シャニPと黛冬優子さんがなぁなぁでえっちしているお話 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
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えっちしたりリモートオナニー見せあったりします。ポルチオ中心です。
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「こ、これ以上こっち触ったら……もうあんたとえっちシてあげないからっ」
深夜。
黛冬優子が、声を小さく低く落としながらも断固とした口調で突っ張ると、プロデューサーは目と口を丸くした。
「冬優子……え、本当にイヤだったのか……っ!?」
冬優子はプロデューサーの反応が、少し間抜けだと思った。
即座に『イヤに決まってるでしょ!』と言い返せない自分は、ひどく恥ずかしいと思った。
※
冬優子が、プロデューサーに条件付きセックス差し止めを宣告する10時間ほど前。
『あっ、冬優子ちゃん! すごいっす!』
『んー、何よー……いま、集中してんの、あとにして』
冬優子は、アイドルユニット・Straylightとしてともに活動する芹沢あさひ・和泉愛依の二人と、レッスンルームで衣装を着ながらダンスを確認していた。
ダンスを得意とするあさひはすぐに要領を掴んでいたが、冬優子と愛依は姿見を眺めたり、スマートフォンのカメラでお互いを撮影しあったり、まだ確認の途中だった。
冬優子はちょうど、ターンする時のスパイラルフリルのたなびき具合・見え具合をチェックしていた。
(あさひの、この『すごいっす!』の響きは、たいしてすごくないやつね)
冬優子はあさひの言葉を聞き流して、ターンを止めたあとのポーズで、腰のひねり具合を微調整していた。
『愛依ちゃん、見て、ほら!』
『んー?』
『冬優子ちゃん、うっすらだけど腹筋が割れてるっす! キレてるっす!』
『はァ!?』
『え、うちには見えなかったんだけど! ちょっと見せてーっ』
『見せるわけないでしょ!?』
それ以降、冬優子のチェックはまったくはかどらなかった。
夜。
(あさひのやつ……大げさに言いすぎなのよ)
プロデューサーが住むマンションの一室でシャワーを浴びつつ、冬優子は胴体をねじりながら鏡を見て、あさひに恨み言をこぼしていた。
(夏葉さんの又聞きだけど、腹筋ってもともと割れてるのよ。だから、体重をしぼって、その上でねじったり伸ばしたり力んだりしたら、ちょっとぐらい浮いてセパレーション見えるわよ。それを、まるでボディビルダーみたいに『キレてるっす!』って……)
同じ事務所のアイドルにして筋トレ愛好家・有栖川夏葉の言葉を思い出しつつ、あさひの歓声を断ち切るように、冬優子はシャワー水栓を必要以上に力を入れて締めた。
(でも……腹筋なんて、意識して鍛えたことないのに)
冬優子は腹に困惑を抱えたまままま、ベッドの上でプロデューサーと腕を絡める。
『んっ、ふぁ、あ……っ!?』
『冬優子?』
『な、なんでもないわ……ちょっと、くすぐったかっただけっ』
あさひの指摘が残っているせいか、冬優子は自分の脇腹やヘソ周りがどうしても気になってしまう。
そんなところに、プロデューサーが指先で肌をそろそろと撫でてくる。冬優子は彼の手付きをアンダーバストや腰まわりに感じるだけで、緊張を帯びた声を漏らしてしまう。
(り、力んで……腹筋が浮いてるところ、見られてないでしょうね……?)
これで、直にウエストを愛撫されたらどうなってしまうだろうか。
『きょうは……ふゆが、あんたにシてあげるわ』
『さっきの冬優子、新鮮でけっこうドキってしたんだが』
『ナニ言ってるのよ』
冬優子は緊急回避に出た。
プロデューサーの言葉を切って捨てて、ペニスを指で愛撫したり、くちづけしてしゃぶったりする。そのあいだ、なんとか冬優子は胸ならぬ腹につかえた危惧を無視できた。
プロデューサーのペニスが硬く大きく勃起してくると、冬優子は四つんばいになって、彼に尻を向けクイクイと腰を振った。
バックなら、プロデューサーからは冬優子の尻と背中と後ろ髪しか見えないはずだった。
『……う、後ろから……あんたも、もう入れたいでしょ?』
ヒップや太腿について思うところのある冬優子は、いつもなら頼まれても絶対にやらない誘惑だった。
(は、恥ずかしいけど……やむを得ないわ。あの感覚、『くすぐったかっただけ』で押し通すのは……こいつ相手じゃ、ムリあるもの)
冬優子の姿勢だと、彼女からプロデューサーの表情は目視できない。ほかの手がかりは、息遣い、声音、体温、匂い、ベッドを通して伝わってくる彼の体重移動。いろいろな気配はあったが、それらだけでは『押し通』せているか冬優子は判断しかねた。
『積極的なのは嬉しいけど、もうちょっと、濡ら……触らせてくれないか』
『ん、ふぁ……っ♥ しょ、しょうがないわね……っ』
プロデューサーも冬優子に合わせて両手両膝を突き、指や舌で冬優子を愛撫しにかかる。腰、尻のふくらみ、太腿、秘所の周り。
(っ、んんっ……や、やっぱり、こんな感じよね、このぐらいの……)
冬優子は、自分だけでなくプロデューサーまで四足の姿勢だと思うと、本当に動物のようにむさぼりあっている気分となった。
(んんっ、ふ、ぅ……♥ 別に、はじめてじゃないのに、なんか……ま、まぁバックなら、あいつに激しくされても、いつものことだし、だいじょうぶよ、きっと……っ)
冬優子とプロデューサーがセックスする時は、たいてい後背位か騎乗位か座位だった。正常位は、一度うっかり背中とベッドのあいだに冬優子の長髪が挟まれて傷む事故があって以来、避けている。
バックで挿入され抜き差しされる感覚は、冬優子にも覚えがあった……のだが、いつもよりそわそわしてしまう。
プロデューサーも四足の趣向にいつもと違った興奮を得たのか、冬優子の秘所が火照って濡れはじめたあたりで、腰骨をがっしりと保持してペニスを突きつける。
『冬優子……!』
『あんたいつもより興奮してない? 好きなの? こーゆーの』
プロデューサーの『いろいろの手がかり』から、冬優子は図らずも彼のテンションを察していた。
『うん……そうだな、興奮、しまくってる』
『はい、はい』
『入れるよ』
プロデューサーの張り詰めた切っ先が、冬優子の潤んだ入り口に沈み込む。
『んぁっ……♥ ぁ、ぅ、んん……っ!?』
『ふ、冬優子、あの』
『ぁ、あによっ』
『なんだか……いつもより、ナカの締め付け、キツくないか? だいじょうぶか』
プロデューサーは、膣口の浅いところで足踏みするようにペニスをゆるく小さく動かす。ただ、気遣いは動き方と口ぶりだけのようで、抜く素振りは見せない。
(う……いつもほど触らせてなくて、濡れてないかしら。き、キツ……で、でも、浅いところされてると、奥が、じ、焦れて……♥)
冬優子は両手首の間にひたいを押し付け、ベッドシーツにたっぷりのため息と少しのよだれをこぼしていた。苦しげな息を吸ったり吐いたりするのに合わせて、背中からヒップのラインを細かく波打たせていた。
『……ゆこ、冬優子っ』
『ぁ、は……っ、なに、よ、じっとして……もしかして、キツくて、動いたら出そう、とか……?』
『……あぁ、うん、ごめん』
冬優子の挑発からは、彼女の感じる快楽と、気負いと、ほんの少しのバカバカしさが透けていた。
(オトコって……いや、オトコなんてよく知らないけど……少なくとも、こいつは、ホント、単純、なんだから……っ)
冬優子はネット通販サイトを徘徊していた時、チラ見したパッケージを勘違いしてオナホールをクリックしてしまったのを思い出した。商品解説を読むうちに値段がお手頃と気付き、ちょっとした好奇心に負けて注文してしまった。品物は無事――もちろん家族には秘密で――受け取れたが、冬優子はその穴に突っ込むモノを持ち合わせておらず、ローションの代わりにベビーオイルを垂らして中指や薬指をズボズボして遊んだ。
冬優子はかつてないほど虚しい気持ちになった。
『ぁ、ちょ、冬優子、しま、ぁ……っ』
冬優子に余裕が戻ってきて、両肩と、首と、頭を順々に枕からもたげる。
プロデューサーに後背位で突っ込まれたまま、太腿も開いたり閉じたり、お尻を引き締めたり緩めたりする。膣圧の加減をくいくいと変えてやると、そのたびにプロデューサーは声や呼吸を動揺させるし、たまにペニスを根本からびくつかせる。
『……べつにー? ふゆは、あんたが動けなくったっていいけど。こーやって、勝手に楽しませてもらうわ……♥』
冬優子にとっては、油断するとウエストや膣奥に向いてしまう意識をそらしつつ、プロデューサーの悶絶を楽しめる。攻守どちらにとっても好都合だった。尻穴がもぞもぞ動いてるさまを見せてしまっている、と思いつつ、その羞恥もちょうどいいスパイスだった。
『ふ、ふゆこ、おまえ、え、えろすぎ、だって……!』
『ん、ふぁ、あ、は……♥ あははっ、ヘンな声……ふふん、ふゆのおまんこ、きもちーでちゅかー?』
(やっぱり、反応があると、気分、出るわねー……♥)
ベッドで三指どころか四足ついて、後背位で女性器を捧げて、ともすると自分がオモチャ扱い……というシチュエーションへ、冬優子は茶々を入れたくなる。冬優子がそうやって混ぜっかえすと、プロデューサーが面白いように反応してくれる。冬優子は女性器だけでなく、耳や首筋のあたりまで浮ついていく。
(キてる刺激、強さなんて、いまなんかオモチャと大差ないのにね……どーしたのかしら、きょうはやけに……)
冬優子はプロデューサーを翻弄しているという浮つきのあまり、自分が情事の最初にプロデューサーの愛撫をくすぐったがっていたことを忘れていた。
プロデューサーが、警戒混じりの気遣いで、冬優子をいつも以上に繊細に扱っていた理由にも気付かなかった。
『んふ、ぁ……ほらぁ、腰ぃ♥ 入ってないわよー? プロデューサーさん、おつかれですかー、ふゆが、リード、シてあげましょうかー♪』
『冬優子、おまっ……いつもは“ふゆ”じゃシないって言うクセに……!?』
冬優子は、プロデューサーのピストンに向かって、下肢をじりじりと押し出していく。受けるどころか迎え撃つぐらいの体勢で、結合部の粘膜がチュクチュクと擦れ合ってみだらに響く。
プロデューサーが時ならず発揮していた繊細さが、徐々に剥がれていく。
『でも、おかげで、盛り上がってきたよ、冬優子、ありがとうな……んぎゅっ!?』
『……っ♥ ちんぽ、おっ立てながらシンミリしないでよ……いや、シてもいいけど、ほら、笑っちゃって、おなか、きゅって、あははっ……♥』
『冬優子がその調子でいてくれるなら、もう、こっちもシていいよな』
(……『こっち』って、なに――)
冬優子が不審に思って、肩と首を捻ってプロデューサーの顔を見ようとした瞬間、彼女の下腹部が別の生き物になったかのような、熱っぽく危うい緊張がほとばしった。
(――あっ)
『さっきよりも……きゅって、なった、冬優子の、ナカ』
『ひぁ、あ、ふゅ……っ♥ ぷろでゅ、っ!? そ、こ――ふ、ぅううっ♥』
プロデューサーは、後背位で冬優子に挿入しながら、彼女のウエストに手を添えた。
愛撫、というほどでもない、摩擦や圧迫なしの、本当に添えるだけの刺激。けれど、刺激が淡いだけに、手のひらと指をいっぱいに広げて、興奮した体温で包み込んでくる――実はずっと触りたかった――というプロデューサーの切望が、冬優子にぴったりと伝わってしまう。
プロデューサーも、冬優子がウエスト辺りになにかしら違和感を抱えている、と気付いていて、どうやら挿入後もそこへの愛撫を手控えしていたが、冬優子の挑発でそれをかなぐり捨てたらしい。
『ん――やんぅ……♥ ん、だ、めっ!? そ、こ……んんん、ん……っ!』
『色っぽい声、出すなよ。嬉しそうに、びく、びくって……』
プロデューサーの『びく、びく』という言い回しは、冬優子の実際の反応と比べると、お手柔らかな表現だった。
(はぁっ!? ちょ、お、おなか、だめっ、なんでっ、そ、ん――っ♥)
プロデューサーが見て取った冬優子の反応も、冬優子が主観的に体内へぶち込まれつつある感覚も、彼が評したほど生易しくなさそうだった。
『はっ、ん……んんっ! んん、んっ……っは、はっあっ、あはああぁ……っ!』
冬優子はとっさに枕に突っ伏して声を殺そうとしたが、既に切羽詰まった嬌声が漏れていた。お尻の突き上げ具合が目立つばかり。冬優子の細くみえる腰がぴくぴくと小さく何度も跳ね、お尻と太腿の肉が盛り上がって、甘えるとせっつくの間ぐらいの勢いでプロデューサーの下腹部に押し付けられる。
(ふ、ふゆ、イク、ぅ――えっ、ナカで、い、イク、こんな、すぐっ……)
『冬優子、実は……これ、すきだよな?』
『な、ぁにっ、これって……んひぅうっ!? は、ハッキリ、言わないと、わからな――』
『まんこの奥のほうに、ハメながら……こうやって、外から、軽く撫でてやると……ぅおおっ、くっ! すごく、反応して……』
プロデューサーは優しげな声と、手付きと、腰つきだった。
言葉では冬優子の機嫌をうかがっている。手は冬優子のウエストをいたわるように包み込んだまま。勃起しきったペニスで、冬優子の膣奥を、とん、とん、と突っついているのは、激励で肩を叩く具合に似ていた。
『冬優子……これ、すきだよな。そう、思ったんだけど……』
『す、すきって、な、ちょ、ちょっと待って、こ、こぇ、続け、たら……んぁあうっ、ああ、あぁあっあっ……!』
さっきまでの冬優子であれば、物足りなくて、軽口さえ叩けたそれらの刺激が、いまの冬優子には完全に効いた。もう、精神も肉体も、効く雰囲気が整っていた。
『あっ、あい……だ、め……ぷ、ぷろ……い、いく…ぅ゛……ッ!』
『あぁ、冬優子……顔も、声も、俺に見せてくれ……可愛いけど、いやらしくって……!』
勢いは控えめなまま、しとしと愛液がとめどなく溢れて、通り雨のように二人の結合部から膝頭まで濡らす。冬優子の腰は休みなく上下に震えながら、力みのあまり尻えくぼや内腿をくっきりと浮き立たせている。さらにウエストは、プロデューサーの両手の間で駄々をこねるように、盛り上がったり縮こまったりして、膣内を引きずり回すような勢い。
プロデューサーとつながって――貫かれたまま包み込んでもらって――いなければ、意識も肉体も吹きこぼれてしまいそうだった。
『水着とか、あとは……セクシー、スタイリッシュ系の衣装だと……出しちゃうよな、ここ。きれいだよ……俺も、つい目が向いてしまって……』
『ひぁ、やぁっ、ん、くぅう……っ! あ、あんた、いつも“ふゆ”をそんな目で……』
『う、うっ……なるべく、そう見ないようには、してるんだが……』
『あ……あんたってやつはっ! ふゆ、おこっ、怒る、わ……んひゅっ♥ そこ、触るの、やめ、やめなさ――ひぁっ!? いって――も、だ……んんんぅうっ……!』
冬優子が怒って見せる真似は、まず腹の奥から突っ走ってくる快楽で傾いた。
それから冬優子は、ふだんの自分がプロデューサーから『そんな目』で見られるのを面白がって、時折『そんな目』を引きずり出そうとしていたのを思い出した。ヘソを出す衣装を合わせる時は必要以上に腰をそらしてひねって見せたり、肌を出さない時もキリキリと紐で曲線美を引き絞ってめいっぱい意識させていた。
それら過去の記憶たちが、いまの虚勢を遠くへ蹴っ飛ばした。
『へぅ……ぁ、ぅ、はぁう……っ!』
冬優子はかろうじて呼吸を整えていたが、冬優子の下肢はそれに逆らうのか嘲笑っているのか、どうしようもなく細かい痙攣を帯びたまま。
『冬優子。やっぱり、いつもとようすが……』
『い、いつものふゆって……あんたが、ふゆの何を……ぅ、ぅうう……っ』
プロデューサーが『そこ』から手を離してくれない。ペニスを抜いてくれない。冬優子の痴態に見入っている感嘆と、下手に動かしたら冬優子が壊れてしまいそうな懸念が、入り混じっているらしかった。
『こ、こんなの……ぁ、ぁううっ……♥ ふ、ふゆも、知らないんだから……っ!』
『……すまん、冬優子』
『あ、謝ったって……てきとーな、こと、言わな――』
『――もう、我慢できそうもない』
謝罪とともに、逆らい難く重たい快楽が、冬優子の中も外も押し倒してきた。
『ああっ、あっ……んぐ、ふぁあ゛……っ、おっおく、奥は、ぁっ……!』
『冬優子が、冬優子がイケないんだぞ……! こんなにしやがって、うぅ、冬優子、ぉ……!』
冬優子は、何が『イケない』のかわからなかった。よだれやすすり泣きで、ふゆらしくも冬優子らしくもない大惨事となった顔は、まだプロデューサーからは枕で隠せているはず。お腹の中と外とでムチャクチャに暴れ回る快楽は、プロデューサーのせいだろう。シーツをびちゃびちゃに濡らして……濡らしたらいつも喜ぶくせに。
(お、奥……気持ちいい……キモチイイ……こわい、ぐらい……っ)
肌も粘膜も肉も、暴力的な喜びに塗りつぶされる。悲観論者ぎみの冬優子は、苦痛なら最悪の事態を予想して覚悟を決められる。
けれど快楽にそんな心構えは通じない。ひとたまりもない。
『はっあっ……ッ!! あッ……!!』
そんな冬優子の内心に反して、彼女の下腹部はプロデューサーのピストンにきっちり応酬する。亀頭でポルチオをひたひたと撫でられれば、膣壁の奥はひしひし、手前側がギチギチと、独立した意思を持つようにやり返す。
『冬優子、奥、に、したら……俺も、すごく、きもち、いい……!』
精液を絞り出そうとする動きは、快楽でありながら拷問的な強引さだった。そのうちプロデューサーのタガはガタガタと落ちてしまったか、荒い息とともに腰を押し付けてくる。深みを掘削するように責める。
『や、め……♥ いま、うごい、ちゃっ、おかひ、く……うぅ、あぁぁあぁあっ……!』
冬優子は自分から勝手に溢れてくる涙と嗚咽の中に、体をぐちゃぐちゃに乱す快楽と同時に澄んだカタルシスを覚えた。不思議な気分だった。
『いい、いいよ、冬優子、すごく、素敵だ……』
プロデューサーから上体を力尽くで引き起こされて気付いた。こうして体を重ねる前に、二人きりの事務所で、冬優子は彼の胸を借りて泣いたことがあった。
ただその時と違って、プロデューサーの手は冬優子の肩を支えるのではなく、冬優子のウエストあたりをぎゅうぎゅうと揉んでいた。
(も……だ、抱くんなら……もっと、優しく……っ♥ という、いいかげんに、そ、こ……ぉおっ♥)
その時とは揉まれるほうの冬優子の体も違っていた。
肌の外側は湯気が立ちそうなほどの火照りと潤いをまとい、肌の内側は途方も無い快楽に酔わされ恍惚をさまよっていた。
『もっと、聞かせてくれ、冬優子の……っ』
『は、ひぅっ、んぐ、く……だ、め、いっ、イッて、おねが……ふゆ、ほんとに、いま、イッて……あ、うああ、ひあ、あぁ……っ!』
(こんな、イクの、いっちゃうの……よりにもよって、あんたに、聞かせ、ぇ……♥ ほんっとに、デリカシー、ない、あんた、は……♥)
でも、後ろから抱きしめられてヒソヒソささやかれるのは思ったより悪くない……と、現実逃避じみた独白を抱えて、冬優子の意識はオーガズムの波間に没していった。
※
「プロデューサー、正座」
「冬優子?」
「そこに座りなさいって言ってるの」
深夜。
黛冬優子が、声を小さく低く落としながらも断固とした口調で突っ張ると、プロデューサーは怪訝さをにじませつつベッドシーツの上に正座した。ベッドも肉体も、情事のあとを色濃く露骨に残していた。
冬優子が立ったままプロデューサーを見下ろすと、プロデューサーは当然のように冬優子の顔を見上げてきた。冬優子は口を開く……が、プロデューサーに『もしかしていま、顔を見るふりをしてウエストあたりを見ているのでは』との疑念がきざしてしまって、横隔膜の近くまできゅうきゅうと疼いて情事を懐かしがった。まともな声を出せそうにない。
いたたまれなくなった冬優子は、プロデューサーと膝を突き合わせるようにして自分も正座した。
「ご、ごほんっ! あーあ、我ながら立派なハスキーボイスね……」
「自虐のつもりか、それ」
「さぁね……ふゆだって、知らないわよ」
冬優子が座って二人の顔が近づいたおかげで、彼女の掠れたささやきでも、なんとか会話ができそうだった。
「プロデューサー……あんた、さぁ」
「うん」
「……そんなに、フェチ、だったっけ?」
「ふぇち……?」
冬優子は、プロデューサーの気のない返事を空惚けと解釈しないよう努力しながら、補足を加えた。
「ふゆの……その、おなか、周り……つい、目が向くとか……さっきも、ひつこく、触って……ふゆが、いって……や、やめてって、言ってたのに……」
「……フェチと言えるかどうかはともかく、そういうのは、事実だな」
プロデューサーの声は平坦に響いたのに、冬優子の腹の底はびくりと波紋に乱れた。
「参考までに、聞くけど」
「うん」
「ソコの、ナニが、す……スキなの? そんなに」
男が女のプロポーションを眺めるにしろ、女が女のプロポーションを見定めるにしろ、ウエストのくびれが重要だとは、冬優子もイヤになるほどわかっていた。ヘソ周りのたるみを恨めしくつねった回数は、一度や二度できかない。
けれどその理解と実感は、あくまで全身のスタイルを形作る曲線美の一角としてウエストを見るものだった。ウエストだけを切り取って鑑賞した時の価値は眼中になかった。
冬優子からすれば、プロデューサーが示したウエストへの執着――より正確に言えば、そこへのねちっこい愛撫――は、フェティシズムの産物としか言いようがなかった。
「最初は……というか、冬優子とこうなるまでは……そこ、見ても、きれいだなー、ぐらいにしか感じなかったんだが」
「うん、それがふつうよね」
「冬優子の、はじめて触るまで……美術品と言うか、彫刻みたいなもんだと思ってたよ。で、触った時は、やわらかくて、あったかくて、ああ、ちゃんと人間の体なんだなって、安心した」
「それは、ちょっとこじらせてない……?」
冬優子の声音は、下っ腹が騒ぐのを押さえつけながら返事したせいで、『ふつうよね』のくだりより、一段こもって鳴った。
「で……冬優子、そこ、反応よくって」
「く、くすぐったいからよ。あんただって、そこらへん触られたらくすぐったいでしょ」
「冬優子がイキまくってグロッキーになったあとも、そこだけは、すぅーって撫でてると、腹筋とかきゅっきゅって反応してくれて。表在反射ってやつかな」
「……は?」
「あと、鼠径部とか、腸骨の上とか、色っぽいし反応いいし」
「……そけいぶ? ちょうこつ?」
「えーと、ほら……」
「んんひぁっ♥ ば、ばかっ!? いま触んなくていいわよ!」
「ほら、反応があると、ついいじりたくなるだろ? で、入れてる時だと腰使うより加減しやすいし、楽だし」
「……え、待って、あんた」
「冬優子のそのあたり、いっつも触ってるうちに、どんどんそっちが好きに――」
冬優子は、『冬優子ちゃん、うっすらだけど腹筋が割れてるっす! キレてるっす!』の原因を確信した。
「――あ」
「あ……?」
「あ、あんたのせいじゃないのよーっ!」
冬優子は、嬌声の名残でひりつく喉粘膜を震わせながら叫んでいた。
その結果。
「こ、これ以上こっち触ったら……もうあんたとえっちシてあげないからっ」
冬優子が、声を小さく低く落としながらも断固とした口調で突っ張ると、プロデューサーは目と口を丸くした。
「冬優子……え、本当にイヤだったのか……っ!?」
冬優子はプロデューサーの反応が、少し間抜けだと思った。
即座に『イヤに決まってるでしょ!』と言い返せない自分は、ひどく恥ずかしいと思った。
「だ、だって……!」
「冬優子、む、無理に話す必要はないんだ」
「うっさい! だって、理由、言わなきゃ……ふゆがえっちだからしょうがない、って言い訳して触りかねないもん、あんた」
「はい」
「はぁ……」
冬優子は「本当にこいつに伝わるんだろうか」と半分あきらめつつ、昼にあさひからぶつけられた指摘と、それで彼女自身が受けたきまり悪さをぽつぽつと言って聞かせた。
プロデューサーの愛撫でびくびくさせられすぎて、お腹が引き締まって、腹筋が割れそう……本当だろうか? しかし冬優子にほかの心当たりがない。
冬優子にとっては魂が消え入りそうなほど恥ずかしい展開であった。けれど、それが一人で消化しきれそうもない悩みであり、しかも吐露して悩みの重さを半分押し付けられそうな相手はプロデューサーしかいないことも、彼女は理解していた。
「俺のせいって、つまり、そういう……」
「……だから、だから……こっちは、触っちゃだめ……あんたが、いくら触りたくっても」
プロデューサーに告白し終えた瞬間、自分の心が軽くなっているのに気付いて、冬優子は自分の心のあっさり具合に呆れた。
「うーん……冬優子が、そこ触ってほしくないってのは……あいたっ!」
八つ当たりもかねて、冬優子はしずしずと自分の手を伸ばし、プロデューサーの手の甲を指先でつねる。
「……俺が、そこ触ってしまうとまずいってのは、理解した」
「んっ」
「じゃ、じゃあ……しばらく、シないほうが、いいのか……」
「あんた、もしかして……ホントに、えっちするたびに、当然のようにいじってたわけ……?」
冬優子の腹部を愛撫してはいけない……という制約を、そのままセックス自粛につなげてしまうプロデューサーの思考回路が、冬優子は心配になった。
(こいつ……『フェチと言えるかどうかはともかく』なんて、よく言えたものね……!)
冬優子は押し黙った。
セックス自粛と聞かされて早くもむずかりだした自分の下っ腹に、そこはかとなくイライラした。イラ立ちを隠すのがせいいっぱいで何も言えなかった。
つまり無防備だった。
「じゃあ、冬優子」
「な、なによっ」
「セックスを控える代わりに、冬優子のオナニーを見せてくれよ」
「……なんですと?」
「だって冬優子は、冬優子以外で俺が抜いたら怒るだろ。だから、オカズに」
「そ、そんな、ふゆ、そんなんじゃ……っ」
冬優子は、ペニスをオナホールでずぷずぷ穿ったあと、かつての自分と同じぐらい虚無になっているかもしれないプロデューサーを、想像してしまった。
「冬優子以外で抜いたら、怒るよなぁ。なぁ?」
冬優子はプロデューサーの反応が、いまいましいほど間抜けだと思った。
『怒らないに決まってるでしょ!』と言い返せない自分も、同じぐらい間抜けだと思った。
※
オナニー問答からしばらく経ったある日。
冬優子は帰宅してから、“ふゆ”らしさをかなぐり捨てた野暮ったいほどの地味コーデと、着心地と放湿性にこだわりつつも地味なグレーのポリエステル製マスクを、私室に放り投げた。
手に持っていたのは、黒地に白字でポップな英文筆記体と楽譜があしらわれた家電量販店の紙袋。こちらはもう少していねいな加減で机の上に乗せた。その日プロデューサーを同行させて、秋葉原の電気街へ赴いて買い求めた品だった。
電気街での買い物は、最初から帰路まで行きあたりばったりだった。
『あんた、どこいるのよ? ちゃんとお店の入り口で待ってなさいって言ったじゃない』
冬優子とプロデューサーは、秋葉原駅にほど近い電器屋の入口で待ち合わせしていたが、約束の時間に落ち合えず、スマートフォンごしに通話していた。冬優子の受話口から、プロデューサーの声や雑踏に混じって、リパブリック讃歌をアレンジした宣伝ソングが音割れ気味に突っ込んでくる。しかし同じ店の入り口にいるはずの冬優子のほうには、その響きがそこまで大げさに聞こえていなかった。
『冬優子のところ、近くに何がある?』
『何があるって……』
『こっちは、シュークリーム屋さんと、パン屋さんと、ドーナツ屋さん……』
冬優子の目に映るほかの建物は、秋葉原アトレ2のファミレス、コーヒーショップ、たこ焼き屋。道一つ挟んだ隣の建物に、立ち食いそば屋や居酒屋。
『あー、あんたがいるの、TX側ね』
『え、こっちじゃないのか?』
二人が落ち合う予定としていた電気店には、2つのエントランスがあった。プロデューサーはいま、JR秋葉原駅でいう中央口に近い側の入り口に立っている、と冬優子は察した。いつも冬優子がつくばエクスプレスから乗り換える時に通る場所だった。焼き菓子やパンを売る店がいくつも密集していて、通りがかるだけで甘ったるい匂いがすることも思い出した。
冬優子は昭和通り口にいた。プロデューサーが聖蹟桜ヶ丘から京王線で岩本町まで来て秋葉原まで歩いてくる、という可能性を考慮した位置取りだったが、文字通りのお門違いだったらしい。
『ふゆがそっち行くわ。待ってなさい』
冬優子は通話を打ち切った。
二つの入り口は、歩いて3分も離れていない。
冬優子がプロデューサーを見つけた時、彼は2行3列に連結された6基1セットのガシャポンマシンが、10セットほどジグザグに並べられている一角を珍しそうに見ていた。
(おのぼりさん丸出しじゃないの。あいつ、秋葉原は土地勘ないのかしら?)
冬優子が声をかけようとした寸前、上から他事務所のアイドル声優がなにかの宣伝文句をぶつけてきた。見ると、AKAMIの大型LEDビジョンが新作アニメの宣伝を流していた。冬優子の頭には『なんでアイドルとプロデューサーがそんないい加減な待ち合わせしてるの?』と聞こえてしまい、ちょっと気分を害した。
『プロデューサー』
『悪いな冬優子、てっきりこっちだと思って』
冬優子は黙ってプロデューサーの手を引いた。
開けっ放しの自動ドアから一番近いエレベーターの前へそそくさと進む。
『いまはけっこう種類あるって聞いたけど……配信する人が多くなって、需要が増えて、いろんな品揃えも増えたのかしら』
『配信、俺はよく知らないけど……それはそれとして、リモートって仕事で使う人もだいぶ増えてるらしい。あれ、二人以上が同時にしゃべりにくいからディスカッションははかどらないけど、サシの打ち合わせなら、それ大した欠点じゃないし』
絶対に、アイドル・黛冬優子だとバレないように……と、ガチガチの装備に身を固めた冬優子が探していたのは、プロデューサーととある用途で使用するインカムとウェブカメラだった。
二人は4FのAV機器フロアでエレベーターを降りて、売り場を見渡した。
『じゃあ、ふゆとあんたには、お似合いね……もしかして、もう調べてきた?』
『調べてきた……って』
『そういう用途向きな機種、よ』
冬優子は、彼女以外の痴態でプロデューサーが性欲処理することはごめんで、さらに自分の知らない時間・場所で一方的に自分が『使われる』ことも嫌だった。
では、一方的でなければ?
『……店員さんに言って、試したほうがいいぞ』
『た、試すって』
『着け心地とか、声の聞こえ具合とかだよっ』
二人は、セックスせずに互いの性欲を処理するため、遠隔でオナニーを見せ合うことにした。そのための機材を探して、家電量販店までやって来たのだった。
『……わかってるでしょうけど、も、もし保存したら』
『しないよ』
『あんたを殺してふゆも死ぬ』
『しないよ。冬優子こそ』
『ふ、ふゆもしないからっ。当然でしょ』
もし、自分のオナニー姿が、プロデューサーの手元に保存されたとしたら……と想像するだけで、冬優子は気が触れてしまうと思った。写真を撮られたらカメラに魂を抜かれる、という明治時代の迷信を思い出した。
逆にプロデューサーの……冬優子は思考を止めた。
二人は、スピーカーからいろいろなデモ音源が流れるフロアを歩き回った。冬優子はオーディオへの関心が人並み程度で『何が違うのかしら』とつぶやき、プロデューサーが『大きい電気屋さんや専門のお店だと、店員さんに言えば聴き比べができる。さすがにスピーカーで試したことはないが』と応じた。
一人で来た時だと店員に聴き比べを頼みにくい、と思った冬優子は、せっかくだし……とプロデューサーを同行させたままイヤホンやヘッドホンの試聴を店員にいくつか頼んでみた。
SONY、YAMAHA、Pioneer、JVC、audio-technicaなどの国産から、BOSE、AKG、SENNHEISERなどの海外まで、目につくものは一通り。
しかし冬優子は、試聴中にプロデューサーからの視線をつい感じてしまって、だんだん音の違いがわからなくなった。
なお店員にヘッドセットやウェブカメラの売り場を聞くと『2階のPCアクセサリのフロアです』と返された。
そうして選んだた品物を取り出そうと、家電量販店の紙袋テープをハサミで切断するだけで、冬優子はそわそわと落ち着かなくなった。
それからウェブカメラを自分の端末にペアリングして、映像テストで自分の顔を見ると、あまりにそわそわした面持ちすぎてすぐ目をそらしてしまった。
(自分がどんな顔を相手に見せてるか、自分で見ながらえっちって……シたことなかったわね。ひょっとして、声も……?)
二人が決めた約束の日時は、素知らぬ顔で近づいてくる。
約束の1週間前、デートの約束とはだいぶ違うものだ、と冬優子は他人事のように自分を俯瞰した。
(へぇ、思ったより画質も、音質もいいし、設定もお手軽……そりゃ、素人も簡単に配信するわね)
約束の1日前、冬優子はカメラやモニタとにらめっこしていた。自室のライティングがなかなか決まらず、夜遅くまで照明をあれこれ弄り回していた。
(こんなことなら、カメラマンさんに『ふゆに勉強させてください♪』ってお願いして、ちょっとでも教えてもらっとくんだったわ……)
約束の1時間前、冬優子はふだんのセックスよりも慎重に入念に身繕いをしていた。特に髪は神経を使った。
(プロデューサーに『冬優子、ヘッドセット似合うじゃないか』とかおだてられて、買っちゃったけど……これじゃ一昔前に流行ったヘッドホン女子ね……)
約束の10分前。
(もっ、もう入室してる……き、気が早いんだから……よく、知らないけど……)
ウェブ会議システムは、あえてマイナーなアプリを新しくインストールしていた。
オナニーを見せ合う以外にそれを使わなくても支障がでないように。まかり間違って他の用途で起動することがないように。
システムは、アプリ内に仮想的なミーティングルームを設ける仕組みだった。ルームのホストが冬優子で、入室申請をしてきたプロデューサーを招待する。
プロデューサーの名前がスマートフォンの画面端に表示されていて、それをタップしようとする冬優子の指先が震えた。
茨城からの電車通勤・通学中にアニメや電子書籍を消化したいから、大きなディスプレイの機種が欲しい。でも、手に持った時に可愛いのは小さな本体。そんな葛藤の末に冬優子が選んだ私物のスマートフォン。冬優子のQOL向上に大いに貢献してくれているこのデバイスも、いまはプロデューサーと選んだウェブカメラとインカムをペアリングされて、オナニー用の機器と化している。
(……あいつがふゆを部屋に入れてくれる時、こんな気分なのかしらね……?)
『冬優子、俺だ』
「……時代遅れの詐欺みたいな口上、言わないでよ、プロデューサー」
インカムを通して冬優子に流れ込んでくるプロデューサーの声は、Hi-Fi(高再現性)の域を飛び越えて、現実よりもさらに無遠慮に鼓膜を震わせてくる、と彼女は感じた。手のひらのディスプレイに映るプロデューサーの面相は、冬優子が思ったより格好がついていた。
自分と同じぐらいライティングで試行錯誤したのかもしれない、と冬優子は妄想してしまう。
(プロデューサーは……おうちに、けっこうおっきなモニタ置いてたわよね。いま、あれにふゆを映してるのかしら。なんか、ずるい……)
『冬優子、設定がうまく行かなかったのか? それ、ずっと手に持ってるけど』
「ふゆの部屋、これしかあんたの顔を映すモノがないの。あんた、モニタでも買ってくれる?」
『冬優子がこの趣向をお気に召したら、な』
「ふーん、もし買ってくれたら、アニメ見るのにも使えるしー。お気に召さなくても、またシたいから買ってー、なんておねだりシちゃうかも」
『こらこら』
そんな手段で手に入れたモニタにアニメを映したとして、まともな心境で鑑賞できるだろうか? 冬優子は、自分のことながら想像できなかった。
(自分がプロデューサーにどう見えるかはウェブカメラでさんざん気にしといて、自分がプロデューサーを見るほうはこのありさま……我ながら、間が抜けてると言うか)
プロデューサーも冬優子も、しばらくくだけた雑談を続けた。
けれど冬優子は雑談の間も、いまここにあるいるヘッドセットやウェブカメラの用途が意識の底でゆらゆらしていた。
(ん……なんか雰囲気、違うわね……ヘッドセットのせい、かしら。プロデューサーの声も、息も、近い)
耳が熱いのは、耳殻をすっぽり覆うイヤースピーカーのせいか、それともみだらな気分が兆したせいか。
(あいつにも、ふゆの声がこんなふうに聞こえてるのかしら……?)
いつまでおしゃべりが続くのだろうか。
冬優子は、プロデューサーが“その行為”をねだる瞬間を待っていた。
(あいつがふゆでオナニーしたい、って言ったのがそもそもの原因でしょ……なら、あいつからお願いするのがスジってもんよね)
冬優子はプロデューサーを待っていた。待っているという体裁で、彼女は自分の期待を押し隠した。
(ふゆの部屋で、プロデューサーの声を聞くの、はじめてかしら……そういえば、ふゆがいつも寝てるベッドも、いまプロデューサーに見えてて……)
冬優子は会話の合間に、首元のリボンをすーっと引いてほどき、ブラウスのボタンをひとつふたつ外した。ブラジャーは、ウェブカメラごしのプロデューサーから見えるかどうか微妙なところ、と冬優子はあたりをつけていた。
プロデューサーと冬優子の雑談のリズムが、少しだけ乱れる。
(さすがに、リアルでえっちしてる時と比べると、ずっとわかりにくいけど、あいつの反応、わかっちゃう)
『見たわね? プロデューサー』
『……冬優子』
『ここ、ふゆの部屋だし、うちはみんなもう寝ちゃってるし。もうちょっと、楽な格好になっちゃうかしらねー』
冬優子のトップスは、薄いネイビー地に、襟と袖へ控えめなフリルをあしらったブラウス。ボトムスには黒いゴシック系のロングスカートをまとっていた。このまま秋葉原を歩いても違和感のない装い。私室でベッドに腰掛けているシチュエーションにしては堅めであった服装を、冬優子は徐々に緩めていく。
『冬優子が……』
『んー?』
『冬優子が、こういうことを他人に見せるなんて、みんなは思わないだろうな』
『……そうかしらね』
冬優子は、若い女性が自己顕示欲を手っ取り早く満たすために、男を性的に煽れるような自分の姿をネットに投げてしまう行為へ、多少の理解があった。プロデューサーにはそういう理解がないのだろうな、とも思った。
(もし、こいつに声をかけられていなかったら……どうかしら、ね)
冬優子は、ポジティブ方向にもネガティブ方向にも想像がつかなかった。それだけプロデューサーとの出会いで自分が変えられてしまったのだと実感して、背筋がくすぐったくなってしまう。
「もっと、見たい?」
『……うん、冬優子の、見たい』
「あんたも、見せてよ」
ブラをずらして、乳房の曲線を半分ほど露出させながらささやく。もう少しで乳首が見えてしまう。冬優子の胸の膨らみ。アンダーバストあたりを紐で結ぶなどして強調すればなかなかのものだが、肩を開いてしまうとちょっと心もとないかな……と冬優子自身は評価している。
「ん、ぅ……ぁ、あん……っ、ん、んっ……」
思ったより肌が敏感に反応して、ブラウスにシワが寄ってしまう。あとでアイロンをかけなければ、と思いつつ、さらにボタンを外し、ブラを見せつける。瀟洒な白レースは、冬優子の好みよりやや甘めの少女趣味。
『可愛いな、ふだん、もっと堪能しておけばよかった』
「そういえば、いつもはシャワー浴びちゃうから、あんま下着って……」
冬優子は下着のセンスを褒められたのが嬉しかったけれど、自分の肌や曲線より先に下着が褒められたのに小腹が立った。
(ちょっと冒険してみるぐらいじゃ、伝わらないかしらね……?)
冬優子はくちびるのそばに人差し指を立てた。プロデューサーの息を呑む気配が、ヘッドセットを通して冬優子の鼓膜に、脳裏にまで伝わってくる。
「静かにしてなさい……静かにしてられるもんなら、ね」
指先に触れさせた舌は、唾液がねっとりと染み付いていて、その潤いを指先に塗り拡げると、はしたないほど甘酸っぱい匂いがした。ちゅぷ、ちゅぷとわざわざ行儀悪く水音をさせて指に唾液をなじませてから、その手で乳房を愛撫する。
『……うっ、冬優子の、おっぱい……しかも、自分でいじって……』
「ん、くふ、ふ……なに、童貞みたいな、うぶな反応しちゃって……」
スカートに巻いたベルトをゆるめ、ブラウスの前ボタンをすべて外してしまう。
(あ……おへそのあたり、つい、見せちゃった……ええい、ままよっ)
「ねぇ……ふゆのおっぱい、触りたい? 好き勝手、もみくちゃにしてみたい?」
冬優子はブラをもっとずらして、ついに乳首を露出させる。乳首が思ったよりツンと立っていて冬優子は唖然とするが、すぐにそれを押し隠して、虚勢混じりに膨らみごとカメラへ向けて突き出す。コリコリと、冬優子の好みよりも強めにいじる。
「あぁうっ……! んふ、くぅん……はぁ、んあっ……♥」
乳頭も乳輪も、思ったよりツンと立っているだけでなく、思ったよりぴりぴりと敏感だった。冬優子は演技臭く聞こえるよう、誇張した猫なで声をマイクへ吹きかける。
『うぉ……冬優子、すご……もう、そんなに勃って……!』
プロデューサーのつぶやきを強いて無視しつつ、冬優子はロングスカートからも肌を見せる。スカート裏地のダークトーンに、自分のふくらはぎや膝が白く映えていればいい、と冬優子は願った。そうやって徐々にあらわにされていく肌が、乳首への強めの自涜からもらい火してふわふわと波打つ。この感覚はプロデューサーにどこまで伝わっているだろうか?
「あん、ハァ、ハァ……んくっ、ふぅうっ……♥」
冬優子からは、いつものプロデューサーとの前戯より甘ったるい嬌声が漏れていた。勝手に冬優子の喉から出ているのか、あえて彼女が聞かせているのか。
「あう、ああ、ん……っふ、んふっ……あんたも、興奮してきた……?」
冬優子の問いかけは、半分カマかけで半分確信だった。
プロデューサーはノーネクタイのワイシャツにスラックス姿。肌もさほど赤くないし股間あたりもよく見えなかったが、冬優子の耳元にやってきて染み渡る吐息は、興奮の色をはらんでいた。
『冬優子が……シてるとこ、やらしくて、興奮してる……!』
「じゃあ、あんたも見せてみなさい。ふゆだけやらせるなんて、ずるいじゃない……♥」
冬優子は、プロデューサーが部屋でひとり虚しく男性器を勃起させている姿なんて、たいそう間抜けに見えて笑えてしまうに違いない、と心配した。それで、冬優子の手のひらにあるモニタの中で、プロデューサーがなにやらごそごそやっているあいだ、冬優子は彼を見ても嘲笑ってしまわないよう、奥歯を噛み締めて心の準備をしていた。
(……あ、プロデューサーの……ふゆが、触ってもいないのに……っ)
冬優子の警戒はある意味で杞憂だった。
「あ、ハハッ……♥ あんた、もうそんなにおっきくして……ふゆがこの手でいじめてあげられないの、惜しいぐらいだわ……っ」
プロデューサーが画面越しに冬優子に見せてきた勃起は、直接手の届かない距離から見ると、立ち小便の最中のように無防備で、確かに印象は滑稽だった。
(事務所のみんなが、あんたのこんな格好を見ちゃったら、どんな反応するかしらね……)
けれど、滑稽さは問題でなかった。
プロデューサーの無防備で滑稽な格好を見られるのは、自分だけのはず……という優越感が、冬優子の内側で欲情と混じり合って、彼女の意識も表情筋も占領していく。
嘲笑どころではない。
「だいたい……あんただって、ちんぽ以外も、けっこう反応してるんじゃない?」
『む、う……そうかも、な……』
「じゃあ、もっと反応させてみましょうか……?」
ロングスカートはフロントでスナップボタン留めになっている。冬優子は胸をいじりながらでもパチ、パチ、と片手で外せる。太腿も、ブラに合わせた白レースの下着も、例の下腹部も、プロデューサーの前に晒していく。
『うぅ、冬優子……』
「情けない声、出しちゃって……あんたのことだから、ここ、触りたいでしょ? でも、ダメ……見てるだけで、我慢しなさい」
プロデューサーの顔が見えなくても、耳元にかかる彼の呼気の落ち着かなさや、唾液を飲み込んだような気配で、冬優子は彼の意識がどこへ注がれているか察した。
(あんたが触りたくても、ダメよ。ぜったい触らせてあげない……触れるわけないんだけど。なんだか、このシチュエーション、気に入っちゃいそう)
白レース下着の内側で、秘所がとろとろと濡れてしまっているのを感じる。でも、ウェブカメラごしのプロデューサーにはおそらく見分けられないだろう。
それなら、と下着をぎゅうっと割れ目に食い込ませる。
『うぉ、おっ、冬優子……やば、そんな、ことっ……!』
「もっと、お願いしてみなさいよ……ちんぽおっ立てながら、ふゆのスケベなところみたいです、って……!」
下着を食い込ませたまま、生地が伸びてレースが傷むのも構わずずりずりと擦り上げる。膣口と陰核が同時に刺激され、甘い痺れが熱と湿り気がじんわりと立ち上る。
(ぁ……おなかの、あたりまで、熱く、なって……♥)
『あぁ、冬優子、ふゆこぉ……!』
「はぁっ、んんぅ、ふあ……あはっ、こんなんで興奮するなんて、あんた、やっぱりヘンタイだったのね……♥」
プロデューサーのもだえを堪能しているうち、冬優子の中に出来心が湧いてくる。
「うわぁ、プロデューサーさんって……ふゆの、こんなところ見て、興奮するヘンタイさんだったんですねぇ……幻滅、しちゃいそうです……っ」
『おま、冬優子……それって』
「ふふん、どっちが興奮するの? ばーか♥ あんたはふゆの見てて、サルみたいにシコってなさいっ」
布越しにかすかに浮いてしまったクリトリスを、指先でくりくりといじめる。甘い痺れが否応なく広がる。冬優子は自分の手首でも、自分の下腹部の反応を察してしまう。
(う、わ……おなかも、ぴくぴくってシちゃった……ま、まぁ、あいつから触られなければ、だいじょうぶでしょう……だいじょうぶよね……?)
「プロデューサーさんは、ふゆのおなかが、すきなんですか?」
『う、うぅ、すき、だよ……冬優子の、おなか……』
「……でも、触らせてあげないっ、あんたは、そこで見てるだけよっ」
冬優子は、もうモニタごしにプロデューサーの姿を目視していなくても、彼の挙動が手にとるようにわかった。
スマートフォンをベッドに置いて、目も閉じてしまう。入念なシミュレーションのおかげで、ウェブカメラの位置は頭に入っている。アイドルとしての訓練があってか、プロデューサーから自分がどう見えているかもしっかり思い描ける。
(確かに、ウェブカメラも買っておいてよかったわね。端末のカメラを使ってちゃ、どうしても片手が塞がるから……まぁ、スマホスタンドでもよかったかもしれないけど)
冬優子は自分の両手をウエストに添えた。慎重にやったせいか、以前もらったプロデューサーからの愛撫を思い出して、膣奥あたりが切なく震えた。
「ふゆの、おへそのあたりで、プロデューサーさんは興奮しちゃうんでしたよね……♥」
『俺……冬優子のそこ、グラビアとかMVとかでふつうに……俺、相当まずいことやらかしてるんじゃ……!』
冬優子は白線――腹筋の縦の継ぎ目――が浮き気味で、へそもそれに合わせたようにちょっと縦長で収まっていた。それを冬優子が、手で両端からクイクイと引っ張って広げてやる。陰唇を広げて挑発したような興奮が、腹の底から湧き上がる。
「すっご、息、荒くなりすぎでしょ……こんなんで、どんだけ興奮してるのよ」
『だって、冬優子が……そんな、しかも自分から……』
「あんたがぜったいに触れないからね、いまは……特別よ?」
冬優子は、へそをいじくり回しているうちに、プロデューサーのペニスで膣奥を蕩けさせられた記憶が蘇ってきた。おかしな話だった。冬優子のへそは、彼女が胎児だった頃に母親の胎盤とつながっていた痕跡であって、冬優子自身の生殖器と直接は関係ないはずだった。
(そうよ、ホントは、関係ないところなのに……プロデューサーの、せい、で……っ)
自分が心地良いと感じる行為に応じて、リアルタイムでプロデューサーの興奮が伝わってくる。それでいて、ふだんのセックスと違い、冬優子の主導権は盤石。
都合が良すぎてめまいがしそうだった。
『冬優子……俺には、さんざんいじるなって言っておいて、自分で触る時は、ぴくぴくさせやがって……!』
「そりゃあねー……あんたが好き勝手するのと、いっしょにしないでよ。あんたができるのは、興奮して、シコることだけよー……♥」
冬優子は、腹部を揉んだり撫でたりすることで、確かに自分が快楽を得ている……と、認めざるを得なくなってきた。それがプロデューサーの開発のせいか、それともいまマイク越しに流し込まれているプロデューサーの反応のせいか、彼女はどちらとも断定できなかった。両方のせいかもしれない。
「ふゆのおなかで興奮するなら……もしかして、ここだけで、射精、できますか? なーんて……やってみる?」
さんざんシミュレーションしたウェブカメラの映り方を、冬優子は意識の向こうに投げ捨てる。カメラのどこかを引っ掴んで、ヘソの近くに向ける。
(あ……ん、んぉ……♥ な、か……プロデューサー、が……っ)
言葉がなくても、プロデューサーの欲情と視線が、冬優子の急所をとらえていた。プロデューサーにはそこしか見えていない、と確信できるシチュエーション。冬優子のおなかに流し込まれる欲情も、濃縮されてしまったかもしれない。
「ふゆの、おなか……プロデューサーさんが興奮してくれてるってわかったら……ふゆも、きゅん、きゅんって♥ 嬉しくなっちゃうかも……そう、見えます……?」
『冬優子、おっ……見た目どころか、そんなことまで考え、てっ……』
「見える、って、プロデューサーさんが、言ってくれたら……」
『そう、見える……そうとしか、見えなくなっちまうよ……!』
「そうですか……ほら、外だけじゃ、ないですよ……? ふゆのなか、おまんこのおくも、プロデューサーさんを、思い出して、ぇ……♥」
膣奥なんて見えるはずもなかったが、冬優子は「このプロデューサーなら、どうせわかるだろう」と思っていた。諦念と安心、優越感と被征服感が混じった奇妙な信頼だった。
(こ、これぇ……このままだと、ホントに、おくまで感じて、濡れて……?)
冬優子は、カメラがヘソに接写しすぎていて自分の全身像が見えないのを良いことに、プロデューサーどころか自分自身にも見せたことがないほどみだらに腰を揺らしていた。体がプロデューサーのペニスで貫かれていないぶん、余裕はあるし寂しい気もするしで、やりたい放題だった。
「はぁ、んんっ、あくっ……♥ あ、ああ、あふ、んっ、ぷろーでゅーさー、さんっ……♥」
『くぅ……っ、冬優子、そんなところまで、俺に、見せて、聞かせてくれて……』
プロデューサーを挑発する勢いで、鼠径部に力をこめて、ガニ股ぎみに膝を割ってみる。すると冬優子は、プロデューサーの視線で犯されている――あるいは、プロデューサーに犯させている――気分が増す、と気付いてしまった。可愛げの欠片もない、露骨でわいせつでだらしないポーズを、快楽とともに自分からとってしまう。
『冬優子、ふゆ、っくぅ……!』
「あ、は、アハハっ、ホントにコレでイッちゃうの? あんたってば……この、ヘンタイっ、ヘンタイプロデューサーっ♥ ふゆのぽんぽん、触れなくて、じれったいでちゅかー?」
『ああっ……! う、ぅううう……ふゆ、冬優子ぉ……もう、本当に……』
ヘッドセットから注がれる限界間際のプロデューサーを感じていると、冬優子は彼と遠く離れているはずなのに、頑張ればいつもより近づけそうな気がしていた。彼の気配を引っ掴もうと手を伸ばすように、おなかをぎゅうぎゅうと力ませたりねじったりした。そのたびに、絶頂寸前のように愛液がとろとろと下着も内腿も汚していく。
(ふゆが、あんたをイカせるのに……指一本もいらないなんてね。我ながら、ズルいって思っちゃうぐらい)
冬優子は、腹の外も中もプロデューサーに蕩けさせられた記憶を思い起こしながら、彼をいま完全に自分が主導しているという状況に酔い痴れている。冬優子は逆転のカタルシスに浸っている。刺激はさすがに本番ほどではなかったが、幸福感でいえば二倍どころか二乗になった心地だった。
「イッちゃえ、プロデューサー……ふゆのおなか、見て、ちんぽ、シコシコしてるだけで、イッちゃえ……っ♥」
『ぅうう、くそ、触りてぇよ、ふゆ……ぅううぅっ……!』
「だめですーっ♥ あんたは触っちゃいけませーん。まぁ、出せたら、褒めてあげるわ。立派なヘンタイさんっ、てね……♥」
『うぐ……! くそ、冬優子にそんな、耳元で、言われて……おかしく、なるしかないだろ……!』
プロデューサーは、ふゆに煽られながら、射精を我慢しているようだった。男としての最後の意地なのか、単に射精寸前の快楽を引き伸ばしているのか。
冬優子はどっちだろうと同じぐらい愉快だった。
(こいつ言ってたっけ……『冬優子とこうなるまでは』とかなんとか。だったら……これ、ふゆのせいかしら。あんたをこうしちゃったのは、ふゆだって……思っていい?)
冬優子はベッドに仰向けになりながら、両肩より上と足裏だけをシーツにくっつけて、ブリッジくずれの体勢をとっていた。こうすればお腹の中も外もこれ以上ないぐらい引き締まって、プロデューサーを間違いなく搾り取れるだろう。想像だけでわくわくして冬優子は頬が緩んだ。
『冬優子、もう、俺は……イク、イッて、しまうから、あ……あぁあぁ……っ!』
「イッちゃえ、プロデューサー……イッちゃえ、ふゆの、見てるだけで、イッちゃえっ♥」
いきなり、プロデューサーの息が奇妙に細くなった。歯を食いしばったまま息を吸っているせいだろう、と冬優子は思った。そうして吸い込んだぶんが、やがて震える吐息となって返ってくる。
(あーあ、プロデューサー……イッちゃったんだ。ふゆのオナニー、見てるだけで……あは、アハハ……っ♥)
プロデューサーの絶頂とともに、冬優子も何かの糸が切れたのか、女陰から失禁のようにとめどないよだれを溢れさせ、下着どころかシーツまで濡らしていく。プロデューサーの吐息と同じぐらい、冬優子の体もかすかな震えを続けていた。
(あ……洗濯、めんどくさ……いつもは、あいつが始末してくれるのに。あーあ……♥)
冬優子は絶頂の余韻が引いたあとも、プロデューサーとだらだら通話を続けた。
その中で、プロデューサーの後始末がティッシュ数枚であっさり済むと知ってしまい、冬優子は彼を逆恨みしてしまった。
※
それからしばらく、冬優子とプロデューサーは相互オナニーで性的衝動を解消していた。
冬優子が『冬優子以外で抜いたら、怒る』というプロデューサーの見解を否定しなかったため、プロデューサーが性欲に応じて冬優子に相互オナニーを持ちかけてきて、風変わりな密会に興じる頻度も、それなりのものとなった。
冬優子はその頻度に呆れつつ、プロデューサーの欲望を自分が操縦しているような気分は面白がっていた。
『冬優子、なんかふつうにシてる時より、大胆になってないか?』
『あ……あんたがちんぽシコってるの知ってると、おかしくって、ふゆまで変なテンションになるのよ』
『言っておくけど……記録はしてなくても、俺の記憶には残ってるんだからな』
『ふーん……じゃあ、それで思い出しオナニーでもしたら? そっちはノーカンにしてあげる』
ときどき冬優子は思い出しオナニーをしていたが、オカズとして思い出す記憶は、プロデューサーとのリアルなセックスのほうが多かった。
さらにいくらか日数が経った頃。
冬優子は、とあるロケでなかなかOKを出せずに時間がおして、茨城の実家への終電を逃してしまった。
冬優子は、実家には「事務所に泊めてもらう」と言い、事務所には「車で送ってもらった」と伝えた。
その夜、冬優子は(プロデューサーに)車で送ってもらい、事務所(の一員であるプロデューサーの部屋)に泊めてもらっていた。
事務所のほかの仲間はもとより、冬優子の家族だってアイドル活動を応援してくれているのに、嘘をついて……と冬優子は葛藤したが、その夜の彼女にはさらに重大な問題が発生していた。
プロデューサーの部屋に送ってもらった冬優子は、茶すら飲まずにシャワーを浴びた。肌から水分を拭うと、グレイッシュピンクで男女兼用デザインのゆったりしたパジャマに身を包み、機械的な手付きで濡れたロングヘアの手入れを始めた。
プロデューサーは冬優子へ「疲れてるだろうから、もう先に寝てろ」と言い置いて風呂に入ったが、プロデューサーが風呂から上がってみると、髪の手入れを終えたらしき冬優子は、ベッドのへりに座ったまま、足先を所在なさげにぶらぶらさせていた。
「……どうして」
「冬優子」
「どうして、こんなことになっちゃったんでしょうね……」
冬優子は風呂上がりのプロデューサーに視線を向けると、パジャマの薄布ごしに、自分のウエストまわりを撫でながらぼやいた。
プロデューサーがぼやきに応じる前に、冬優子が再び口を開いた。
「あのディレが! ふゆになかなかオーケー出さないから! きょうのロケだけであんなに体重増えちゃったじゃないの!」
「冬優子。お前、酒が抜けてないな……?」
冬優子はきょう、山梨県某所のワイナリーを宣伝するため、ロケの仕事をこなした。そこで食レポに大苦戦し、何度もテイクを重ねる羽目になって、想定以上に飲み食いさせられていた(愛依とあさひは未成年だったので、この仕事に同行していなかった)。
その影響は、既に体重計を通して冬優子に突きつけられていた。
「こんなことなら、愛依やあさひも付き合わせるんだったわ……それなら、少しは負担が減ってて」
「無茶言うな。まだ冬優子しか酒飲めないだろ、年齢的に」
「……あんたとアイドル始めた頃、ふゆも飲めないトシだったのに、ね」
冬優子は、湯上がりの火照りをまとったままなプロデューサーの腕へ、自分のそれを絡めた。
「……プロデューサー」
「なぁ、冬優子」
「あによ」
「念のため確認しておくが、腹筋を鍛えても、腹の脂肪が落ちて部分痩せするわけじゃないらしいぞ」
「……そうらしいわね。お腹の脂肪って、腹筋の外側につくものだって」
冬優子は、かつて夏葉に雑談の中で「どうして、脂肪っておなかにばっかりつくんでしょうね」と聞いた――「どうして、腹筋って割れちゃうんでしょうね」とはさすがに聞けなかった――ことを思い出した。
夏葉は「……おなかのあたりって、だいじな内臓があるのに骨がカバーしてないから、脂肪で守ろうとしているのかしらね」と返事した。夏葉にしては慎重な言い回しだったので、冬優子の印象に残っていた。
(たぶん夏葉さんは、「どうして! おなかのお肉が胸やお尻にいかないのよー!」なんて嘆いた経験、ないでしょうね……)
冬優子がいま抱きついているプロデューサーの体躯は、それなりにゴツゴツとたくましく、男らしく、運動不足にさえ気をつけていれば何も気に病まず済むだろうな……と思うと、冬優子はまた彼を逆恨みしたくなった。
(……まぁ、こいつはカラダを売り物にするわけじゃないから、ね……)
プロデューサーは、冬優子のやさぐれた独白を知ってか知らずか、手入れされたばかりの彼女の髪の毛を、そよそよと撫でた。かつて、彼女のおなか周りを愛撫していたのに負けないぐらい、優しげな加減だった。
「きょう……うまく進まなかったこと、気に病んでるのか」
「……そーゆーことにしといて」
(『ふゆの“ここ”がちょっとプニっとなっても、好きでいてくれる……?』なんて、しおらしく言ってみたら、こいつどんな反応したかしら)
その想像と、久しぶりに触れ合わせたプロデューサーの体温で、冬優子の“ここ”は奥のほうからくつくつと期待で茹だってよじれた。
(これ……こいつに、『ふゆを、あんたの好みに変えていい』って、そういう解釈になっちゃうのかしら)
冬優子は、『……シてあげないからっ』というかつての宣告を無視するかのように、プロデューサーにぎゅうと体を寄せる。プロデューサーは冬優子の髪を撫でるばかりだった。
「シたいわ」
「そうか」
「シたいの」
「久しぶりな気がする」
冬優子は、おなかを触っちゃダメという言いつけをプロデューサーが律儀に守ってくれているのが嬉しかった。その言いつけを無視してプロデューサーが強引に触ってくれないのは嬉しくなかった。
「キス……」
「しながら、触ってもいいか?」
「……まだ、ダメ」
冬優子はプロデューサーとくちびるを合わせ、懐かしい粘膜のざらつきを重ねた。体温と味とともに味わうプロデューサーの反応は、これまでに覚えがないほど慕わしかった。
(前にシてた頃、こんないちいち声を掛け合ってたっけ。インカムごしのえっちで、へんなクセついちゃったかしら)
プロデューサーの手のひらを、寝間着の薄布ごしに触れられた鎖骨で、冬優子が感じとる。ぶるり、とそこから緊張が波及して、ねちゅ、ぬちゅという水音とともにキスがズレてしまった。
「ふ、ぁ……ふふ、触りたい……?」
「さ、触りたいとも」
「まぁだ、ダメよ……でも、ただダメってのも不親切ね。まずは、ふゆがシたげる……♥」
湯上がりのしどけないプロデューサーの肉棒を、冬優子はあっさり目の前に引き出す。キスに濡れたくちびるを、彼の切っ先に寄せる。ボディソープの残り香は濃かったが、それも冬優子がくちづけを重ね、ちゅるちゅるといやらしく吸い立てていくと、蕩けきった匂いに塗り替えられていく。
(んぁ、ぁ……くち、どころか、あごまで溶けちゃいそう……っ)
「ぬちゅっ……ちゅば……ふぁっ、あ……♥ ホント、あんたってわかりやすい……」
「う……男なんだから、そんなもんだって」
「ふゆが、あんた以外の知ってるとでも? うわぁ、ふゆ、プロデューサーさんにそんな子だと思われてたなんて、傷ついちゃいます……♥」
鈴口と亀頭と、プロデューサーが敏感に反応することがわかりきっているところを、冬優子は舌先でつついて、べろぉー……♥ と、線を引くように舐める。プロデューサーはペニスを根本からびくりと震わせる。下腹部も太腿もこわばる。
(気持ちいいと、びくびくってなるのは……あんたも、ふゆと一緒よね?)
ペニスは下から上へ舐めあげられると、こらえがたい快楽が溢れ出したように先走りを漏らす。冬優子はそれをニマニマと蕩けた表情で、ちゅるちゅるとわざとらしく音を響かせ吸い上げる。
「んべ、れぇろ……んちゅぅ、んむ……っ」
「は、ァ……く、うぁああ……っ!」
「次は、ふゆが咥えて、吸って……シちゃいますんで、心の準備、してくださいね~?」
んぶっ、ぢゅる、ぢゅぞ――プロデューサーがぎりりと奥歯を噛み締める。冬優子はプロデューサーの太腿に手のひらをあてていて、びくりとした彼の緊張とともに、筋肉の段差が浮き上がるのも感じ取った。
「んぶ、じゅる、ぷぁ……どんどん、おっきく熱くなって、ふゆで、興奮してます?」
「し、してる……冬優子の、それ、やば……きもち、よすぎる……!」
不思議と、“冬優子”より“ふゆ”のペルソナを着けていれば、彼女は積極的になれた。
「でも……プロデューサーさんのとキスしてると、ふゆのほっぺたが落ちちゃいそうなんで……手も、使っちゃいますね。こっちは、もっとうまくできると思いますっ」
フェラから解放したばかりの口を、プロデューサーの耳元に寄せてささやく。
「……だって、プロデューサーさんは自分の手でシコシコっていじってるところ、たくさんふゆに見せてくれましたから……♥」
冬優子はプロデューサーのオナニーのやり方を――あくまで彼との口約束に従い、電子的記録ではなく――記憶に焼き付けていた。そうして、根本からカリ首まではごしごしと力任せにいじるぐらいがちょうどいいけれど、カリ首より先は意外なほど敏感だと覚えた。
「や、めぇ……そ、それは……あ、くぁ……っ!」
「やめて? それ、気持ちいい時の声ですよねー。ふゆの手で、シコシコーってされるの、気持ちいいんですね……♥」
冬優子は、にゅるにゅると指でカリ首を締める。尿道がぱくぱくするかしないかという加減で亀頭をくりくり弄ぶ。びく、びく、と跳ねる肉棒はもう片方の手で握る。プロデューサーが震わせる太腿あたりは、軽く体重をかけて押さえつける。プロデューサーの膝の上に乗りかかって顔を近づける。口元から熱い吐息と爛れた挑発を溢れさせる。プロデューサーの耳元に流し込む。
「興奮して、気持ちよくなって……でも、まだ、出しちゃダメですっ」
「う、ぐ……く……ぅッ……ぁ、ぅ……ッ!」
「だって、我慢したほうが、もっと、もーっと、気持ちいいんでしょう? えへへ……♥」
プロデューサーの雄欲を、“ふゆ”の媚びと責めが容赦なく叩く。叩けば叩くほどパンパンと張り詰める。相手が張り詰めるほど、冬優子はいっそう手応えを確かなものと錯覚する。
「それとも……耳、いじめられちゃうの、好きですか……? ふゆの声でも、いっぱい興奮してくれて……そう、いまみたいに、苦しそうな、熱そうな息、ふゆに聞かせてくれて……うふ、ふっ」
冬優子は、記憶よりもプロデューサーの反応がずっと敏感だと気付く。性的スキンシップが久しぶりなせいか。
手を止めながら耳元に息を吹きかけてささやくだけでも、面白いようにもだえてくれる。
(ふゆのえっちな声、スピーカーごしにしつこく聞かされて……興奮するようになっちゃった? ふゆのせいで、耳、開発されちゃった?)
その推測が冬優子をよぎってから、彼女の中にべっとりと濃密な恍惚がこみ上げてくる。オーガズムほど激しくなく儚くもない喜びが、上げ潮に乗ってきてたまらない。
(プロデューサーを開発するの、くせになっちゃう……くやしいけど、プロデューサーがふゆのおなかいじめたくなった気持ちも、わかっちゃう……♥)
推測から生まれた恍惚が、推測を妄想的確信にすり替えてしまう。
「は、ァ……く、ぐう、う……っ!」
冬優子の手管は、一コキ一コキがプロデューサーのペニスを打ちのめし征服しそうな勢いだった。それでいてプロデューサーの快楽をじゅぽじゅぽと煽り立てていた。
「ダメ、ダメ……いま射精しちゃうなんて、ぜったい、ダメです♥」
愛撫に確信が乗って、いっそう強烈に、いっそう洗練されていく。精液を搾り出すような幹への圧迫と、亀頭をぬちゃぬちゃとくすぐりながら撫で回す指は、たった一人の“ふゆ”が同時に繰り出しているものとは思えないほど対照的。
「だって……ふゆのナカに、出したいでしょう?」
「ふ、ふゆこ!? それ、は……」
プロデューサーの声音だけで彼の思考を読む芸当も、冬優子にとってはだいぶ慣れたものだった。
「……おくすり、飲んでますから……♥ ホントは、お仕事で、生理を調整するために飲んでるんですけど……それで、たまたま、ふゆはだいじょうぶな日になっちゃってます……っ♥」
膣内射精を想像すると、冬優子の膣奥も、プロデューサーにさんざんいじめられたおなか周りも、先走って蕩けてしまう。入れられてもいないペニスをしごく真似をして空振りしてむずかる。ペニスを愛撫している手がつい力んでしまう。
「冬優子、本当に……したら、俺は……」
「あ、プロデューサーさんっ、想像しちゃいましたね。ふゆのおなか、中も外も、コツンコツンっていじめながら、びゅーびゅーナカダシして、この女は俺のものだ……! って、しようなんて、ダメですっ……そんなコトされたら、ふゆ、おかしくなっちゃうから……!」
実行するどころか仮定しただけで、冬優子もプロデューサーもおかしくなっていた。
互いが肉体的に離れていても、感情表現をこすり合わせて絶頂まで連れ合う相互オナニーで、これまでさんざん訓練されてしまった二人は、性器どうしを摩擦させずとも、既に狂おしい法悦を与え合っていた。
「……でも」
「う、くっ、だ、だめ、だ……で、でる、も、う……」
「プロデューサーさんがおかしくなってくれるなら、ふゆも……おかしくなっちゃって、いいかな……って♥」
プロデューサーが息をつまらせ、射精欲を暴発させる寸前に、冬優子は手をとめた。
「ぁ……うぁ、ふ、ゆ……!」
プロデューサーのうめきを、冬優子は鼓膜から啜って脳裏で舐め回した。
どうしてこのまま射精させてくれなかったんだ、という落胆か。どうしてここまで限界ギリギリを見透かしているんだ、という驚愕か。
それとも、為すすべもなく絶頂させられる事態を回避できた、という安堵か。
「仰向けに、寝てください。いいですね」
「……冬優子」
プロデューサーが、冬優子の体のどこかへ伸ばしかけた指を、冬優子は先走りもぬぐわない手で押し包んだ。
「触ってただけで、ふゆも、おかしくなっちゃいそうですから」
冬優子の薄い寝間着は、しっとりと濡れた気配で、あちこち不自然に肌へと張り付いていた。
「……なんだか、さ」
「んー?」
「このアングル、オナニーを思い出すなぁ」
プロデューサーをベッドへ仰向けに寝かせた冬優子は、彼の太腿あたりにまたがっていた。
さっきまで冬優子の手でぬちゅぐちゅと弄ばれていたペニスが、いまは血熱をみなぎらせている。ペニスの切っ先が、冬優子の下腹部へ報復のように突きつけられている。
(ただ『オナニー』って言われると……ホントにこいつ、ふゆでしかシコってなかったみたいに聞こえるわね)
冬優子は口角をにやりと吊り上げながら、人差し指でペニスをツンツンさせた。
「うぉっ!? なんだよ、びっくりするじゃないかっ」
「ふゆのカメラに、こんなの映してなかったはずだけどー?」
あさひに『キレてるっす!』と言われたあとの夜と比べると、冬優子の秘所や内腿は嘘のように濡れまくっていた。プロデューサーへの奉仕――あるいは、悪戯――で興奮するという流れが、冬優子にしっかりと馴染んでいた。
「それにね、ふゆがここにいるんだから、オナニーのことなんか言わなくていいでしょ」
「それはそれ、これはこれだよ。たぶん」
「……減らず口をっ」
冬優子が、“ふゆ”の顔では絶対に見せない邪気たっぷりの笑みをたたえながら、プロデューサーの視界を埋め尽くす。甘くて酸っぱくてしょっぱいソフトキス。
「ん、ぅう――! うぶ、はぷっ、んっ、ちゅうー……っ♥」
くちびるを重ねてはずらし、舌先を伸ばして絡める。
(……ぁ、おくち、拭ってないわ……)
冬優子に走った一瞬の口惜しさを、プロデューサーが引き寄せる。冬優子の頭を引き寄せる。
接吻が、頭を押さえるほど激しいベーゼになっていく。
「んぢゅ、ぢゅ、ちゅう、ちゅぱっ……ふあ、ぅ、ぷろ、でゅ……んぷ、ちゅっ、ううっくっ……!」
冬優子が顔を引き寄せられ、彼女の上体が傾いで、下っ腹でペニスをぐりぐりとこすられる。待ちわびていたけれど、あまりにもおおざっぱで、焦れったい刺激。
冬優子の秘所は、ねだるように雌蜜を漏らしている。上でも下でも水音がこぼれる。
「んぐ、ぷぁ、ふぁ、あ……プロデューサーぁ……ご、強引よ、こんなの……っ」
「でも、準備ができたみたいだな」
「そっちこそ……プロデューサーさん、こそっ♥」
プロデューサーの手が冬優子の頭を解放する。上体を起こそうとした冬優子は、さっきまで彼女の頭を強引に引き寄せていたプロデューサーの手を掴んで、背筋を立てるための支えに使う。
固くて柔らかい手のひらを押し付けあうと、そこから気恥ずかしくなるほどの嬉しさがやってきた。セックス間際にしては、いささか牧歌的な感情。
冬優子は目を細めながら伏せた。冬優子は気付かなかったが、プロデューサーもそうしていた。
「行きますよ……プロデューサーさんの、だぁいすきな、ふゆのおまんこ……味わって、くださいっ♥」
冬優子が肉棒の先に指を添えながら、自分の膣口を近づけていく。そうやってガニ股になると、彼女の下っ腹や鼠径部が、相互オナニーの最中にプロデューサーの視線で犯されたり犯させたりした気分を思い出す。せっかちな性感に、雌肉がぶるりと震えた。
「はっ、んあ゛っー……!? ぅ、あ゛……っ♥」
「ぐ、ん、ぅうう……っ、冬優子、き、きもち、よくって……!」
串刺しにされた冬優子は、“ふゆ”が出してはいけない性欲丸出しの声をこぼす。
「はぉお゛っ、ほ、ぁ……や、ぁ……てぇ、はなしちゃ、ダメ、です……っ!」
冬優子がペニスを咥え込みながら、背筋を弓なりに仰け反らせる。
(ふぇ、えへ……コレ、ぜったい、キちゃってる……おなか、びくびくって、オナニーの時より……♥)
入り口から奥までペニスを締め付けていて、冬優子は自分の体がどこかきぃきぃと軋んでいる気さえした。
(このまま、ふゆのここが……プロデューサーをぎゅうぎゅうするばっかりになって、そんなところ、みんなに見られたら……)
「ふゆの、おまんこ……どうですか……? プロデューサーさんのこと、ほしくって、ほしすぎて……可愛くなくなっちゃうぐらい、きゅうきゅうって、シちゃうおまんこ……♥」
「き、気持ちいい……よすぎて、もう……バチが当たるかもしれんな、俺……」
肉襞がぞりゅぞりゅとうねって、結合部がだんだん泡立っていく。
プロデューサーの味わっている快楽は、吐息と、ペニスと、カメラ越しにさんざん観察した腹や肩の緊張と、つないだままの手から冬優子へ伝わってくる。
冬優子の肉壷も、熱をはらみながら陶酔する。
(ふゆの、だいじなところ……プロデューサーの、ハメて、じゅぷじゅぷしごいて……もっと、いじめたい、いじめられたいって、言ってる……♥)
それでいて、謙遜なしに、本当にこのようすは可愛くないだろうな……と冬優子は頭で自嘲した。
冬優子が背中を曲げて、プロデューサーの視界から顔を隠したのは、羞恥のせいかもしれなかった。
「気持ちよすぎて、怖い……なんて、女の子みたいなこと言うんですね、プロデューサーさんっ」
「……冬優子も?」
本当に繋がっている体勢でのささやき合いは、弾けそうな興奮の中にあって、ふたりともいやに気遣わしげだった。
「さぁ……ふゆが怖くなっちゃうぐらい、気持ちよく、シてくれるんですか?」
冬優子は太腿を開いたり、閉じ気味にしたりと加減を変えながら、膣で覆いかぶさる勢いで、たんったんっと細かく軽快なリズムを刻む。
「ふゆの、おなか……そとも、なかも、プロデューサーさんが……もうダメってふゆが言っても、止めてくれなくて……♥」
「は、ぅ……ぐ……! どんどん、おかしくなれるな、俺も、冬優子も……」
冬優子は、おなかを責め立ててくれるペニスの感触が、ほんのちょっとだけエグすぎるな、と思った。
それでいて、ほかのあと一つ――二つと数えるべきかもしれない――の結合点である繋ぎ合わせた右手と左手は、いつまでも離したくないほど慕わしかった。
彼の両手たちが前のようにお腹を撫でてくれないのは、冬優子にとって物足りなかった。彼の指たちが力んで快楽をまざまざと伝えてくれるのは、喜ばしかった。
「あ、ひやぅっ……♥ そんな、深い、とこっ……コツン、コツンってされたら、こわい、こわく、なっちゃう……♥」
冬優子に乗りかかられたままのプロデューサーの下肢が、膝を曲げてベッドを踏みしめ、体重移動でペニスの角度を変えてくる。プロデューサーが当てにいったのか、冬優子が当たりにいったのか、ペニスの切っ先が膣奥の弱点をちょうどよくとらえる。
「あぅっ♥ そ、こ、キちゃ、ぅう……でも、ふゆは、それが……いい、ですっ……♥」
「ふゆ、こ……俺、もう、イキそう、だ……!」
「ふ、ふふっ、あははっ! さっきから、いまにもイキそうだったのに、やっと言いましたね……あは、ははっ」
冬優子の膣内は痙攣とともに収縮して、いよいよ余裕をなくしてきた。奥まで咥え込んだまま、膣どころか尻肉や太腿までが、プロデューサーにむしゃぶりついて、射精を催促する。プロデューサーのペニスも、冬優子の奥底にまっすぐ精液を叩き込まんとして、肉柱を堅固に構えてくる。
快楽を分かち合い貪り合いながら、お互いどこかで張り合っている姿に、冬優子はのぼせながら苦笑した。
(“ふゆ”でやってるけど……甘いこと、ささやきあって、蕩けあって……なんて、ふゆとこいつのガラじゃ、ないか……♥)
「ふぁ、ぁああっ、い、イッて、プロデューサーっ……ふゆの、ナカ、しゃせぃ……射精、しな……ひぁあ、あっ……♥」
「は、ァ、く……うぐ、い、イク、な、なか、だす、ぞ……ッ!」
男の絶頂はわかりやすすぎないか……? と、冬優子は呆れ半分、感心半分の息を吐きながら、射精を告げるプロデューサーの震えを聞いていた。
※
「ぅ、ふ……ぅぅ――ん、く……っ……♥」
冬優子は、プロデューサーと絡めていた指をほどいて、空いた手をプロデューサーの肩にかけていた。足腰に力がきちんと入らず、いっこうにペニスを抜けないまま。膣内射精された精液がぐずるように垂れ落ちるのが、なんだか恥ずかしくて、むしろ冬優子はペニスを根本まで抱えて精液をせき止めようとさえしていた。
「プロデューサーの、ヘンタイ……っ♥」
「何をいまさら。リモートでオナニー見せ合った仲じゃないか」
ついさっき冬優子が感じた、射精の瞬間のプロデューサーは、アクション映画で断末魔を迎えたモブぐらい、情けない声と表情だった。
なのにいまは、男らしい胸板と腕でもって、騎乗位の余韻に浸る冬優子を受け止めている。冬優子が幸福感のあまりどろどろ溶け落ちても、受けきってくれそうだった。
「ふーんだ、ふゆは……あんたがシたいっていうから、付き合ってあげてただけよ」
「そっか。ありがとうな、冬優子」
プロデューサーが空いた手のひらで冬優子の頭を撫でると、冬優子はくつくつと忍び笑いを漏らす。
子供をねぎらうみたいな手付きがおかしかった。そんな手付きにときめく自分がおめでたかった。
「う、ふ、ふふっ……」
「いや、冬優子、笑ってるけど……本当に、俺は嬉しいんだって」
冬優子がかつてななめ読みしたモノの本では、射精直後の男はこの世のすべてがどうでもよくなって、哲学だか賢者の気分になるらしかった。それが女にはそっけなく感じられてたまらなくって、ギクシャクしてしまうのがお約束なのだとか。
対して、冬優子がいま肌を寄せているプロデューサーは、ほとんど素のような勢いで、冬優子に感謝の言葉を聞かせていた。
「まぁ、そうよねっ。ふゆに感謝、しなさい」
「うん、冬優子……ありがとう」
(……こいつのために腹筋割ってくれる女なんて、そうそういない……って、腹筋、ふゆのが割れちゃってるのは副産物だけど……いや、こいつとアイドルやるためにシェイプアップしてるぶんも含めれば……)
冬優子がきゅうきゅうと膣内に力を込めてみると、射精後のプロデューサーのペニスはぜぇぜぇと気息奄奄で、膣肉にされるがままだった。
「んぐ!? う……ふゆ、こ……!」
「……んふふっ」
(シェイプアップって……そういえば、きょうこいつと、オナニーじゃなくてえっちシてるの、おなかを引き締めるって名目だったっけ。自分で言い出しといてなんだけど、引き締まるのかしら、これで……)
プロデューサーの手は、冬優子の背中を撫でていた。うなじ、ふたつの肩胛骨、そのあいだのくぼみを、順々に進む。その手付きはいつかのように、摩擦や圧迫なしの、本当に添えるだけの刺激。けれど、刺激が淡いだけに、手のひらと指をいっぱいに広げて、興奮した体温で包み込んでくれる。
(……引き締まっちゃってたら、どうしよう……歯止め、効かなくなっちゃ……なんて。あはは、ふゆ、酔ってるわ。ワインの飲みすぎっ……)
「……ふゆ、冬優子」
「んきゅっ!? ふ、ぅぅう……っ♥ な、なに……え、あんた……あ、ァ……♥」
冬優子のおなかで、プロデューサーの勃起が蘇りつつあった。
「あははっ、スキよね。あんたも」
「だって、冬優子が、締めてくるから」
「あんた、またふゆのせいにするつもり?」
冬優子の背後を愛撫するプロデューサーの手は、こんどは彼女の太腿にあてがわれた。
(ふゆ……まだ、触っていいって言ってなかったわ)
「ねぇ」
「……冬優子」
冬優子は、プロデューサーの耳たぶにかじりつくような距離まで顔を寄せた。
「……って」
「触るぞ?」
「手でも、ちんぽでも、まぁ……シたいようにすれば……?」
そんな至近距離でしか届かない透き通るような潜み音が、冬優子から紡がれた。
(……言っちゃった、ふゆ、こいつに、言っちゃった……っ♥)
プロデューサーがすぐに冬優子へよこした返事も、冬優子にしか届かない微かなため息だけだった。
「ぁはっ……んぅ、やぁあ、あっ……♥ やるなら、もっと、ぎゅってシてよ……っ♥」
「……冬優子は、あんま強くないほうが反応いいから」
「うぅ、ぅううぅ~……っ♥」
冬優子は、復活したプロデューサーの勃起をひしひしと膣内で抱擁しながら、“ふゆ”よりだいぶ素らしい甘え声を聞かせていた。
プロデューサーの手は、ぎゅうぎゅうと力強く冬優子の肌に食い込ませている。ただし、食い込んでいる場所は、お尻や腰の曲線美だった。
おなかは、ときどき脇腹をくすぐられる以外、お預けを食らっていた。
(もっと、ぎゅって……そこ、シてほしいのに……っ♥ それなら、こうしてやるわ……っ)
冬優子は四肢を奮い立たせて、プロデューサーの肩と腰へ巻きつける。思いっきり力を込める。
力の作用点は、彼女が一番刺激を欲しがっている場所だった。
「んぁ、ふ、ぁ……ぷろ、でゅ……っ♥」
「んぐっ……! く、ふ、はは……やっぱり、反応がいい」
触ってくれないなら自分から触ればいい……とばかりに、冬優子はペニスを挿入させたまま、プロデューサーへ下腹部を執拗にこすりつける。
ぐちゅ、にちゅ、と結合部がみだらに鳴るところだけは、騎乗位と似ていた。
(あんた、ふゆのここ、すきでしょ。興奮、するんでしょ……♥ ほら、ほらぁっ♥)
さっきの騎乗位は、冬優子はプロデューサーに奉仕か悪戯を繰り広げていた。
いまの対面座位では、冬優子はプロデューサーの愛撫を懇願していた。
腹筋がキレてたり太腿に筋が浮いたり、可愛くないどころかプロデューサーの欲望と男性器を刺激するばかりの姿を、冬優子は躊躇なくむき出しにする。
「ふゆ、は……あんたが……シてくれるんなら、どうなったって、いい……っ♥」
冬優子の歯止めは失せていた。
ウエストでもどこでもぎゅうぎゅうと好き勝手に愛撫されて、プロデューサーと自分の欲望を一緒くたにしながら、アクメでもなんでも、どこか二人でしか行けないところに行きたかった。
(もっと……おねが……ふゆ、ほんとに、いま、イッて……あ、うああ、ひあ、あぁ……っ♥)
冬優子は、プロデューサーに見せつけたオナニーと同じぐらい激しく、ウエストのあたりをこすりつけた。膣内もプロデューサーを根こそぎ奪い取ろうとうねった。
「す、すき……ん、ふぁっ、あ……っ、すき、すきぃ……んぉ゛っ♥ ん、ぉ、ぉ……っ♥」
「……好きだよ、冬優子」
冬優子はさらに激しく腰を使って刺激を求めた。恥骨だか骨盤だか、とにかく下半身のどこかの骨を思いっきりぶっつけてやると、硬い痛みと振動に乗って、プロデューサーの存在が膣奥のさらに奥まで伝わってくれた。
「ぁ、はふっ、ふうーっ♥ ぅあっ、ぷろ――んく、ふゅ……♥」
「冬優子……」
冬優子の腰がそこまで駄々をこねて暴れまわっても、冬優子はプロデューサーとぴったりくっついていられた。プロデューサーの腕は相変わらず彼女の要を捉えていた。
「ヒ、ぅうっ♥ おく、も、そと、も……ふゆの、ぜんぶ、あんたに……っ♥」
それからいくらかして、冬優子の奥底の弱点に、またプロデューサーのペニスがまともに決まった。冬優子は肉体的な絶頂を迎えた。
「や、ぁ……だ、め……い、イク、イッちゃ、ぁ――っ♥」
冬優子はぴちゃぴちゃと真新しい愛液をプロデューサーに浴びせながら、苦悶のような嬌声とともに背筋をのけぞらせた。
ウエストは、プロデューサーの両手の間で駄々をこねるように、盛り上がったり縮こまったりしていた。
(あ……そこ、ぴくぴく、って……見られ、ぇ)
膣奥アクメで飽和していた冬優子の感覚に、プロデューサーからの愛撫が上乗せされた。
待ちわびた刺激に、冬優子の快楽神経が狂奔する。
「……やっぱり、冬優子のここ触ると、シてるって感じ、する。最高、だ……」
「ふあ、あっ……あっ、あっ……!」
そんな無防備の冬優子に、プロデューサーのささやきがさらに上乗せされる。
「……中出ししてるし、ここがおっきくなったら、もっと優しくしてやらないとな……あぁ、冬優子」
冬優子はひとたまりもなかった。
「あ、あっあ……あんた……バカ、ね……っ!」
「なんでだよ……?」
「ふゆ……だいじょうぶな日って、言ったわ……言った、じゃない……っ!」
もし幸福感で妊娠できるなら、確実にいま三つ子ぐらいシてる……と冬優子は妄想した。
プロデューサーからは、冬優子のクシャクシャな笑い泣きが一瞬だけ見えた。
冬優子があまり見せたくなかったであろうその表情は、彼の視野と脳裏をひらりと横切って、彼の胸板に押し付けられた。
「ふゆ、イっちゃうわ。イっても、いい?」
「いいけど……冬優子、イってなかったんだ、あれで」
「イってるけど、イっちゃうの。わかんない……?」
冬優子の感じる手がかりから察するに、プロデューサーはよくわかっていないようすだった。そのまま彼は、腕に力を込め直して冬優子を抱きしめた。
「いいよ、冬優子」
冬優子に刺さっている逆恨みのうち、いつかの二つだけが氷解して、その跡はプロデューサーの何かで埋まった。
「ぉ、ふぁ、ぁ、ぁあ……っ」
「冬優子、いいよ……冬優子……っ」
(アイドルじゃなくなっても……なんて、よりにもよって、あんたが、ふゆに思わせないで……あんた、ホントにバカ……っ)
でも、前から抱きしめられてヒソヒソささやかれるのは、憎たらしいほど心地良い……と、すっかりふやけた独白を抱えて、冬優子の意識は二人きりのどこかを漂っていた。
※
「それはそれとして……腹筋が割れちゃってたら、可愛くないわね。夏葉さんみたいなスポーティかっこいい路線ならいいけど、それはふゆのガラじゃないし」
「どうしたもんかね。例えば……ペイントやタトゥーシールで飾って、腹筋を目立たなくすれば」
翌朝。
プロデューサーのぼやぼやした提案を聞いて、冬優子は目と口を丸くした。
「なるほど、ペイントにタトゥーシールねぇ……って、何言ってんの!? まるで淫紋じゃない、バカ!」
「うぐッ! いきなりなんだよ! というか、“いんもん”っていったいなんだよ……?」
冬優子はプロデューサーの反応が、ひどく間抜けだと思った。
これから『淫紋』を説明してやらなきゃならない自分は、少し恥ずかしいと思った。
(おしまい)