に背面の
そして頭部のヘッドギアは竜の頭部をモチーフにしたデフォルメされたクラウンになっているので可愛らしいが総称して言うのならば”竜の戦姫”という感じだろう。
手に持つバスターソードも竜の尻尾のように見えてきた。
「殺す殺す!」
「やれるものならな?」
嵐の実弾射撃がライザに殺到するが背面の翼がクロークモードに変化し全身を覆い本物の羽のように銃弾が着弾す度に舞い散る。
「なんだぁその羽はぁ!?」
「その程度の攻撃じゃこいつは抜けないぞ?」
全面に殺到する射撃を無効にされた。
苛立ち暴言を吐くオータムにライザは冷めた目をぶつけながら攻撃を捌ききる。
「おらぁっ!!」
右手のカタールを投擲し同時に一気に跳躍し距離を詰めるべく近づくオータム。
ライザがその攻撃を弾くと脚でそのバスターソードを弾き飛ばす。
「おお。」
「くらえっ!」
装甲脚を半分ずつ射撃と攻撃に分けて攻撃しオータムの猛攻が始まる。
しかしライザは感心するだけで慌てた様子は見られない。
実際には防戦一方になっているのだが気にしていない様子なのがオータムにとってそれが不気味であった。
「なんなんだ…なんなんだお前ぇ!!」
「さっきから質問ばかりだな。情緒不安定か?」
余裕があるのかオータムを煽っていた。
「その減らず口…っ!いつまで続くかぁ!?殺してやるぞクソガキっ!」
その攻撃を捌いてはいるが全部を捌けているわけではなく銃弾と斬撃がIS本体に届いていた。
「ライザさん!」
「織斑。お前は自分の心配だけしててくれ…それとお前はお前の”望み”を強く願っていろ。…必ず叶う。(まぁその先を知ってるから…とは言えないが。)」
「”望み”を強く願う…?一体なにを…」
「ふん、ガキが!余裕ぶってんじゃねぇ!」
ついに絶壁のガードを崩したオータムが装甲脚でライザを吹き飛ばす。
それと同時に左手に練り込んでいた蜘蛛の糸が放出されライザの自由を奪う。
オータムは肩で息をするほどに疲労していたが…。
「はぁ…はぁ…漸く捕まえたぜ…手こずらせやがって…このガキ…!」
「む、捕まってしまったか。」
「今度こそ………くたばりやがれ!」
装甲脚全てがライザの頭部と心臓部に狙いを定めている。
しかし、ライザは怯えた様子も焦った様子を見せていない。
怒りと痛みで正常な判断が付かなくなっているのか不敵な笑みを浮かべるライザに気がついていない。
「仕留めるときは一撃で。戦いの基本だろ?」
「なにを言ってやがる…恐怖で正常な判断が出来なくなっちまったか?」
「それはこっちの台詞だ…未知のISの装備、よくも調べずに近づけるな?私なら怖くて無理だね。」
「あ?………!?………てめえっ!!そいつをやめ、」
「遅いよ。《フェザーマイン》」カチリ。
武装を持っていない片手を挙げてスイッチを押すような動作を決めるライザ。
不味いと思ったのか直ぐ様それをやめさせようとしたオータムだったが遅かった。
先程銃撃を防ぐために撒き散らされた羽毛…これは自動生成される剥離金属であり一つ一つが”爆弾”であった。
その数”多数”。
ISと操縦者を戦闘不能にするには十分過ぎる数だった。
先程まで散らばっていた羽毛はオータムの付近に集まっており見た目は綺麗だがその実の性能は
次の瞬間にオータムの体は爆発に巻き込まれた。
「ぐっ、がぁっ…!?こ、のクソガ、キ…!!」
「返してもらうぞ?…織斑!決めろ!」
「な、なにっ!?」
爆発に巻き込まれた《アラクネ》は見るも無惨な姿を晒しており全身の装甲は砕け頭部を覆うフルフェイスのバイザーは砕け流血しており装備類の類いはほぼ破壊されていた。
体勢を立て直そうとしたオータムだったがその薄笑いを浮かべていた表情は驚愕に染まっていた。
「来い、白式!」
奪ったはずのコアが既に”織斑一夏の手に戻っていた”のだ。
「(さっきの攻撃で奪われ返されたのかっ!?)…くそっ!?」
「斬るっ!!」
コアを取り戻した一夏。
その結果白式は完全復活を遂げて白式と意識を完全同調した一夏は《雪片弐型》の単一仕様《零落白夜》を最大稼働させ超スピードで接近し振り下ろす。
オータムも残った装甲脚でその斬撃を防ぐ…が防ぎきれずにその一撃は残った装甲脚を切り裂きバリアー無効攻撃により《アラクネ》本体を切り裂く。
「ぐがっ…。」
くぐもった声と斬られた部分より鮮血が吹き出していた。
しかし傷が浅いのかまだ立っているオータムに一夏は脚部のブースターを点火し飛び蹴りをかますとそのあまりの威力に後方へ吹き飛ばされ壁の一部が破損するほどの衝撃が伝わった。
「………。」
衝撃と斬撃で意識を失ったのか《アラクネ》を纏うオータムは気絶して動かない。
ライザと一夏がオータムを拘束しようと近づいたその時だった。
「はん、やれやれ…回収するこっちの身にもなって欲しいものだが…仕方があるまい。」
謎の声が聞こえライザと一夏が反応した。
一夏はその声に戸惑いライザは最悪の事態を想定し声を掛けた。
「!?だ、誰だっ…うわぁっ!?」
「織斑離れろっ!」
次の瞬間にオータムが胸部のISコアユニットごと《アラクネ》より分離させられ数秒後大爆破した。
その余波でロッカーが吹き飛び粉々になったがとっさにライザが一夏に覆い被さった。
粉塵が収まるとライザが一夏に声を掛ける。
ライザのIS装備《フェザーシールド》が
いくらISの絶対防御があろうともあの大爆発であれば無傷ではいられなかったかもしれないと想像した一夏は背筋に嫌なモノを感じた。
しかし、今は別の意味で冷や汗を掻いていた。
「大丈夫か?」
「あ、ああ…助かったよ。ってさっきの女は?」
「逃げられたようだな。…気絶まで持っていったから捕縛しようと考えていたんだが…どうやらもう一人いたようだ。遠隔で装備と装甲だけを破壊してコアと仲間は回収する…一歩間違えばどっちも失うかもしれんのに…よくやるものだ。」
「(本当にかっこいいなこの人…。)あ、あの、ところでそろそろ…。」
「ん?」
言い淀む一夏にライザは首を傾げた。
「そ、そろそろ離れてもらえるとありがたいのですが…。」
一夏を庇ったライザは背中で受けるように覆い被さってきた。
つまりは、その虚乳が一夏の顔に当たっていることになる。
赤面する一夏だったがその実覆い被さっているのはライザ《蜂也》なのでその事を認識したライザは申し訳ない気分になった。
「すまなかったな。当てていて気分の良いものではないだろうに。すぐ退ける。」
「え、ああ、はい、だいじょう、ぶです。」
どきまぎする親友に「中身は男なんですがねぇ…」と苦笑しながら離れ手を差し伸べ立たせた。
「立てるか?」
「ああ。ありがとう…ってそれよりもさっきのオータムって奴を追いかけないと。」
「…そうだな。これだけの騒ぎだ。恐らく気絶してた彼女達も復活して追撃をしているかもしれんが…」
ライザが次の言葉を発しようとしたその時だった。
ドーンっ!!!!
学園の敷地内で爆発音が轟く。
「急いだ方が良さそうだな…。」
「行こうライザさん!」
「って…ちょっと待てって!」
そろそろネタばらしをしようか、というタイミングでライザは一夏に手を引かれ音の発信源へ急いだ。
◆ ◆ ◆
『一体なにが目的でこんな…っ!』
《シンデレラ》劇中で束が放った閃光から復活したシャルロット達。
学内には丁度学園祭が終了したタイミングで一般客はおらず生徒のみだったのが幸いか。
騒ぎを聞きつけた全員は蜂也達が利用していた更衣室から飛び出してきた飛翔体…つまりは学園内に侵入した所属不明のISと戦闘を繰り広げていた。
シャルロットは《コスモス》の
『人を抱えてるってのに…!』
気絶し俵担ぎされているオータムを抱えながらISで学園の上空を飛翔しながら追撃を仕掛けてくる
(ふむ、こんなものか…オータムも頑張ってくれたが…まぁこの程度か。予想以上に織斑一夏が成長している…ちっ、忌々しい。)
『避けられたっ!?…くっ!簪!』
シャルロットの攻撃を各部のスラスターで回避しながらその隙を狙ったセシリアの狙撃をバレルロールしながら腕部マシンキャノンで牽制し進路上にいるセシリアを抜いていく。
『まかせてっ!』
抜けられたところに簪の《打鉄弐式》が正体不明機をロックオンし《山嵐》を発動しその姿をターゲットモジュールに捉えた。
46発の高性能ミサイルの嵐。
その弾幕は避けられるものではない”はず”だった。
『嘘っ…!?』
突如として正体不明機はスラスターの推力を落とし近くにあったアリーナの地面スレスレまで降下しミサイルを誘導した。
次の瞬間に所属不明機はスラスターを再点火して一気に上昇し《打鉄弐式》の《山嵐》は全てアリーナの地面へ着弾し全て無力化された。
『簪ちゃん!…全くあなたは一体どこの悪い子かしら!』
抜けられた穴を刀奈がフォローするように《ミステリアス・レイディ》の
刃節をはずし挙動が予測できない状態でありながら致命傷がありそうな襲いかかる刃節だけを腕部マシンキャノンで丁寧に落としていく。
『嘘でしょ!?くっ…抜けられたっ!?メリュちゃん!!』
刀奈を抜けてIS学園の防空網から脱出までもう少しのところで黒い影が舞い降りる。
『ここから先は行かせないよ?…少しむしゃくしゃしてるんだ…鬱憤を晴らさせて貰おうかなっ!』
蜂也がいないためにメリュジーヌが《
「……。」
その正体不明機…少女が駆るISの口元だけが空いて顔全部を覆った下でほくそ笑んだ。
少女の駆る機体…それは一夏の専用機《白式・雪羅》…がそれよりも鋭く刺々しい攻撃的なその機体を漆黒のメインカラーと機体に走る分割ラインが人間の血管のように禍々しく脈打ち胎動している。
「…。」
『なにっ!?』
完全に包囲した正体不明機に射撃を…と思ったメリュジーヌだったがそれは目の前の敵の突拍子の無い行動によって判断が鈍ってしまう。
『味方を放り投げたっ!?…くぅっ!!?』
そう俵抱えしていたオータムを事もあろうか上空へ投げ捨て《白式》には搭載されていない《プラズマソード》を腰部のウェポンベイから取り出し前方へ回転させながら投擲した。
その次の瞬間に左手のマニュピレータを《雪羅》の射撃モードへ変更し荷電粒子砲を回転しているプラズマソードの刃部分へ当てると拡散し取り囲んでいた《ドラグーン》が全て破壊されてしまった。
『そんな馬鹿なっ!…はっ…しまった!』
予想だにしない攻撃をくらいながらもとっさに反応を見せたメリュジーヌであったが正体不明機はその隙を突き上空へ放り投げたオータムを器用にキャッチすると同時にウイングスラスターを点火し
嵐のように登場し去っていった正体不明機が去った方向を見つめる
取り逃がしてしまった悔しさも当然あったがいずれ起こるであろう嵐の予感を感じられずにはいられなかった。
◆ ◆ ◆
俺たちが現場に到着したときには既にオータムを連れ去った別動隊は既にIS学園の防空網を抜けていた。
まさかシャルロット達が出し抜かれるとは思わなかったが…それほどの強敵だったらしい。
あとで戦闘ログを見せて貰って俺は愕然とした…正体不明の少女が乗っていた機体がよくよく見なければわからないだろうが織斑の《白式》の二次移行…『雪羅』だったから。
最大望遠で見ているがその素性は一切の不明…性別は女性であり背格好はマドカよりもでかい。
背格好は篠ノ之と同じくらいだろうが顔は口元を除いて覆われているのでわからない。
奴が乗っていた機体は正しく《黒式》と呼んだ方が良いかもしれない。
一先ずは織斑のISが奪われなかったことと彼女達が怪我をしなかったことに安堵するしかないのだが。
そして、やっぱりだが案の定メリュ子に怒られました。
まぁそうなるだろうなと思ったがまさか泣かれるとは思わなかった…この埋め合わせはしっかりするとしよう。
ちなみに俺《ライザ》が乗ったIS《ディアナ・ノヴァ》は緊急時だけなら搭乗しても良い、と許可を貰ったので本当に非常事態の時に使おう。…でないとメリュ子に殺されるからな。
一方で一夏は俺がメリュ子に「マスター、マスター」と呼ばれていることに不思議で不可解な表情を浮かべていてその様子にシャル達は苦笑し篠ノ之達は呆れていた。
ネタばらし、と言わんばかりに俺は変装を解除《IS機能の一部と説明し》して姿を出すと織斑は頭を抱えていた。
まぁお前に当たっていたおっぱいも全部偽だったと言うわけだ。
赤面までしてな?
ネタバレもすんだ所で結局劇の報酬である王冠は俺たちが持っていることになったのでその結果はご破算。
全員が「そんなぁ~!」となっていたが仕方がない諦めてくれ。
別にお前達は好きなときに俺の部屋に来て寛いでいるじゃないか、とツッコミを入れたかったがそれをすると全員から鋭い視線で見られるのは確定なので余計なことは言わないようにした。
口は災いの元ってね。
しかしそれではあまりにも彼女達が可愛そうなので頭に付けていた王冠を器用にISの装備を使って六等分し渡し労いの意味を込めてこう告げた。
「俺にして欲しい事をなんでも一回聞いてあげる」という引換券にしたのだ。
そう告げるとシャル達は嬉しそうな顔を浮かべて了承した。
…まぁ、変なお願いは来ないだろうと彼女達の良心に期待することにした。
ちなみにあとで合流した束に泣きながら謝罪された。
恐らくは調子に乗って学園の電気を使い魔法を開場してしまったことだろう。
「気にしなくて良いよ。楽しかったか?」
「でも…わたしのせいで…ぐずっ…えぐっ…うん、楽しかったよ…?」
「束が楽しかったらそれで良いよ。誰も負傷してないからな。でもまぁ…劇でのあれはやり過ぎ、かもな。でも気にするなよ。」
「ごめん…なさい…蜂くん。」
まるで小さな女の子のように謝ってくる束の頭を撫でた。
そんなこんなで学園祭は色々な爪痕を残して終了したのだった。
その直後に織斑が俺の女装について高評価を下していたので俺は悪寒がしたと同時に織斑ラバーズに一斉に突っ込まれていた。
本当にやめろよお前な?
◆ ◆ ◆
後日。学園祭の投票結果が発表された。
案の定一位は生徒会主催の参加型演劇の「シンデレラ」で集会に集まった全校生徒からブーイングが起こるも刀奈が
「劇の参加条件は『生徒会に投票すること』と事前にお伝えしていたわよ?」
と黙らせた。
まぁ確かに民意ではあるが…あくどいな。
生徒会が織斑を獲得したので雑務として登用したことで一部からは反対意見が出たが「織斑の部活への貸し出し」を出来るようにすることを伝えると納得していた。
まぁほとんど許可が通らないと思うがまぁ建前は必要だからな。
こうして肩を落と織斑とその様子を見て俺と刀奈はお互いに顔を見合わせて微笑んだ。
山田先生をヒロインに追加…?
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して欲しい
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しなくても良い