【キャノンボール・ファスト】での事件から数日後…。
俺は
「…ということなのですが如何ですか社長。これならばイギリスに技術貸与を行っても技術的なプライオリティはこちらにあります。」
その内容は大破してしまったイギリスの【ブルーティアーズ】の修復協力への参加並びに技術貸与と試作武装のトライアルの提案を行っていた。
その理由と利点、簡単ではあるが資料を纏めて提出すると社長は肯定的だった。
「ふぅむ…これならば貸与しても問題なさそうだ。」
「ええ。貸与する”光学系統技術”ですが…デュノア社の機体に搭載されている《
表示されている資料には新装備と装甲材の詳細が書かれている。
「いや、其れは労働違反になるからやめて欲しいのだがね…。」
アルベールが苦々しい顔を浮かべているが俺含むアハトの研究員達は真面目だった。
「自分のところの社長令嬢が搭乗する機体のサバイバビリティーの引き上げをしたいんですよ。其れは俺も同じです。シャルロットが撃墜された日には俺は吹っ掛けてきた組織や国家を滅ぼしかねませんので。」
真顔でそう告げると苦笑いを浮かべていた。
「君がいうと本当になりそうで困る…しかし、まさか君がイギリスのオルコット家の当主や日本の更識家の令嬢や篠ノ之博士と恋人関係になるとは思っても見なかったよ…妻は『娘がたくさん出来たわ!』と喜んでいたが…私としては複雑だよ。」
「ええ。…本当にすみません社長。」
「いや、君は其れが許されるほどの能力と実力を持っているし彼女達と娘を養えるぐらいの甲斐性もあるし男気もある。其れに私とマリアが認めた男だ。不安を覚えてはいないよ。」
「…実をいうと身体を張って守ってくれた自分の恋人が大人の思惑で貶められようとしているのが気にくわない、って言うのがありますが。」
「ははっ。君らしいな…良いだろう。デュノア社社長として許可するよ。提携に関してはこちらで進めておく。」
「ありがとう御座います。」
「近々シャルロットと一緒に帰ってきなさい。マリアも会いたがっている。」
「分かりました。報告も予てそちらへお邪魔させていただきます。」
「ああ。待っているよ蜂也。」
「…はい、お義父さん。」
話を進めてアルベールから許可が下りセシリアの機体を開発している会社と”技術貸与”という形でブルーティアーズの修理・修繕強化を行うことになった。
(セシリアには言ってないけど…まぁ良いか。サプライズ、ってことで…。)
そんなことを思いつつセシリアの機体に搭載する装備の図面を引き始めた。
◆ ◆ ◆
イギリスの大使館。
そこにはセシリアが中年男性達に囲まれ先日の戦闘報告についての審問会に出頭していた。
蜂也の予想通り、というべきかその通りセシリアは東京に有るイギリスの大使館に召集され審問会の場に立っている。
セシリアは居心地の悪さと不快感が心情を支配しながら目の前にいる制服組の自分よりも一つ、二つ周りも年上の”おじさま”達から”ご質問”を受けており青筋を浮かべたくなるほどだった。
「…では君は対象を取り逃して本国より貸与された《ブルー・ティアーズ》を修繕不可能なほど破壊してしまったと…ふっ、失態だな。セシリア・オルコット代表候補生。」
嫌みらしく言われ額に青筋が浮かび上がり机に手を叩きつけたくなったがと必死に押さえ込んでいた。
しかし其を言ったところでこの審問会が今すぐに切り上げられるわけでもないことをセシリアは知っていたのでただただ黙って話を聞いており状況としては昨日の件ではなく入学当初の蜂也との試合の事を引っ張り出されねちねちした審問が続いておりあからさまにこの間の戦闘は切っ掛けに過ぎずIS学園に向かう前の事と入学してから程無いことを追求されていた。
それは確実にセシリアガ搭乗するIS、という超兵器が台頭し戦闘機といった嘗ての主力機乗りであった彼らは彼女の才能とISに嫉妬している官僚からの”嫌み”であった。
そんな実戦を知らずに後方で安心な所に引きこもっている”おじさま”達に何を言われようとも気にしないようにしように恋人の姿を脳内で思い浮かべて気を紛らわそうとしていた。
していたのだが…。
官僚達からセクハラじみた言葉が飛んできた。
「しかし、これだけの失態を犯しているのになんのお咎め無しというのはいかがなものかね?」
「確かに…あれには国税が大量に掛けられているからな…奉仕でもしてもらわねば釣り合いがつかないのではないのかな?」
「流石はその立場を身体と見た目で勝ち取った”才女”ですからな。」
「なるほど?フランスのセカンドマンは彼女の”操縦テクニック”で魅了されたと。」
「違いない。」
「「「はははっ」」」
下劣な笑い声が審問会場に響き渡り下心丸出しの視線がセシリアに突き刺さり悪寒を感じていた。
流石のセシリアも目が覚め怒りを隠しきれそうになくなりやってやりますわ!この○○オヤジ共!と危うくFワードが飛び出そうになる寸前だったが思いもしない人物が審問会に乱入したのだった。
「其はオルコット嬢に対して余りにも失礼であり女性に対するモラルが欠如している発言だと、私には感じ取れたのですが?」
どこの世界、どの時代においてもセクシャルハラスメント、という精神的な苦痛を与える行動は見られる。
それはIS〈インフィニット・ストラトス〉の世界においても変わることがなかった。
しかし、往来でこのような発言は明らかな女性軽視で警察のお世話になること間違いなしであるがこの密室、尚且つ彼らの立場が軍内部において高い、というのもあって誰も指摘できないのだ。
しかし、室内での発言を人物は明らかに女性のものでその発言をした官僚に対しては表情には現れていないものの不愉快である、と言葉に感情が乗っているのは同じ女性であるセシリアが感じ取っていた。
いったい誰だ!といった反応を見せる官僚達であったがその姿を確認して血の気が引いていたのが見てとれた。
その聞き覚えの有る声の方向を向くと一人の女性が立っているのに気がつきセシリアは口から音がこぼれ落ちた。
「ガ、ガレス中将?」
セシリアの「若いのに冷静で思慮深い」という評判をぶち壊さずに済んだのはBTシリーズの開発推進者でありイギリス空軍のガレス・
その見た目は若々しく今年で還暦を迎える女傑であり短く切り揃えたウルフカットにアッシュブロンドと白髪が混ざっている。
現役時代は単身で戦闘ヘリに乗り込み戦闘機を数機撃墜する、といったそのおとなしい雰囲気から想像できない腕前を持ち軍内部で付けられた二つ名が《
まさかのその存在が登場したことにより官僚組は借りてきた猫のように大人しくなっていた。
審問会の場に参上し議会進行役の官僚に視線を向け声をかけて開口一番。
「どうして私がこの場に最初から呼ばれなかったのかは別の機会にお伺いすることにしまして…。」
その発言に官僚達の半分が震えているのを見てセシリアは爽快感を覚え隠れている手の部分をガッツポーズに変えた。
震える官僚達に一瞥してセシリアへ振り向いて告げたのはある種のフォローだった。
「今回、オルコット候補生は突如として乱入した敵性機体との戦闘は十分な戦闘を行ったと、そして彼女は本国でも発現段階でありデータ上で使用可能と言われていたBTシステムの【偏向射撃】を成功させました。機体の破損をオルコット候補生への責任と帰するのは妥当ではない、と私は考えます。」
その言葉に室内がざわついていた。
いくら直属の部下であり同性のガレスが隠しもせずにセシリアの味方…擁護するコメントをするのは官僚たちも思いもよらなかったようで驚きの表情を浮かべていた。
それはセシリア本人も同じであったが。
が、やはり飴があるなら当然”鞭”も有るわけで…。
「しかし、我がイギリスの
その指摘にセシリア本人が一番悔しがり拳を握りしめる。
「オルコット嬢も当然ながら雪辱の機会を望んでいることでしょう。そうですね。」
そうガレスに問いかけられ二つ返事で返答した。
「無論ですわ。」
それは当然であり先日の戦闘で誘導兵器で遅れを取ってしまったセシリアにとっても悔しい事実だったからだ。
セシリアの言葉にガレスは少し頷いて壇上にいる一同に目をやって告げた。
その内容とは「機体を最新のセットアップへの支援」、「【ブルー・ティアーズ】への引き続きの専任操縦者としての続行」を示すと官僚達は驚いた。
ガレスは”中将”というお堅い感じでにこたえるのではなく”優しい親族の叔母さん”の顔で微笑を浮かべながらセシリアへ一言付け加えた。
「そして今回破損してしまった《ブルーティアーズ》の修復改修でクラウディア・ペンドラゴン特務少佐がIS学園に現地入りします。」
「え…クラウディアお姉、んんっ!ペンドラゴン少佐が…?」
その言葉に室内のざわつきは消えずに次の言葉は官僚をよりざわつかせセシリアも驚く表情を浮かべていた。
「また、本部長より既に”外部組織”からの技術貸与の許可をいただいております。」
「ガレス中将。それは本当ですか?」
「本当ですよ。」
微笑むガレスのその表情は見た目以上に若く見えた、という。
◆ ◆ ◆
場所は変わってIS学園にある談話室。
「さて、オルコット候補生。なぜ今回貴女が呼び出されたのか理解していますか?」
「はい。」
緊張する面持ちのセシリアの心情を察してか柔らかな表情に変わる。
「そう緊張しないでください…先日の襲撃者対応ご苦労様です。その際に【
微笑み目の前の女性に誉められたセシリアは素直に頭を下げる。
「いえっ、そのような…ですが預けられた《ブルーティアーズ》を修復不可能な迄に壊してしまったことは弁明のしようが御座いませんわ。」
「ええ。確かにイギリス本国からは声が上がっていましたが些細な問題、乗っているパイロットが無事ならば幾らでもデータは採取できます。技術開発班も喜んでいましたよ?其れに貴女が失われることの方が大失態です。だから顔を上げてください”セシリア”」
名字ではなく本名で呼びつけるのは彼女と目の前にいる女性が気安い関係だからだ。
「ふぅ……やはり、敵いませんクラウディアお姉様には…ありがとう御座います。」
顔を上げ年相応の表情を浮かべるセシリア。
目の前の画面に映る女性は金髪碧眼の美女でISイギリス国家代表にして騎士団に叙勲を受けた”騎士”。
伝説の騎士王の血統に連なりイギリスの第三世代の雛形であるBT試作0号機【カリバーン】の操縦者にして【騎士王】の渾名を持つクラウディア・ペンドラゴンである。
「貴女の専用機が壊れてしまったのは手痛いですね。しかし、ちょうど良いタイミングだったかも知れません。」
「そう言えばガレス中将が”外部組織”と協力してわたくしの【ブルーティアーズ】を修復する、と聞いておりましたが一体何処の…。」
素直に首を傾げるセシリア。
「実はフランスのデュノア社…というよりも貴女の恋人であるMr.名護から本国を通じて技術供与と《ブルーティアーズ》の修繕を手伝わせて欲しい、というのがあったのですよ。」
「え?は、蜂也さんが…ですか?」
驚くセシリアにクラウディアは「あれ…?」といった表情を浮かべる。
「あ、あら…?お話を聞いていなかったのですね?彼はサプライズのつもりだったのでしょうか……悪いことをしてしまいましたね。」
クラウディアが少ししょんぼりした反応を見せるとセシリアが慌てて弁明した。
「い、いえお姉様がお気になさられることでは御座いませんわ!…は、蜂也さんは恐らくわたくしがこのようなことに巻き込まれるのを想定していたので…その蜂也さんは少し言葉が足りないと言いますか…。」
あわてふためく弁明するセシリアを見てクラウディアが微笑んだ。
「ふふっ…セシリアは本当にMr.蜂也の事を愛しているのですね。そうですか…では一先ずはそうしておきましょう。……さて、今月度IS学園で専用機持ちのタッグマッチがあるとのことですのでそこまでに間に合わせましょう。日程の調整ですが…。」
「は、はい。(は、蜂也さんがわたくしのために骨を折ってくださるなんて…なんと思われているのでしょう…!)」
脳裏に蜂也が微笑む表情が浮かんで思わず表情が緩みそうになるがクラウディアがその表情を見て生暖かい目を向けているのに気がついたセシリアは直ぐ様真面目な表情に戻ったが気恥ずかしさが勝り顔が赤くなっていた。
こうして大破した【ブルー・ティアーズ】修復に向けて日程調整を進めることになったのだった。
◆ ◆ ◆
秋空の快晴が続く今日、直近であるイベントは専用機持ちのタッグマッチ。
それらに参加するために各国の国家代表候補者は訓練を行ったり機体の整備を行っている。
(成る程な…簪の【打鉄弐式】の完成のイベントが無くなったから今回はセシリアの【ブルーティアーズ】の改修修理がねじ込まれた、と。)
ISの整備室に向かう道すがらそんなことを考えていると目的の場所へ到着するとそこには見慣れた後ろ姿と【ブルー・ティアーズ】の開発陣の人達?が数名ハンガーに掛けられた機体にケーブルを繋いだり資材を搬入しているのが見て取れた。
その姿を確認し俺はセシリアに声を掛けた。
「セシリア。」
「…っ、蜂也さんっ!」
声を掛けると嬉しそうな表情へと変化しこちらに駆け寄ってくる姿は幼い子供のようで可愛らしい。
思わず頭に手を伸ばし髪型が崩れないように撫でてしまった。
「今日は宜しくな。」
「はいっ…でもわたくしの機体の修繕に関わることをどうして教えてくださらなかったのですか?」
「あー、その事なんだけど…」
その表情は少し不満げで頬を少し膨らませている。
説明しようと思ったが隣から誰かが割って入ってきた。
「愛するセシリアのために色々動いていたら事後報告になった、というだけですよね?Mr.名護。」
凛としたその声色にただ者ではないということを感じとりそちらに目を向けると俺は驚いた。
「!?なんで貴女がこちらにいらっしゃるのでしょうか…?ペンドラゴンさん。」
人当たりの良さそうな笑みを浮かべているイギリスの国家代表…なんで貴女がここに?
そんなことを考えていると訳を説明してくれた。
「技術協力をするに当たって協力者、しかしそれでも他国の操縦者です。その為に貴方の監視、の意味合いもあります。」
クラウディアの碧眼がこちらを射貫く。
睨まれている、というわけではないのだが流石は【戦士王】というべきかその視線にも妙な圧がある。
「ははは…お手柔らかにお願いします。」
「一週間でセシリアの機体を使い物にする予定ですのでそのつもりで。」
無茶なオーダーに俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。
◆ ◆ ◆
整備室には足音とキーボードの叩く音と怒号が響き渡る。
「だからぁ!ここはコリオリ偏差を修正コンママイナス2だっていっただるるぉ!?」
「バカ野郎!そんなことしたらメタ運動パラメーターが齟齬を起こして動かなくなるだろうがっ」
「……。」
「主任。ここの【ブルーティアーズ】の運動性チェックなんですが…。」
「ああ、これか……うん。そうだな射撃機体だから駆動系のエネルギー配分率はこのままでいい。新装備との直結制御モジュールとの齟齬がでないようにしてくれ。OSの方は搭乗者と俺の方で調整する。」
「分かりました。」
そう言ってデュノア社の作業着を着用した青年が別部署へ戻っていく。
「装備のコンテナ何処に置いたっけ?」
「ああ。其れならそこに……っておい誰だこんなところに工具を置きっぱなしにした奴は!」
「俺じゃねーぞ!」と声が飛び交い俺が素体になった【ブルー・ティアーズ】の基本フレームに様々なケーブルを接続しキーボードを叩く。
セシリアはISスーツに着替えその新品となった基本フレームを身に纏い少し困惑している。
「か、活気に溢れていますわね…。」
「んあ?…ああ。ごめんなうるさくて。皆他国のISに触れる、って張りきっててさ。」
「い、いえ…とても…熱心な殿方達だと…其れにしてもデュノア社の開発陣は男性が多いのですね」
「意外か?」
「いえ、そう言うわけでないのですが…そのISは女性が関わるものだと、そう思っておりましたので…」
「まぁ、そう思うのも無理ないよな。ISは女性にしか動かせない……って俺がいうのもなんだけどな?」
そう言うとセシリアはクスり、と笑ってくれた。
「今まで通りなら女性の象徴であるISが男に触られるなんて!ってすごい剣幕で言われそうだが本来戦闘機や戦車を整備してたのは男、そのノウハウはISの基本的な操縦系統は従来の戦闘機や重機、戦車に通ずるところがある。」
「其れは…そうですわね。」
「極端な例え話をするとセシリアが車の免許を持っていたとして明日から戦車運転してください、って言われても無理だろ?」
「そ、其れは余りにも極端では…?」
「そもそも一変に操縦系統を従来のもの意外に変更すれば整備するマニュアルが変更され其れを熟知する人が必要になるんだよ。数年でISが飛躍的に流布したのはそう言うことだからな。先達の知恵、ってよく言ったものだ…違うかもしれん。」
「なるほど…。」
頷くセシリアに俺は苦笑いを浮かべた。
「まぁ…デュノア社でも彼らは爪弾き者…尖った思想とか発想をするものだから会社の主流派からは外されてたんだけどな。」
「だ、大丈夫なんですの…?」
「大丈夫。そのために俺がいるし彼らの実力は他の企業にも勝るとも劣らない技術屋集団だよ…時たまぶっとんだ武装を開発して社長と俺から怒られてるけど。まぁでも腕は俺が保証するよ。心配しなくていい。」
「蜂也さんがそう仰るのなら…そうですね。」
俺の視線の先には普段通り言い合いをしながらも的確に作業を行っている作業員の姿がいる。
つられてセシリアも見て俺の言葉に納得して自分のすることに集中をしているようだった。
その日は調整にだけ留まり1日を終えた。
◆ ◆ ◆
連日の調整祭り…機体に手を加えて四日目辺りで形になってきた。
整備室に置かれたコンテナは数を減らして機体のメインフレームに装甲材が次々と取り付けられていき細々とした体躯が肉付けされていく。
「Mr.名護。この装備は?」
クラウディアが声を掛ける。
「これは俺が二次移行した時に発現した【
「蜂也さんがBT端末への適合率が80%を越えてるのは少し…というかショックでしたわ。」
「俺の場合は機体が補助してくれてるからな…セシリアほど自在に動かせないよ。」
「ふむ…Mr.名護。今からでもイギリスに国籍移動しませんか?高待遇で迎え入れますが…」
「お、お姉さま?」
「いやいや…俺はフランス国籍なので遠慮しときますよ。其れにセシリアとは恋人同士なので何かあれば手伝いますけど。」
唐突なクラウディアからの提案に困惑するセシリア。
俺はやんわりと断る。
「冗談ですよ。世界に二人しかいない男性のIS操縦者とこうしてお話出来ること事態他国より優位性がありますから。」
あれ、冗談だったのか…目がマジだったと思うんだけど。
そんな会話をしながら【ブルー・ティアーズ】はその機体を形作っていく。
◆ ◆ ◆
そして最終日。
「セシリア大丈夫か?」
『ええ。大丈夫ですわ。』
全ての行程が終了し場所は学園の第四アリーナのカタパルトデッキ。
セシリアが組上がった【ブルー・ティアーズ】に搭乗し普段のように立ち上げていく。
『量子触媒反応スタート…パワーフロー正常、全兵装機体とのリンクを確認オールウェポンズフリー、【BTシステム】の起動を確認、脳波リンク通常値を確認…シールドバリア、PIC制御、駆動各所正常、システムオールクリア。』
セシリアの機体が電磁カタパルトによって宙に浮かぶ。
俺は電磁力によって弾き出されるカタパルトの制御と発進を操作し指示を出した。
「射出推力正常、電磁力キャパシタ臨界確認…”BT-01SPECⅡ”発進、どうぞ。」
『セシリア・オルコット、【ブルー・ティアーズ】行きます!』
勢い良く弾き出された【ブルーティアーズ】、もとい生まれ変わった【ブルー・ティアーズSPECⅡ】がアリーナに舞い上がる。
『さぁ…【ブルーティアーズ】…その甦った翼でアナタの実力を魅せてくださいな!』
BTシステムが搭載されたマルチバインダースラスターを吹かして大空へと舞い上がる。
強化されたスラスターは直ぐ様IS学園が指定した高度領空限界区域に達しアラートが響くのを確認したセシリアはスラスターを逆噴射し制動を掛ける。
直ぐ様地上に向けて急降下を行った。
地表すれすれまで降下、そのまま超低空飛行を行い再び大空へ舞い上がる。
『凄い…今までのスラスター出力より格段に上がっていますわ…其れにこの精密さ…!流石です蜂也さん!』
「お気に召したのなら何よりだ…さて、お遊び気分はここまでにして気を引き締めてくれセシリア?ターゲット展開。」
俺は端末を操作しコアの無いになってしまった”セイレーン”を魔法とメリュ子の協力で操作する。
その総数は”二十五機”
「全兵装をグレードイエローで設定。機体レベルをプラクティスレベル最大に変更。さぁ…セシリア、気を抜くとやられるぞ?」
『生まれ変わったセシリアの【ブルーティアーズ】…ヤル気満々みたいだよ。』
待機状態で話しかけるメリュ子はセシリアのISのコア人格の感情を読み取ったらしい。
セシリアを四方を取り囲むイギリスの【セイレーン】達はそれぞれに武装を展開し襲い掛かり無数の弾丸がセシリア目掛け飛び交う。
演習機の機動プログラムは過去に《ヴァルキリー》と呼ばれていた選手達を参考にしているので気を抜けば直ぐにでも《
しかし、今のセシリアにその攻撃は通用しない。
弾幕を掻い潜り手にした狙撃ライフルを”分割した”両手に持ち構える。
「さぁ踊りなさい!このセシリア・オルコットと【ブルーティアーズ】の奏でる
一機目が《ラピッド・スティンガー》でミサイルの雨を降らせるが右手の改修されたレーザー、ビームショートライフルで正確に狙い撃ち誘爆させて間髪入れずに二連射目で撃墜し反対側で狙っていた二機目を左手のライフルで撃ち抜き無力化させる。
味方機がやられた演習機はタイミングを合わせてセシリア目掛け攻撃を行う。
「その程度ではわたくしに傷一つも付けられませんわよ?」
余裕なセシリアを中心として左右上下前後にそれぞれの演習機が移動し攻撃を仕掛けるが両手に持ったライフルが火を吹く。
しかし、其れよりも早く囲んでいた演習機は対面方向同時に撃墜されて計六機が地面に落ちていく。
攻撃を仕掛ける演習機は単独の撃破が不可能だと理解すると武装を変更し対IS用のミサイルランチャーをコールし発射する。
『手荒な歓迎ですこと!』
四十以上のミサイルが飛来し両手に持ったライフルが火を吹き撃ち抜いていくが其れでも多勢に無勢か、狙撃を免れたミサイルがセシリア目掛け殺到するその瞬間に背面のマルチバインダースラスターのロックが解除され飛翔する。
四つから六つに増設されたBit、その改装された”ビーム”の光条が喰らわんとするミサイルの群れを叩き落とす。
次の瞬間にはミサイルは撃墜されて続けざまにBTから発せられた”ビーム”が襲いかかろうとしていた【セイレーン】の頭部と腹部を貫き爆散し【偏向射撃《フレキシブル》】を用いて二機と相対しているセシリアを背後から撃ち抜こうとしていた一機を同じく撃ち抜く。
『いただきましてよ?』
前方から一機がアサルトカノンと物理シールドを装備した演習機が突撃してくるがセシリアは両手に持っていた分割ライフルを合体させ身の丈と同じライフルを構え機体に装備された照準システムが機体をロックオンしトリガーを引く。
先程の分割ライフルより太い光線が対エネルギーコーティングが施されたアンチシールドを貫通し機体と向こうの景色を映し出し爆散した。
残る機体数は”十五機”
『これで…終わらせますわ!』
腰部に追加されたサイドスカートからミサイルBTが飛び立ち既に展開している小型、大型ビット含め合計数は”八”。
八つのビットが照準システムを介してロックオンする。
簪の【打鉄弐式】のように『マルチロックオンシステム』を搭載しているわけでなく簡易的に機体の姿を捉えているだけでありセシリアが大多数の演習機の姿を捉えられるのは空間認識能力が高いからだ。
システムの補助とセシリアの能力が噛み合った。
弾幕を張る演習機の攻撃を避けながらセシリアは周囲にBTを展開し再びライフルを分割、背後からの攻撃を
瞬間。
翳雨のごとき閃光が囲んでいた演習機に突き刺さり爆発する。
セシリアは【キャノンボール・ファスト】の際に使用した【偏向射撃《フレキシブル》】並びに《ティアーズ・フルバースト》を完全に使いこなしていた。
煙が晴れてセシリアは優雅にポーズを取る。
いつぞや見たライフルを横に向かって展開している。
『ふぅ…折角の
アリーナに展開していた”二十五機”の無人演習機は全て撃墜されセシリアがただ一人空中に佇んでいた。
◆ ◆ ◆
「蜂也さんっ!」
「お疲れさまセシリア…ってうぉぉぉっ!?」
試運転で終了しピットに戻ってきたセシリアだったがカタパルトデッキで待っていた俺はISを解除したセシリアに飛び付かれ反射的に受け止めるとその勢いで倒れそうになるが踏み留まった。
セシリアって意外に重、
「うふふ~?何か今不躾なことを考えませんでしたか?」
「イエ、ナンデモナイデスヨ…?セシリアがはしゃいでて可愛いなー…って思っただけだよ。」
思ったことを誤魔化すと自分ではしゃいでいたことを自覚したのか顔を赤くしていたが俺の顔を見て目を閉じて此方に唇を少し突き出しているのはある意味での”合図”でだった。
「ん…」
顔を近づけるとセシリアから進んで唇を奪われた。
潤んだリップオンが奥まったカタパルトデッキに響く。
「…んちゅ…ちゅぱ…蜂也さん、わたくしは貴方のお陰でわたくしの”力”を甦ることが出来ましたわ。」
セシリアはそう言って左耳に付けた蒼と黒のイヤーカフスを俺へ見せつけるように指し示す。
「俺はセシリアの恋人、だからな。そのくらいはするよ。」
「ふふっ…大好きです。」
そう言ってISスーツの姿のまま俺に抱きついてくる。
あれだけの機動を行ったのなら汗を掻いている筈で実際に頬に少し汗の後が見えている。
普段ならば「汗を掻いたので近づかないでくださいまし!」と恥ずかしがるか俺との距離を取るのだが妙に近い。
そして俺を見つめる表情がちょっと色っぽい。
このまま更衣室で…と俺の理性が振り切れそうだったがこの場所にもう一人の観戦者がいたことをセシリアは忘れていた。
「セシリア?淑女がそのようなはしたない行動をするものではありませんよ?いくら貴女とMr.名護が恋人関係であったとしても…」
「はっ…!?クラウディアお姉さまっ!?い、いつから其処にっ…は、はぅ…////」
声を掛けられ顔を真っ赤にして加湿器のように頭から湯気を出すセシリア。
俺は苦笑いを浮かべクラウディアは苦言を呈した。
「全く…貴女と言う子は……さて、そんなセシリアは置いておいて…ご苦労様でしたMr.名護。この度の我が国の精鋭機の改修修理は完全なものになったのは
「そう言って貰えると技術屋としてはありがたいです。」
そう返答すると真面目な表情を浮かべていた。
「セシリアが選んだ少年がいったいどんな人物なのか、と興味がありましたが…流石は彼女に選ばれるだけの事はありますね。まぁ想像していたよりひどい殿方だったら私が…いえ、なんでもありません。」
「ははは…。」
「お、お姉さまっ。」
「冗談です。さて無事にセシリアの機体が修復されましたので私達は本国へ戻ります。恐らくですがイギリスを通じて貴方へ感謝の言葉が届くと思います。其れではセシリア、ここでの学生生活を楽しんでくださいね?」
最後にクラウディアは真面目な表情からフッと柔らかな笑みを浮かべ”大人なお姉さん”と言った表情に変わり踵を返しカタパルトデッキから立ち去った。
◆ ◆ ◆
整備室に戻った俺たちは機体を実体化させ固定ハンガーに引っ掻け完成したブルーティアーズを眺めていた。
「有り難うございます蜂也さん。」
機体に触れるセシリアは此方に振り返り俺を見るがその表情は少し暗い。
何となくを察した俺はセシリアに近づいて二人しかいない整備室にて今度は自分から唇を奪った。
「んんっ…んちゅ…ちゅぱ…ちゅるる…ちゅう…ちゅぱ……ぷはっ…蜂也…さん///」
「…確かにセシリアの”テク”と見た目に魅了されたけど其れだけじゃないよ。セシリアだから好きになったんだよ俺は?」
「ど、どうして…?」
驚いた、といった表情を浮かべるセシリアだったが予想していたことを呼び出し、審問会で”そう言った事”を言われたようで表面的には分かりづらいが本人が気がついていないところダメージを負っていたようだ。
俺がそう告げたらセシリアは少し涙ぐんで胸に飛び込んできたのでしっかりと抱き締め再びキスを交わした。
『ふぅ…困ったご主人様ですわね。私がいると言うのに目の前でキスをするなんて…淑女らしくないですわ。』
「……!?」
「蜂也さん?」
「ああ。いや、なんでもないよ。其れよりセシリアも汗掻いただろうしシャワー浴びないと。俺も俺で資料の纏めがあるから戻らないと。」
「え、ええ。そうですわね…其れでは」
名残惜しそうに俺から離れ更衣室にあるシャワールームへブルーティアーズを回収して向かうセシリア。
(まさかな…。)
俺もその場から離れる。
セシリアとキスしていたときに聞こえた少女の声。
其れは【ブルー・ティアーズ】から聞こえていた…気がした。
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山田先生をヒロインに追加…?
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