シャニPと黛冬優子さんがなぁなぁでえっちしているお話 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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「そういえば、ふゆ、今日の現場で粉かけられたんだけど」
「粉をかけられた? ……あぁ、あの人か。それとも――」
黛冬優子が担当プロデューサーから聞き取った人名は、特撮ヒーローあがりの若手人気俳優と、歴史あるお笑い番組をきっかけにブレイクした若手ピン芸人の2人。それは、実際に冬優子を口説いてきた男性の名前ときっかり一致していた。
「へぇ? あんた知ってたんだ。あの人たち、手が早いって評判立ってるの? それともあんたの見立てかしら」
「両方さ」
「ふぅん」
冬優子は、プロデューサーの言い方と声音に、どこか切り詰めたものを感じた。もっと言いたいことが……あるいは、言いそうになったことがあったのを、押し隠したような。
冬優子が部屋のデジタル時計に目を向けると、9:02pmもとうに過ぎていた。部屋は担当プロデューサーが自宅として借りているマンションだった。冬優子が話に出した『現場』は、収録の終わりが遅くなる予定だったので、冬優子がリーダーを(そして、冬優子のすぐ横で座っている男は担当プロデューサーを)務めるアイドルユニット「Stray light」の中では、年長の冬優子のみが参加していた。冬優子がそういう仕事を狙い始めた頃、彼女は茨城の実家から都内に転居していた。そしてプロデューサーの部屋で夜を過ごす頻度も上がった。
「業界に入って何年か経ったけど、こういう週刊誌だかワイドショーみたいなコトって、ホントにあるのね。自分が体験したのははじめてだわ」
冬優子の声は、感嘆半分、呆れ半分だった。冬優子はもうおおっぴらにお酒が飲める年齢になっていたので、そういう誘いがあってもおかしくなかったが、実際に『現場』で口説かれたのは今日がはじめてだった。Stray lightでは、まだ現役高校生の芹沢あさひと活動をともにしているせいか、誘う側が敬遠していたのかもしれない。
「何を他人事みたいに。冬優子が今この部屋にいるのだって、十分ネタになるはずだ」
「……へぇ。『人気急上昇中のアイドルユニット・Stray lightのリーダー、担当プロデューサーのマンションでお泊りデート!』とか見出しになっちゃう?」
「人気急上昇中、とは大きく出たな」
「だってああいうのって大げさに書くじゃない」
プロデューサーと冬優子は男女の仲だった。冬優子が、彼の腕枕で目覚めた朝もすでに一度や二度ではない。
「……それにしても。ふゆ、『粉をかけられた』としか言わなかったのに、あんたはすぐ誰に口説かれたか言い当てたわね」
「そういう評判さ」
「意外ねぇ。あの人たち、オンレコのときより、ずーっと紳士的で、優しくって、イヤらしさもなくって、悪い気はしなかったけど。ふゆ、断る時ちょっと気がとがめたぐらい」
「評判が良ければ口説きやすくなって、口説くのが上手ければ評判が良くなりやすいんだよ」
「ちなみに、あんたも評判いいわよ? プロデューサーのくせに、すっごく。蛇の道は蛇ってやつかしら」
「このタイミングで言われても嬉しくない」
プロデューサーが沈黙し、それに代わるように、給湯器のスピーカーから女性の平坦な声が響いた。もうすぐ自動お湯はり・湯沸かしが終わる合図。
「男が女に優しいのは、おっかないぞ。特に、冬優子みたいなやつは気をつけたほうがいい」
「へぇー。あんたも、ふゆが怖いと思うぐらい優しくしてくれていいのよ?」
プロデューサーが返事を口にする前に、給湯器が湯沸かし完了を告げた。
「先、入っていいわよね」
「どうぞごゆっくり。寝落ちだけはしないでくれ」
「そんなに眠くないわよ。あ、ふゆが入ってる時に入ってきちゃイヤよ?」
「一緒に入れるほどうちの風呂が広くない、って知ってるくせに」
「そうね。1坪もないでしょ。最初は軽くカルチャーショックだったわ。実家以外のおうちのお風呂って入ったことなかったし」
冬優子は衣類ボックスの引き出しを開けて、バスタオルを引っ張り出した。
(……チョコレート、チーズ、缶詰、漬物、ドライフルーツ……)
風呂上がりの冬優子は、グレイッシュピンクのシャツパジャマに袖を通し、頭髪をタオルで繰り返し撫でて水気を落としているうちに、小腹が空いていることに気づいた。『現場』の終了時間が遅くなると想定し、夕方にそれなりの食事を摂っていたのだが、その貯金が尽きかけているらしかった。
冬優子はプロデューサーが入浴中なことに乗じて、冷蔵庫や収納をチェックしていた……が、
「酒のつまみばっかりじゃないの。あいつちゃんとごはん食べてるのかしら」
恋人の部屋で過ごす夜。冬優子は歯を磨いたあとにチョコレートだのチーズだのは食べたくなかったし、シャワーを浴びているプロデューサーから引き戸たった1枚の距離でもう一度歯を磨き直すのもイヤだった。妥協して、冷蔵庫から鉄分・葉酸配合の調整牛乳を出してコップに2杯飲んだ。コップを洗うついでに、カバンからマウスウォッシュを引っ張り出して口をすすいだ。
(ふゆが、あんたの知らないところで、他の男に言い寄られたってのに、ねぇ)
冬優子はプロデューサーのシングルベッドに腰掛けた。腰の下ろし方がいささか乱暴で、北欧あがりのありふれたフラットパックのベッドが、キシリと不満そうな音を立てた。
プロデューサーの気配は、壁越しに聞こえるか聞こえないかのシャワーの音だけ。
冬優子は、プロデューサーが風呂だけでなく自分の部屋全体を「狭い、狭い」と嘆くのを時折耳にする。冬優子も狭いと思っていたが、彼に比べれば割り切っていた。この通り防音はそれなり、防犯も現役アイドルが不安を感じずに出入りできる程度に確保されていて、テレビ局など都心からの交通の便もいい。冬優子は「これで広さまで求めたら贅沢だろう」と納得していた。
(マットレス、敷いておいてやろうかしら。それとも)
冬優子がプロデューサーの部屋に泊まる時、ベッドは冬優子が使い、プロデューサーは床にマットレスを敷いて寝ていた。それを続けるうちに、冬優子がマットレスを敷いておくとNG、敷いておかないとOKという合図が定着してしまった。
(……『粉かけられた』こと、もっと目の色を変えて根掘り葉掘り聞かれてたら、どうだったかしら)
数時間前、冬優子を口説いてきた2人をそれぞれ思い出す。特撮ヒーローあがりの若手人気俳優は、冬優子が猫をかぶったまま彼を持ち上げたら、彼のほうが見込みありと思ったらしく口説いてきた。冬優子が、ニチアサのルーチンでその俳優の出世作をたまたまチェックしていて、それを元に具体的に持ち上げてやったら、どうやら効きすぎたらしい。プロデューサーより線が細い優男だった。
若手ピン芸人――冬優子から見れば、中堅以上の年頃だったが――は、何がきっかけでそういう会話になったか覚えていない。ただソツのないトークはさすがプロ、という印象だった。
(あいつには、『断る時ちょっと気がとがめたぐらい』とまで、言ったんだけどね)
普通の男ならば、自分の恋人がモーションをかけられた挙げ句にそんな感想を漏らしたら、気を悪くするに違いなかった。少なくとも、冬優子はそれを期待していた。なのにプロデューサーの反応は淡白だった。
(どうせあの2人は、冬優子の「ふゆ」しか知らないで言い寄ってきたんだろう……なんて、たかをくくってるんじゃないでしょうね)
あんたのために猫をかぶってるんじゃないのに……と、冬優子は壁越しのプロデューサーに独白を投げつけ――投げつけるふりをして、自分に言い聞かせた。
(そういうの、鼻につくんだけど)
縛られるのも放っておかれるのも、冬優子は勘弁願いたかった。それがわがままだという自覚はあった。それをいい感じに満たしてもらえるから、彼女はついプロデューサーに気を許してしまう。
シャワールームの引き戸が開く音を聞いて、冬優子が視線を上げると、バスタオル姿のプロデューサーがひたひたとやってくる。
「ちょっとあんた、何か着なさいよ。ふ、ふゆがいるんだからっ」
「すまん。脱衣所に寝間着もってくの忘れてて」
冬優子の悪態もプロデューサーの謝罪も同じくらい空疎だった。
プロデューサーは、何も敷かれていないフローリングを一瞥した後、冬優子からコブシ一つぶんほど開けた隣に座った。冬優子は「何か着なさいよ」と一喝したが、プロデューサーはバスタオルのほかに下着だけ着ていた。だぶだぶのトランクスでルーズに見える。ふだんパリッとしたスーツをまとうプロデューサーとのギャップを感じさせて、冬優子はそれが好きでもあり嫌いでもあった。通気性が良さそうだな、と羨ましくも思っていた。冬優子はその膨らみ具合をとっさに確認してしまい、そうした自分の振る舞いを恥じて奥歯を噛み締めた。
プロデューサーが、冬優子の右側に腰を下ろして、ベッド越しにプロデューサーの重みが波及してきた瞬間、冬優子は太腿あたりをぶるりと力ませてしまう。風呂上がりの匂いを嗅いでしまう。シャンプー、リンス、ボディソープあたりは2人で別の種類を使っている。冬優子は興味本位でプロデューサー愛用のそれらを手で泡立てたり匂いを嗅いだことがあった。そのときは大した感慨がなかった。隣に座っているプロデューサーから漂うのも、それと同じもの……と冬優子の嗅覚はちゃんと認識していたが、脳裏にちらつく熱は全然違っていた。
冬優子は、まだ髪にタオルをトントンと軽く当てて水分を吸わせていた。首を傾げていて、そのまま横目でプロデューサーを見ると、プロデューサーのゴツゴツした首や肩、腋の下、胸板あたりが目に入る。プロデューサーは冬優子より20センチほど背が高い。冬優子がプロデューサーに顔を向けると、彼の顔と同じくらい彼のそのあたりがよく目に入る。その腕枕で目覚めた朝のことも思い出す。
プロデューサーのほうも、腰を下ろしたまま冬優子に顔を向けた。
「……な、何か言いなさいよ」
冬優子には、プロデューサーの目線や表情が気だるげに見えた。そのくちびるにタバコをふかしていたらさぞ似合いそうだと思った。冬優子はタバコを咥えたことすらなく、プロデューサーが喫っているのを見たこともないのに。
「冬優子を引っかけようとしてきた、御目が高くいらっしゃるお2人さんにも、冬優子はそう言ってあげたか?」
「まさか――んんっ」
まさか――あんたにしか見せられないわよ、と続けようとして、冬優子は自分のノドをつまらせた。冬優子は猫かぶりの「ふゆ」と素の「冬優子」を意識して使い分けて久しい。どちらも認めてくれるプロデューサーの態度は嬉しくてたまらなかったが、その使い分けを「俺のためだ」とプロデューサーに思われるのは別の意味でたまらなかった。
(おかしくなりそう、だわ)
冬優子が髪をケアする手は止まっていた。
「髪は、もういいのか? いい具合に見えるけれど」
「もしふゆが『もう十分だわ』って言ったら、どうするつもりよ」
プロデューサーが、左膝の上から左手を浮かせた。
「するつもり、だけど」
プロデューサーの浮かせた左手が、冬優子の肩を押すジェスチャーを返す。手は口より雄弁だった。冬優子は太腿あたりの身震いがまたじわじわと広がるのを、必死で押し隠した。
※
「ね、ねぇ……明かり、暗くしてよ、真っ暗じゃなくても、いいからっ」
「見たい気分なんだよ、冬優子を」
いつもは室内灯をまったく切って、ベッドサイドのランプだけ点けるぐらいだった。冬優子は明るい部屋で抱かれるのを好まない。正常位で押し倒された時、天井から投げ落とされるLEDの光が眩しいからだ。それを察してか、プロデューサーは冬優子をベッドに押し倒さず、抱き寄せて自分の両膝の上に乗せようとする。冬優子はあえて流されてやった。自分の身体をふわふわと軽いモノとして扱ってくれるのは嬉しかった。
(……澄ました顔してても、おっ勃ててるのバレバレ。男って不便ね)
冬優子の希望――ちゃんと「暗くしてよ」と口に出して教えてあげたのに!――を黙殺して抱かれるのは、彼女がもっとも厭う男の行為だった。プロデューサーと出会う前であったら百年の恋も醒めていた。プロデューサー相手だって同じぐらいの勢いで醒めている。ただ、この男がそんな行為に走るほど余裕を奪ったのが自分の挑発だ……と思ってしまうと、幻滅が深くなるほどに興奮も深まった。
「……んぷ、んくっ!? ……むぅーっ、にゃ、にゃにすんのよーっ」
くちびるを指先でなぞられると、つい咥えてしまう。冬優子の舌先とプロデューサーの指先が交錯して、互いのかすかな震えがつながる。プロデューサーの手がびくりと強張り、冬優子は自分から首を捻じ曲げた。
「んぷっ、ふ、ぅううっ――はぷっ、あ、あんた……ごういん、に……っ、んんんぅうっ……!」
冬優子は自分の肩と顎がくっつくぐらいの加減で、プロデューサーとのくちづけの応酬。冬優子の肩とプロデューサーの肩か胸板の間に、さっきまで必要以上に丹念に手入れしていた黒髪が幾筋か流れ落ちて、挟まれ擦られ、か弱くしゃらしゃら悲鳴を上げる。プロデューサーのキスはいつもよりペースが早い。いつもは額や頬や首あたりから始まって、くちびるも上と下と分けてそれぞれチュッチュッとわざと音を立てて遊んでからなのに。冬優子はそれを、丁寧に愛してもらえていると感じてときめいたり、手練手管を見せつけられていると感じて苛立ったりしていた。
今夜は反対だった。プロデューサーは早くも冬優子のくちびるの間に舌を割り込ませている。
「はぷっ、んっ……ちゅ、ぢゅう……っ、ん、んんぅう……っ!」
キスが激しくなる。呼吸がだんだん荒れてくる。冬優子はずるいと思った。プロデューサーはまったく頓着せずにこちらへ鼻息を浴びせてくすぐったがらせるのに、こちらはそんなこと恥ずかしくてできない。
「んむっ、んっ、ぢゅっ、むっ、くぅんんっ」
キスを続けたまま、プロデューサーが冬優子のシャツパジャマの襟をつまむ。
(あんた……キスしたまま、脱がせようっての……? 生意気ねぇ……っ)
冬優子はプロデューサーの手の襲来を、自分も手で迎撃する。すると手の甲をするすると撫でられ、冬優子は指先だけでなくくちびるや太腿までびくりとさせてしまう。プロデューサーの手と舌がいったん止まる。
(……プロデューサー、前も同じように、キスしながらふゆを脱がせようとして、何度かしくじってたっけ。プロデューサーが脱がしおおせたら、ふゆのおかげかしら)
冬優子の呼吸とデコルテは、荒く波打つまま。
(男物とは、かけかたが逆なのよ。こんなのも、ふゆの教育の賜物でしょ)
プロデューサーの指先を、冬優子は自分のボタンへ誘導する。ナイトブラの肩紐を落とさせる。最後の布一枚を剥がされ素肌になった。冬優子は、自分の鎖骨辺りから蜃気楼が立っているんじゃないかと思うほど、自分の身体を熱いと思った。
「ぢゅっ、んぐ、くふぅ――ぷ、はぁあ……ッ! なによ、がっついちゃって……童貞みたいよ?」
「ふゆにそう言われると、そんな気がしてくる。そんなワケないのにな」
「テキトー言って、このっ――きゃうううっ!?」
冬優子の甘ったるい悪態は、悲鳴で断ち割られる。
「な……あっ、あんた、そんな、いきなり……」
悲鳴で断ち割られ、冬優子がその自分の声に驚愕し、それからやっと、両乳首をつねられたことに気づく。
「……冬優子の、そういう声、聞きたいと思ってたんだよ」
「な、なにすんのよっ……あ、ひぁあぅっ! 乱暴は、やめ――んやっ、あああっ!」
プロデューサーの愛撫は、冬優子の想定をいきなり数段飛び越えた。乳首をつねり、乳輪ごとこね回し、手を広げて乳房の麓に指先を食い込まされる。
(む、むねっ、なんで、こんな……どうしちゃったっていうのよ……?)
冬優子の困惑は二重だった。プロデューサーの愛撫の流れが、いつもと明らかに違う……のに、冬優子の乳房は、それを知っているように甘く逆らい難く痺れる。
「こっちは、期待しているように見えるから、さ」
「そんなこと……あひっ、んひぃぃっ――ば、ばか言わないでよ、人の胸、オモチャみたいに――んやぁあっ! にゃっ、やめぇえっ……」
「……ふぅん」
プロデューサーは、少し指の動きを変える。指先だけで、冬優子の乳首を根本から押し倒すように、ぐにっ、ぐいっ、っと刺激してくる。痛みのような鋭さはない。しかし、
「冬優子が、乳首をこんなにコリコリにしてるの、初めてじゃないかな」
「あんた、知った風なクチ、聞いて……んっ、く、あ、あぁああ……っ」
プロデューサーの指先で押し倒されるたびに、冬優子の両乳首は、ますます硬く大きくなっていく。指先の嬲りに対抗する強情さのせいか、さらなる刺激をねだる貪欲さのせいか。
(こ、こいつの、手付き……まさか、ふゆ、に……んんんぅうっ、そんな、の……っ!?)
プロデューサーの指先は、冬優子に乳首快楽を与えることは二の次にしていた。代わりに、冬優子の乳首勃起を逆撫でして、勃起が激しくなっていく具合を確認したり彼女に実感させたりする気配が、ベットリついていた。
「んひゃあぅっ!? はぅ、ぁ、あっ、んんんーっ……」
「なんだ。さっきみたいな声、可愛かったのに」
乳首勃起が収まらない冬優子は、仕方なく奥歯を噛み締め嬌声を殺そうとする。
(なんなのよ、いきなりオラつきだして……ごういん、すぎぃっ……)
強引な愛撫。少なくとも、冬優子がプロデューサーから受けた覚えのない勢いで、胸の性感を開かされる。プロデューサーに比べると二回りほど細い肩も、腰も、手足も、ビクビクと弾かれ跳ねさせられる。
「たまには、こうしてやったほうが……いいかな。ふゆ」
ご機嫌をうかがう声音だったが、手の意地悪さは増すばかり。
「くっ、ぅううぅっ……あ、あはぁぅっ! ちょ、ちょっと、待って……っ」
(せ、せめて冬優子って、呼びなさいよ……っ)
冬優子は自分のおっぱいを敏感とも不感症とも思っていなかった。これまでは優しく、ぎりぎり触ってるとわかるぐらいの繊細なタッチで撫でられ……プロデューサーから撫でられると実感するだけで心地よかった。絶対に口にしなかったが、乳首をそうされるのが特にお気に入りだった。アイドルとしては絶対に晒してはいけない場所を、触ってもらって(もとい、触らせてあげて)いるという心地が、とにかく大切だった。それだけで冬優子はドキドキして、胸だけでなくお腹の下や首の後ろやらを高鳴らせてしまう……という具合だった。
「痛かったら、言うんだぞ。舌が回らなかったら、手をつねったり、肘打ちでも食らわして……」
「い、痛いってほどじゃ、ない……けど……うぅうぅうっ……っ!」
「イヌの唸り声みたいだな」
「んきゅうっ……! く、ぁあああっ……ふゆ、本当に怒るわよっ!?」
(い、痛い……ってわけじゃ、ない、けどっ……!)
冬優子は痛みを感じていなかった。痛い、と叫べばプロデューサーは止めてくれるはずだったが、冬優子は嘘をついてそうしてもらおうとは思えなかった。その嘘は耐え難い不誠実だと感じられた。
(っくぅぅぅ……な、なんか、コレ、ヤバい……ヤバい気しか、しない……ッ!)
プロデューサーの胸愛撫は、快感のように冬優子の興奮を煽るくせに、痒みのようにしつこくまとわりつく。一口目は美味しかったお酒でも、十杯飲めばうんざりして頭がクラクラするように、プロデューサーの指先は「気持ち良くしてあげよう」という顔をして、押し付けがましい法悦をまとい、冬優子のナカにしつこく入り込もうとする。
「はぁっ、あぁっあ……っめぇ……っ♥ あっ、んぅっ……♥ くぅうっ……!」
「……冬優子、おっぱいでそんな声を出したこと、あったかな」
「そんな、こえ、出してないっ……だして、ないから……やめなさいって……あ、ぁあぅっ……」
冬優子の脳裏に、プロデューサーにマフィンの作り方を初めて教えてやった時のことが浮かんだ。プロデューサーはアスパルテームを砂糖と同じ感覚で使ってしまい、舌や顎が溶けるのではないかという甘さの失敗作を作ってしまった。冬優子が漏らすこの嬌声も、ちょうどそのぐらい過剰な甘さだった。冬優子自身だったら耳を塞ぎたくなるそれを、プロデューサーは喜んで堪能している。
「点ばかりだと飽きがくるかな。今度は、面っぽくシてみようか」
「ふ、くっ、ぅうっ……か、勝手ばっかり、言ってっ」
冬優子は口を尖らせながらも、まだプロデューサーの膝の上で女体を委ねていた。プロデューサーの手つきが、乳首や乳輪を嬲り者にするものから、膨らみのふもとあたりを掬ったり揺らしたりする動きに変わった。ぞわぞわと迫ってくる甘すぎる快楽が後ろに退いて、甘痒さが薄らいだぶん上半身全体にじんわり染みていく。
それで幾ばくか余裕を取り戻した冬優子は、自分の異変に気づいてしまった。
(な、あ……ふゆ、なんで、濡れてっ)
とろり、と女性器の粘膜が濡れる感覚。失禁してしまったのと似た気まずさ。冬優子は自分の膣が濡れて嬉しいとは思わなかった。濡れなければ痛いけれど、濡れたところを見つかったら男が調子に乗る。
「……そういうあんただって、なんか、さっきより大きくしてるんじゃないの」
「ふゆが可愛いし、お尻があったかくて、柔らかくて……興奮するに決まってるじゃないか」
冬優子は、プロデューサーの興奮への冷や水になると期待して、精一杯の呆れ声と溜め息を見せつけたが、どちらかというと焼け石に水だった。
(あんたは開き直れていいでしょうねぇ!?)
今夜ここまでベッドでやったことは、キスと胸の愛撫。プロデューサーと冬優子は、それ以上の行為を何度もしたことがある。けれど冬優子は恐ろしかった。プロデューサーの手付きと男性器が興奮して、自分の乳房や膣粘膜がそれにはしたなく靡(なび)いてて、自分の心だけが置き去り。慣れている行為なだけに、いつもとの乖離がくっきり浮き出ている。
「ふっ、あ、はぁあっ♥ ああああっ……♥」
(なんて声だしてるのよ私ッ!)
それから不意打ちで、ふだんに近い優しげな指先が乳首を弄んでくる。くりくりくり、と無造作にされただけで、無防備に恍惚とした声が漏れてしまう。その声がプロデューサーの琴線にも響いたのか、腰や勃起ペニスがズルズル動いて冬優子にこすりつけられる。
「そんなに物欲しそうな声、聞かせてくれるなんて。気に入ったか?」
冬優子からはプロデューサーの顔が見えない体勢だったが、その囁きは嗜虐の期待に満ちていた。あまりに露骨で、耳元の響きと吐息の感触だけでも冬優子をクラクラさせた。
「……き、気に入ったワケないじゃないっ。あんたこそ……何、サドの趣味でもあったの?」
「さぁ……とりあえず、今までにないぐらい興奮してるよ」
プロデューサーはそう言いつつ、冬優子の乳房をいじめていた手を離して、細いウエストの近くに寄せた。中指が、小さいヘソと、縦にうっすら伸びた白線――腹筋の継ぎ目――を指している。プロデューサーは冬優子の耳元に顔を近づけていて手元が見えにくいはずなのに、冬優子が嫌になるほど正確に指先が動く。
(こんな調子で……な、ナカまで、す、する、つもり……?)
「あ、あぅ、くっ……」
冬優子はぎゅうとシャツパジャマをクシャクシャにして両腿を閉じる。そのはずみなのか、冬優子の愛液がじわりと下着を上塗りした。
(何よ……ふゆが、ちょっと他の男の話を出したぐらいで……嫉妬? あんた、独占欲そんなに強いの?)
冬優子は身体を緊張させたままだったが、一方で頬と口元は緩んでいった。
「ふ……ふふっ、ぁは……」
「冬優子?」
冬優子の目元も緩んだ。視界にチラチラと星が漂う。
(そんなに独占欲が強いのに、ふゆに、アイドルさせてくれちゃって。ファンのみんなとか、他の男に媚びを売ってるの、横で見てくれてる。ちゃんちゃら、おかしいっ)
息を吐きながら、冬優子はプロデューサーの両手に自分のそれぞれの手を重ねた。2人とも押し黙った。自分とプロデューサーの息遣いと体温と体重だけがそこにあって、冬優子は一瞬だけ自分たちが2人で一匹の奇妙なケダモノになってしまったんだ……と妄想した。迷光きらめくギブスンの<<スプロール>>でもお目にかかれない、キメラチックな生き物が脳裏を飛び回った。
「……なぁ、冬優子」
「ん、ふぅ……!? いきなり、なに、よ……っ」
プロデューサーは、囁きとともに、冬優子のアンダーバストに手のひらを寄せる。
「興奮、してる?」
「し、してないわよっ」
プロデューサーの手で、冬優子は心臓の鼓動を直に触られた錯覚さえ覚えた。
「下、触るぞ」
「ちょ、ちょっと、待って……っ」
プロデューサーの指が、冬優子のボトムスに迫り、ウエスト側の縁と、冬優子の肌の間に割り込む。ウエストバンドの紐は、冬優子のお腹周りに対してゆるく結ばれていた。脱がなくてもプロデューサーの愛撫を迎え入れるため……ではなく、肌にあとがつくのを嫌うため。
(……ッ、いくら、ふゆが、あまのじゃく気味だからって……!)
プロデューサーは、冬優子の鼠径部やパンティラインを指先で探る。興奮を帯びて腫れぼったくなった吐息が、冬優子のうなじや耳にかかる。
「こっちも、紐なんだ」
「だ、だって……っ」
「俺は、好きだよ」
冬優子は、この下着を選んだ自分を張り倒したくなった。数十分前の自分、朝の自分、この前の自分……張り倒す必要のある自分があまりに多いと気づいて、すぐバカバカしくなった。『現場』に向かう前の朝も、紐で留める下着を手にとった。プロデューサーへ肌を露わにする可能性がある日、冬優子は決まって紐の下着を選んでいた。サイハイソックスが腿に食い込んだあとは見せられても、下着のゴムのあとは見せたくなかった。
「あ……ぁん……♥ はっ、あんたっ……だ、め、く、くすぐったい、からっ……」
プロデューサーの手で冬優子は下腹をするすると撫でられ、時折ぐいぐいと揉まれ、太腿や腰骨をくすぐられ……それらを繰り返すうちに、ひくっひくっと膣奥が不随意に引き攣れてしまうようになる。しゃっくりに似ていて、不意にきて、堪らえようと思う暇さえ与えてくれない。着衣ごしとはいえあんまりな有様で、冬優子は泣きたくなった。
「はぁ……っ♥ あ、ふぁっ、はぁあっ……」
「冬優子……お前、いつもより、エロい……っ」
それでいて冬優子の一部――強いて身体の部位で表すなら、プロデューサーの吐息でくすぐられるうなじ近く――には、歯痒さと気まずさがどろどろと澱んでいた。憎からず思うこのプロデューサーから求められる。意地悪だが丹念な愛撫をもらえる。身体は過去のセックスとこれからの期待が混ざって、浮ついて蕩けそうなほどなのに、心のどこかが浸りきれていなかった。自分の心が裏切り者のようだった。
(私……どうして欲しいのよ? いつもみたいに優しくシてもらいたいのか、今みたいにムリヤリに……)
冬優子の散漫な思考と、下肢の緊張の隙間に、プロデューサーの愛撫が無遠慮に入り込む。
「はぁ――んああっ! あっだ、めぇ……やぁっ!? うぁッ――!」
神経が暴れていると思うほどの痺れと熱が駆け巡って、冬優子は悲鳴とともに四肢を震わせる。下着の内側がぐちゅりと呻く。明け透けな水音に驚かされる。
「……いつもより、感じてる?」
「かんじて、なんかないっ……あんた、ふゆのプロデューサーのくせに、どこに目をつけて――はぉぉぅうっ♥」
なんて下卑た声を、と思う暇もない。衣服と下着をずり下ろしさえしないまま、陰毛と、陰核と、陰唇の回りを指先で直接こすられる。
「あひゃぁっ♥ だっ、やぁっ、この……あんた、ばか――ああっ♥ んきゅぅうううっ……♥」
「うぉ……!? こんなに、濡らして……冬優子……?」
冬優子の股間がぐしょぐしょになっていることで、プロデューサーは急に勢いづく。力こそ加減されていたが、それ以外のすべてが我が物顔の陵辱となる。冬優子のかけがえのない場所を、オモチャとして弄ぶ。
「あやぁっ!? はげし――やめっ、やめなさいぃっ、あんた、あとでひどいわよ……ぉおっ♥」
冬優子は両腿を閉じて、プロデューサーの手マンを横から圧迫する形になる。それでもプロデューサーは構わず、こちゅっ、くちゅっ、と細い水音を手繰り寄せる。内腿がびくりと圧迫を乱れさせて、かえって愛撫を誘っている風だった。
(ぜ、ぜったい、おかしいわ……プロデューサーも、ふゆもっ……)
やがて愛液がプロデューサーの指先をグショグショに濡らし、ふやけさせる。
「あっ――♥ あんた、ナカ、なんてぇっ……!?」
「ふゆ……あったかいな……」
「ナニ勝手にしんみりして……ああっ♥ んっんんううっ! ふ、ふゆがしゃべってるでしょう!?」
「ふゆのかわいい声、もっと聞かせてほしい」
神経がむき出しにされたかと思うほど、快感が響いて身体を走り回る。耐えようとしても、ノドが条件反射のように躍って、媚びた声が湧き出てしまう。
「は、ぁ、ぉおっ……!? ぷ、プロデューサーぁっ、あ、あっ……♥」
「……きょうのふゆは、クリの気分かな」
プロデューサーは、両手を動員して冬優子の秘所に迫る。
(き、きぶんってナニよバカっ! あんた、ふゆのコトおかまいなしのクセにっ――)
冬優子は悪態をつこうとしたが、心の中だけで終った。
「くぅぅっ……あ、はぁ……うぅうぅうぅ……っ」
(く、クリっ……ナカも、外も、べったり触られ……っ♥)
冬優子の背後からのびてくるプロデューサーの手のうち、片方は恥丘のあたりを覆いつつ、熱を帯びているクリトリスの根本を指先で捕らえていた。もう片方は膣の入り口あたりに食い込んで、クリトリスの裏側あたりを今にも刺激しようという姿勢。冬優子は、クリトリスが皮膚の内側だと膣道をなぞるように二股に分かれているのを唐突に思い出した。この快楽メス突起を通して、肌の外側も内側も、この男の手中に収められてしまった錯覚が沸き起こる。
(クリ……くり……や、やら、れちゃうの……?)
プロデューサーの指は、冬優子のクリトリスを捕らえたまま、様子をうかがうように動かなかった。冬優子はうなじに無造作に撫でては消えるプロデューサーの荒い息が、くすぐったくてうるさくてたまらない。愛撫の凶手を圧迫して阻んでいたはずの太腿は、観念したようにだらりと脱力して伸ばされている。手はかろうじてプロデューサーの前腕に絡んでいるが、手付きはあまり悩ましくて、愛撫を押し留めようとしているのか、先をせがんでいるのか、冬優子自身でさえどちらかわからない。
「……そういえば」
「なに、よ」
冬優子の声は隠しようもなく上ずっていた。クリトリスを取り囲んで、今にも責め立てそうな指のカタチをしておいて、何をおしゃべりしようというのか。
(ここまで、ふゆのハナシ、まともに聞いてなかったくせに……)
プロデューサーが冬優子へ、押し殺した声でささやく。
「……『断る時ちょっと気がとがめた』とか言ってたけど、冬優子は――」
「――ははぁ……ねぇ、あんた、プロデューサーとして、ソコ、キになっちゃう?」
プロデューサーのつぶやきを覆い隠した。わざと「プロデューサーとして」と言った。冬優子の担当プロデューサーとして、少なくとも芸能界での交友関係は把握しておく必要がある。
「気になる、なぁ」
「……あはっ」
プロデューサーの返答は、冬優子からすれば欺瞞だらけだった。『根掘り葉掘り聞かれたら』……よりによってこんな瞬間に聞いてくるなんて。
(……ふゆのおっぱいもおまんこも好き勝手にいじめながら、プロデューサー面?)
何度考えてもおかしかった。
(あんた……ホントは、ふゆのコト、自分のオンナだと思ってるくせに)
冬優子は、快楽メス突起を手中にされたままだったが、そこからさっきみたいに強制的な快楽で追い込まれるのでは……などと、考えるのを止めた。
(でも、そう思ってる……ってふゆに思われたくないから、『プロデューサーとして』なんて……ふゆの明らかな見当外れに乗っかった)
やれるものならやってみろ、という捨て鉢じみた気分に変わっていた。
「……どうしても聞きたきゃ、カラダに聞いてみることね」
「カラダに聞いてみろ、か。リアルでそんなセリフ言うやつ、初めて見たよ」
ぬちゅ、ぬちゅ、と指が蠢き、冬優子の鼓動と肌の輪郭が乱れる。
「あ、ぅうっ……♥」
撫でると揉むの間の、ねっとりとした指使いが、冬優子をかき乱す。
「あっ、あっ、あっ、あふ、ぁ……♥」
冬優子は、自分が甘い声を漏らすのを押し殺さなくなった。出るなら出てしまえ、と開き直った。甘い甘い快感が脳漿をこぽこぽと茹だらせてくる気分だった。それでもよかった。
(いいわ、あんたが聞こえのいい体裁をぶら下げてるなら、ふゆだって……本当の顔は、見せてやらない)
ぐちゅ、ぐちゅっ、と水音が目立つようになる。冬優子は、後ろから覆いかぶさってくるプロデューサーの圧が高まるのを背中で感じ取っていた。
「……そうやって、ふゆをその気にさせられたら、教えてあげてもいいわ……あんた、好きでしょ、そういう趣向」
プロデューサーの指は、じりじりとボルテージを上げていく。冬優子は、また背筋がぞくぞく震えてしまった。このまま煽れば、ムリヤリ犯されて、暴力的な快楽に屈服させられて、この男のモノだと理解させられ、誓わされる……そんな想像が頭から足まで駆け巡った。
(ちょっとした言葉尻で動揺するようなあんたが、そんなマネできるのかしらね? ふゆ以外に、こんなに動揺させられたコト、あるの?)
本当にそんなマネをプロデューサーができるのか、試してやってもいいと思った。
「あんまり焦らしてくれんでほしいな。今日は、ちょっと調子がおかしくなってしまいそうだから」
「……へぇ? 楽しみ、ねぇ」
このプロデューサーとなら、もっとおかしくなってもいい……と、その時の冬優子はそう思っていた。
プロデューサーの手の指。10本のうち、長くて太めのどれか2本が、冬優子の陰唇を再び割り広げ、クリトリスの裏側に触れる。接近はそっと緩やかに、そのあと指の腹で、甘く苦しいプレッシャーをかけてくる。
「ああっ……!!」
「そういう声、好きだ……興奮するよ、冬優子」
声だけじゃ伝えきれないから、とでも言いたいのか、プロデューサーは冬優子の臀部に勃起まで押し付けてくる。
(……クリ、いつもより、敏感で……おっきく、なっちゃってる……?)
膣のすぐ外では、プロデューサーの別の指先が、クリトリスの剥けてきた甘皮と、神経の密集した核の部分を代わる代わるこね回す。あ、あ、と冬優子は声を絞り出される。チュクチュク、チュクチュクと、水音が増えて、指と粘膜の摩擦もなめらかになっていく。
「冬優子、ふゆこっ」
「い、いわれなくったって、自分の、名前ぐらい、知ってるわ……」
(チュクチュクって……こんなに、濡らしちゃってる。あんたの、指と、声、で……っ♥)
プロデューサーが冬優子の名前を呼ぶ声は、嫉妬か、性欲か、とにかく興奮で焼けるほど熱い。それを冬優子は耳から流し込まれる。頭から、胸に、下っ腹に、熱が溜まっていく。伝染させられている。
何かでプロデューサーに染め上げられているような……あるいは何かをプロデューサーから吸い取っているような、双方向の一体感に冬優子は没入していく。
「う、あ、ああっ……あ゛ぁっ!? はぁ、おお゛ぉぉお゛……っ♥」
「そういう声も出せるんだよな、冬優子は」
皮肉なのか、感嘆なのか。冬優子はプロデューサーの声から、苦笑いだけを聞き取った。
(や、やだぁっ……! ふゆに、そんな声、出させ、ないでっ)
直後、膣の中と外で、指が目まぐるしく動き出す。冬優子が膣周りでもっとも敏感に快楽を得られるのがクリトリスだ、とプロデューサーは当たりをつけたらしい。膣の浅いところや下っ腹を揉み込み、クリトリスに触感を寄せて集中させるように揉み込む。
(く、クリに、迫って……また、また♥ シちゃう気……なの……?)
肉に張り巡らされた神経は動かないが、冬優子の意識はクリトリスにどんどん誘導されていく。それを見計らって、プロデューサーがピンッとつまみ上げると、
「う、あ――あぁああ゛お゛お゛っ!?」
冬優子は快楽が圧搾されたように濃厚な喘ぎを漏らしてしまう。意識が快楽に塗りつぶされて思考もままならないのに、愛撫を受けているところの感覚だけはやけにクリアで、プロデューサーの指先の動きどころか、その指の腹にトロリと愛液を上塗りしてしまったのさえ知覚できてしまう。
(あ……こ、これ、やば、ちょ……つ、続けられたら……)
幸か不幸か、そこで冬優子は自分に迫り来るある種の危機を、いつもより早く気づいた。
(……お、おしっこ、漏れ、ちゃ……ぁあ、ああっ……! じょ、冗談じゃないわっ、そんなの、ダメ……)
決壊が刻一刻と迫ってくる尿意は、冬優子を戦慄させる。
「ああっ――あ、あああおっ!! ま、ぁ、ああっ♥ そ、それ、や゛――や、めて、はげ……っし……!」
「んん……? 冬優子?」
戦慄は冬優子から余裕を奪う。それが快楽に乱れる肢体と粘膜にも波及したのか、プロデューサーはなにかのズレを感知した風だった。
(の、ノドも乾いてないのに、牛乳2杯も飲んじゃったせいかしら……)
しかし指が冬優子をくじる動きは止まらない。
「あぁっ……♥ く、ふぅ……っ!」
「……そういう、こらえる感じ、すごく色っぽいぞ、冬優子」
それどころか、冬優子の変調はプロデューサーの興奮を煽り立てているらしい。愛撫は、強くなったり弱くなったり、鈍くなったり鋭くなったりをひらひらと切り替える。切り替わるごとに、冬優子の快楽を呼び起こす意思をどんどん強く示していく。
「ぁ、あぁあっ!? あんた、ちょ、ちょっと、待って、い、いったんストップっ……んぉほおぉっ♥」
「いやだ。『カラダに聞いてみることね』なんて啖呵を切ったくせに、いつもよりずっとよわよわじゃないか。それにまだ、冬優子のカラダは白状してないだろ」
冬優子は、直前までの自分を張り倒しても張り倒し足らない気分になった。
(う、ぅううぅぅ……やだ、ぜったいやだっ、あんたのまえで、もらすの、なんて、ぇ……っ)
冬優子はズルズルと一段深く膣壁を擦られ、下半身をガクガク震わせる。太腿や膝頭が勝手に力んだり弛んだりして、足先が猫の手のように丸まって宙で爪を研ぐ。
「お゛っ、ひぃ――ぃいっ♥」
「それとも……冬優子は、きょうはムリヤリされたいご機嫌かな。『サドの趣味でもあったの?』……とか、意識してしまっていたのか」
いつもなら冬優子が限界寸前のときにしか見せない挙動を、気前よく見せてもらっているせいか、プロデューサーはどんどん上機嫌になっていく。
「ダメぇ……あんたっ、ダメよ、ホント、に……んひぃっ♥ やぁ、めっ――てぇ、て、プロデューサーっ止めて……ああぁぅうっ♥」
にゅちゅぅっ、ぐちゅっ、ごちゅっ――膣から溢れる水音は、すでに失禁したような景気だった。ひょっとすると、もう漏らしてしまっているのでは……と冬優子は狼狽する。この男の前で、女としてあるまじき粗相をさせられるなんて……羞恥が冬優子の心をかき乱す。
「いや、やぁあっ! わ、悪かったから、ふゆが調子乗ってましたぁ……だから、止めて、離してぇっ」
「なんだっけ……忘れた。もういいだろ。今は、冬優子しか知らないっ」
プロデューサーは、手で冬優子を責め立てながら、腕や太腿を使ってさらに冬優子を強く抱え込む動きを見せる。
(そんなコト言うんだったら……黙って私の意図を汲んでちょうだいよっ!?)
冬優子は、愛撫に翻弄され愛液をしぼり出されながら、自分の身体がどんどんされるがままになっていくのを自覚させられる。腕はプロデューサーを振り払わないし掣肘もしない。イヤイヤと首を振っても、プロデューサーに後ろから舐められたり歯を立てられたりすると途端に抵抗できなくなる。口舌なんてとっくに陥落して勝手に嬌声を振りまいている。
(や、やだ、プロデューサーに、そんなところ……ッ、げ、幻滅、されたら……)
逃げ出したく――今度こそ逃げ出したまま、戻ってこれないかもしれない。二度とプロデューサーの顔を見られないかもしれない。今、自分が体重のすべてを預けているプロデューサーが、そうなった瞬間に煙のように消え失せて、もう身の置きどころがなくなってしまう。
「あっ――ああ、あっ、あうやあぁあ……っ♥」
不思議なことに、冬優子の心中が寒くなっていくほど、漏れ出る嬌声は甘ったるさを増した。身体は「そう」されたがっているようだった。
(だめ、だめぇ……こんな、状態で、続けられたら……もう、もう……っ!)
快楽と戦慄に埋もれかけていた冬優子の理性が、破滅的な予感に竦(すく)んだ瞬間。
「あっひ――ふぁ、あ、ひゅっ、ほお゛っ――♥」
突然、プロデューサーの指が、ぽってりと哀れなほど膨らみきった冬優子のクリトリスをしごきあげた。指の動きにすれば1擦り2擦り程度のそれが、唐突であっけない断末魔となった。
「ほおおお゛ぉぉぉぉぉぉっ……♥」
愛液よりだいぶサラサラした感触と、愛液とは異なったアンモニア臭と、冬優子のシャツパジャマの下を変色させてあまりある液量が、彼女の決壊を物語った。
(あ……ぁ、ふ、ふゆ……シちゃった……や、っちゃった……ぁ……)
プロデューサーは、冬優子の失禁に驚いているのか、愛撫を止めて無言になっていた。
「や、ぁ……み、みない、で……わ、わた、ひ……っ……あ、ぅあ、あ……っ」
(プロデューサー、ぷろでゅーさー、おねがい……おねがい、だから……)
冬優子は、体温と息遣いだけで、まだ彼がそこにいると知った。涙が瞳を幾重にも絡みつき取り巻いて、部屋の明かりが砕けたように乱反射していた。
(ふゆを……わたしを、きらいに、ならない……で……)
尿道口や膣周りの痙攣が、全身に薄れて余韻となるまでどれだけかかったか、冬優子はよく覚えていない。
※
「あんた、正座。そこに正座しなさいっ」
「なんだよ、冬優子」
冬優子は覚束ない足腰に鞭打って立ち上がり、フローリングの床を――右手人差し指を反り返るほど伸ばして――指差しながら、プロデューサーに正座を命じた。プロデューサーはベッドに腰掛けたままだった。ベッドは冬優子の粗相でだいぶシーツの色が変わっていた。
「……ねぇ、あんた自分がどれだけありえないコトしでかしたかわかってる? ふゆ、やめてって言ってたよね?」
「顔が赤いぞ」
「怒ってるんだから、当たり前でしょう……っ!」
冬優子はボイストレーニングで鍛えた成果を発揮しようと腹に力を入れた。それはほぼ徒労だった。腹に意識を向けた瞬間にそこがプロデューサーの愛撫を思い出してしまったり、ノドが嬌声でダメージを受けていたりで、せいいっぱい声を張り上げても心細い声量にしかならなかった。
「冬優子が嬉ションもらすなんて、ファンには見せたくないところだな」
「嬉ションとか言うんじゃない! ファンとか……アイドル以前に『ふゆ』として、というかオンナとしてアウトよ!? あんたもプロデューサーとかじゃなくて、オトコとしてありえないからッ」
冬優子は絶頂失禁の余韻が薄れていく間に、「恋人の前で粗相をしてしまった絶望的な羞恥」を「粗相をさせやがった恋人への憤怒」へすり替えていた。女心の防衛機制が働いたらしい。羞恥が強くなったせいで憤怒も強くなった。
「ありえない? そうか……ありえない、か。ふふっ」
「……ナニ笑ってるのよ……ヘラヘラ笑ったって、ふゆ、ごまかされないから」
しかし、冬優子に粗相をはたらかれ、寝床と情事を台無しにされ、こっぴどく罵られているはずのプロデューサーは、目元も口元も緩ませて笑っていた。見ていた冬優子が毒気を抜かれるほど柔和だった。
「自分以外にはありえないところを見せてくれるって、嬉しくないか? 俺は嬉しいよ。好きなオンナ相手なら、の話だが」
「好きなオンナとか、調子の良いことを……そうね、口八丁手八丁は、あんたの十八番――」
冬優子の、今は誰にも触れられていないはずの素肌が、プロデューサーの体温や吐息を思い出してしまった。フローリングをびしりと指していた指先は、もう太腿の横まで落ちていた。
そんな所在なさ気な手を、ベッドから腰を上げたプロデューサーが握る。
「――きゃっ……っ!? なにっ、触るんなら、声ぐらいかけて……っ!」
冬優子の素肌の次は、冬優子の頭が思い出してしまった。
(……猫っかぶりのふゆじゃないし、ましてホントのふゆでも、ありえないところ、あんたには……)
冬優子は泣きたくなった。このまま泣いたらクシャクシャになってしまうであろう自分の顔をプロデューサーに見せたくなかった。
けれど握られた手を振り払えなかった。
「冬優子は、どう思う?」
「ホントに、ありえない……あんた、ありえないんだからっ……ちゃんちゃら、おかしいっ」
冬優子が顔を隠すには、プロデューサーの胸を借りるようにくっつけるしかなかった。プロデューサーの勃起が冬優子のヘソ近くに当たってきて、冬優子はありえないほど無粋だと思った。
(……そういう、ありえないところを、ちょっとずつ共有しながら、あんたと、ふゆは……)
冬優子は粗相のあとも生々しいベッドの上に押し倒された。
(よりにもよってココなのかしら……確かに、この部屋にほかの寝場所はないんだけど。半分はふゆのせいだから、文句を言わないけど)
冬優子からみると、プロデューサーの顔は逆光なのに、彼の目は肌に染み入るかと思うほどギラついていた。冬優子はその目を心地いいと思ってしまっていた。
「ねぇ、あんた」
「なんだ、冬優子」
「……もっと広い部屋、借りなさいよ」
「冬優子が俺にもっと稼がせてくれれば」
「上等っ! あんたこそ、ふゆのためにキリキリ働いて――ん、ぷふっ、んんっ……!?」
(恋人とのヤリ部屋を広くするためにアイドル頑張って稼ぐ……とか、ありえないにもほどがあるわ。こんなアイドルを見て、嬉しそうにするなんて……おかしなプロデューサーに、おかしなアイドル)
「あんた、がっつき、すぎぃ……ん、んぅっ……♥」
点灯しっぱなしのLEDシーリングライトが眩しいのも、冬優子はもう気にならなかった。
「挿れるよ、冬優子」
前からプロデューサーにささやきかけられるのが、ひどく久しぶりだと冬優子は思った。膝を撫でられながら足を開かされる。プロデューサーはいつの間にかゴムをつけていた。冬優子はノドのあたりから痙攣のような笑いがこみ上げてきて仕方がなかった。
(……えっち以外でも、そのぐらいふゆの扱いを手際よくしてほしいもんだわ)
ゴムごしでも亀頭は柔らかく弾力があって、雁首より下は大きく重く……冬優子はその緩急を、ゆっくりと溜め息を吐きながら味わう。
「は、ぁ……ふぅうっ……ぁ、うっ……お、おっきい、わね……♥」
「……今ここでそのセリフは、さすがにあざといぞ」
「うっさい、ばかぁ……!」
このプロデューサーからあざといと思われるような本音を漏らしてしまった……そんな冬優子の自嘲は、律動に飲み込まれていく。
「ぁ……あ、んくっ……♥」
「くっ……冬優子、ナカ、キツ……っ」
「あんた、さっきのふゆと同じようなコト――ぁ、ひ、ぅうぁあっ……♥」
冬優子がナカに受け入れつつあるプロデューサーのモノは、彼女と彼が異なる性別の生き物であるということをイヤというほど実感させた。同時に、ここまでかけ離れている生き物同士が、こんなに深い一体感で結ばれていいものだろうか? と心配になった。
ゆっくりとした動きで、冬優子の膣奥までペニスが侵食していく。膣奥は、下腹を手でするすると撫でられたときと同じで、ひくっひくっと不随意に引き攣れてしまう。しかしプロデューサーがその引き攣れに呼応して歯を食いしばったり四肢を力ませたりしているのに気づくと、冬優子は妙に嬉しくなって、むしろわざと膣内に力を込めたり腰を揺らしたりしてペニスを挑発した。
「あんなコト言ってた割に、やる気満々じゃないか……っ」
プロデューサーは冬優子の挑発に乗り、少しずつ動きを大きくしていく。子宮まで届くんじゃないかと冬優子が思うほど奥深くに亀頭をのしかからせたり、そこからペニスの根本と腹直筋を押し付けてクリトリスを圧迫したりする。
「あうっ、ふぅうっ……プロデューサーっ、そんな、おく……ふぁあっ、か、はあぁああっ♥ も、い……っくっ…………!」
指責めのときよりおとなしい嬌声が、プロデューサーのあごや首辺りをくすぐった。舌もノドも押さえつけないまま、生の甘い媚びがくちびるから漏れていた。
「はぁっ、ふぁ、アァっ……♥ う、うごかない、の……?」
「……冬優子が良すぎて、動くと、出そう……っ」
「こ、この、そーろーっ……よわよわちんぽっ♥ ……きたえかたが、たりない、の……ぉ、ぉおっ……♥」
そういう冬優子も、膣内の『いい』ところに効かされたまま動かないのは堪えた。膣粘膜が勝手にひしひしとプロデューサーのペニスを愛撫して、その形を自分に写し取ろうとしていた。太くエラを張ったカリ首が膣奥をえぐっているところから、恥骨同士がごつごつと皮膚越しに葛藤しているところまでの感触が焼き付けられる。後を追うように、ゆったりと甘い絶頂も、プロデューサーから染み込んでくる圧力も体温も幸福感も、すべて折り重なって冬優子へ焼き付けられる。
「……まぁ、いいか。きょうは、まだ出してないし……」
不意に、プロデューサーから不穏なセリフ。独り言なのか、それとも、わざと冬優子に聞かせたのか。
(……どっちでも、いいわ……♥)
冬優子は口を開かず、腕と足を絡め直して催促した。粘膜がわずかに擦れて、そのしびれがぱちぱちと神経を酔わせる。その酔いは醒めるどころかどんどん広がって……プロデューサーが腰とペニスを引いて、
「冬優子、動くぞ」
「は、ぁあっ……♥ せ、せいぜい、気張ることね……っ♥」
半ばあたりまで引き抜かれる。この時点で冬優子はたまらない。膣内の刺激はもとより、陰唇の周りぐらいまで敏感になっていて、自分のそれがビラビラとめくれ上がってしまっているのまで感じてしまう。
そこから、ずるりと突き入れられる。
「はぁあ゛っ……あ、ああ゛おぉぉぉぉっ♥」
(だ、だめぇ、また、漏れ……ああぁぁあああっ……♥)
冬優子の秘所から、おびただしい雫がびしゃ、びしゃと肌やシーツにぶつかって弾ける。また失禁したのか、それとも別の体液か。どちらにしても冬優子にとっては激しい羞恥で、身をよじり悶えるしかない。冬優子のそのさまがプロデューサーの興奮をあおり、抜き差しをより激しく丹念にさせる。
「だへっ♥ ひっ、いぁあっ♥ そ、そんな、つづけ、え――ぇあぁあ゛あっあ゛あっ……♥」
「う、ォ……ッ! し、しま、る……ッ!」
快楽が想像を追い越していく。どこかで、ひときわ奥をごつごつと突いた後、どくんどくん……とプロデューサーがペニスを跳ねさせた。とぎれとぎれの低い唸り声を漏らしていた。射精したのか――冬優子の思考がそこに至ろうとしたとき、プロデューサーのペニスがズルズルと抜かれた。硬く勃起したまま、抜き差しが勢いを取り戻していく。
(こ、これぇ……いつまでも、続けられたら、ふゆ、はぁ……♥)
その予想は、冬優子にとって壊れてしまうほど恐ろしく、壊されたいと思うほど待ち遠しかった。
「はァっ、す、すごっ……♥ ふ、ふゆ、も、もう――あ、んくッ、はぁあっ、くンン……♥」
(このまま、続けられたら……ぜったい、ダメになる……あんたは、ぜったい続けてくるって、わかってるのに)
「冬優子……なに、まだ、まだだよ」
プロデューサーは冬優子にのしかかったまま彼女の足を両手で抱え上げる。
冬優子は、プロデューサーの肩に乗せられた自分の足が見えたが、足首より先がピンと延びたりギクシャク悶えたりしているのを見ると、なんだか自分の足じゃないように思えた。
そのままプロデューサーがまともに体重をかけてくると、冬優子のナカがごりごりと潰される。
「ぶっ、ぐ、ふぇぁ……ふ、ふかぁ♥ きついとこ、こす、れぇ……♥」
「あ、ははっ……そうか、コレ、キくかぁ、冬優子……っ」
プロデューサーは笑いながら、ベッドにギシギシ悲鳴を上げさせるほどペニスで杭打ちをかけてくる。奥を容赦なく嬲りつつ、ピストンで振られたプロデューサーの金玉袋が、叱咤か嘲笑か、冬優子の尻をぺちぺちと叩く。
(く、くるしい……ま、ら、い、イク……、もっと、ずっと、イカされ、ぇ……っ♥)
冬優子の絶頂は四方八方から彼女に絡みつく。理性を沈めて窒息させようとする。
「あ゛っ……あ゛ぁ、い、ぃひぃ♥ も、ぁあ゛ぁ――……」
終わりが見えない。それが冬優子をいつもより遙かにひどく狂わせている。彼女はプロデューサーの肉棒によって、絶頂かそれに近い心地を味わったことがあったが、それはいつも彼の射精という区切りをともなっていた。今は区切りがどこかへ行ってしまった。
「ひゅっ、う、ぷ、はぁァあ゛ッあ、あっあっ……お゛ぉぉおぉお……っ♥」
(こ、こわれ、りゅ……ふゆ、まんこ、イカされ、すぎて、こわ、れ)
プロデューサーは冬優子に何回射精しただろうか。何回射精したら終わるのか。認識する余裕がない。嵐のように荒れ狂う快楽に吹き流され、耐えきれなくなって千切れ飛べば終わり。
(そん……なの、なっちゃったら……ふ、ふゆ、もう――っ)
冬優子を壊そうとする素晴らしく残酷な快楽が、子宮から脊柱をつんざいて脳に叩きつけられる。肌や肉や五臓六腑は、ぜぇぜぇと半死半生の脳を守るどころか、快楽で波打つのに乗じて自分たちの火照りまで押し付けて、狂おしさを増幅させているようだった。
「ふゆ……ふゆ、こぉ……ッ! 愛――あい、し、て――」
(や、やら、ぁ、むり、むり……こんどこそ、こわれる、こわされ……)
壊れるのは、やっぱり恐ろしく、そして待ち遠しかった。冬優子はどちらかといえば、ガツンと一撃で玉砕させられるより、石が彫刻家のノミと槌で削られていくようにじっくりと壊されたかった。
冬優子の思考も、感覚も、飛び飛びになっていた。
「…ぁ……んァ……ぉ……っ……♥」
それでも、冬優子の願いが不思議と通じて、プロデューサーのペニスは、冬優子が嬌声も愛液も涸れ果てるまでコツコツと彼女をえぐり続けた。一撃一撃ごとに自分がプロデューサーの求める形にされている……という空想が、消えゆく冬優子の意識を最後まで慰めていた。
※
「……ゆこ、ふゆこっ」
「う、う゛ぅうぅ……あ、ぁあ゛……な゛、なに、だれ」
「黛冬優子のプロデューサーだよ。この部屋の借り主」
どす、どすっ……と、寝起きの冬優子のデコルテあたりに、プロデューサーが手のひらをぶつけてくる。強くはないが、冬優子の鎖骨とプロデューサーの手首の骨がまともにあたり、肌の下まで響く。ぞんざいというか乱暴というか、とにかくいい気はしなかった。
「もう朝だぞ」
「わ゛、わらし……ふゆ、きょう、オフで……」
(……オフの前だから、下着……可愛くて、色っぽいの、選んだのに……)
冬優子が手を突くと、かけられていた薄いタオルケットが滑り落ちるとともに、硬くて冷たくてまっ平らな感触へぶつかった。フローリングの床だった。どうやら、いつもプロデューサーの部屋で寝かせてもらっているベッドではなく、マットレスに寝かされていたらしかった。
「コンビニに朝メシを買いに行くんだが、冬優子は何がいい? カツカレー?」
「ふ、ふざけ、え゛っ……」
プロデューサーは、ざっくりとした白いワッフル生地のシャツに、アンクル丈のカーゴパンツ姿。外出はいちおうできるかな、という程度のラフさ。冬優子が前後不覚の間に、最低限の身繕いをしていたらしい。
「……ゼリー、ぎんい゛ろの゛、のむ゛やつ」
「あれ、確かいろいろ種類があったけど、なにかリクエストは?」
「な゛んでも゛いい゛」
「わかった……食欲、ないのか?」
(きのうのあんたのせいで、ふゆはノドがボロボロだから、そういうのしかノドに通らないのよ……っ!)
冬優子は叫びたくなるのを抑えて、プロデューサーの外出を見送った。ノドと膣粘膜のヒリつく感触が、彼女をぎりぎりで辛抱させきった。
(あー……首も、肩も、痛い……こんな薄っぺらな寝床に、ふゆを置きやがって……)
冬優子は寝ぼけ眼で『狭い』部屋を睥睨する。数時間前まで冬優子が抱かれ壊されていたベッドは、いつの間にかシーツを引っ剥がされていて、消臭剤らしきミントの香料がかすかに漂っていた。しかし失禁のあとは消しきれず残り香となっていて、その原因の彼女は思わず赤面してしまう。
(……あ。いつもは、ふゆがあいつにこっちのマットレス使わせてたんだっけ)
顔を洗おうと立ち上がるも、冬優子はさらなる違和感に足を止める。
(ベッドがああなのに……ふゆ、髪も、肌も、ベタベタしてない……えっ?)
冬優子はクローゼットのハンガーからプロデューサーのワイシャツを引っ張り出して羽織ったあと、洗面所横の洗濯機のフタをあけて中を覗いた。冬優子が濡らしたシーツと、冬優子の肌などを拭いてやったらしきタオルが、生々しい臭いを中でこもらせていた。防音が良いといっても、深夜か早朝に洗濯機を回すのは憚(はば)かられたらしい。冬優子は黙ってフタを閉じた。
(……ふゆ、あれからずっと高イビキだったの?)
冬優子より遅く寝たのか、冬優子より早く起きたか、とにかくプロデューサーが処理したのは明白だった。冬優子は気力を振り絞って再び洗濯機のフタをあけ、洗剤と柔軟剤を適当に注いでスイッチを入れた。
(……認めるの、なんかシャクだけど……確かに、あんたの言う通り。男が女にあげる優しさって、ときどき怖ろしいトコがあるわ)
顔を洗って、歯を磨いて、髪をとかして結び、ナチュラルメイクでまとめる。プロデューサーのワイシャツを羽織ったままだった。彼に見られたら『あざとい』と笑われるだろうか?
(怖ろしいわ。あんたに……あんなにひどいコトされたのに、どうしても許してあげたくなっちゃうから)
まだプロデューサーは帰ってこない。ノドが渇いた冬優子は、また調整牛乳をコップに2杯飲んだ。
(おしまい)