アレクシアは美少女である。肩で切りそろえた白銀の髪は真っすぐで癖一つなく、切れ長で赤い瞳は綺麗だ。事実として学園に入学して二ヶ月足らずで百人を超えるアホが彼女に告白している。
そんな訳で彼女は自分が美しいと自覚している。故に自分がその気になれば魅了できない男はそんなにいないと考えていた。
(チッ! 意外とガードが堅いわね。男なんて女が裸で傍にいれば発情した猿みたいに襲い掛かる生物じゃなかったかしら)
温泉の名地であるリンドブルムの最高級ホテル、早朝の露天風呂でアレクシアは聞こえない程度に舌打ちをする。彼女は自分が付けた傷を確認するという建前で一緒に温泉に入っているシド・カゲノーの裸、というか身体の一部を見ようとするふりをして自身の身体を見せようとしているのだが、彼のガードを崩せないでいた。
アレクシアはシドに惚れている。本性を見せても一切態度を変えずに向き合ってくれて、身分の差を気にせず軽口を叩けて、自分の剣を好きだと本気で言ってくれた彼が好きなのである。自分から明言するつもりはないが。
彼女はシドがどんな人間か理解している。大義名分さえあれば大胆な行動ができるが、それがなければ全然動かなくなるタイプ。今もアレクシアの裸に向かいそうになる視線を押しとどめている。興味津々のくせに王族の裸を凝視するのは不敬だから見ないようにしているのだ。
なのでアレクシアは恋人であるという裸を見てもおかしくない肩書を与えようとしているのだが、シドは決して認めようとしない。それどころかより頑なに見ようとしなくなった。裸を見る、つまり恋人だと認めることになると思っているのだろう。その通りだ。
自分から真摯に告白すれば話は早いのに今までの生き方やプライドをアレクシアは変えられない。あと告白してはっきりフラれたら立ち直れる自信がない。なのでシドから告白される、ないし自分に懸想している証拠を掴んで優位を取りたいのである。
(マズイわね……他にもライバルがいるから何としてでもここで仕留めないと)
ライバルというのはローズのことだ。学園で男女問わず人気の彼女は明らかにシドに好意を持っている。見た目は自分と同等、別国の王族でも王位継承権はあちらが上、貴族としては有り得ないくらい優しい性格。このままではマズイとこれまで仕事をしてこなかった乙女の勘が言っている。
アレクシアの目的は既成事実を作る事である。裸を見せあうなんてチャチなものではなく、セックスだ。姉ほどではないが優秀な魔剣士であるアレクシアと凡人のシドの魔力量の差では子供は望めないので行為までが限界だが。それでも王女の純潔を散らしてしまえば責任の取り方は恋人になるか死ぬしかない。
何故貧乏貴族のシドが最高級ホテルにいるのか未だにわからないが、こいつと身分の高い貴族専用の混浴で二人きりなんて状況は二度とない。このチャンスを生かすべくシドが風呂に入るのを確認して準備をしてから入浴した彼女は次の手を打った。
「仕方ないわね。……そんなに嫌がるならいいわよ」
裸を見せるついでに観察しようと思っていたシドの股間を隠すタオルを引っ張るのをやめる。ほんの少し悲し気に。「なら最初からするなよ……」と呟いたシドが気を緩めたこと、罪悪感を抱いたことを彼女は見逃さなかった。
「これあげるわ。二本も飲んだらお腹がゴロゴロしちゃうから」
そう言って風呂場に持ち込んだフルーツ牛乳を一本渡しつつ、落ち込んだふりをしながらもう一本を飲む。こうすることでシドはフルーツ牛乳を受け取らざるを得なくなり、温泉を出て飲むのも気まずくて隣で飲むことになる。
(計画通り。押して駄目なら引いてみろ、ってね)
アレクシアが持ち込んだフルーツ牛乳、シドに渡した方には当然のように異物が混入している。
混ぜたのは媚薬。それも『龍殺しの毒が効かない鈍感な相手もこれでイチコロ』がキャッチフレーズのミツゴシ商会が世継ぎを残すことが義務の貴族をメインに売り出している代物だ。龍殺しの毒が効かない人間がいる訳ねーだろ、というかそんな奴にも効く媚薬の方が劇薬じゃないの? と変装して買いに行った時にツッコみそうになったのは余談だ。
もし媚薬を盛ったことにシドが文句を言ってきたとしても、貴族社会では騙される方が悪い。自分の行いは棚に上げて言い返す気満々のアレクシアであった。
「……あー、とりあえず先に上がるね」
湯船に波紋を広げながらシドが立ち上がる。股間をタオルで頑なに隠している彼の肌が長時間湯船に浸かっていたこととは別の理由で上気しているのをアレクシアは見逃さなかった。立った瞬間、シドのタオルを奪い取る。まさかそんな真似をしてくるとは思っていなかったのかタオルは容易く奪えた。
ニヤリと笑うドS女王。しかし、次に目に入ったそれに彼女の表情は凍り付く。
(ちょ……ちょっと大き過ぎない?)
男が猥談で陰茎をエクスカリバーだの何だのと比喩していることは知っている。だが、タオルを取り払われたことによって露になった剛直は断じて聖剣ではなかった。
皮がめくれて剥き出しになった先端は赤黒く鋭利な形をしており、竿の部分は血管が浮き出てひくひくと震えている。片手では包み込めないほど太く、龍といっても過言ではない長さのそれは魔剣、いや魔槍だ。
「アレクシア」
「な、なによ」
「僕に何か盛ったでしょ」
「だっ、だったらどうするの?」
「決まってる。このままだと知らない女の人を襲っちゃいそうだし、君にどうにかしてもらう」
指で示される剛直。心なしかさっきより大きくなってるこれをアレクシアは鎮めないといけない。男の欲望を受け止めなければならない。
これを自分の中に挿れる……?
「む……むり。無理よ。そんなの入れたら死んじゃうじゃない」
「大丈夫。急所さえ守ってたら人は死なない。腹を貫かれても、動脈と大事な臓器さえ守ってたら死なない。それって、とっても素敵なことだと思わない?」
「頭がおかしいんじゃないの!?」
媚薬を盛ってまで犯させようとしていたのに男性器の実物を見て怖気づいたアレクシアは逃げようとするが、さっきまで近くにいたことが仇となり簡単に捕まってしまう。魔力を使って振りほどこうとするもその前に彼女は唇を奪われた。
キスは甘い味がした。お互いに甘い物を飲んでいたのだから当たり前だが。ファーストキスでガチガチに緊張しているアレクシアとは反対にシドは慣れたように彼女の口の中を舐めまわし、舌に吸い付き、二人の唾液が混ざったものを顎を持ち上げて飲ませた――媚薬を服用した男の唾液を。
毒物耐性がとんでもない男にも効く媚薬を少量でも舐めてしまったらどうなるのか。それは敏感になった身体を抱きしめるように湯船の中に座り込んでしまったアレクシアが証明している。
未知の恐怖と微かな期待に震えながらアレクシアはシドの欲望を受け止めるしかなかった。
もう怒った。
アレクシアの奴、僕が我慢に我慢を重ねて手を出さないようにしていたのに、媚薬を盛って僕の理性を吹き飛ばすような真似をしてきやがった。
お互いに全裸という状況で僕のエクスカリバーが抜き放たれる薬を使ったんだ。おまけに肌もくっつけてきたし股間を見ようとしてきたし恋人とも言ってきた。ならこうなる覚悟はできているんだろう?
だからわからせてやる。陰キャでも男をからかうとどうなるかってことをね!
「ふぅ、んん、んふぅ……つっ、ぁ、あぁあっ!」
ちょくちょく彼女は僕のことをポチと呼ぶ。だからその通りにしてあげた。
脚だけ浸かるように湯船の縁に腰かけさせたアレクシアの股を開いて、白い陰毛が生い茂る恥丘に鼻をうずめながらピンク色の割れ目に舌を這わせる。秘部ではなくその周辺を焦らすように何度も何度も。偶に秘部に少しだけ刺激を与えるが、それでは大きな絶頂を迎えられない絶妙な加減で。
アレクシアの半開きになった口から普段の彼女らしからぬ弱弱しい喘ぎ声が漏れていた。もういつでも挿入できるくらい解れた秘部からもだらしなく愛液が滴り始めている。まだ軽い前戯なのにここまで悦んでしまっているのは媚薬のせいか。
それからしばらく焦らし続け、軽くイキかけたアレクシアの秘部の入口が広がった瞬間、僕はそこに吸い付いた。柔らかくて弾力のある肉ビラを指でさらに広げ、じゅるじゅると音を立てて愛液を吸い取りながら、膣内に舌を潜り込ませてまだ何人も受け入れていない膣道を舐めまわす。
「ふっっ、ん゛ん゛んんんーっ! んんっ、ふっ、ふぅぅ……!」
絶頂によって腰を跳ねさせるアレクシアの秘部にかぶりつくように口を密着させ、噴き出す愛液や潮を全部飲み干していく。別に必要はないけど、これをやった方が口を押さえて嬌声が他所に聞こえないようにしながら目は僕の口淫に釘付けになってる彼女には効果的だろう。
さて……お待ちかねの本番だ。アレクシアの脇腹を掴んで持ち上げながら百八十度回転させる。突然の出来事にバランスを崩しそのまま石畳に顔をぶつけるのを防いだ彼女の腕を掴み、背中側に来るように引っ張る。
今のアレクシアは僕に掴まれた腕を離されたら即座に石畳で顔面強打するくらい前屈みになった状態だ。腕を背中側に持ってこられたせいで張った形になった胸がふるりと揺れる。
「待って……そんなの入れられたら壊れちゃう……い、今ならなかったことにしてあげるから……」
後ろが見えないアレクシアが腰を振って挿入させないように抵抗するも、それは誘っているようにしか見えない。狙いを定めて陰茎を受け入れる準備ができている陰部に一気に捻じ込んだ。
「ヒッ、ギィィィ!? いったぁああ゛あ゛あ゛!?」
処女膜を引き裂く時に少しつっかえた以外、陰茎はスムーズに膣内に挿入された。しかし、最奥と先端が接触しても全ては収まっていなかったので、アレクシアの悲鳴を無視して体重をかけて根元まで突き刺した。陰茎が全部入りきったのを確認してから僕は抽挿を開始する。
アレクシアの膣内では四方から肉壁がぎちぎちと締め付けてきた。引き抜こうとすればヒダが亀頭に絡みついて扱き上げ、奥に押し込むためには締め付けられた膣肉をかき分けなければならないため陰茎に心地よい圧がかかる。そうして辿り着いた子宮は褒美のように亀頭にキスをする。
「あああっ、お゛っ、ぬい、ぬいてっ、とまって……あ゛、うんぃ……こわれ、かっ、ちゃう……」
子宮を押し潰される度にアレクシアの喉からは獣のような野太い声が漏れた。快楽から逃れようと腰をくねらせるがそれは膣内への淫らな刺激に変換されるし、僕の腰が彼女のお尻とぶつかる度にプルプル震える二つの肉は壮観としか言えない光景だった。
「~~~~~~~~~!」
ミツゴシの媚薬で感度を高めた挙句、言っちゃなんだけど平均を大きく超える僕の陰茎で初めてのセックスを迎えたアレクシアが大きな絶頂を迎えた。声なき艶声を上げながら激しく身体を痙攣させ、締め付けが強くなった彼女の膣内で僕も精液をぶちまける。身体の内側に注ぎ込まれる熱にアレクシアが悶えるのをじっくりと眺めていた。
かくっと彼女の膝から力が抜ける。素早く腕をアレクシアの腹に回して一緒に湯船の中に座り込む。僕の股の間に腰を下ろした彼女は長い息を吐いた。
「あ゛ー……疲れた。絶対入らないって思ってたけど、意外となんとかなるものね」
「結構余裕がありそうだね。じゃ、次やろっか」
僕の言葉にびくっと震えるアレクシア。何故そんな顔をするんだろう? まだ僕の聖剣は君の膣内で大きさと硬さを保ったままじゃないか。
「責任――取ってね」
最終的に僕はアレクシアで六発抜いた。脱衣所から出る時、アレクシアが腰を抑えてガニ股でよたよたと立ち去っていく姿が印象的だった。
♦♦♦
秋も終わり、季節は冬に入った。
学園の端にある小さな個人練習用の道場。人気がなく誰も寄り付かないそこは僕とアレクシアの密会スポットになっていた。今も僕の首根っこを掴んでここに引っ張ってきた彼女と肌を重ねている。
リンドブルムでアレクシアとセックスしてから彼女に事あるごとに呼び出される。半分程度の割合でただの愚痴だったり雑用だったりするが、もう半分は性欲の発散に付き合わされる。一度無視しようとしたら僕に付けさせた首元のキスマークを晒そうと髪を上げて登校しようとしたため逆らえない。
「どうかしら私の
剣の練習をするという建前かつ、汚れてもすぐ洗えるからという理由でブシン流の道着に着替えたアレクシアが僕に跨って腰を振っている。メスガキのような冷笑を浮かべて見下ろしている彼女は初体験の時の醜態を忘れているらしい。いつかまたわからせてあげよう。そう誓いながら僕は彼女のきめ細かい肌のお尻を両手で堪能しつつ、ぐりぐりと押し付けられる子宮の中に精液を吐き出した。
中出しの感覚が好きなのか射精が終わるまでじっとしていたアレクシアが立ち上がる。ぬぽん、という音とともに陰茎が引き抜かれ、彼女の服や足が白濁液で汚れる。道着はチャイナドレスのようなスリットが入っている上に黒いのでわかるのだ。
「あーあ、新しく買ったばかりの下着がもうぐちゃぐちゃ。とりあえず着替えるから片付けておいて」
上からアレクシアがどいたので上半身を起こした僕に愛液や精液でぐっしょり濡れた白いTバックが投げつけられる。下着を脱ぐ手間すら惜しんでセックスするので下着がすぐ駄目になるのだ。ちなみに僕のパンツは斬り刻まれるため、帰りは強制的にノーパンである。
とりあえず下着は適当な袋に詰め、タオルで道場の床に垂れた体液を拭く。まだ情事の汚れを落とせてない状態でズボンを穿くのが嫌な僕は下半身裸で、その背後で着替えるアレクシアも下着を僕に渡したのでノーパンという異常な空間だが、もちろん誰もツッコまなかった。
「さて、帰りましょう」
制服に着替えた彼女と汚れを落としてズボンを穿いた僕は腕を組んで寮への帰路を歩く。外はもう暗くなり始めていた。
「寒くなったね」
「そうね。でも私は貴方の精液で温まってるわ。お腹の中でちゃぷちゃぷ動く感触がするのと垂れてくるのが欠点だけど」
反応に困る返事はやめてほしい。
「そういえば貴方に言っておくことがあったのよねぇ」
にんまぁ、と性格の悪さが滲み出た微笑みを浮かべるアレクシア。僕が昔、罰ゲームで告白したことを知って脅迫した時の顔だ。
制服のネクタイをずらし、胸の谷間に指を突っ込む。どこかの銀髪泣きぼくろエルフと同じ動作で棒状の何かを取り出した。
「今、あのうさんくさいナツメとかいう作家のこと考えなかった?」
「いいえ、ちっとも」
「どうだか。私で童貞捨てたくせにローズ先輩やあの作家に近寄られて鼻の下を伸ばしてたじゃない」
童貞捨てたのは君じゃないけどね。どうして僕を慕ってくれてるのかわからない二人目妊娠中の金髪エルフである。アレクシアに言ったら殺されるので彼女が死ぬまで黙っている予定だ。
「ま、いいわ。とりあえずこれ見てちょうだい」
そう言って渡された棒状の何かに僕は凄い見覚えがあった。具体的に言うと前世で夫婦ややんちゃな中高生がお世話になるブツである。
「それ、妊娠検査薬っていうのよ。全然生理が来なくなったから医者にお金を積んで黙って診察してもらおうと思ってたけど手間が省けたわ」
足を止めたアレクシアは僕の手を自身の下腹部――子宮のあたりに当てがいながら言った。
「デキちゃったみたい、貴方との子」
「はい?」
「貴方以外とやってないんだから貴方との子よ。浮気なんてしてないから。というか浮気してたら貴方とこんな真似してないわ。魔力量に差はあるけどあれだけ盛った犬みたいに中出しされたら妊娠しても不思議じゃないわよね」
「……」
「今日からパパで王族よ。ポチを卒業できてよかったわね」
僕の瞳を覗き込むアレクシアは笑顔を浮かべていたが、その瞳にはハイライトがなかった。
「それと姉様が『シャドウガーデン』は胎教に悪いとか言ってたんだけど……何か知ってるかしら?」
アレクシアの邪悪な笑みってメスガキっぽさがあると思うの。