タンク系魔法少女 ~負けてからが本番!?~ 作:にゃんたるとうふ
夕食を作り終えて火を止めると台所を後にしてお風呂の準備も済ませた彼女は、リビングで陽香の帰りを今か今かと待ちわびていた。
「陽、まだかな・・・んっ、帰ってきたっ」
玄関の鍵を開ける音を耳にした彼女はソファから立ち上がると、小走りでリビングを出て玄関先に駆け付ける。
「ただいまー、って冬ちゃん!?わざわざ玄関で待っててくれたの?ありがとうね、冬ちゃんっ!」
「んっ、カバンを預かるね?・・・あ」
陽香の鞄を受け取った彼女は目的を忘れかけていたことに声を上げ、その声に疑問符を浮かべた陽香は首を傾げて問い掛ける。
「冬ちゃん、なにか気になることでもあった?」
「んっ、こほんっ・・・おかえり、陽。ご飯に、する?お風呂に、する?それとも・・・私?」
言い終えた彼女は気恥ずかしさから胸元で指を絡めながら視線を彷徨わせ、反応のない陽香を不思議に思った彼女は恐る恐る視線を向ける。
「? 陽・・・?」
「べぁっ!?冬ちゃんからお誘いを貰えたことが嬉しすぎて、固まっちゃった・・・けど私が選ぶのは一択、全部だよっ!」
呆然としていた陽香はハッと気を取り直すとすぐに返事をして抱き着き、それを耳にした彼女は顔を綻ばせると頬を朱に染めつつ抱き締め返す。
「んぅ・・・じゃあまずは、約束の・・・んちゅっ♡」
「ちゅっ、ちゅっ・・・ちゅぅ、っぱ・・・っ」
顔を突き出す彼女の頬に手を添えた陽香は唇を奪い、数度口付けを交わして顔を離すと唾液のアーチが二人の間にできる。
「むふふっ、約束のただいまのキスだよ!」
「んっ、陽・・・っ♡もっと、もっとぉ・・・♡」
目尻を下げて潤んだ瞳を向けながら胸元に縋りつく彼女の姿に、陽香は胸を高鳴らせながらも要求に応えそうになる身体をグッと抑えて口を開く。
「キスはまた後でね?先に冬ちゃんの作ってくれたご飯が食べたいなっ!その後で一緒にお風呂に入ろっか?」
「うぅぅっ・・・わかった、けどたくさんチュゥ・・・してね?」
「むふーっ!もちろんっ、冬ちゃんが満足するまでしてあげるね!」
上目遣いのおねだりに興奮した様子で返事をした陽香は、彼女を抱き抱えるとそのままリビングに向けて歩き出す。
幼馴染の作った夕食に舌鼓を打った陽香は、彼女との入浴時間を堪能してからリビングに戻る。
「こうして好きな人とのんびり過ごす時間って、いいものだよねっ♪ねっ、冬ちゃん!」
「んっ・・・」
ソファに腰掛ける陽香の足の間という定位置に座った彼女は問い掛けに同意の頷きを返しながら、身を任せるように体重を預けてもたれかかりながら身体を擦り付ける。
「むふっ・・・もう、冬ちゃん。くすぐったいよぉ、えへへっ♪」
「んっ、ゴメンね・・・?でも陽と居ると嬉しくて、もっと触れ合いたくて・・・」
そう口にしながら陽香の胸元に頬擦りする彼女の姿に、陽香は優しく髪を梳くように頭を撫でて受け止める。
「ちゃんとこのあと寝室でいっぱい触れ合うんだから、そんなに焦らなくてもいいんだよ?」
「んぅ、そうだけどぉ・・・」
自身に触れる陽香の手に頭を押し付けながら、堪え性がないと思われたと考えた彼女は頬を朱に染めて言い淀む。
「陽とは、いつでも触れ合っていたいから・・・わっ」
口にした後で恥ずかしくなったのか身体を縮こまらせて懐に潜り込む姿に陽香は脇の下から腕を通して、彼女を抱き上げるとBGM代わりに流していたテレビを消して一目散に寝室へと向かう。
「? 陽?・・・んむっ♡」
「ちゅっ、ちゅぅ・・・ちゅぷっ、ちゅぱっ・・・」
幼馴染の突然の行動に不思議そうに首を傾げて問い掛ける彼女をベッドに寝かせ、覆い被さるように馬乗りになった陽香は唇を重ね合わせる。
「んぷっ、んはぁ・・・っ♡陽・・・?♡」
唇を奪われた彼女は呆けた様子で半開きの口から声を漏らし、それを耳にした陽香は正気を取り戻して身を起こす。
「はっ!?冬ちゃんが可愛すぎて我慢できなかった!もう少しリビングでゆったりしようと思ってたのにっ・・・!」
「んっ、陽♡もっとキス、してほしいっ♡」
身体を起こして離れようとする陽香の服を掴んだ彼女は、催促しながら唇を尖らせる。
「まぁ、いっか!別に気になるドラマとかは今はないし、なんなら結局こうなってた気もするしね!」
「陽、はやくっ♡・・・んちゅ♡」
頭の中にあった計画をすっぱりと切り捨てた陽香は、彼女の求めに答えて口付けを交わすと身体を密着させて互いに求め合った。
翌日の朝に聖歌からの連絡があったことに気付いた二人は、慌てて返信が遅れたことを謝罪して了解の返事をするのだった。
その日の放課後、部活のない陽香と肩を並べて歩く彼女はショッピングモールに足を運んでいた。
「お泊り会は着替えだけ持っていけばいいみたいだけど、やっぱり菓子折りとか持っていくほうが良いよね?」
「んっ・・・お世話になるから、必要だと思う」
紙袋を持った手とは逆の手で陽香の手の指同士を絡めて恋人繋ぎをした彼女は、手の感触を確かめるように握る力を強めたり弱めたりしていたが、陽香の声に頷きと共に返事をしつつ視線を向ける。
「むふっ・・・とりあえず休みの内はご飯は作らないから、食材は買わなくてもいいけど・・・どうする?外食していく?」
「陽が、そうしたいならいいけど・・・私は陽と、二人でゆっくりしたい」
握った手の力を強めて上目遣いで自身の気持ちを伝える彼女に、胸を高鳴らせた陽香は衝動に任せて空いた片手で彼女を抱き寄せる。
「んぅ・・・陽?」
「私も冬ちゃんとゆっくり過ごしたいから、お家に帰ろっか?今日は惣菜を買ってそれで済ませちゃおう!」
「? 別にご飯なら、私が作るよ?」
「買い物した後だと遅くなっちゃうし、何より冬ちゃんと触れ合う時間が減っちゃうもん!」
自身の疑問に声高々に言い切った陽香にポカンと呆気に取られていた彼女だが、すぐに頬を緩ませると陽香の胸元に頬擦りしながら口を開く。
「それなら、仕方ない・・・けど、一つくらいは作るね?陽には、私の料理を食べてほしいから」
「あっ、じゃあ今日は一緒に作る?それなら冬ちゃんと一緒に過ごせて、冬ちゃんの料理も食べられる・・・一石二鳥だね!」
陽香の言葉にその発想はなかったと目を見開いて驚きの表情を浮かべた彼女は、手を強く握り締めて何度も肯定の頷きを見せる。
「それじゃあ早速食材を買いにっ――――って、あれ?なんだろ?」
抱き締めるのをやめて歩き出そうとした陽香はポケットが震えていることに気付き、スマホを取り出すと自身の母親から着信が来ていることに疑問符を浮かべる。
「もしもし、お母さん?うん、うん?えっ、それ今じゃないとダメ?む〜っ・・・わかった、すぐに戻るね。はーいっ」
「・・・陽?」
電話を終えた幼馴染の様子に不安げに眉を下げながら呼び掛ける彼女に、陽香も不満げに頬を膨らませながら彼女に向き直る。
「ゴメンね、冬ちゃん!お母さんが急な用事で帰ってきて、って言ってたから帰らないと・・・一緒に料理を作るのは、明日になっちゃうかも」
「え・・・そう、なの?」
多少電話の内容が聞こえていた彼女はイヤな予感を感じていたがそれが当たってしまい、ションボリと肩を落として縋り付くような視線を向ける。
「そんなに落ち込まないで、冬ちゃん!今日でケリをつけて、二度と同じことは起こさせないから安心してねっ!」
「んっ、じゃあ・・・明日は、今日の分までキスしてくれたら・・・いい、よ?」
「もちろん!冬ちゃんが満足するまでしてあげるから、楽しみにしておいてね!」
彼女の要望に大きな頷きと共に返事をした陽香は、名残惜しく思いながら彼女の手を離すと大きく手を振ってショッピングモールを後にする。
大好きな幼馴染の姿が見えなくなるまで手を振り返して見送った彼女は、小さくタメ息を漏らすとこれからどうしょうかと考えを巡らせる。
「はぁ・・・(あの様子だと今日は家には来れなさそう、寂しいけど仕方ない・・・今日は外食で済ませて、明日の陽香と料理するための食材を買って帰ろう)」
今後の方針を決めた彼女はその場から歩き出し、買い出しを終わらせるとどのお店で夕食を済ませようかと見て回る。
「何に、しよう・・・あっ、せっかくなら陽の好きなものに・・・っ?」
食事処を吟味していた彼女は、前方に見知った二人が店の前で話し込んでいるのを見つける。
「絵梨と、たしか由良?」
「ふぇ?って、冬華さん?どうしてここにっ、いやそれよりもナイスタイミングです!」
彼女の声を耳にした絵梨は不思議そうな反応を示しながらも、すぐに顔を綻ばせて駆け寄ると彼女の手を握る。
「? なにか、あったの?」
絵梨の突然の行動に首を傾げつつ問い掛けると、瞳を輝かせながら彼女の疑問へと返答する。
「ここに居るということはご飯を食べに来たんですよね、夕食ご一緒してもいいですか!?さすがに由良ちゃんのお願いでも、お店の中は恥ずかしすぎるのでっ!」
抗議を表すように絵梨の袖を引っ張る由良そっちのけで必死に懇願する絵梨の迫力に困惑しながら、陽香のいない寂しさを紛らわすことができると考えた彼女は頷きを返す。
「陽が用事でいなくて、寂しかったから・・・私から、お願いしたいくらいだった」
「本当ですか!?それならすぐに入りましょう!」
好意的な返事を貰えた絵梨は嬉しそうに破顔すると、握ったままの手を引っ張って彼女と由良と一緒に店に足を踏み入れる。
入ったのは一般的な洋食屋さんで、それぞれが好きなものを頼んで待っている間に絵梨から彼女に話しかける。
「冬華さんが陽香さんと一緒にいないなんて珍しいですね、何かあったんですか?」
「四六時中、一緒にいるわけじゃないよ?」
「でも陽香さんの部活がない日は、いつも一緒に帰ってるんですよね?今日は部活がない日だって、前に陽香さんに聞きましたけど?」
「今日は、ショッピングモールには一緒に入ったけど。急な用事で、先に帰っちゃったから・・・っ」
絵梨の質問に答える内に次第に顔を俯かせて落ち込んでいく彼女の様子に、地雷を踏んだことに気付いた絵梨は慌てて声を掛ける。
「そっ、それより陽香さんと結ばれたんですよね!メッセージでも送りましたけど、おめでとうございます!」
「んっ、ありがとう」
絵梨の言葉に彼女は顔を上げて感謝を口にし、微笑みを浮かべて表情が和らいだのを確認した絵梨は安堵の息を吐く。
「二人も、そういう関係・・・なんだよね?」
「え、あっはい!そうですね、水着を買う時に見られっ「っ、っ!」――――ひゃっ!?ゆ、由良ちゃん!?」
確かめるように問い掛ける彼女にしっかりとした肯定の返事をする絵梨に、気を良くした由良は隣に座る絵梨に身体を密着させるとスカートの中に手を滑り込ませる。
「ちょっ、由良ちゃっ・・・!こんなところでシちゃっ、冬華さんも見てるからっ――――ひゃぅっ♡」
入り込んだ手は迷うことなく奥へと突き進んで覆い隠す下着を押し退けて秘部に行き当たり、軽く指でなぞってから割れ目を押し開いて膣内に侵入する。
「んぅっ、ひゃぁ・・・っ♡そこっ、気持ちいぃ・・・♡」
膣内を指で擦られたり爪で引っかかれたりと由良に好きに弄られながらも快感で表情を蕩けさせる絵梨に、見せつけられているように感じた彼女は頬を膨らませながら不服そうな声色で口を開く。
「陽が側に居ない、私への当てつけ?」
「ふぇ?♡・・・ヒェ」
「っ!?」
その声を耳にした絵梨と由良が顔を向けた先には頬を膨らませながら瞬きせずに目を見開く彼女の顔があり、小さな悲鳴を上げた絵梨と驚いた表情を浮かべた由良はすぐに身体を離して佇まいを正す。
「すっ、すみません!冬華さん・・・怒ってます、か?」
「・・・っ」
「? あっ、うぅん。少し羨ましく、思っただけで・・・怒っては、ないよ?」
身体を縮こまらせて恐る恐る問い掛ける絵梨と肩を落とす由良の二人の様子に気付いた彼女は、ハッとして気持ちを切り替えると首を横に振って返事をする。
「ただ陽は、私の身体をそういう目的では・・・触ってくれないな、って思っただけだから」
「それなら自分から誘えばいいんじゃないですか?」
「んっ・・・それはその、恥ずかしいから・・・っ」
首を傾げる絵梨の純粋な疑問に、彼女は頬を朱に染めて恥ずかしそうに視線を逸らして答える。
「大丈夫ですよ、冬華さんならできます!いつも魔の者に媚びるみたいに、自分から股を開けばいいんですよ!」
「あれは私の、特性のせいだからっ・・・それにそんなことして、陽にはしたない娘って思われたくないっ」
陽香なら喜んで飛び込んでくるのでは?と考えながらも頬に手を当てて恥じらいながら口にする彼女の姿に、どうしたものかと思考を巡らせようとした絵梨の行動を遮るように由良が服を引っ張って意識を向けさせる。
「っ、っ・・・!」
「? 由良ちゃん、どうかしたの?うん、うん・・・え、そんなことできるの?」
「由良が、どうしたの?」
意識を向けさせた絵梨に耳打ちをする由良の話の内容に驚きの声を漏らし、彼女の問い掛けに絵梨は少しだけ考える素振りを見せてから口を開く。
「冬華さんの悩みを解決する手段が見つかりました!っけど、これをやるには色々と準備がいるので・・・聖歌さんのお家に泊まりに行った時のお楽しみ、っということでどうですか?」
「すぐには、できないの?」
「はい、私たちが側に居ないとできないので・・・今度のお泊り会で決行しましょう!」
「んっ、そういうことなら・・・」
納得した様子で頷きを見せる彼女にホッと息を吐いた絵梨だが、すぐに何かを思い出したように顔を上げた彼女は疑問の声を漏らす。
「そう、いえば・・・さっき魔の者って、言ってたけどいいの?その、由良は・・・」
「・・・はっ!?そ、そのこともお泊り会で説明します!」
「そう、なの?」
首を傾げて問い掛ける彼女に何度も肯定の頷きを返す絵梨に、納得したように頷きを示した彼女を合図とするように注文した料理が運ばれてくる。
「それじゃあ、食べよっか?いただき、ますっ」
「そっ、そうですね!いただきまーすっ!」
「っ、っ!」
全員が手を合わせてそう口にすると、雑談を交えた食事会が始まるのだった。
楽しい夕食を食べ終えた彼女は飲食店での会計を済ませるとショッピングモールを後にし、帰り道が逆方向の絵梨と由良と別れて一人で帰路に着いていた
「自分で、陽を誘う・・・か」
食事前に話していた絵梨の提案を口から零した彼女は、普段魔の者にしているように陽を誘う姿を想像して頬を真っ赤に染め上げる。
「さすがに、恥ずかしい・・・けど、それで陽が応えてくれたらっ」
そんなもしもの想像をした彼女はさらに耳まで真っ赤に染め、一旦考えを振り払うように首を左右に振っていると聞き慣れたアラーム音を耳にする。
「んっ・・・いいところ、だったのに。場所は・・・帰り道、みたい」
マップを確認して帰路の途中であることを確認した彼女は、深呼吸を数回してから小走りで目的地へと向かう。
目的地の赤い点へと辿り着いた彼女は、塀に取り付けられた不自然に隣り合う扉と引き戸を見つける。
「んっ・・・どっち、だろ?」
二つの入口を見比べていた彼女だが、引き戸を開けると扉に重なることに気付く。
「っと、いうことは・・・引き戸の、方っ・・・じゃ、なかった」
引き戸に手を掛けて開けようとしたが鍵がかかっていてビクともせず、少しの恥ずかしさを感じながら扉に手を掛けるとあっさり開かれる。
「んっ、気を取り直して・・・っ」
頬を軽く叩いて気持ちを切り替えた彼女は、ステッキを原寸大にして握り締めながら通路を進んで宵ノ世界へと足を踏み入れる。
「今回は、自然?が豊かみたい」
灰色の木々が立ち並ぶ林を見渡しながら魔法少女に変身した彼女は、ステッキを構えつつ辺りを警戒しながら中央にあるであろう廃墟を目指す。
「? あれ?この木、中から樹液が溢れてる?」
林を抜けようと足を動かしていた彼女は木々の所々に空いた穴から、黒い液体が溢れ出しているのに気付いて疑問の声を漏らす。
「あ、廃墟だ・・・っ?あれって?」
宵ノ世界の中心に建つ廃墟を視認した彼女は四階はありそうな大きさに顔を見上げながら、取り付けられた窓の全てから黒い液体が滴っているのに気付いて眉を顰める。
「・・・一応先に、周りを探そう」
廃墟に入ることを躊躇した彼女は一旦周りを調べて魔の者を捜索しようと一周回ったが、姿を確認することができなかった彼女は落胆しながら廃墟の入り口前に戻ってくる。
「行くしか、ないよねっ」
意を決した彼女は廃墟の扉を開けて中へと足を踏み入れ、前回のような惨状になっていると予想していたが壁のみが黒い液体で汚れているのを確認して安堵の息を吐く。
「思ったより、綺麗かも・・・よかった」
前回に毒された彼女は問題なさそうだと考えてそのまま歩みを進め、内部を見渡しながら魔の者の姿を探し始める。
「天井から、滴っているところもあるけど・・・んっ、触っても問題ない・・・かな?」
落ちてきた黒い液体を一滴手で受け止めた彼女は、肌で触れても臭いを確認しても自身の特性が反応しないことで安全だと認識する。
「それにしても、全く気配を感じないけど・・・魔の者は、どこにいるんだろ?」
一階から四階まで全ての部屋を見て回った彼女は物陰一つないことに首を傾げ、不意にあることを思い出してステッキを操作する。
「狼の魔の者と、対峙した時も使ったけど・・・マップを確認、すればっ――――」
表示された画面を確認した彼女は自身のいる場所に赤い点が記されていることに気付き、咄嗟に前方へと飛び退いたと同時に元居た場所が大きな音と共に抉られる。
「っ・・・『シルバーバレット』っ!」
転がりながら体勢を立て直した彼女はステッキを構えると魔法を放つが、壁に穴をあけただけで手応えを感じなかった彼女はすぐにその場から移動する。
「っ、わっ・・・はぁっ!」
再び居た場所が抉られたことで近くに魔の者がいることを確信した彼女は、剣を構えると天井に目掛けて力いっぱい斬り上げる。
「っ・・・!手応えが、あった!――――くっ!?」
微かに剣が当たった感触に彼女はもう一度剣を振るおうと腕に力を込めるが、その前に見えない何かに両腕を掴みあげられて阻止される。
「(やっぱり姿が見えないだけで、ここにいるみたい・・・だけど触れるならどうにか拘束を解いて、位置を確認してっ)・・・んっ?」
打開策を模索しながら足をバタつかせて蹴りを当てようとしていたが、目の前の空間が歪んで黒い巨体が姿を見せたことで呆然とする。
「――ギチギチギチッ」
「ひぇ・・・っ」
顎を鳴らしながら姿を見せたのは黒い甲殻に覆われた五メートルを超える大きな蜂をベースにした昆虫で、六本の足の鋭い鉤爪を壁や天井に突き刺し、蟷螂の持つ鎌に似た前脚で彼女の両腕を挟んで拘束している。
「――ギチギチッ、ギチギチギチッ」
「うぅっ・・・ぁっ!」
複眼で自身を見つめながら顎を鳴らす魔の者に、彼女は顔を青くしつつも思いっきり足を振り上げて魔の者の頭部に蹴りを叩きこむ。
「――ギチッ!?」
頭を揺らす衝撃に驚愕の声を上げた魔の者の拘束が緩んだことで前脚から抜け出すが、うまく着地できずに尻餅をついてしまう。
「あぅっ、くっ・・・『シルバーバレット』っ!」
「――ギチッ、ギチギチッ!」
その体勢のままで魔法を放ったが魔の者はその場から飛び退くと床に着地し、腹部の先端を彼女に向けると黒い粘液上の糸を噴出する。
「しまっ・・・うぁっ!?」
すぐに立ち上がることができなかった彼女は転がって躱そうとするが、片腕を絡め捕られてしまって引き寄せられる。
「『シルバーバレ』っ――――ぅぐっ・・・!」
自由な片腕でステッキを構えて魔法を放とうとした彼女だが、それを見越していたように再び糸を噴出させた魔の者によってもう片腕も絡め取られてしまう。
「――ギチギチギチギチッ」
「っ、どうにか・・・しない、とっ」
しかしそんな簡単に打開策が思い付くはずもなく、魔の者の側まで引き寄せられた彼女は後ろ手に両腕を糸で拘束されてしまうのだった。
~♡♡♡~
両腕を封じられてステッキも部屋の隅に弾き飛ばされた彼女は、距離を取ろうとして立ち上がろうとするがその前に魔の者が覆い被さるようにしてのしかかる。
「ぅくっ・・・重っ、い・・・ぐぶっ!?」
「――ギチギチッ」
魔の者の重量を感じて苦悶の表情を浮かべるが、顔を顎で押さえつけられて口内に舌のようなものが捩じ込まれる。
「んぢゅっ、ぢゅるっ・・・ぢゅっ、じゅぷ・・・っ♡」
捩じ込まれた舌は口内を縦横無尽に舐め回し、その過程で魔の者の唾液に喉を鳴らした彼女は最初の嫌悪感を滲ませる表情は消え失せ、目尻を下げて恍惚とした表情を浮かべながら舌同士を絡ませて唾液を味わう。
「ちゅぷっ、ちゅぅ・・・っ♡んちゅぅ、ちゅぱっ・・・♡」
魔の者の舌に吸い付いて舌を絡ませながら唾液を飲み干していた彼女は、引き抜かれた舌を自身の舌を伸ばしながら名残惜しそうに見つめて甘えた声を漏らす。
「んぁ♡もっと、唾液っ♡飲ませて、ください♡」
「――ギチギチッ」
彼女の催促を無視して身体を起こした魔の者の腹部の先端付近から、赤黒い生殖器がズルリッと姿を見せて彼女の下腹部に乗せられる。
「ぁっ・・・♡どう、ぞ♡私と交尾っ、してください♡」
その重みと自身の膨らみを押し退けるほどの長さと腕よりも太さにある生殖器を目にして、媚びるような声を漏らすと足を開いて白いタイツで覆われた秘部を差し出すように見せつける。
「――ギチギチギチッ」
前脚の鎌で白タイツを引き裂いた魔の者は露になった蜜を垂れ流す肉壺を目にして、生殖器の硬さを増して先端から我慢汁が滲み出たことで彼女の鼻孔をくすぐる。
「んっ、はぁ・・・っ♡とっても、良い匂い♡――――おぉっ!?♡」
何度も鼻を動かして匂いを嗅ぐ彼女を観察しつつ尖った生殖器の先端を秘部へと押し付けた魔の者は、腹部を叩きつけるように振り下ろして膣内の最奥を突き上げ、生殖器を根元まで挿入したことで彼女の腹部を突き破りそうなほど押し上げる。
「おっ、ほおぉ・・・っ♡ほぎょっ!?♡」
腹部を突き上げる快感に顔をだらしなく綻ばせていた彼女だが、魔の者が腰振りを始めたことで大きな嬌声を上げる。
「――ギチギチギチッ」
「んおっ、おふ・・・っ!♡んぎゅぅ♡うぎっ、ふほぉ・・・!♡おひゅっ♡」
顎で彼女の顔を押さえながら無遠慮に強く腰を打ち付けて最奥を潰す魔の者は、根元まで生殖器を挿入すると子宮口に尖った先端を執拗に押し付ける。
「んっ、ぐゅ・・・っ♡――――ほひっ!!?♡」
鋭い生殖器の先端が子宮口を刺して抉るという今まで感じたことのない感覚に、甘ったるい嬌声を漏らしていた彼女だったが不意にどちゅっ♡という重い衝撃を受けて驚愕の声を上げて身体を跳ねる。
「ほへっ、はへぇ・・・?♡」
「――ギチギチッ、ギチッ」
何が起きたかわからないといった様子で疑問符を浮かべる彼女をよそに、魔の者は上手くいったことを喜ぶような愉しげな鳴き声を上げる。
「この、感じっ・・・♡もしかして、子宮の中っ――――にいぃっ!!?♡」
子宮口を抉じ開けて生殖器の先端を中に侵入させることに成功した魔の者は、先端部分についている小さなかえしを上手く引っ掛けると抜け辛くなったことを確かめてから腰振りを再開する。
「んぐっ、ふご・・・っ!♡ごひゅっ、ほぎっ・・・!♡」
魔の者が腰を引くとかえしが引っ掛けられた子宮も引き抜かれて体外に顔を出し、腰を突き出すと子宮内から彼女の体内をかき混ぜながら貫いていく。
「――ギチギチギチギチッ!」
「うごっ、ぶぎゅっ・・・!♡ふひっ、おほ・・・っ!♡」
膣内を抉りながら子宮内から突き破らんばかりの勢いで叩き潰される彼女はだらしなく舌と涎を垂らし、快感に支配された悦楽の表情を浮かべながらも膣内を締めて魔の者への奉仕も忘れずに行う。
「――ギチギチッ、ギチッ!」
「ごびゅっ、ふひょっ・・・!♡ぅほぉおぉぉぉぉっ!!?♡」
生殖器を根元まで押し込んだ魔の者は高まった情欲を解き放ち、射精を子宮で受け止めた彼女は身体を仰け反らせて大きな嬌声を上げながら絶頂して潮を撒き散らす。
「ほふっ、へはぁ・・・♡ふおっ!?♡」
子宮内を満たす精液の熱さに呆けた声を漏らしていた彼女だが、こぶし大の球体が流し込まれたことに驚きの嬌声を上げる。
「――ギチッ、ギチッ」
「んっ、ぉっ・・・♡ふっ、ほぉ・・・っ♡(この丸いものって、もしかして魔の者の卵?っということは私のことを、番として認めてくれたってこと?♡)」
一つの球体を皮切りに一つまた一つと流し込まれてくる球体で子宮を押し広げられていく感覚に、彼女は甘い声を漏らしながら身を震わせる。
「ほへぇ・・・♡――――んほっ!?♡」
胎動する卵を数十個ほど植え付けられた彼女の腹部は大きく歪な形に膨れ上がり、その様を愛おしそうに見つめていた彼女は突然の腰振りの再開に身体を跳ねさせる。
「んごっ、ほぎゅ・・・っ!♡まっ、て♡あなたっ♡卵が壊れっ、ちゃうから♡優しっ、ぐうぅっ!?♡」
生殖器が前後する度に卵がぶつかり合って肉壁を刺激して甘い声を上げるが、押し合う内に割れてしまうのではと不安に駆られた彼女は魔の者に声を掛ける。
「――ギチギチッ!」
「おほっ、ぐぎぃ・・・っ!♡ふごっ、ぷぎゅっ!?♡」
そんな意見を煩わしいとばかりに腰振りを速める魔の者に、卵のことなどすぐに頭から抜け落ちた彼女は潮を吹いて謝罪の意思を示す。
「ぁへっ、ふひっ・・・♡ごめんなっ、さい♡あなたの、気の済むまでっ♡私を使って、気持ちよくなってくださいっ♡おぉっ!?♡」
表情を蕩けさせて雄に身を捧げることを宣言した雌に、当然とばかりに振り上げた腰を落として子宮を押し潰す。
「おっ、ほぉ・・・っ!♡ふおっ、んおぉっ・・・!♡」
「――ギチギチギチッ!」
激しく腰を打ち付けて膣内と締め付けと潰れる子宮の感触を味わう魔の者に、彼女は快感で顔を綻ばせながら雄との交尾を喜んで受け止めて甘い嬌声を上げる。
「――ギチギチッ、ギチッ!」
「――――おっほおおぉぉぉぉぉっ!!?♡」
深く腰を落として生殖器を最奥に突き刺した魔の者はそのまま二度目の射精を行い、卵の隙間を埋めるように染み渡っていく精液の熱を感じて彼女は身体を仰け反らせて絶頂を迎える。
「んぉっ、ほぉぉぉっ・・・♡(一回目より射精が長いっ、卵を私に植え付けたから?♡それより膣内を締め付けて、気持ちよく射精してもらわないとっ♡)ふっ、んぅっ♡ふごっ!?♡」
彼女の献身的な行動などお構いなしに射精を終えた魔の者は乱暴に腰振りを再開し、それにより子宮を引きずり出されて押し潰されてを繰り返される彼女は、逞しい雄の姿に釘付けにされて叩き付けられる快感に身を委ねるのだった。
従順な雌の様子に気を良くした魔の者は一回で済ませようと考えていたところを、五回に及んで精を解き放ったことで彼女の腹部は想定よりも数倍膨れ上がっていた。
「んぉっ、ふぅ・・・っ♡んふっ、すぅ・・・♡」
現在の彼女は魔の者が使用していた糸で両腕と共に身体も固定されて天井から吊るされ、五度目の射精をその身で受け止めると同時に気を失うように眠りについていた。
「んんっ、ふふっ・・・♡あなたぁ♡もっと、愛してくださぃ・・・♡すぅ、んひっ・・・♡」
穏やかな寝息を漏らしながら雄への求愛を零す彼女を尻目に、肝心の魔の者の姿はなく天井から吊るされている彼女の姿しかない。
雌へ卵を植え付けて種付けも済ませた雄は日課となっている木々から溢れる黒い樹液を集めに出払っており、集めた樹液は上の階に貯め込んでいるために壁や天井から滴っている。
「んぅっ、すぅ・・・♡ふぅっ――――ぐぎっ!!?♡」
深い眠りについていた彼女だが不意に腹部を襲った衝撃に、たまらず意識を覚醒させると何事かと確認するために顔を向ける。
視線の先では卵が植え付けられていることで歪に膨らんだ腹部がさらに膨れ上がり、ボコボコと子宮内で不規則に蠢きながら争うように暴れていることに気付く。
「がぴっ!?♡もしか、してっ♡卵が孵化した、の?♡おごっ!?♡けどこの、感じっ・・・まさか、喧嘩してる・・・っ?」
喧嘩だと考えている彼女だが実際には共食いを行っており、より強い幼体が弱い幼体を食い散らかして成長している。
「みんなっ、仲良くし・・・でぇっ!?♡喧嘩なんてしちゃっ、ママは悲し・・・ぃよおっ!?♡」
彼女の腹部を歪な形に変えながら争い続ける我が子たちに声を掛けるが、それが届くはずもなく肉壁を踏みつけ押し広げる刺激に身を震わせて潮を吹いてしまう。
「んぐっ、ほふぅ・・・♡落ち着いた、みたいっ――――んぎゅっ!?♡」
共食いを終えて一体だけになったことで争いが収まって刺激を受けなくなった彼女は安堵の息を吐くが、子宮口を押し広げて体外に出ようとする我が子の突然の動きに驚きの声を上げる。
「ふくっ、はぐっ・・・!♡わかっ、たからっ♡すぐに出しっ、でぇっ!?♡あげるぅ、からぁっ!?♡ひっひっ、ふぅ・・・っ♡ひっひっ、ぶうっ!?♡」
「――キチキチッ」
ラマーズ法を用いて我が子を産み落とそうと力んだ瞬間、一気に膣内を進んで秘部から顔を出した幼体は外の空気を吸い込んで鳴き声を上げる。
「んっ、ふぅ・・・っ!♡ふほおぉぉぉっ・・・♡」
頭部を覗かせた魔の者の幼体は前脚の鎌を秘部に器用に引っ掛けると力を込めて身体を引き摺り出し、その際に硬い甲殻や足などが膣壁を削りながら擦り上げていく快感に彼女は甘い声を漏らす。
「――キチキチキチッ」
体外に出ることのできた魔の者の幼体は数回羽を鳴らして身体に付いた体液を飛ばし、未だ呆ける彼女に飛びついて露になった乳房に噛みつくと先端を口に含んで吸い付く。
「ふふっ、まだお乳っ♡出ない、よぉ・・・♡んぅ、ふあぁっ・・・♡」
自身の大きく実った膨らみに噛みついて一心不乱に吸い付く姿を愛おしそうに見つめながら、ミルクを上げられないことを残念に思いながら両腕を固定されているために止める術もないので好きにさせる。
「――ギチギチギチッ」
「っ?ぁっ♡あなたっ♡」
羽音を響かせながら姿を見せた魔の者に彼女は嬉しそうに声を弾ませ、自身と我が子の存在に気付いた魔の者は彼女に覆い被さるように天井に張り付くとズルリッと生殖器を表に出す。
「ふへっ、はいっ♡また私を、使って♡気持ちよくなって、卵を孕ませてくださいっ♡」
「――ギチッ、ギチギチギチッ!」
雄の意図を汲み取った雌は股を開いて生殖器を受け入れる体勢を取り、生殖器を秘部に押し付けるとすぐに挿入して腰振りを始めるのだった。
~♡♡♡~
再び卵を植え付けて種付けも済ませた魔の者は、ご褒美として雌に口付けを交わしながら再度生殖器を突き刺して腰を振る。
「ぢゅほっ、ちゅごっ・・・!♡きもひぃ、ぢゅぶっ――――ちゅぽっ?」
蕩けた表情で口内を蹂躙する魔の者の舌に自身の舌を絡ませて生殖器の突き上げを味わっていた彼女は、不意に意識が明瞭になったことで呆けた声を漏らす。
「(特性が発動したみたい、これで糸の拘束も振り解いて魔の者を倒せるっ・・・けどその前に、この子を安全な場所に移動させないと)ちゅっ、ちゅぅっ・・・んちゅっ!」
「――ギチッ!?」
先程まで甘えた声を漏らしていた雌が舌に噛みついてきたことに驚いた鳴き声を上げた魔の者を尻目に、彼女は糸の拘束を引き千切ると覆い被さっている魔の者を蹴り飛ばして床に着地する。
「これで、仕留めるっ・・・!『シルバーバレット』っ!」
「――ギチギチッ、ギチッ!?」
床に背中から打ち付けられた魔の者は飛んできた魔法を鎌で斬り裂こうとするが、逆に鎌が吹き飛んだことに驚愕の鳴き声を上げながらも体勢を整えるとその場から飛び上がる。
「――ギチギチッ!」
魔の者は腹部の先端から糸を弾丸のように固めたものを彼女に向けて掃射し、彼女は焦ることなく冷静に軌道を予測して回避していくがあることに気付いて周りに視線を向ける。
「っ・・・?あの子は、どこに・・・っ、くっ!」
交尾をしている間は自身の膨らみに吸い付いていた我が子が側に居ないことに気を取られた彼女は、自身の手にしていたステッキが糸で弾き飛ばされてしまい慌てて回避に意識を戻す。
「――ギチギチギチッ」
「ふっ、く・・・っ!(どうにかして、ステッキを取りに行かないとっ――――)え?」
部屋の隅に滑っていくステッキを視界の端に捉えて歯噛みする彼女を嘲笑うように掃射を続ける魔の者に、打開策を模索していた彼女はふと魔の者の頭部に我が子の姿を見つけて目を見開く。
「なんで、そんなところにっ・・・!危ないから、早く離れてっ!」
「――キチキチッ、キチッ!」
「――ギチッ!?」
彼女の声を耳にした幼体は前脚の鎌を振り上げると魔の者の頭部と胸部の間に突き刺し、突然の奇襲に驚いて動きの遅れた魔の者を睨みながら前脚の鎌に力を込める。
「――ギチッ、ギチチッ!?」
「――キチキチッ!」
制止するように鳴き声を上げる魔の者に見向きもせずに鎌を振り抜いた幼体によって、頭部を斬り落とされた魔の者は床に落下する前に黒い靄となって霧散する。
「っ、危ない・・・!」
魔の者という足場の無くなって飛ぶことをせずにそのまま落下する我が子を目にして、その場から駆け出してスライディングするように身体を滑り込ませた彼女は我が子を受け止めることに成功する。
「――キチキチッ」
「うん、君のおかげで・・・私は、無事だよ?」
自身を気遣うように鳴き声を上げる我が子を抱き締めながら、身体の端から黒い靄に変化していくのを目にして悲しげに眉を下げ、さらに植え付けられた卵も黒い靄となって霧散したことを
「――キチッ、キチッ」
「不甲斐ないママで、ゴメンね?生まれてきてくれて、ありがとう・・・っ」
一際自身を強く抱き締める彼女に安堵したように息を吐いた幼体は、母親に身を委ねるように体重を預けて眠るように黒い靄となって霧散して空間に溶けていった。
「・・・脱出、しないと」
宵ノ世界が崩れ始めたことを確認した彼女はその場から立ち上がると手を握り締め、グッと涙を堪えて未練を断ち切るように床を蹴って出入口へと向けて駆け出すのだった。
宵ノ世界を後にした彼女はすっかり暗くなった夜道を小走りで進んで自宅に着くと、買ってきた食材を冷蔵庫へと入れるとそのまま寝室へと向かう。
「(今日はお風呂はいっか、明日の朝に入ればいいかな・・・今はもう、ゆっくり休みたい)はぁ・・・?」
タメ息を漏らしながら寝室へと入った彼女は、暗い室内ながらもベッドが盛り上がっていることに気付いて疑問符を浮かべる。
「? え、もしかしてっ・・・」
カバンを放り投げた彼女は逸る気持ちを押さえられずにベッドに駆け寄って掛け布団を捲ると、そこには最愛の人が寝息を漏らす姿があり・・・気持ちが昂って口元が緩むのを抑えられない彼女は、制服に皺が付くのも気に留めずにベッドに潜り込んで陽香を正面から抱き締める。
「んっ、陽・・・陽っ♡」
陽香の胸元に顔を埋めて匂いを肺一杯に吸い込んだ彼女は、幸せな気持ちに包まれて表情を蕩けさせながら抱き締める力を強める。
「今度は良い、ママになる。だから、見守っててね?」
密かな決意を新たにする彼女を尻目に、大好きな匂いを吸い込んだ陽香は自然と口元を緩ませて彼女を抱き締め返すのだった。
――魔の者(昆虫)――
攻撃 :C
魔法攻撃 :C
防御 :D
魔法防御 :D
素早さ :A
特性『浸透擬態』・・・背景に溶け込むように透明となって姿を消すことができる。