芸能人やスポーツ選手のような有名人と街中で出会う可能性はいったいどれほどの確率か。彼等彼女等は自分達が目立つことを自覚して顔を見られないようにしているし、首都のような大きな場所では大勢の人々が行き交いすれ違ったことに気付くのさえ難しいだろう。
ましてや、そんな有名人の興味を引いてあちらから声をかけられるとなれば、確率はきっと天文学的なものになると思うんだ。え? じゃあもしそんなことがあったらどうなるんだって?
死ぬんじゃないかな……色んな意味で。
「よし、今日はここまでにしよう」
「はぁはぁ……はぁはぁ……やっと終わり?」
マジで休みなく打ち込み続ける打ち込み稽古の終了を告げるのは『武神』ベアトリクス。朝から数時間に渡って碌な休憩どころか水や食事も摂らずに動き続けておきながら汗もかかず息も切らしてないエルフの剣聖の前で、僕は膝をがくがく震わせながら呼吸を整えるふりをしていた。
ブシン祭が終わったのにベアトリクスはまだミドガル王国にいた。休日に『まぐろなるど』と『コラ・コーラ』に舌鼓を打ちながら姉さんや『シャドウガーデン』の仕事を考えずに平穏を享受していた時、背後から彼女に声をかけられた僕の気持ちは誰にもわかるまい。
偶然見かけたと言いながら誘われた剣の稽古を僕はその時は断った。僕の言い訳の矛盾点をすぐに指摘してくる彼女との舌戦を制して逃げようとしたのに、運が悪いことにちょっとした事件に巻き込まれた。そのせいで尚更稽古をした方がいいと言われて、それでも断ろうとしたのだが、
『私とするのは……嫌か?』
……雨の日に捨てられた子犬みたいな顔をされたら断れなかった。そして今日はその約束の稽古をしている。場所はベアトリクスが散歩中に見つけたという花畑だ。
ベアトリクスとの稽古はとても良いものだった。魔力はそこそこだから身体能力強化は参考にならないけど、技術は『シャドウガーデン』の誰よりも高い。おまけに才能だけでなく積み重ねた努力で到達できる技術もあるから非常に参考になる。
なのに僕が断り続けたのはモブが『武神』に鍛えられるのが目立つのもあるけど……ベアトリクスに僕がシャドウだとバレている気がするのだ。彼女はとても勘が鋭い。僕のモブムーブにあんまり惑わされないし、ブシン祭でも僕が一番強そうと迷わず言い切るくらいだ。
あとアイリスを交えて戦ってた時に『まさか、シ――』って口走ってたからな。なんて言おうとしたのか知りたいけど、僕がそれを尋ねたら藪蛇になるし……。
「シド」
悶々と悩む僕にベアトリクスが声をかける。いつの間にか彼女はこちらに背中を見せて花を摘んでいた。本当は疲れてないけど回復してたらおかしいので、汗腺を操作して汗を流しつつ剣に寄りかかったまま顔を向ける。
「私は君の正体が何でもいいんだ。才能があるのに謙虚なシドでも、私やアイリス王女を歯牙にもかけず倒したシャドウでも」
――その言葉を聞いても僕は動揺しなかった。ああ、やっぱりバレてたか……という納得が胸に満ちる。
「君からはいい匂いがする。もし君がシャドウだったとして、無辜の民をいたずらに傷つける人だったらくさい死臭がしているはずだ」
ベアトリクスが立ち上がって振り返る。手には美しい白い花の花束が抱えられていた。向けられる微笑みに宿る親しみは何一つ変わりはしない。
「君はいい人だ。君の傍にいると落ち着く。君の前では『武神』という名も責もなく、一人のエルフでいられる……つまり、その……裸同然で……そうじゃない。いや、そうでもあるけど」
顔を赤くしてぶんぶん振ってから咳ばらいを一つ。ベアトリクスは花束を僕に差し出しながら言った。
「エルフは親密な相手と花を贈り合う習わしがあるんだ。私は君とずっと親しい仲でいたい。君がおじいさんになってもずっと。この花は私が好きな花なんだ……受け取ってくれないか?」
……プロポーズかな? いやいや、ベアトリクスは天然だし、ずっと友達でいようって宣言か? それだったら悲し過ぎる。とりあえず……
疲れ切って疲労困憊といった風の演技をやめる。曲がっていた背筋を伸ばして頭をかきながら口を開いた。
「シャドウは王国の怨敵だよ? ブシン祭だって滅茶苦茶にしたからアイリス王女はすっごい怒ってた。なのにベアトリクスはシャドウを嫌ったり恨んだりしないのかな?」
「私は自分が見たものを信じている。それにシャドウは私や彼女を殺せたのに殺さなかった。それどころか街になるべく被害が出ないように立ち回っていた。だから、私はシャドウを恨んだりしてない」
「……参ったなぁ」
何が参るのかって、ベアトリクスの傍にいると落ち着くのは僕もなのだ。精神的にも落ち着いていて物腰も柔らかくて、自然と頼りたくなる大人だ。
演技をしないで済むのもいい。『シャドウガーデン』の首領であり『シャドウ』でもなく、平凡な男爵家の長男の『シド・カゲノー』でもないありのままの自分。演技をせずにいられるのはきっと彼女の前だけだ。
だから僕は心からの笑顔で彼女から花束を受け取った。
「これからもよろしくね、ベアトリクス」
「! ああ、よろしく」
♦♦♦
親密な相手同士になった僕達は色んなことをした。
街中を探検するのはもちろん、『まぐろなるど』のサンドを一緒に食べたり、ベアトリクスが小鳥と戯れたりするのを眺めたりした。高台から王都の街並みを見下ろした後、ベアトリクスに『七陰』のエルフ達が喜んだ鮮やかな青い花をお返しとして贈り、その花の蜜を一緒に吸ったりもした。
『きっと、シドとの出会いは運命だった。今は心からそう思うよ』
『さっきから自分の心臓が、ドクドクと音を立てていて、すごくうるさい。確かめてみてくれないか』
『私達が吸ったあの青い花の蜜にはホレ薬の効果があるんだ……だから、何をしてもあの花のせいだよ』
そして拙い色仕掛けをしてきたベアトリクスの誘いに乗った僕は彼女を適当な宿のベッドに押し倒していた。
チューブトップとホットパンツ、漆黒のコートに隠されていたエルフの剣聖の裸体が僕の眼前で暴かれている。傷もシミも見当たらないミルク色の肌、筋肉に支えられていたのか垂れていない綺麗なお椀型の乳房、金の糸のような長い髪がベッドに大きく広がり、月の光に照らされて黄金の海を作り出していた。
「んぅ……シ、シド……くすぐったい」
僕がまず味わったのはベアトリクスのお腹。余計な筋肉も贅肉もない細く引き締まった腹部に舌を這わせる。小さな楕円形のおへそを舌でほじくったら逃げようとしたので、滑らかな曲線を描くくびれに手を添えて動けなくした。
しばらくお腹を堪能した後、腹筋の筋をなぞるように上へと向かう。辿り着くのは頂上が桃色の二つの山脈。隙間から覗く碧眼がよく見えるように僕は胸を鷲掴みにして谷間を広げた。
その谷間や胸の下を丹念に舐める。自分では届くはずのない場所を這い回るぬるぬるの触感に悶えるベアトリクスを尻目に胸の下に吸い付いて鬱血の痕を付ける。
「あっ、んっ……くぅ、シドォ……身体が、はうっ、勝手に……うご、いてぇ……!」
山脈の麓を楽しんだなら今度はその頂上。ぷっくりと膨れた乳輪と乳首を舐めまわすだけでベアトリクスは軽くイッていた。どうやら彼女の豊乳はかなり敏感らしい。乳輪をなぞり続け、十分焦らしたところで乳首をつまみ上げるとしなやかな脚がピンと伸びた。快楽を逃そうと背中ものけ反っている。
ベアトリクスの股に触れてみると、くちゅ……と指にとろりとした液体が付着していた。
「これなら十分だね……ベアトリクス、こっちにお尻を突き出すように四つん這いになって」
「はぁ、ふぅ……こ、こうか……」
言われた通りに四つん這いになる彼女の視線が釘付けになっていたのは僕の勃起した陰茎。先端を秘部に当ててベアトリクスの身体が陰になって見えなくなっても、彼女はしきりに振り返って見ようとしていた。
「挿れるよ」
ずりゅう――っと。先端が蜜壺に沈み込む。同時に、そこから僅かな血が流れだす。数瞬前までベアトリクスが処女だった証だ。
「あ゛っ、ふ、ふぅぅぅ――ふぁぁ……んん゛っ!」
百年以上も純潔を保ったエルフの膣が一気に奥まで満たされ、ベアトリクスの引き締まったお腹が彼女の体内を貫く異物によって内側から盛り上がってる。そこをベアトリクスに意識させるために撫でてみたら僕も気持ち良かった。
動かない時はなでなでしよう……そう考えながら腰を引く。纏わりつく膣肉を剥がしながら愛液まみれの陰茎をゆっくりと抜いていき、後は亀頭を残すとなったところで――どちゅん、と腰を打ち付けて再び膣道を貫き、子宮口を殴りつける。ぐりぐりと押し付けて形を覚えさせることも忘れない。
「オ゛ッ――!? シド、それ、待って――」
自分のものとは思えない野太い嬌声が恥ずかしかったのかベアトリクスが止めようとしてくるが、もう一度腰を打ち付けて黙らせる。そこからはもう止めることもできないくらい休みなく腰を振るった。
「うあぁっ、んぃ、んひぃっ……ひゃんっ、ふあっ――イッ、クッ~~!!」
湿った肉がぶつかる音が部屋中に響く。ベアトリクスの背中に覆いかぶさってしたセックスはまるで獣の交尾だった。
シーツを掴んで我慢しようとしていたベアトリクスの喉は膣奥を突かれる度に喘ぎ、ふるんっふるんっと揺れるおっぱいを重力に逆らうように持ち上げられて揉みしだかれれば甘い声を漏らした。
快楽で震えるエルフの耳も男に食べられた。尖った耳はコリコリ、フニフニと味わうように食まれて、耳の穴を舐めまわされる感触とクチュクチュと響く音はまるで脳味噌から支配されるかのようだった。
ぷるんとした桜色の唇も強引に奪われた。頬を掴んで後ろを振り向かされながらのキス。指が口の中に入って頬の肉に当たるような乱暴なそれが何故か嫌じゃないのが不思議だった。
やがて僕も限界を迎えた。腰の奥から湧き上がってくる熱いものを陰茎を通じてベアトリクスの膣内に注ぎ込まれていく。
「ふぁぁぁ……! シドの、あついのが、どくっ、どくって、私のなかに、はいってくるぅ……」
初めての中出しを味わいながら彼女は太腿を絞め付けて子種を絞り取って来る。これを天然でやっているのだから恐ろしい。
射精が終わった陰茎を一度引き抜く。愛液と精液でドロドロの息子はまだ硬さも大きさもそのままだ。ベアトリクスの息が整ったら続きをしよう――そう油断していた僕を、彼女は押し倒して来た。僕に馬乗りになったことで見上げる形になった碧眼は何やら妖しい光を放っている。
「やられっぱなしは性に合わなくてね……今度は私が動くよ。声も出したくなったら出すといい」
どうやら恥ずかしい声を出させられたことにご立腹らしい。唇を舌で舐めながらお互いの体液で濡れている秘部で陰茎を呑み込み、腰を軽く揺らして慣らしている。
なるほど、なるほど……百年以上処女拗らせてたエルフが僕に勝てると思っているのだろうか?
「うぅ……んっ……んっ、んっ……シド! 君は……いじわるだっ」
騎乗位で僕を喘がせようとしていたベアトリクスは涙目になっていた。先程まで彼女を犯していた時は呼吸やタイミングを測って気持ち良くしていた。今はその逆で、タイミングをずらして腰を突き上げたりしている。そのせいでベアトリクスは僕をわからせるどころか自分が気持ち良くなることもできず、切ない思いをするしかない訳だ。
「ごめんごめん。もう意地悪しないから、ベアトリクスの好きに動いていいよ」
「本当だな? ふぅ……んっ、あっ、はぁぁっ」
ベアトリクスの抽挿はまだまだ拙さが目立つ。これだけなら僕はすぐにイクことはできなかっただろう。
だが――『武神』と称えられるほど強くて美しいエルフが自ら男根を受け入れ、快楽に身をよがらせ、悦びに喘ぐ姿が何よりも興奮させる。
腰を打ち付けた時により強く結合部を密着させながら亀頭にぐりぐりと子宮口を押し付けて、ここに吐き出せと子種を欲する天然の動きが獣欲を昂らせる。
「ふ――っ、ふ――っ、シドのおちんちん、あふ、はぁ、ナカ、擦れて……んんぅぅ――――っ!!」
ベアトリクスに口内をねちっこく貪られながら僕は二度目の射精を迎えた。形がわかるくらいドロッとした白濁液がエルフの子宮を白く満たして埋め尽くしていく――。
「どうかな……気持ち良かった?」
上半身を倒して胸を押し付けながら上目遣いで聞いてくるベアトリクス。
「うん。大分よかった」
「そっか……まだ、続けるかい?」
その答えは言うまでもなく――。
「やってしまったな……」
まだ夜の明けぬ丑三つ時。僕達は一旦落ち着いてピロトークをしていた。うつ伏せのベアトリクスが髪を耳にかけながら微笑みかけてくる。
「シドの子種でお腹がいっぱいだよ。股もドロドロだ」
「うーん……今更だけどさ、本当に中出ししてよかったの? 妊娠しちゃうかもしれないよ」
表の立場なら貧乏貴族でまだ学生のシド、裏の立場なら犯罪組織のボスのシャドウ。前者なら多少マシというだけで、僕達が子供を作ってしまうのは相当リスクが高い。そしてそのリスクはベアトリクスの方が大きいのだ。
するとベアトリクスは不思議そうな顔をした。そんなに変なこと言ったかな?
「性行為とは子供を作るための行為だろう? 私は君との子供なら産んでもいいと思っているよ。むしろ君は嫌だったのかな?」
「いいや、そうじゃないけど」
むしろ今の発言でベアトリクスが僕の子種で孕んでお腹を膨らませることを想像してしまった。そのせいで股間に血が集まっている。
それに気が付いたのだろう。ベアトリクスは仕方ないなというように腕を広げる。
「ほら、おいで。全部私の中に吐き出すといい」
♦♦♦
「シド!」
適当に選んだのに今やベアトリクスとの密会に利用するようになった宿の一室。部屋に入るなり飛びついてきたベアトリクスに胸板を頬擦りされる僕はされるがままになっていた。
「ああ……久しぶりのシドの匂いだ。エルフの匂いの中に私の匂いも混じってる。いいことだけど、本当は少し妬いてもいたから……嬉しい」
「それはよかった。じゃあ今度は僕の番ね」
「ふふっ……いいぞ」
今度は僕がベアトリクスのたわわな双丘に顔を埋める。頭を優しく撫でられながら柔らかくて温かいものに包まれて、女性の甘い香りやエルフの森の清水のような涼やかな匂いを嗅ぐ。いつまでも続けていたい至福の時間だけど、今日はそれ以上に大事なことがある。
「本当に妊娠したんだね」
「うん。百歳を超えていたから不安だったけど、ちゃんと私と君の子供だよ」
二人が見つめるのはベアトリクスの胸や女性器のような最低限の場所しか隠さない薄着に覆われていない剥き出しのお腹。日焼けの痕もない白い腹部は大きく膨らんでおり、新しい命がそこで眠っている。
「私達の子はどんな風に育つかな。シドに似たら元気いっぱいの好奇心旺盛な子で、妹に似たら笑顔が愛らしい可愛い子。姪だったら感情表現が豊かな楽しい子になるだろうね」
「ベアトリクスに似たら美人だけどどこか抜けてて支え合いたくなる子に育つんじゃない?」
「むぅ……君はまたそんなことを言う」
ベッドの上に座る僕の股の間にするりと入り込み、ベアトリクスはキスをしてくる。お互いの舌を銀の糸で結びながら見た彼女は完全に雌の顔になっており、蕩けた眼差しをこちらに向けている。
「もう孕んでるのに、ますます繋がりたい気持ちが強くなってる。胸だってシドが沢山揉むから大きくなってしまったし、エッチなこともいっぱい覚えてしまった……君と出会ってから私は変わってしまったんだ。どうにかしてほしい」
どちらから言うまでもなく二人の身体はベッドで折り重なり……愛を囁く声や性交の音が響き始めるのにそう時間はかからなかった。
叔母姪丼をやりたかったけどこれでは難しいので……別の話にするか、蛇足辺みたいな感じで纏めた奴を出したいかな。