最上静香さん、男の娘化してクレシェンドブルーとえっちな展開になってしまう 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
ネタバレ:静香さんのアタマが恐怖や幸福や羞恥や快楽でめちゃくちゃになります
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。
カストラートの去勢は、現代の性転換と違ってトルのタマだけなので、射精はできないけど勃起はできるとかなんとか……ミリオンライブは有償依頼で初めて、クレシェンドブルーの5人とTS(性転換)のSSは人生で初めて書きました。
※ハーメルンを含むマルチ投稿に関連して、他サイトへの転載情報を下記にご案内します。
初出はこちら→https://skeb.jp/@freege_affected/works/13
そのほかpixiv(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=19745716)、くるっぷ(https://crepu.net/user/xay35WDfHLBWk2s)に公開しています。
『飲むと声がよくなる泉、ですか? 前に来たとき、そんな言い伝えを聞いたことありませんが』
『ここは古くからの街で、その手の泉やらなんやらあちこちあるって聞いて……すべてを覚えてるなんて無理よ』
『ナニナニ? そこの水って、女の子が誰も飲んだコトない……え、なんで? ホント? 茜ちゃんたちが初めてになるの? じゃあ行くっきゃないでしょ!』
『……ふつうの水に見えますね』
『何も投げこまれていないぶん、トレヴィより飲む気になれそうね』
『あの、これ、止めといたほうがいいと思うな』
『え? 麗花ちゃん変なものでも食べたの、飲んだの?』
『……匂いも、しないわ。ただの水じゃないかしら』
『よし行こう! なぁに、一口なら水あたりとかしないでしょ!』
『で、でも……』
『……私から行くわ』
『えっ』
『声がよくなる、なんておとぎ話みたいなこと、信じてないでしょうね』
『それは……! え、ええと……撮れ高を考えてのことよ!』
『……まぁ、静香が飲みたいなら』
※
「……あ、ありゃりゃ、こりゃイノセントボディじゃないね……いや、ある意味イノセントかもねっ」
最上静香は、聞き慣れたはずの野々原茜の声が、あり得ないほど必死に聞こえた。あまりのことに驚きながら、なんとか場を和ませようと、せいいっぱいおどけたように聞こえた。初めて、茜のことを年上らしく思った。
それから茜も言葉を失い、沈黙にみしみし押されて無理やり絞りだされたような笑い声をしばらく漏らしていた。そのあいだ、ほかの4人は――静香も含めたクレシェンドブルーの残りのメンバーが――絶句していた。
「……静香。あれが……泉の水が原因なの? この、これ……」
次に口を開けたメンバーは、北沢志保だった。《これ》が静香の体のありさまを指している……と、志保にも志保以外の4人にもあきらかだった。
最上静香は14歳の少女だった。少女であるはずだった。
しかし、いま静香が浴衣をはだけられ下着をはがされ、クレシェンドブルーのメンバーの目にさらされている体つきは、色白でつややかな肌こそアイドルらしかったが――骨ばった肩や腕、目立たなくなったウエストや腰の曲線、縮こまっているペニスなど――線の細い中性的な少年、と見える姿だった。
「私には、原因がわからないの……でも、日本に帰って、その次の朝から……」
「……静香さんって、実は男の子だったんですか? でも……え、前は……それに、声が……」
その次は、箱崎星梨花だった。ヨーロッパの某古都をクレシェンドブルーが仕事で訪れていたとき、星梨花は同地に唯一訪れたことがあったので、現地スタッフの支援を受けつつ案内役を務めていた。けれど同地にあった例の泉を知らず、いまの静香の変化も想像だにしなかったらしかった。
「……あの泉が原因かどうかなんて、わからないじゃないですか。静香のあと、私たちもちょっと飲みましたよ」
「そういえば静香ちゃん、声量が前より強くなって……あの泉の言い伝え、まんざらウソじゃなかったってコト? でも茜ちゃんたちには何も……」
「うん、そうだね。でも、あれが原因だったんだ」
「なんで麗花さんが返事するんですか」
「そ・れ・は……♪」
「ゃ、め……麗花、さっ……ああーっ……!」
北上麗花がするりと手を伸ばして、静香のペニスをむんずとつかんだ。
「んぎゅう!?」
「このおちんちんクンから、私が聞いちゃいましたー!」
「ぁ、あ、離して、やめてぇ……ぅひっあっああぁっ……!」
「えーとね、昔々、あるところに、とっても歌のうまい男の子がいて……」
「それじゃ《話して》だよ麗花ちゃん……」
「……とにかく、静香と麗花さんを止めてください。騒ぐと、旅館の人に迷惑です」
「え。その……しほりん手伝って……手伝ってよぉ、ねぇっ!?」
「私は……その、疲れがたまっているようなので……こんな悪夢を見るなんて……」
志保は黙って大部屋から出た。
クレシェンドブルーが、とある温泉地の近くでライブする機会を得て、プロデューサーが『ついでに温泉で羽根を伸ばして来たら』とゆっくりできる旅館を手配してくれていて、ライブで成功を収めたあと疲れを癒やすべく温泉に浸かって、浴衣に着替えてふかふかの布団を並べて敷いてくつろいで、『家族や友達との旅行ってこういう感じなのかな』としんみりしていた。静香が浴衣を脱がされる前を思いだして、落ち着きを取りもどした。フロント近くの自販機でミネラルウォーターを買って、目立たないところで夜風に当たりながら時間をかけて飲みほして、レストルームの鏡に向かって……私は正気、疲れていて悪夢か幻覚を見ていただけ……と何度も言い聞かせた。
部屋に戻った。
「ぁはあっ……やぁっ、あぁっ……!」
「茜さん……男の子って、ああなるんですか?」
「……さぁ」
「お兄様が」
「あにちゃんにこんなん聞けないよ……」
「あ……し、志保っ……おねがい、たすけ、ぇ……あ、あっあっ……!」
志保が現実と向き合う覚悟を決めさせられるまで、静香は麗花に体のあちこちをもてあそばれるままだった。
「じゃあ志保ちゃんも戻ってくれたし、もう一回説明するね!」
志保は麗花の説明にいやいや耳を傾けた。
その説明によると、静香のこの事態は……『あのね、あの泉にはカストラートさんの幽霊がいたの。カストラートっていうのはボーイソプラノが声変わりする前にタマタマを取られちゃった男の子、っていうか男の人のことだよ。昔そういうのあったんだって。私は女の子だけど話だけでぞくぞくしちゃうよ。で、その幽霊さんは……自分は歌手としてヨーロッパのあちこちの劇場で歌って大人気になったけど、それでも女の子に自分の子どもを産んでほしかったなぁ……って悩んでいたら偶然あの泉のところで死んじゃったんだとさ。それから100年以上も経って、初めて泉にやってきて水を飲んだ女の子である静香ちゃんにとりついちゃったんだって!』……志保は、スマートフォンを取り出してカストラートを検索した。志保にとって未知の、かつ歴史上実在した風習らしかった。これらが自分の妄想だ、と言い聞かせることを諦めた。
「……麗花さんは、どこでそれを知ったんですか」
「だから、このおちんちんクンから、私が聞いちゃったんだってばー!」
「あぅううああっ……!?」
「だよねーぺにぺにちゃん! あ、私はね、前にお仕事で幽霊さんと友達になってから、幽霊さんとちょっと話せるようになったんだ!」
「ぺにぺにちゃん、というのは……」
「静香ちゃんのおちんちんクンの名前。クレシェンドブルーの新メンバーかな?」
志保は静香と麗花から目をそらして、茜と星梨花のほうを向いた。茜はどんよりと濁った目をしていた。星梨花は顔をうつむけていて、濁り具合すらわからなかった。
「……止めないんですか、あれ」
「実は……どうも、止めるわけにいかない事情があるらしい、よ……」
志保は、再び部屋を出て夜風に当たりたくなった。これ以上こんなたちの悪い冗談を聞かされるなら、こんどこそクレシェンドブルーから脱退してやろうかとも考えた。
もう一度、茜と星梨花のほうを向いた。星梨花の目もどんよりしていた。2度も《事情》を聞かされて2人がこうなってしまった、と気づかされた。自分だけ知らんぷりする罪悪感が湧いてきて、縛られるように布団に座りこんだ。
「はい! ぺにぺにちゃん、志保ちゃんにもあいさつして!」
旅館の部屋に5つ横並びにした布団の真ん中で、静香、茜、志保、星梨花の4人がひし形を描くように座った。
「ぅうう、ぅううぅ……っ……れ、麗花、さん……っ……」
麗花は静香の背中にのしかかって、後ろから静香の浴衣の裾をはだけながら、ペニスの根本をツンツンとつついている。
「じゃあ、まず、ぺにぺにちゃんと私の馴れ初めから! はい、どうぞっ」
部屋から言葉が消えてしまう。静香はペニスをつつかれるがまま、荒くなった息を抑えるのに必死なようす。ペニスから何か声が聞こえるわけもなく、残り3人も言葉を失っている。
静香の向かい側に座っていた志保は、静香の座り方に違和感を抱く。正座を崩して両膝を斜めに並べる座り方だったが、腰や太もものシルエットが妙にこじんまりしている。骨盤も少年の形になって太ももの可動域が狭くなり、あぐらでないと座りにくいらしい、と思い当たる。
「……あの、茜ちゃんたちは……その、ぺに……幽霊ちゃんと話せないから、麗花ちゃんが説明してくれると……」
「えー、どーしよっかなー。私が説明しちゃっていいのかなー」
「静香……?」
志保の目には、静香のようすがペニス、足腰以外も異様に見える。
額や頬に髪が張り付くほど汗だくになっている。肌がりんごのように紅潮していて、目がうつろに潤んでいる。顔だけ見ればひどい風邪にも見える。顔から下は、記憶の中の静香より、首筋や肩が筋張って見える。
志保は、クラスメイトの男子が体育祭や部活で肩や首をはだけさせているところを思い起こす。比べると、この静香は肉付きが薄く体毛も生えておらず、しかも胸のふくらみが乳房か胸筋かあやふやなシルエットで、少年と言うには少女寄りな印象。
対して、股間に屹立しているペニス。さっきの――さっきは、弟のおむつを替えたときに見た覚えのある男性器と大差なかった――と違って、麗花の手に支えられていないのに天井を指している。先端がクルミの実か鈴のような形に変わっていて、表面がぬるぬるした体液で光っている。肉の棒と言える形になっている。棒の側面の志保側に、先端から根本に紐か縫い目のようなものが走っている。
志保には確信できなかったが、静香のペニスは勃起して皮が向けている。
「あの……あなたは、最上静香さん、なんですよね……? お兄さんや弟さんとか、そっくりさんとかじゃなくて」
「う……私は、本当に最上静香なの……! 星梨花っ……お願い、信じて……!」
「……何か、聞いてみたらどう? 星梨花と静香しか知らないことを」
「えぇと、それなら……じゃあ……わたしと、静香さんが初めてキスしたのは、いつですか?」
「え゙」
「は?」
「くちびるとくちびるで、ですよっ」
「静香ちゃあ~ん……?」
「ち、ちが……! そんな、わ、わた……! してない、したことないのっ、してないんですっ、本当に、星梨花に……きゃうううっ!?」
ややあって、星梨花が『……どうやら、この人は本当に最上静香さんのようです』とつぶやくまで、静香は麗花にペニスをぎゅうぎゅうとつねられ、ねじられて悶えつづけた。静香のペニスがびくびくと根本から跳ね、先端どころか幹までぬるぬるが広がっていた。紅潮やら汗だくやらの具合がますますひどくなっていた。
「やっぱりさぁ、静香ちゃんが説明してよー」
「はうぅぅっ……う、うぅ、そんな……!」
「静香ちゃんの監督不行届のおかげで、ぺにぺにちゃんがこうなっちゃってるんじゃん!」
「私は……私は……ただ、自分で、どうにか……ああひゃぅうっ!?」
「麗花ちゃん、ちょっとコワいよ……」
「そう! ぺにぺにちゃん、こんなにかわいい顔して、実はコワいんだぞ~!」
麗花の指に先端をぬるぬるこすられ、静香は涙目になりながら何度もうめいている。体が男らしくなったようでも、麗花の体格や体力に押し負けてしまうらしい……だとしても静香があまりに弱々しい、と3人は混乱する。
「ぃ、いいましゅ……言いますから、やぇ、め、ぇ……あぁあぁっ……!」
「言ったら、静香ちゃん絶交されちゃうかもよ。特に志保ちゃん」
「それが生えて体が男の子になってる以上のコトって、あるのかな……」
「……ちょっと、私には、想像が」
「だ、だいじょうぶですよ静香さんっ、わたしは……何があっても静香さんの味方ですからっ」
星梨花が何度か励まして、麗花がペニスいじめを止めて、それからようやく静香がぽつぽつと語りはじめる。
「わ、私……あれから、日本に帰って、こうなっちゃってて……私、どうしたら良いかわからなくて……」
「がんばって隠そうとしてたよねー。でも、みんな怪しんでたよ?」
「……みんなを見てたり、近くで声とか匂いとか視線とか感じると、熱くなって……!」
「すっかり男の子だねー。で?」
「私は……私は……ぅ、う……」
「ほら、しっかり! ぺにぺにちゃんが……女の子とえっちなコトしたいよぅ、子ども作りたいよぅ、ってうるさくなって……それで?」
「……まさか、静香、麗花さん……!」
「ぺにぺにちゃんがうるさいの私にも聞こえてて、それでこっそりお話できるところで静香ちゃんとぺにぺにちゃん呼んでボディランゲージでお話してたら、がばーって押し倒されて、ぱんぱんってれいぷされちゃいましたっ……あ、私が言っちゃった」
志保も茜も、星梨花でさえも、麗花の言葉を一瞬疑う。レイプの意味ぐらい知っている。静香がそんな暴挙に出るなんて……と頭が理解を拒む。それに、いま目の前にいる静香が弱々しすぎる。麗花が静香の浴衣を剥いでからのようすを見ていると、むしろ麗花が静香をレイプしているとも見える。こんな静香がこんな麗花をレイプした、と言われても首を傾げる。
そう疑えたのは一瞬だけ。
「静香ちゃんがムラムラ~ってなっちゃうと、ぺにぺにちゃんの言いなりになっちゃって、茜ちゃんや志保ちゃんや星梨花ちゃんもれいぷしちゃうかもしれないんだよね。そうなっちゃったら悲しいよね? 男の子になっちゃったこともバレちゃうね?」
「そぅ……なの……だ、から、私、は……んひぃっ、お゙っ……!」
「だから、そうなっちゃったとき、3人にぺにぺにちゃんをメッ! てしてもらって、白くてドロドロした精子さんぴゅっぴゅして、れいぷしないで済ませるやり方を覚えてもらう! それを、このお泊まりの日にレクチャーしよーってお話し」
もし静香がレイプしていないとしたら、いままでひた隠しにしてきた肉体変化を麗花にバラされながら、性器をいじられながら、唯唯諾諾と従っている理由はなんだろうか。
3人は静香と麗花から目を反らした。顔を見合わせた。誰の顔にも答えが書かれていなかった。
「麗花さんのおっしゃったこと、本当なんですか」
「さっき、志保ちゃんが外してたとき、茜ちゃんと星梨花ちゃんはもう聞いてる」
「……星梨花」
「ペットのしつけみたいなものなんです、たぶん……」
「ちなみに、志保ちゃんがいないあいだに、静香ちゃん1回ぴゅっぴゅさせられてる。白くてドロドロしたの、あっちのくず入れにティッシュで」
布団を蹴り飛ばして部屋から逃げ出したくなるのを、志保は必死でこらえる。奥歯を噛みしめる。正座で折りたたんだ両膝へ、浴衣の薄布ごしに爪を立てる。どうにか状況がこれ以上ひどくならない方法を必死で考える。
「……旅館のかたに見つかってしまうじゃないですか」
「あ……あはは、茜ちゃんとしたことが……」
いまの志保の思考が回るのはそこまでらしい。
「志保ちゃん。下着ある?」
「汚しちゃったんですか。それなら、売店かコンビニか……とにかく、買ってきますけど」
志保の思考が、むしろ精神が、限界に近い。
部屋から立ち去れそうな名目に飛びついてしまう。布団から立ち上がる。
「そうじゃないよー。志保ちゃんが使ったあとの、まだ洗ってないのがいいー」
「あの、麗花さん?」
「静香ちゃんのお口に詰めこむの。そうすると、ぺにぺにちゃんがぴゅっぴゅする準備ができて、しかも静香ちゃんがうーうーうなっても声がこもってうるさくなくなるんだよー」
立ち上がったせいか、天井灯をひどくまぶしく感じる。蛍光灯でもないのにじりじり耳を引っかくような不快な音も感じる。麗花に押さえつけられた静香から見上げられている、と気づく。かろうじて涙がこぼれていないけれど、もはや泣いているに等しい視線を浴びる。
「ちなみに、さっきは麗花ちゃんのブラを使ったよ……ぴゅっぴゅが、白くてドロドロなのから透明でサラサラになるまでやるんだって……」
「……それが、静香と私たちに必要なら、早く終わらせましょう」
志保は広縁のふすまの陰まで歩いて、履いていた下着を脱いだ。クロッチがうっすら濡れていた。このレクチャーとやらをはかどらせるのに好都合、と自分に言い聞かせた。
※
「静香のこれを触るのも、私がやりますよ」
「志保ちゃん?」
「……最後に背中を押したの、私ですし」
麗花に半ば羽交い締めにされながら、静香は志保がにじり寄ってくる姿を見る。しどけなく浴衣を着崩して、しかも左手には彼女がさっきまで履いていたらしき下着を握っている。あのきっちりしている志保が……自分に生えてしまったペニスに負けず劣らずシュールな光景、と思う。
「背中を押したって、なんの話……?」
「ほら、私が……飲みたいんなら飲めば、って」
「そんな細かいことまで覚えてないわ……それどころじゃなくて」
「……そういうことにしておくわ」
静香は、志保の匂いをかぐと少し落ち着く。そんな自分の感覚に驚く。つむじからうなじにかけて、肌の内側が焼かれるような興奮を覚える。同時に、目鼻のあたりに泣きたくなるほどの安堵感がしみている。あきらかに女とは違う性欲が湧き上がってきて、それを自分だけでなんとかしようと足掻いた挙げ句、性欲を煮詰めて暴走させて麗花をレイプしてしまった……まさか志保が許すはずがないのに、なぜか受け入れてくれている……受け入れてくれているように見える。見えるだけ、と自分の心に予防線を引く。いっそ手ひどく罵ってくれれば、とも思う。
「ん、くっ……!」
「痛い?」
「痛くなんか……敏感には、なってる、けど……」
そんな静香の葛藤が、志保に触れられてたやすく崩れおちる。さっきの麗花に比べると、あまりに優しげで手ぬるくて、静香に自分の反応を実感するほど余裕が出てくる。志保の下着を口に詰めこまれるまでもなく、ペニスに血がじりじりみなぎっていく。志保の指先がそっとなでて、往復して、麗花に無理に射精させられた余韻を塗り替えていく。
「隠そうとしてたの、へたっぴだったと思うわ」
「ねー、挙動不審になってたよねー」
「麗花ちゃんが、静香ちゃんに挙動不審って言う日が来るとは……」
「体の具合が悪いのかって心配しちゃいました。あながち、間違っていなかったようで」
「そんな、星梨花にまで……えぅっ、あ、し、しほっ」
ペニスが震える。志保の手付きが優しいのに、いやらしく反応してしまう。志保が目つきをうっすら緩ませて、おかしそうに軽く鼻を鳴らして笑う。もし私をあざけっているのならもっとそれらしく笑ってくれ、と頼みたくなる。
「確かに、静香のようす、おかしくなってたわね。やけに後ろを歩こうとするし」
「あ、それもしかして、前かがみになっちゃったの見られないように?」
「メイクや衣装合わせのときもこそこそして。メイクさんや青羽さんにどうやって隠すつもりだったの」
「それは私がフォローしてあげたんだよー。だいぶめんどうだったよ?」
竿の根本から先端まで、志保の指先でくるくるとなぞられる。腰が抜けそうになるほど気持ち良い。玉袋がぎゅうと縮こまる。カストラートの亡霊が切り取られてしまった精巣や睾丸が、かえって騒がしく静香を悩ませる。腰や尻や太ももまで触られたように緊張し、弛緩する。その2つのあいだを行ったり来たりさせられているだけで、ウソのように心地よく溶けてしまう。
「あ、ぺにぺにちゃんが、タマタマばっかりずるいって泣いてる!」
「たぶん、ぺ……それ、より……静香ともっと話すべきでしたね、麗花さんは」
「えぇー」
「静香」
「志保……?」
「私のこれ、使うかしら?」
志保が彼女の下着をもう一度勧めてくる。《使うかしら?》とまじめな声と顔付きを、まばたき2回したあとようやく飲みこむ。あまりにおかしくて、静香は自分の立場を忘れて笑いそうになる。危うくかみ殺す。
「必要、ないわ……あなただって、イヤでしょ」
「……これが、ここまで熱く大きくなってるのに?」
「なくても、こうなってしまうの……」
「けっきょく、私で興奮してしまうってことね」
「ねぇ、これ静香ちゃんが自分でいじればよくない……?」
「茜ちゃんのあにちゃんがそうしてるの?」
「いくら麗花ちゃんでも怒るよ!?」
「自分で? ……人肌さびしいとき、自分で自分を抱きしめて、気が紛れますか?」
静香は、そういう問題じゃない、と言いかける。ペニスに血が流れこんで熱くなってセックスしたくなる、というのは志保が言うような――《人肌さびしいとき、自分で自分を抱きしめて》――少女的な感傷から程遠くて、激しくて衝動的で征服欲にまみれていて、それに囚われてしまう自分が恐ろしくて罪深くて、麗花を襲ってしまったあと本当に死にたくなって……静香の舌が震え、言葉がついえる。勃起してしまったペニスと同じぐらい、舌が静香の理性に逆らう。しゃべれないまま涙がこぼれる。本当は私も志保と同じ乙女だったはずなのに。
「……私も、おしゃべりしながら、静香さんのぺにぺにさんをいじってあげたほうがいいと思います」
「星梨花ちゃん、ぺにぺにさんとかぜったい外で言わないでね。プロちゃんたちの首がすっ飛ぶ」
「プロデューサーには相談したんですか」
「で、できないわよ、そんな……」
「くんくん、すぅはぁ……315の咲ちゃんには相談したほうがいいかもね」
「えっ、そんな、私……く、くさい……!?」
「落ち着きなさい、静香。ほら」
背中側から麗花に腕を回され後ろ髪の匂いをかがれ、胸側から志保に寄り添われて耳元でささやかれる。志保の肌が、自分と同じぐらい熱くしっとりと感じる。落ち着くどころではない。心臓がはじけそうなほどドキドキして、しかも拍動に合わせてペニスが震える。このままでは麗花と同じように志保もレイプしてしまう。なのにささやきも指も止めてほしくない。茜と星梨花の視線も感じる……もし自分がまたおかしくなっても、この2人と、あと麗花も自分を止めてくれるだろうか……理性さえ小ずるく甘えはじめる。
「……お父さんにも、お母さんにも言えてないの……このままじゃ、私……っ……!」
「だいじょうぶだから」
「時間が……」
「時間がないどころじゃないわ、あなたの、健康の問題よ」
「あ、ぅ」
またペニスを握られて、こんどは親指で先端をぐりぐりされる。脳が溶けて肺がつぶれて息も忘れそうなほどしびれる。快感と恐怖と安堵が濃厚すぎて自分が何を言っているかもわからなくなる。志保が妙に優しいのだけが引っかかる。私が女の子のときよりあきらかに優しくなってる……それさえ忘れて、このまま志保に身を委ねてしまう。
「は、ひっ……志保……だめ、それ……あう、んっ……!」
「わぁ、静香さん、すごく気持ち良さそうな顔です……」
「むー! 私のときとぜんぜん違うよ!」
「麗花さんは、さっきみたいに、ツンツン、ぎゅうーってやってて……触り方が違っていたんじゃないんですか」
「そうかなぁ」
「きっと、触り方があるんですよ、ワンちゃんみたいに」
「静香ちゃんはペットじゃないからね……?」
麗花や星梨花にとんでもないことを言われているとわかっていたが、反応する気が失せている。志保の優しい手付きと匂いとまなざしと肌に溺れる。ペニスの先を指先でくりくりされる。性能の内側までじりじりとくすぐられている感覚。もう射精してしまう。
「……呪いの話が、本当だとしたら」
「ホントだよー! あ、ぺにぺにちゃんがウソつきかも、って線ならあるけど」
「子供を作るまで、ぜったいに解けないと思う。自分の子どもが、家族が欲しかったのに……っていうのは、そのぐらいのこと」
「それは……!」
志保の少女的な感傷が、再び静香を襲う。《家族が欲しかったのに》って? そんな立派な父親らしい動機ではない……ただペニスが、近くを無警戒でうろつく魅力的なメスに種付け射精したがっているだけ、男がみんなオオカミってきっとこういう……そう言おうとして、一音節にもならずへし折れる。志保の手の中でペニスが跳ねる。もうダメ、がまんできない、体どころか頭までおかしくなっている。
「もし私が妊娠しちゃったら、もう戻ってもらうわけにはいかないよー。静香パパになってもらわないと」
「そういう問題かなぁ……ママ2人だっていいでしょ……それより年齢が」
「じゃあ、このまま大人になったら、私も静香さんのお嫁さんになるかもしれないんですか?」
「そうだよー」
「違うからね!?」
「私なら普通っぽいパパとママがいいなぁ。茜ちゃんも静香ちゃんにれいぷされてみたら? そう思うかもよ」
「そんなわけないでしょ……いや、たぶん、ない、ないハズ……っ……」
「ねーねー、静香ちゃん、男の子になってよー、パパになってよー」
「わ、あ、あ、ゃ、め……! だ、ぇ……!」
「……麗花さん、根に持つんですね」
「静香ちゃんは私の初めてだもん。ぺにぺにちゃんも、いなくなっちゃいやー」
こんなときに、種付け衝動を煽る言葉が前後左右から飛んでくる。この女たち4人ときたら、勃起しきって射精確実のペニスを前にして何を言っているのか。静香に、麗花の処女膣をこじ開けて挿入してしまった記憶が蘇る。あのとき静香も童貞だっただけに、快感も征服感も格別で、思いだすだけで天にも昇る心地がする。自分の体が自分でない不安感さえかき消える。いまもそんな心地だ。
だが、いまの立場は逆。麗花からも志保からも茜からも星梨花からも囚われて、されるがままになっている。もし、自分が欲望に負けて暴走しても、止めてもらえる……? きついままの束縛が、静香の中で甘くなっていく。
「……麗花さんのことは産婦人科に相談するとして」
「静香ちゃんは泌尿器科かな?」
「こんなオカルト扱えるお医者さんいるのかな……」
「だ、ダメです! ほかの人には内緒です!」
「……プロデューサーにも?」
「わたし……静香さんとも、志保さんとも茜さんとも麗花さんとも、クレシェンドブルーを続けたいから……!」
「そう……よかったわね、リーダー」
「い、いいのかしら……ぁ、きゃんっ……!? 志保、あ、あっ……!」
ペニスを握られながら耳元にささやかれる。志保の声は甘く優しく、さっきより心なしか熱っぽく聞こえる。
「静香は、最初からそのつもりだったのでしょう?」
「き、きもひ、ぃ、イク、で、でちゃ、あ、だ、ぇ……!」
「あなたが男の子みたいな体になってしまって……うっかりすると私たちを襲ってしまうかもしれないから、性処理して……って話だったはずよね」
「志保ちゃん正解! ぱちぱちぱち~!」
それは麗花さんが勝手に考えたこと――と抗う気が、ペニス1回しごかれてかき消える。
「……してあげようって、言ってるのよ。わかる?」
「ひっ……ま、まだぁ……もう、や、あ……もう、もうむぃ、むりぃぃいっ、おかじぐ、なっぢゃうからぁ……!」
「志保ちゃんにいじられる前からじゅうぶんおかしいよ」
「静香さん、がんばってください、もうすぐ出ますよ! ……出たほうがいいんですよね?」
「そう励ますと、まるで静香ちゃんが赤ちゃん産むみたいだよ……」
静香は、聞く耳もないはずのペニスに恨み言をぶつける。子どもが欲しかった……? おかげでこっちはいい迷惑、私は《まるで》じゃなく普通に産む側だったの、なのに呪いだかなんだかのせいでこのありさま。
「静香、苦しくない……?」
「っ……っっうぅー……ぅ……!」
志保の指が止まる。どうにかこうにか息を整える。けれどペニスを握られたまま。羽交い締めにされたまま。匂いや肌や吐息が、どんどん熱くなっていくばかり。
「……し、ほ……」
「……ゆっくりでいいわ」
「ご、ごめん、なさ、ぃ……」
静香は、いままで聞いたことのある謝罪の中で、これほど空疎なものはないと思いつつ、それを口にする。謝罪というより……自分ではどうしようもないから、あなたにどうにかしてほしい……という懇願と称すべきだけど、とも思いつつ、言葉を漏らす。こんなときだけ舌がなめらかになる。
「あ、もうすぐだね」
「そうなんですか?」
「私がれいぷされてるときも、ごめんなさいって謝りはじめて、それからすぐにぴゅっぴゅって……」
「それ、たぶん関係ないと思うよ……」
「う、ぅ……ぅうぅ……あ、ぅ……っ……」
志保だけが黙っている。ペニスを握ったまま、静香を見つめたまま。
「……静香」
「し、ほ……っ……」
「ごめんなさいより、聞きたい言葉があるのだけど?」
静香は、志保からていねいに執拗にペニスをいじられつづけ、ついに理性が吹き飛んで叫びだして、けっきょく志保の下着を口に突っこまれた。突っこまれる直前まで何度も何度も『ありがとう』と言わされたり言ったりした。精液ティッシュを処分する際に――『ホントはティッシュってトイレに流しちゃダメなんだけどね』『そんなこと言ってる場合じゃないでしょ……』――あやうくトイレを詰まらせかけるほど射精した。射精が《白くてドロドロなのから透明でサラサラに》なったころには、空が白んでいた。
※
それから静香は、他の4人の協力も得つつ、男になってしまった体を隠しながらアイドル活動を続けている。特にライブパフォーマンスの質でほかを圧倒し、業界内外の評価がうなぎのぼりとなっている。
静香の歌声は――かつてのカストラートのごとく――女性の音域と男性のパワーを併せ持つものとなり、体力も高まってダンスのキレも増し、クレシェンドブルーをリーダーとして引っ張っている。
その事実上の代償として、静香は4人からもてあそばれつづけている。
『グラビアの仕事を断らなきゃいけなくなって……かつてのイノセントボディを惜しむファンの声もあるとか。罪なオ……オンナだねぇモガミーンっ』
野々原茜が『さすがにこんなわけわからんので中出しはまずいでしょ』と主張しているため、まだ静香は麗花を犯した1回だけがセックスの経験となっている。茜、志保、星梨花の処女を奪わずに済んでいる(3人ともゴムありの処女喪失をいやがった。静香はその忌避感を理解できなくなっていたが、理解しているふりをしている)。
『茜さん、いまオトコって言いかけ……きゃうっ!?』
ライブ前の衣装合わせで、茜がスタッフの目を盗んで静香の体をまさぐってくる。毎回のこととわかっているのに、体が反応して、心まで動揺する。茜は歯止めをかけてくれたいっぽう、『モガミーン、つらくなーい? 茜ちゃんが面倒見てあげるよ!』と処理してあげる素振りを示して、いたずらのように気安く静香を辱める。
『えぇ~? こーんなにかわいいのにモガミンったら。茜ちゃんの次にかわいいよっ♪』
『あ、あ、ぅあっ……あ、茜さん、だめ……おっきく、なっちゃう……!』
特に、リボンやフリルの多いいかにも女性らしい衣装や服装のとき、茜は営業スマイルより数段だらしない笑みを浮かべながら静香にじゃれつく。
『おっきくなって……おもらししちゃったら、台無しだね。せっかくかわいい衣装が……♪』
『そ、そう、だから、や、め……あっ……!』
『でも、出しちゃいけないーってがまんしているときが、いちばん気持ちいいんでしょ?』
『違うの、そんな……あゃううっ!? あ……あ、あっ、あ、だ、めぇっ、来るっ……ち、が……あああっ……!』
『あと、モガミンって……ダメ、バレちゃう! ってときだと、特に反応いいよね』
『あ、ひふっ、きゅ、ぅ……っ! それも、ちが……はぅ、ほぁっ、はぁっ……あああっ! わ、わかった、わかったから、止め……!』
『茜ちゃんはエンターテイナーだから、モガミンをいちばん気持ちよくしてあげるんだー』
静香はいつしか、女性らしい衣装を人前で着るというシチュエーションだけで興奮するようになってしまった。茜から凌辱を繰り返されたせい、このままではもっとひどくなる……と思っても、静香は誰にも相談できなかった。
『ぁ、あの……こんなこと、考えちゃいけない、ってわかってるんですけど……』
都内の某図書館で、静香と星梨花がカウンターで本を取り寄せて広げて、広げては返却し、という流れを繰り返している。多忙な芸能・学校生活のあいだをぬって、静香の体を元に戻す手がかりを探すのが、星梨花と静香の習慣になっている。
星梨花はさすがに慎み深く、(静香が頼まない限り)体に触れないでいてくれる。
それでも静香は気を抜けない。
『将来、静香さんのお嫁さんになれたらなぁ、って思うことがあるんです』
『言ったのが星梨花じゃなかったら、たちの悪い冗談だと思って、ぶん殴ってたかも』
星梨花が静香に顔を寄せて、ひっそりとささやいてくる。ほかの図書館利用者に配慮するため、とわかっていても、静香は星梨花の匂いと吐息に反応してしまう。特にツインテールは、少女の甘い匂いをたっぷりためこんでいて静香をくらくらさせる。あんまり強烈なので、静香はペニスが生える前よりも自分の髪も気にするようになっている。
『私、静香さんのこと、尊敬してます』
『……いまでも?』
星梨花の表情は、シリアスなドラマで見せる演技よりも、さらに真剣味を帯びている。それでいて、図書館のテーブルの上で、アルファベットののたくった洋書を、電子辞書と代わる代わるにらんでいた表情よりほんのり柔らかい。静香が呪いをかけられた泉の場所がヨーロッパ某所にあることと、日本語で調べている内容が見つかるとスキャンダルになるおそれがあることから、2人はろくに読めない外国語の文献に四苦八苦しながら当たっている。手がかり探しは足踏みが続いている。
『正直に言うと……前よりも、です』
『……冗談でしょう?』
『本気です』
静香は、星梨花の匂いに引き寄せられながら、声音に気圧される。頭から足先まですべて締めつけられている気がする。ペニスもさらに反応してしまう。
『……レッスンすごくがんばってて、それだけじゃなくて、わたしとか、みんなのことも気にかけてくれて』
言葉が詰まる。星梨花から目を、体をそらしたくなる。
そらさなければならない、そらせない、金縛り。
星梨花の匂いが、静香の理性を塗りつぶすほど甘くて熱い。
『あと……静香さんの声を、ライブで、いちばん近くで聞いていると……』
いま、このとき、憎たらしいこのペニスのせいで、星梨花とセックスして膣内射精したらどれだけ恐ろしく気持ちいいだろうか、と考えてしまう。
『……空の上まで行ける気がするんです。ステージが、まるで雲みたいにふわふわに感じられるんです。空に手が届いたら、なんて、麗花さんの歌みたい。それでいて、力強くて、安心できるんです』
こんな淫らで下劣なことを考えてしまう自分なんて置き去りにして、言葉通り空の上まで飛んでいってくれればいいのに、手どころか吐息が届いてしまうほど近くに、星梨花がいる。
『……私は静香さんとアイドルを続けたいです、ぜったいに。たとえ、このままだったとしても』
『私は……その』
『静香さんのお父様が反対されても、です』
驚愕し、凍りつく。あの星梨花が――シアターの誰もが知るほど実父と関係のよい――星梨花が口にした言葉かどうか疑う。幸か不幸か性欲がかすむ。
『……それは、私の家のことよ』
『お父様やお母様は、ご存じですか?』
『知らない、わ』
『静香さんがいちばんつらくて苦しんでいることで支えてあげられる人、誰なんですか?』
すべて締めつけられて、本当に動けなくなる。
『……差し出がましいことを。ごめんなさい。それに……わたしが静香さんのお嫁さんになったら、アイドルは……』
その日の調査はそこで終わりとなった。
もし星梨花が関係を迫ってきたとしたら、彼女を制止できそうもない……と静香は気づいてしまった。
『星梨花が、そんなことを……』
『……信じてくれるの?』
『星梨花からも話も聞いて考えるわ。それより、驚いてるの』
『そりゃあ、星梨花があんな――』
『――あなたに驚いているのよ、私は』
静香は、志保と会話することが多くなっていた。仕事で一緒に行動しているときはもとより、プライベートであるはずの時間でも通話していた。葛藤はあった。夕方や夜に……志保が弟のめんどうを見ているのを邪魔してはいけない、弟から志保をとっちゃいけない、と自分に言い聞かせて……耐えきれず、その日もスマートフォンで志保の連絡先をタップしてしまった。
『たいした意味じゃないわ。昔、星梨花がお父さんから門限を言い渡されて、夜に練習できなくなったことがあったでしょ』
『あぁ……いきなり懐かしい話ね』
『そのとき、あなた、星梨花の事情を言わなかったわね。それで私、一緒にやってられないって飛び出して……』
『あれは私が悪かったわよ……リーダーとして、事情を説明すべきだった』
志保の話は、クレシェンドブルー結成まもないころの思い出だった。静香は、襲われたかと感じるほど強烈な安堵を覚えた。志保のおかげで、あのころの自分といまの自分が同一人物だと確かめられた。
『いまは、私に事情を話してくれるのね』
『……ま、まぁ』
『しかもあれよりずっと深刻な事情よ。お母さんや陸に聞かれたらどうしよう、って思っちゃった』
星梨花の態度だけでなく、茜の凌辱も相談してしまおうか……と考えて、慌てて抑える。
『……ごめんなさい』
『へぇ?』
『あ、いや、ありが……ごめんなさいでいいでしょ、ここは』
『ふふっ』
現在の静香にとって、心底から安心できる相手は志保だけだった。あの夜、クレシェンドブルーのメンバーの中でもっとも拒絶されそうな相手でありながら、もっとも優しく受け入れてくれたおかげらしかった。
『……やっぱり、ありがとう、志保』
『静香?』
『あなたが話を聞いてくれてなかったら、私、とっくにおかしくなってたと思う』
『いまのあなたがおかしくないわ、とは言ってあげないけど』
『志保ぉーっ!?』
志保からつれなく扱われることさえ、いまの静香にとってありがたかった。たとえ、かつての静香ならそう感じなかったとしても。
『けど、クレシェンドブルーのまとまりがしっかりしてきて、お仕事が安定してきた気がするの。いまのあなたのおかげで』
『そんな、私……迷惑、かけてばっかりで』
『そうね。ぜったいに変だと思われてるわよ私たち。あなたの体のこと無理に隠してるから』
『う、うぅ……』
『でも、それがなかったら、私、クレシェンドブルー続けられてなかった』
『……冗談でしょ?』
『星梨花もあなたに言ったそうじゃない』
『なんのことよ』
『ライブのこと。本当にすごいの、いまのあなた』
『それと、志保が続けられるかどうか関係あるの?』
『すごすぎて、自信なくしちゃいそう。それか、無理に張り合って体を壊すか心を病むか』
『……それで?』
『あなた、おちんちんついてるぐらいおっきな弱みを見せてくれなきゃ、やってられない』
静香は、志保の言葉を素直に受け取れなかった。静香のライブパフォーマンスは、女性のように柔らかく、男性のように力強く、真似ようとして真似できるものではないとの評判だった。かつて圧倒的なパフォーマンスで芸能界を席巻(蹂躙)した怪物・日高舞と比べる声もちらほら聞こえだした。
それだけに、志保からそう聞くと『呪われてあんなものついたから、あなたは私たちと違う化け物でしょう』と、悪い裏読みがちらついた。女の体に戻れたとき、志保がいまのように自分と接してくれるかどうか、もし接してくれなくなるなら……と考えた。裏読みが自己嫌悪にひっくり返された。
『そんなこと思った相手、あなた以外に1人しかいないわ』
『あ、いるのね、ほかにも』
『麗花さんよ。前に、私が体力づくりのランニングでぜぇぜぇ息を切らしてたら、励ましてくれてるつもりなのか、伴走しながら声張って何曲も歌ってて平気な顔してて』
『あの人と同じ枠なの!?』
『……えぇと、まぁ、うん』
『やめて、そうやって言葉を濁されると……冗談じゃないんだってわかっちゃうから』
もし性欲が暴走して志保を押し倒してしまったとき、そんな煮え切らない反応でしか拒絶してもらえなかったら……自重できる自信がなかった。さらに、もし志保を妊娠させてしまったら……《ママ2人だっていいでしょ》と開き直る自信もなかった。
「けっきょく、私が処理してあげるんだねー」
「うれしそうな顔、しないでください……」
「静香ちゃんはうれしくないの? まぁそのまえに、かんぱーい!」
麗花が一人暮らししているマンションの一室で、静香と麗花はかちんと冷たいグラスを合わせる。黄金色のジンジャーエールからわずかに泡が湧きたって消える。
「んくっ、ぐっ……ぷっはぁ! いやー、きょうもがんばっちゃったね~。いい仕事したあとの一杯がしみわたる!」
「お、おつかれさまです」
「静香ちゃんも最高だったよー! ぴゅーん、どーん、どっかーん、みたいに! ちょっと派手すぎだったかもねー」
きょうの静香と麗花は、アイドルデュオ限定のライブバトルイベントに変則編成のクレシェンドブルーとして参戦し、大喝采を浴びて――その副産物として他事務所のアイドルたちのメンタルを蹂躙して――閉幕後、2人で打ち上げすると言って会場を離れていた。乾杯がジンジャーエールである理由は『隣でさわやかサイダー♪ みたいな曲が聞こえてたから』と麗花が選んだためだった。
静香は会場から出る際、その曲を歌っていた2人の顔をたまたま見ていた。サイダーなんてとても飲めないほどどんより曇っていて、他人事のように心配した。麗花が飲み物を選んでいるとき、心配がぶり返して『麗花さん、それサイダーじゃなくてジンジャーエール』と指摘しそびれた。炭酸の味が彼女らの涙のようだった。
対して目の前の麗花は、いつものノースリーブにストレッチぎみなシルエットのパンツで、ほがらかな笑顔を浮かべていた。清涼飲料水のCMから飛び出てきたみたいな……それにしてはちょっとくつろぎすぎている。仕事終わりの一杯、というビールかチューハイのような雰囲気が混じっている。きょう自分たちがかすませてしまったアイドルたちのことに気づかなかったのか、気づいてて忘れたのか。
麗花からは前々からネガティヴな感覚や感情に対して非常に鈍い面がうかがえて、静香はそれを頼もしくも危なっかしくも思っていたが、レイプの一件を経てさらに鈍くなって……自意識過剰かも、と自分に釘を刺す。
「……まぁ、お姉さんが処理してあげるーなんて押しつけがましいことは言わないよ」
「えっ」
「言っちゃってたなら、聞かなかったことにして? ふふっ」
頬をほんのり上気させている麗花は、あきらかに高揚している。それは《いい仕事したあと》の充実感だけだったなら……と考えた思考が、断ち切られる。
「あっ……! 麗花、さんっ」
「静香ちゃん、うれしい?」
「う、ぅ……」
ジンジャーエールが半分残ったコップを一人暮らし用の小さなテーブルに置き去りにする。麗花が静香にしなだれかかってきている。ふっくらとしたシルエットのバストが、むぎゅむぎゅと静香の腕を挟んで弾む。プロフィール上では84センチ。静香がスリーサイズをただの数値とは感じられなくなってからしばらく経っている。柔らかくて熱くて甘い陶酔に、欲情に、罪悪に、ただの数値が塗りかえられてしまっている。
「……うれしくない?」
「うれ、しぃ、です……」
「志保ちゃんのがよかった?」
「妙なこと言わないでください……」
「僕には麗花だけだ、って言ってくれたら、かっこよかったのに」
「そんな、男の子みたいな……っ……!」
静香の抗弁も塗りかえられてしまう。
「んっ……♥」
ぎゅう、と抱きしめられる。静香も、麗花の細い肩に手を回して応じる。自分と大差ないかほんのり大きいと感じていたはずの肩を、細いと感じてしまっている。さわやかなジンジャーエールの匂いを押しのけて、ふんわりと甘い汗がしみてくる。心臓がどくどくと暴れる。麗花とじかに触れ合えなくて口惜しくて地団駄を踏んでいるかのよう。
「……ちゅっ……♥」
くちびるを軽く押しつけあう。ぷるぷると、柔らかく弾む。自分のくちびるも、麗花にそう伝わっていてくれればいいのに、と無性に切ない。
「……シよっか、静香ちゃんっ」
誰にも相談できない、制止できない、自重できない提案だった。
「んむっ、ちゅっ♥ はぁむ……っ♥ じゅるるっ、れぅう、んむっ……ふふ、静香ちゃあんっ」
麗花に主導されて、キスにのめりこむ。静香の舌を出すよううながされ、応じると、たっぷり唾液をまぶされた麗花の舌とくちびるでじゅるじゅると吸われる。味がまだジンジャーエールみたいに甘ったるいうちから、じゅるじゅるがいっぱいに響く。頭の中にウーファーを据えつけられたように、耳の奥から手足の先まで揺さぶられる。舌の裏側や根本をこすられると、うっかり麗花の肩に指先を立ててしまう。
「ドキドキ、シてるね」
「麗花、さんが、キス、シてくれるから……」
「そう?」
「……いじわる、言わないで……」
「キスする前からドキドキだったでしょ」
「あ……そう、です」
麗花に手を握られて、パンツのベルトを緩めさせられる。下着ごしの女性器を押しつけられる。発情した女性の膣口とは、こんなに濡れるものなのか……かつての自分にもあった性器なのに、感嘆してしまう。
「あっ……おちんちん、ぴくってした」
「そ、そぅ、ですか……?」
「さわってなくても、ほら、おっきくなって、服の上からでも……」
対して、いまの自分の男性器があまりにも異なっている。ペニスに血が流れこんでぐいぐいと下着もスカートも歪ませ、睾丸が精子をいま作りはじめたかのようにうずうずする。
「あ、ひゃうっ、あぅ……!」
「ぺにぺにちゃんちょっとおとなしくして! 私、いま静香ちゃんとイチャイチャしてるの!」
麗花がいきなりとげとげしい声をぶつけてきたかと思ったら、ペニスを邪魔者のように叱責している――実際、静香にとってこれ以上無い邪魔者である――このペニスが自分とは別物、と思い出させてくれる。ペニスをいじられるたびに気持ち良くなりすぎて、ここまでシュールな扱いをしてもらって、ようやくこれが異物と再確認できる。
「ぺにぺにちゃんの好きにするとれいぷになっちゃうでしょー。たまにならいいけど、いま私はイチャイチャしたいのっ」
「ご、ごめんなさい……」
「あ、またぴくって……静香ちゃんは、れいぷな気分?」
「そんな、こと、は……」
「ふーん……♥」
異物と再確認したそばから、その区別をめちゃくちゃにされる。
「……初めてのときは、もう、すっごくびっくりして、痛くて……でも、ねぇ、ごめんなさい、ごめんなさいって静香ちゃんの声で聞かされたとき……切なくなって、それからぎゅうーって抱きしめられて……」
「あ、ぅあ……っ……れいか、さ……ぁあっ……!」
蒸しかえされる。匂いや熱や興奮に乗って、麗花との無惨な初体験が押しかけてくる。
「やだやだっ……! 私、初めては好きな人と、普通に付きあってて、どこにでもありそうな部屋とベッドで、てれてれってぎこちない感じで……」
「うぅう、ぅうぅ……」
麗花から聞かされる少女趣味な初体験が、静香の頭を焼いていく。本当の炎と熱であったらとっくに焼け死んで終わっている。けれど、叶わなかった空想が終わらず続く。
「やだよぉ……男の子みたいな体に抑えられて、ジタバタしてもぜったい逃げられなくて、無理やりあそこに、ずぶって……!」
静香はペニスよりも自分の脳や目をえぐりとって捨てたくなる。なんで泣いているのか、泣きたくて泣くべきなのは麗花であって自分ではないはず。そこで呪いのせいにするなど、死ぬほうがましなほどの恥知らず。
麗花のぬるぬるした膣口が、きゅって締まるようすも感じる。手も切り落としたくなる。
「……しゃべってて、私が興奮してきちゃったよ。不思議だね~。あのときは興奮しなかったのに」
麗花に抱きしめなおされる。体もペニスも生きた心地を取り戻す。
「麗花、さん……」
「なぁに♥」
「い、入れたい、です……でも、早い、ですよね……」
「知ってた♥」
麗花から、思い切り体重をかけられる。重みが心地良い。自分のほうが軽かったはずなのに、彼女を支えてあげられる。
「よし、じゃあイチャイチャらしく、ゴム着けてやりましょう!」
「自分で着けられます……」
「やーだよー、私が着けてあげちゃいたいんだもんっ」
たった一言で、麗花に従うしかなくなる。ペニスも、自分の体のすべても、ベッドに寝かせたまま麗花に任せる。すると麗花がどこからかコンドームを取りだして開封し、自身の口にくわえて――数時間前には、観客たちを熱狂や陶酔へ放りこみ、ライバルたちを羨望や絶望へ叩きこんだ口で――ずる、ずる、と静香のペニスにかぶせる。
麗花の中が温かい――喘ぎながら、必死に射精をこらえる――それしかできない。あっさり着け終わって、麗花がにっこり笑っている。
「静香ちゃん。髪、背中に敷いちゃってる」
「あ、はい……」
「結んであげるよ」
「自分で、できますから」
「髪は女の命だもんね~。ロングでストレートだと特にね~」
「そうですね……」
「静香ちゃん、もうちょっと伸ばしてよ。腰下まで。私とおんなじぐらい。部屋に静香ちゃんの長~い髪が落ちてても『これは私の髪です!』って言いはりやすくなるからっ」
「そんな理由なんですか……!?」
麗花に、一呼吸もないあいだにベッドへ押し倒される。自分の体があまりにはかなくて、静香は麗花の吹くシャボン玉に自分を重ねてしまう。
「ねぇ、静香ちゃんっ」
「……麗花、さ、ん……あっ……!」
「だいすきっ♥」
はじけて消える。
「わた、し、も……だいすき、で、す……っ……」
「んもう……入れたげる前に腰抜けちゃいそうだよー♥」
麗花が上になって、騎乗位で挿入。三こすり半も持たず射精する。
「……あはぁ、どろどろで、ねばねば~♥」
男であれば、射精直後は物思いにふけるのが常、と聞いている。静香が麗花とセックスしているときにはありえそうもない現象だった。何度も何度も射精して、透明でサラサラになるまで、へとへとになるまで気持ちよくなる。このままでいいじゃない、と思ってしまう――そう思ってしまう自分が恐ろしくなる――それが静香の物思いかもしれなかった。
「静香ちゃんに辛いことがあるなら、ぜーんぶ、ぴゅっぴゅして、忘れちゃえっ」
「あ、あっ……麗花さん、わ、ら、ひぃ……っ」
「変なところがあっても、むしろ安心できるよ! 気楽に、だいたいでいきましょう〜♪」
もし自分が本来の体に戻れたとして、茜も星梨花も志保も麗花もこのままだったら、と危惧する。あなたたちも元に戻って、と頼めるのか。頼んで拒絶されたり失望されたりしたとき、耐えられるのか。
物思いが三こすり半も持たずかき消される。
「あっ、なか、きちゃ、うっ♪ きもひぃ……さいっこぅ……♥ 静香ちゃん、すき、すきぃっ♥」
「んっ、うっ、あ、あっ……! あぁっ、はぁぁぁぁ……!」
静香の男性器が何度も射精してきれいさっぱり精液を抜かれてからも、2人はしばらくベッドで体を重ね合わせていた。
(おしまい)
ハーメルンではこちらが初投稿です。
ご高覧ありがとうございました。