シャニPと黛冬優子さんがなぁなぁでえっちしているお話 作:ふりーじ屋/家庭内禁書
ご依頼は http://skeb.jp/@freege_affected か、 http://twpf.jp/freege_affected からどうぞ。pixivリクエスト https://www.pixiv.net/request/plans/7443 も受け付けています。 ※pixiv、ハーメルンとくるっぷに転載しています。
シャニP×ふゆはもともと好きでしたが、ご依頼もブクマもいっぱいもらって書いているうちに大好物になりました。われながら現金です。
ご依頼内容の合致により企画・性夜の小説合同2024(https://r18novel-lovers.com/SEIYA2024)に参加しました。
「ママとパパがお出かけしたのは、イヤらしい意味じゃなくってね」
「がんばって意識そらしてたのに、口に出さないでくれ……それに冬優子が追い出したんじゃあ」
意識をそらしなおすため、黛冬優子担当のプロデューサーは、ソファから立ち上がって窓の外を眺めた。
「あんたアレに付きあわされたかった?」
「……仕事の一環だから、うん」
「付きあわされたくなかったのね、うん」
屋外は黛家の居間と好対照を成していた。赤城おろしが茨城まで届いたかのように冷たいからっ風が、すっかり葉を落とした枯れ木を揺らしていた。真っ昼間だったが曇り空がどんよりして、色調がすっかり灰色だった。
対して黛家の居間は、温度・湿度ともに過ごしやすく保たれていた。薄いベージュの壁紙とフローリングに、パステルカラー系のインテリアが配されていた。
外には人っ子一人いないのに対して、居間には冬優子がソファに腰掛けていた。憎からず思う妙齢の異性と予想外に2人きり、という状況をお互いどうしても意識してしまっていた。
「まぁ、ご両親の仲が睦まじそうだし、冬優子の活動にもご理解いただけているようだし」
「そりゃあ、ふゆがふだんからあんたたちのことほめといてあげてるし」
冬優子は、プロデューサーと初めて出会って声をかけられたときのコーディネートだった。トップスがパステルピンク地にゆるいネックラインをふわふわのフリルで飾ったブラウス。それだけではデコルテが出すぎるので、白のボーダー入りを黒いリボンでチョーカーのように引き締めて色気をほどよく抑える。黒のフレアスカートは肩から吊るデザインで、ウエストあたりのシルエットも色調も引き締める。太ももの素肌をちらりと見せたあと黒のサイハイでもう一度引き締める。
ここ数年で量産型や地雷系と称され、定着したファッションである。
(もういい加減に陳腐になってきたけど……もともと、量産型とか地雷系とか言われてもいいじゃん自分の好み優先! って開き直りがあるもんだし、それに……)
冬優子にとって二重の意味で特別なコーディネートである。
「ふゆは……親のああいうのを他人に見られるの……久しぶりすぎて、恥ずかしくなっちゃって」
「昔もああいう感じだったのか」
冬優子は、担当プロデューサーが年末のあいさつがてら仕事の近況報告に黛家を訪れたとき、両親が彼を手厚くもてなしてやり、アイドル活動についてたいそうほめて、面談の予定時間が余ると夫婦の惚気を見せつけて……というそばにいた。
惚気に耐えかね声をかけると――『疑問とかないなら、もうプロデューサーを送ってっていいかしら?』『あら、ふゆちゃんったら……ふ~ん?』『な、なに』『ふゆちゃん、ママは夕方までパパとデートしてくるからお留守番してて、プロデューサーさんと』『えっ』――プロデューサーと自宅で2人きりとされてしまった。
「……悪いわね、せっかく時間とってもらったのに。まぁ昼寝でもしてなさい」
「冬優子は?」
冬優子は答えに窮した。
(……年末進行だし、年内に2人でまとまった時間とれるのは、きょうが最後……あとはぜんぶ仕事、クリスマスも……)
空になったティーカップをキッチンへ片付ける、という体裁でどうにかプロデューサーから離れる。彼が注いでいるかどうか不確かなはずの視線が、背中をむずつかせる。カップやスプーンを洗う手つきがぎこちなくなってしまう。
(えっちしたい、なんて……ぜったい、ダメっ)
出会った日に冬優子が着ていたコーディネートがセックスNGを意味する、とあらかじめ2人のあいだで決めていた。
彼女は――(まさか、パパとママがいるうちで誘ったり迫ったりしないでしょうけど……念のため、よ)――その意味合いを意識して、そのコーディネートを選んできょう彼を家に迎え入れた。
面談を早めに済ませればセックスする時間が……なんて了見を起こすな、と彼へ釘を刺したつもりだった。
(ママは……ふゆが彼氏でも連れてたとか勘違いしてたり? それにしたって婚約とかしてるわけでもないのに)
まさか両親からはしごを外される、と思わなかった。
(……せめてパパが……ムリかぁ、こういうことだとママに合わせるもの)
とっくに洗い物を済ませたが、プロデューサーと同室しているとおかしくなりそうで、キッチンに立ち尽くしている。居間とのあいだにあるドアを閉じ忘れてしまっている。振り返った瞬間に彼が自分を見ていたら、それがどんな視線か知ってしまったら……と思うと、振り向くこともままならず、首筋までもそわそわする。
(プロデューサー、最近は休みなくって疲れてるでしょ……寝てなさいよ、寝てろ、ソファでもどこでも、そしたらタオルケットかけてあげるからっ)
くちびるだけでぶつぶつつぶやく。
プロデューサーが昼寝などしていないだろう、と内心では確信している。
(……うちのソファじゃあ、あいつのでかい図体で寝るのは……)
着衣につられてか、プロデューサーと出会った瞬間に意識がふらふら飛んでいく。
専門学校帰りの夕方、乗換駅の商業施設の一角でアニメのポスターを眺めて物思いにふけっているとき、彼が声をかけてきた。
(あんなのでスーツ着てて歩いてたら目立ってしょうがないのよ)
身長160センチを少し超える冬優子がそれなりに高いアウトソールのブーツを履いていたのに、彼はそれより頭一つ高い長身と、それに相応の肩幅の体が藍色の背広をややきゅうくつそうにまとっていた。初対面の印象が――(大きなガタイで小ぎれいにしてると、若手の不動産営業マンみたいでかえってうさんくさい)――可もあり不可もあり、と冬優子に妙な言い方が浮かんだ。
懐かしかった。
いまではその胸を借りて泣いたときの感触も知っている。
(違うっ違うっ、バカなのふゆはっ……あいつが寝てようが起きていようが、ふゆはふゆっ)
意を決して振り返ろうとする。
「冬優子ーっ」
「ふぎゃっ!?」
「わっ」
背後にプロデューサーの声が聞こえて、思わず奇声をこぼしてしまう。
「なに……かしら、毛布の場所がわからなかったとか?」
「すまん、その……ずっとそこで立ってるから、そうじでもしているのかと」
「手伝ってくれるって? お気持ちだけもらっとくわ、もうすぐ大そうじだし」
下手な言い訳だ、と内心で切って捨てる。水回りのそうじだったらスプレーや水の音ぐらいさせてる、と心の中だけで反論する。
(女の子は、男を不用意に背後に立たせないの……3歩下がってついていくとかじゃなく、後ろから何かいたずらされたりするかもって心配、するでしょ)
すっかり向き合うには、まだ気分がざわつきすぎている。腰近くまで伸ばした黒いストレートヘアが、もう一つの素肌になったようにじりじり火照る。血管が通っていないはずなのに、とボヤく。
(やめてよ、やめてよねぜったい……これ以上アレな雰囲気にしないで……流されたら……ふゆ、あとで死ぬほど自己嫌悪しちゃう)
ノドが渇く。それならお茶でも淹れるか、それともあえて冷たいものでも、とどうにか平静を装う。
「お茶のおかわりでもほしかった? けっこうおしゃべりしたもんね」
「途中からご両親に見せつけられてるばかりになってた気がするが」
「それは……いや、その、認めるわ、ええ」
くちびるがにちゃにちゃしてきて不愉快になる。こんなリップノイズをプロデューサーに聞かれていたらどうしよう、と耳のあいだまでそわそわが広がる。
(もし、よ……? こいつが、いきなり、ぎゅって……肩や腰に手を回すとかじゃなく、お尻をぐいってつかんでくるとか脚をべたべた触ってくるとか……そう、そう、この立ち位置、痴漢に似てる)
冬優子は、混雑した列車やバス内で痴漢を警戒することには、不本意ながら慣れている。
(じろじろと、なめまわすみたいな……ふゆのこと、気持ちいいラブドールぐらいにしか思っていないような)
アイドルとしての知名度が上がってきて、いまや変装必須の身分となっている。電車に乗るなら、プロデューサーに後ろに立ってもらわなければならない。
いまさらスカート丈が短すぎる気がしてくる。
(どうにか車両の壁際とかの位置を確保して……あとは、こいつのでかい図体が大いに役立つわ、ふゆのことすっぽり隠してくれる)
幸いにも、痴漢の被害は未経験である。混雑する時間帯に、可能な限り友人など協力しあって車内で連れ立っておしゃべりをひたすら続けるのを主な対策としている。痴漢も、明らかに複数人である相手を避ける分別は持っているらしい。
(それで「お友達とおしゃべり♪」ってプロフィールの趣味欄に書いてる……わけじゃないけど)
しかし、黛家のキッチンに妄想で動く痴漢がやってくる。
(……もし、プロデューサーから……)
スカートの外から手の甲を押し当てる程度の、何かの勘違いであってくれと思わせる加減で始まる。
スカートごしにヒップラインをなぞられる。驚愕と緊張で尻や太ももがこわばる様子も伝わってしまう。それどころか、下腹部までぎゅうぎゅうと力んでしまう。冬優子自身も驚かされる。
(そんなの、ダメ、ぜったいっ)
ついにスカート丈ぎりぎりの素肌をくすぐられる。肺か心臓をつかまれたかのように、おぼつかない息を吐く。
「……風邪でも引いてるのか?」
「え、そう見える? 特に、調子の悪いところはないわ」
自分の頬や耳が赤らんでいる。鏡を見せられずともわかっている。
プロデューサーからも見えているのか。だとしたら、彼が上体を傾げて覗きこんできたのか。敏感になっているはずの後ろ髪が教えてくれない。
(もし、されちゃったらなんて妄想は……お化け屋敷とか絶叫マシーンみたいなものよ、趣向よ、あくまで趣向、それでちょっとゾクゾクしたいだけ……ふゆがこいつをダシに使っちゃってる……?)
冬優子が動揺するばかりで拒めないでいると、そのぶん痴漢が増長する。洋服の質感や果物の鮮度を確かめるように無遠慮に、彼女の尻や太ももをなでまわす。スカートのプリーツをくしゃくしゃに乱しながら、下着のラインを探ってくる。そこまでの暴挙を許してしまう。想像だけで涙目になる。
「……暖房、効きすぎてるのかもねっ」
しびれを切らしてしまったように、半ば自棄でプロデューサーのほうへ振り返る。
(顔、近、ぃ……っ……)
冬優子との身長差に合わせてうつむき気味になっているプロデューサーの頬が、風呂上がりぐらい赤くなっている。ワイシャツかららしき洗剤の匂いの向こうに、ざらついた彼の体臭を感じ取る。胸の下が痛いほど騒ぐ。
それらを愛嬌の裏に押し隠す。
「あんた、おでこで熱測るのやったことある?」
「……現実では……やるどころか、見たことすらないな」
冬優子が首を傾げるまねをしつつ、歯を見せるほどニヤニヤ笑う。彼も緊張混じりの笑みを返す。
「ふゆもないわ。ママにもパパにもしてもらった覚えないし」
冬優子が下から、プロデューサーが上から、目線を投げつけあう。
(このぐらいの距離感でも、意識して、ドギマギしちゃう……ふだんそういうキャラでしょ、あんたも、ふゆも)
プロデューサーが欲情している、と確信できた。
逆に、彼も冬優子の葛藤を確信している、とも感づいた。
(……ヘンタイみたいなえっちまで、シちゃってるのに、何度も)
アイドルとプロデューサーという関係でありながら、利害や信頼を踏み台にした性欲に流されている。冬優子にとって数えるのが怖くなるほど2人は体を重ねている。
「ちょっと頭下げて」
「冬優子……うわ、近いっ」
「やってみたくならない? ドキドキして、風邪引いてたって吹っ飛んじゃいそう」
冬優子からプロデューサーの肩に腕を回してやる。彼の服ごしのこわばりも感じて口元がちょっぴりゆるみすぎる。
(ずっとアイドルに憧れてて、それを支えるプロデューサーのお仕事に夢中で、まじめで暑苦しくてユーモアのセンスがズレてて、キザったらしいこと口走るくせに自覚がなくて……それにその風体だと属性過多よ、きっと“ふゆ”よりも)
お互いの吐息をくすぐったく感じながら、額をくっつけあう。
「ちょっと汗かいてるわね」
「うわ、べたべたしてないか」
「脂汗かくほどドキドキしちゃってる?」
自分がこうしているより強引に抱きしめて欲しい、拒むまねができなくったってしょうがないって力加減がいい……とねだる代わりに、ぐりぐりと額をこすりつける。シースルーバングがくしゃくしゃに乱れる。
(そういうキャラのまま、で……? ダメよ、ふゆたちには、そんなの……愉しいけど、ウソ臭すぎる)
セックスする直前と同じ状態まで体が早まっている、とお互い察している。
けれど心がまだ流されてくれない。かわいらしい冬優子もまじめなプロデューサーもぎりぎりまで装っていたい。お互い最初に好意を抱かせた装いをできれば捨てずにいたい。
けれど捨てなければ、したいようなキスができない。
キスより先などもってのほか。
「ふ……うっ、うぅ、ぁ……!? ちょっと、くすぐった、ぃ……」
「……さらさらしてる」
「でしょう? 苦労するの、最近は、特に」
耳の近くに、彼の指がそっと触れてくる。
妄想と比べて遠慮がちすぎる力加減に、叫びだしたくなる。
(先に化けの皮をはがされたら負け……でも、負ければ先に許してもらえる)
「ふふ、あっはは……そんなにヒマならちょっと付きあってよ」
冬優子が撮りためたアニメを一緒に消化する、という名目でプロデューサーを私室まで引っぱっていった。モニタの調子を見るふりをしてわざとスカートの陰から太ももを見せつける。
彼からやんわりたしなめられる。
(そうそう、こいつの好青年です~って外面がときどき小面憎くってしょうがなくなるの……こいつも、ふゆのネコかぶりを、そんなふうに……?)
感情の瀬戸際を超えた。
「いま、ちょっとだけあんたに幻滅させられたいの」
黒い液晶パネルごしに反射してぶつかってしまえ、と念じながら言葉を投げつけた。
(……好きになりすぎてるの)
背中に触れようとするプロデューサーの気配が、こんどはゆっくりはっきり感じ取れた。
※
「こ、こんなの、ダメ、ですぅっ……ふゆ、はぁ……♥」
「お尻をいきなり触って、その反応って……確かに、好かれすぎかもな」
スカートのあいだに手を突っこまれ、むんずともまれる。もまれる側も、もんでいる側も、この期に及んで化けの皮をかぶったままお互いをうかがっている。
(そうよ、ふゆ、甘えてるわよ……相手が求めるからしょうがない受け入れてあげるわ、って側にこだわって……お互い様だけどねっ)
冬優子はお尻をいやいやと横に振って手を払う。勢い余って床に倒れかける。肩にすぐプロデューサーの腕が回され、支えられる。
すっかり預けてしまいたくなるのをこらえる。
(自分で言っておいてなんだけど……どれぐらいひどいことされたら、こいつにちょうどよく幻滅できるかしら)
彼の肩に体重を徐々に預けていく。くしゃくしゃにされるフリルがもどかしくなる。
「初めてふゆに声をかけたとき、いつかこうしてやるって思ってたでしょう」
「アイドルとして期待してただけだったさ、そのときは」
体温と息遣いを、彼と再びこすりあわせる。これまで繰り返しふけってきたセックスをはっきり思い出してしまう。
(こいつプロデューサーのくせに、担当アイドルのふゆに手を出してる……ふゆだってアイドルのくせに、こいつとズブズブ……)
思い出すだけで、じわりと秘所が濡れてしまう。もう下着で隠しきれなくて彼にもバレただろうか、でも彼も勃起しているから……と言い聞かせて、羞恥の上にどうにか踏みとどまる。
「ちょっとぐらい、してましたよね、期待」
「もしそうだったら、冬優子とこうするまでにダメになってた」
「いまのふゆたちが、ダメじゃないみたいに」
冬優子の吊りスカートにあしらわれた正面側ファスナーを、プロデューサーの手が下ろしてくる。コルセットのようだったウエストまわりの締めつけがじりじり緩むのを、肌で感じる。
「脱ぎます、ふゆ、自分でっ」
「できれば、着たままでしたいな」
それだけでセックスと同じぐらいの快楽とやましさに浸れてしまう。
「できれば、って前置きすれば引っ込められるって思ってませんよね」
「……思い上がりかな」
「まずプロデューサーさんにはお着替えがないんですけどー」
1回ヒジを軽くぶつけるだけにして、プロデューサーの手をファスナーの隙間に突っこませたままにさせる。
「あんまり、なでないで、敏感にさせられちゃったの、プロデューサーさんのせい、です」
「……他人に見せたくない、って思ってしまうこともあるよ」
「見せてるおかげで懐が潤ってるんですけど、お互いに」
布1枚隔てて彼の手にもぞもぞされるだけでウエストあたりがむずむず騒ぐ。彼から執拗に愛撫されて――(それだけならまだしも、あさひに『冬優子ちゃん、うっすらだけど腹筋が割れてるっす! キレてるっす!』とか言われたし)――すでに性感帯に仕立て上げられている。
「ふーっ……ふー、んっ、んー……っ!」
「くすぐったいかな?」
「……ええ、すっごく……♥」
お腹からぷるぷると細かい痙攣が否応なく広がる。なぜか涙腺がほころぶ。とっさに彼の胸元に顔を押し当てる。
「プロデューサーさんもドキドキしちゃってますよね、ふゆに、してもらいたいですか?」
「そりゃあ、もう……脱がせようか」
「プロデューサーさんも脱ぎましょう、もうシワになっちゃってますけど」
強引に脱がされたらすっかり愛想を尽かせるはずだった、と心中だけでボヤきながら、NGの合図を脱いで畳んでしまった。
「見てるこっちが、ゾクゾクして怖くなるぐらい、エロいな……おおぅうっ!?」
「“怖くなる”も“エロい”も、女の子に聞かせるほめ言葉じゃありませんよ~?」
冬優子はプロデューサーのみぞおちにツッコミを入れてやった――『ほめ言葉のつもり、ってのは通じたようで』『言葉尻の取り合いは勘弁して欲しいわね』――アイコンタクトだけで続けた。
(本音でも、ふざけて言えばウソみたいに聞こえる……でもそれがあんたの本音だってわかってるわよ、ふゆは)
お互い着衣をすっかり脱いで、冬優子の部屋のベッドで並んで座る。こいつを帰したあと今夜このベッドで寝られるのだろうか、と一瞬だけ心配する。
プロデューサーの体温が熱く感じる。心配が汗をかいて溶けてどこかへ垂れていく。
(最初からするつもりだったら、もう少し……)
化粧もネイルも香水も下着も、冬優子基準では準備が甘い。けれど体型や肌艶はだいじょうぶだろう、と言い聞かせつつ隣のプロデューサーに上目遣いを投げかける。上体を少しだけそらしてデコルテやバストを見せつける。
公称スリーサイズが上から78、59、81とアイドルとしては控えめにしている。バストとウエストはともかく尻が逆サバだろう、とネットでも業界でもささやかれ、時どき憤慨させられる。
「もっと、甘ったるくて、くすぐったくなるように、ほめてくださいっ」
首をころんと傾けて、プロデューサーの腕に押しつける。彼の体臭の濃いところに鼻腔が近づいて、意識がそちらに引きずりこまれてしまう。
「……かわいい、夢だと思ってただろうな、さっきベシベシってツッコミもらってなかったら」
「想像力が豊かなようで」
肩を抱き寄せられ、くちびるを重ねられる。いつもよりほんのり甘じょっぱい。もう唾液がじわじわ漏れてもいい、と思ってしまう。
「ひゃむっ、ん、れる、ひぅ……ん、ぷふっ……」
くちびるが離れて、目ぶたも開けないうちにすぐ笑う。
「好きだよ、冬優子」
「……きょうは聞けないかなって、心配しちゃった」
彼の手と吐息が、冬優子の頬と首筋をなでてくる。触ってもいいか、と無音のうちに感じ取る。
「ふゆ、まだ夢みたいな気分ですよ?」
アイコンタクトもできない至近距離だと、肌と呼吸で意思疎通できる気になってくる。冬優子が誘うと、彼の指先が乳房の柔らかいところをぷにぷにと沈ませる。手のひらにぶつかる乳首がもうこりこりとしこってしまっている。
「あんっ、ふ、んっ……敏感、なんですよ、おっぱい……でも、お好き、ですよねっ」
「ああ、気持ち良すぎて、手が溶けて落ちそうだ……」
「ほっぺたじゃあ、あるまいし」
乳房をやわやわ、わしわしともみしだかれる。童貞のように緊張をはらんだ手つきに、じれったく切なくさせられる。
「……ふゆからも、しちゃいますから、ね」
彼の太ももをぺちぺちタップする。あえてあいまいにした合図で揺さぶる。
目線を彼の顔に向けたまま、遠回りで手探りして下腹部とペニスまでたどり着く。彼の指先や太ももから感じる形容しがたいほどかすかな反応が、冬優子を勢いづける。
「おっ、おうっ……!」
「わぁ、もう濡らしてる……エロいのはプロデューサーさんのほうですっ」
勃起しかけのペニスの亀頭近くで、生暖かいぬるぬるを感じ取れる。竿を手のひらと4本指でみっちりホールドしつつ、亀頭を親指で刺激する。冬優子の側もくすぐったくなるぐらい弱く、あるいは先走りがにちにち音を立てるぐらい強くしたりする。
「く、ふ……は、ぁっあ、……ぅうぁっあ、ぅ、ッあ!」
「プロデューサーさんも、かわいい反応してくれるし……♥」
手コキを受けてか、彼による乳愛撫が散漫になる。逆転のように、ペニスに血が集まって熱く硬く膨らんでいって、冬優子を楽しませる。
「あ、あ、そこっ……」
「気持ちいいんですか~」
「き、気持ち、よく、てっ」
「素直ですね、いまは」
太さ、長さ、硬さ、反り具合が、やはりこれまでの彼とのセックスを呼び起こす。童貞に戻ったような拙い乳愛撫との落差でめまいを催す。勝手にお尻や内ももやヒザ裏がきりきり張り詰める。
「ひゃんっ、あ、あっ……!? ふふ、おっぱいに仕返し、ですか……♥」
「ん、うっ……つい、指が……」
ぐちゅ、にちゅっ、といういやらしい響きを聞く。自分の女性器から漏れているかも、と迷ってしまう。
「したくなったら……床で、お願いしますね」
「……痛くなっちゃいそうだが」
「ベッドだと、やっぱりダメな気がしちゃうんです」
自分のベッドに彼を招き入れて交わることも“やっぱり”後ろめたい。
(あんたのベッドでさんざんやらかしちゃってるのに……ふふ、われながら、おかしいっ)
ただ、それを聞かせた彼の反応が気になって口に出していた。
「……俺のヒザに乗せればいいか」
「ふゆ、降りられなくされちゃいそうですね……それ、怖い、かもっ♥」
床暖房の効きがいまいちなフローリングにあえて寝転がる。あんたのために受け入れてあげる、と脚に語らせるように思い切って開く。言葉でも彼を促そうとして声が濁る。
いつもなら1回か2回か手や指でイカされてから挿入だったのに、きょうは先走っている。そう考えてしまった。
「あ、ゴム持ってます……よね、プロデューサーさんっ……うん、えらいえらいっ♥」
力強く上に反っているペニスも、言われて彼があわててゴムをまとうと、ギャップでかすかに笑いを誘う。お腹がひくつく。これまでどうやって心地よく苦しくさせられたかの記憶が、また意識を浸食してくる。
「冬優子としたい、入れていいか……?」
「うまく入れられますか……ふふっ」
彼がペニスを握りしめて狙いを定める。力みすぎてか、滑って竿が冬優子の恥丘やへその下に乗りあげてしまい――(わざとだったら蹴っ飛ばしてやる……)――かつて開発されすぎて怖くなったポルチオがうずいて泣きたくなる。
「んっ、んっうぁ……はぅ、んぅっ……♥」
彼が無言で退く。あらためて入口に添えられる。
みちみち、めりめり、と割れ目を掘削されるように開かれる。彼の動きがふだんよりもどかしい。
「んふ、ぁ……は、ぁはっ……いつになく、優しいですね……たまには、いいかもっ……あっ」
「冬優子……?」
「抱っこは……終わってから、で……って、気分です……♥」
「……そうか、どうしたもんかな」
首筋と肩に回された彼の腕に、つかんで爪を立てて制止する。彼のそれが汗でべたついて筋骨でごつごつとしているのを感じる。衣服や寝具だったら耐えがたい感触なのに、肌でも粘膜でももっと強く味わいたくなる。
「ん、ダメ、それ、ぇ……んっ、はぅ、んっ……!」
彼の手が、床と冬優子の背中のあいだに這い入って、彼女の腰をがっしりつかんでくる。上反りのペニスで、クリトリス裏のGスポットや膣奥のポルチオへ圧力をかけてくる。
「んうっくッ……!?」
口を手で塞ぐ。弾けるような快楽に見舞われる。こぼれたもだえが彼を煽ってしまったかも、と構えてしまう。
「冬優子、きついかな……んぐっぅうっ、こっこらっナカ締めるな、それ返事じゃないっ」
「ちょっと、きゅってなっちゃった、だけ、ですぅ……!」
彼が腰をグッ、グッ、と引きつけるように小刻みに使う。痛みのように否応なく激しく、そのうえ恍惚さえもたらす快楽が女体の芯を行き来してくる。
(ああ言っておいて……ぎゅって、してもらいたくなっちゃってる……ふゆをその気分にさせよう、ってつもり……?)
時に、彼の腰使いが止まって様子をうかがってくる。対して、かかとで彼の腰をべちべち叩いたり腕をつねったりする。また腟内をペニスでぐつぐつこすられ、熱っぽい吐息やねっとりした体液をこぼしあう。
(確かにね……あんまり気持ち良すぎると……いっそぎゅってされて身動きとれないのが気楽かも、だけど)
肩甲骨とそのあいだをくすぐられ、どきりとさせられる。体を浮かされる。快楽より優しく、うっかり身を任せてしまいがちな浮遊感からどうにかわれに返る。彼の耳たぶをかじる。汗臭くてくせになる。
「終わってからって、お願いしたのにっ」
「ごめん、どうしてもしたくって」
「せっかくプロデューサーさんに見てもらおうと思ってる体なのに」
「……見るだけなら、ほかの人もできるし」
「こうしてぎゅって抱けるのは俺だけ~って優越感に浸っちゃいます?」
つながったまま彼のヒザの上に乗せられている。反抗するように冬優子も腰を前後に動かす。ペニスがこすられ、膣もかき回される。抑えきれない快楽を、腕と手も彼に絡みつかせて無理やりにとどめ、さらに高める。
「はっ、ふっ、はぁっ……!」
「あぅ、くぅ……締まって、中が、うねって……ッ……」
彼に引っかき傷をつけてしまったら何か塗ってやる軟膏があったか、一瞬だけ考える。膣をどしどしと行き来されるとすぐ忘れてしまう。快楽が強すぎて腹立たしいとさえ思う。報復のように、腰を密着させて前後と斜めの揺さぶりをかける。ぱんぱん、ぬちゅぬちゅ、と音を鳴らしながら、nやmの文字を描くように結合部ごと揺らす。
「ふゆ、こっ……!?」
「んっ、ふぁぁっ……そ、それっ……んっ、んくっ……♥」
びちゃびちゃした愛液や先走りがぱんぱんという抜き差しで押し広げられたり飛び散ったりする。こんなものでベッドを濡らさず済んで良かった、とため息だけでむにゃむにゃする。
「だ、ぇ……そ、ぉ……おォおお゙……それ、ぁ……ふかいっ、の……!」
やられっぱなしでいてくれていた彼が、再びやり返してくる。床に座ったまま冬優子の腰を抱きしめ返して、あちこち急所を狙って抜き差しとともに揺らしてくる。
「んむゔっ、ゔっ……っい、息、できなく、なっちゃ、う……♥」
深くイッてしまっている。下腹部も脚もがくがく震わせて、愛液よりずっとさらさらした失禁のような潮を浴びせる。それが彼の下腹部にぶつかっる。2人の肌ずれでべちゃぐちゃと行儀の悪い音が立つ。子供の水遊びのようにほとんど無心になって何度も音を立ててしまう。
「は、ァ……ぅ、冬優子……っくう、う……っ!」
「ふ、ふっ……もう、出しても、許してあげますよ……ぴゅーって……あはは、ゴムしてるから、飛びませんね」
着けたままでいたかった装いが、ぐずぐずにふやけてほとんど剥がれる。
「冬優子こそ……だいぶ、気持ちよさそうだな……」
「ん……んん、ん……っ♥」
彼が深いところで動きを止める。数秒もしないうちに、膣ヒダが靡いてしっとりまとわりついてしまう。怖くなるほどあっさりなじんでしまう。
「冬優子……」
「はぅ、ほぁっ、ハぁっ……あぅ、ふーッ……!」
「もう少し……しても、いいか?」
彼のしおらしげな問いが――(半分くらい本心でしょうけど……)――かえって冬優子を逆なでしている。
(……もう少し、すれば……ふゆが、すごくイッちゃうって……わかってるって、言いたいの……?)
冬優子を壊れさせてしまうほどイカせたくて、その水際まで追い詰めて、でも彼女が自分で沈んでくれるまで待ってあげようと、わざわざ抱きしめながら聞かせてくる。
「あうっ、うっ……んあっぁっ、あ、ひっ……ぉっ……お゙ッ……!」
「冬優子……もう、俺、は……っ……!」
冬優子に聞いておいた声音のもう半分が強がりだったのか、彼があっさりしびれを切らす。膣内への抜き差しが再開される。
一拍ごとに、突き刺してやってしまいたかった言葉が泡立ってどこかに滴り落ちてしまう。
(ふゆに聞いておいて、こんなの……これだから、どれだけ恨んだって足りない……っ♥)
彼にも恨んでもらわなければがまんがならない。
「んぷ、ちゅっ、ぢゅぅうぅ……!」
腕で彼の首をホールドする。震える腕にさらに鞭打って顔を近づける。彼のくちびるに食らいつく。狙いすましたつもりが、少しズレて歯で切れたか、血の味が混じる。
「あ、んぷっ、く、ふぁ、あ……、ぉ、おく、もうっ……あはッ、あっふあァぁっ……っ♥」
身も心もどこまでも押し伸ばしてぺしゃんこにしていくような快楽の中だと、生臭い味のノイズがかえってありがたかった。
※
「……ふゆの手とあそこだけじゃあ、満足できませんでしたか♥」
「やけに楽しそうに……おわっ、冬優子っ」
「うわっ、まだ生暖かい~っ」
使用済みゴムの口をしばってゴミ箱に捨てかけ――(あいつの部屋の時みたいに処理しちゃまずかったわ)――てきとうなビニール袋に包んでプロデューサーに押し返す。
精液と先走りとゴムの殺精子剤とにまみれて、まだ天井を向いている彼のペニスをじろじろにらむ。
「じゃあ次はおくちですね、あとおっぱいも」
「してくれるんなら、洗って……うぉっ、ぁっ!?」
「それには及びませんっ♥」
自分の家だと意識した途端、このままでプロデューサーを帰していいのか、とむしゃくしゃしてくる。
(……ふゆが主導権を握ったところで、しめたくなってきたわね)
立ち上がった彼をぐいぐい押して歩かせ、部屋の大壁に背中を押しつけさせる。
「女の子が壁ドンする側ってのも、ありかもですね」
「それは俺もそう思った」
「次は来年になっちゃうし、お預けが辛くないよう、いつもよりいっぱい相手してあげます♥」
「だから洗って……精液もだけど、ゴムのアレが……まずいんだろ」
「味見したことあるんですか?」
膣イキさせられたあとで体がうずくし心は照れくさいし、どちらも重なって気だるい。それらがプロデューサーのむずむずした表情を見ていると、溜飲とともにどこかへ下がる。
彼がノド元で押しとどめたはずのツッコミが、冬優子に空耳で聞こえる。
(ママとパパが帰るまでには……ま、こいつを焦らしながら様子見したっていいわ)
半勃起ほどにおさまった彼のペニスを捉えるように、乳房の膨らみをむぎゅむぎゅ押しつける。ぴょこんとパイズリから飛び出させた亀頭を見てニンマリ笑う。裏筋をくちびるで食んでやる。
彼の震えを感じる。彼の体を喜ばせるときの興奮は、自分の体に走る性感より気楽に浸れる。どちらも楽しくて苦しくて、こちらの人格を乗っ取ろうとしているかのように油断ならないけれど、もうこれがなければ朝も昼も夜も味気なさすぎる。
「ううぉうっ……!? ま、まだ敏感で……」
「優しくして欲しい、って言ってくださいっ」
プロデューサーがセックスお預けに耐えやすいよう多めに奉仕してやろう、という言葉通りの気遣いもほんのりある。膣イキさせられ“ふゆ”を引っ剥がされた、という無言の意趣返しがほとんどである。
「優しく、って……そろそろご両親のご帰宅が気にな……っううっ、ふゆ、ちょ、おまえっ」
「遠慮なんて、いまはもうじゅうぶんですよ、プロデューサーさんっ♥」
冬優子の魂胆を早くも彼が察したらしい。うれしくて同じぐらい腹立たしい。
伝わったら気恥ずかしいことまで通じて、どうしようもなく2人きりという心地に沈む。
「そんなに震えないで……ふゆだって敏感になっちゃってるから、優しくしかできませんよ」
ぐりぐり、すりすり、体温が交換できそうなほど肌を重ねてこする。茹で上がったように熱いペニスに追随して乳房も熱くなってしまうかも、ただでさえどうにかなってしまいそうなほど胸が火照ってるのに、と妄想が飛ぶ。
「あと、声を聞かせてください」
「声は……」
「顔も、隠さないで、見せて」
「……恥ずかしがらせたいのかな」
「それがいいんです、おちんちんはまずいけど」
二の腕とヒジと前腕とで乳房をかこむようにして谷間を作ってペニスを挟んだまま、さっきの彼をまねるように動きを止める。彼の押し殺されかけた荒い息や声や表情が倍も鮮明になる。一緒に溶け合うような恍惚とは別腹、と上機嫌になる。
「む、ぐ……ふぁ、あぅ……!」
「そんなところとか……見せちゃいけないんですからね、ほかの子にはっ♥」
体がすっかり熱く汗ばんでいるせいか、夏のプロデューサーの姿が意識に割りこんでくる。ジャケットを脱いでネクタイも外すと首筋がちらりとのぞいて、制汗剤で隠しきれない汗もかいて、肩幅や胸板が目立つし――(こいつにクールビズやめさせなきゃって思っちゃうのは、ふゆが……こいつの余計なところまで知ってるせいかしら?)――こちらこそ“他人に見せたくない”と思う。お互いよく正気のフリができるものだ、と呆れる。
「んちゅっ、ちゅぱっ、ぢゅる……っ」
「ふぎゅっ!?」
「うふふ、苦くてしょっぱくて、まず~い……おっぱいだけだって油断してました?」
裏筋にくちびるを寄せる。キスと呼ぶにはやかましいほどちゅ、ちゅっと鳴らす。びく、びくという震えで逃げられてしまう。乳房で捕らえなおす。
「てきとうにむにゅむにゅ、ってやってるだけなのに……ずいぶんと気持ちよさそう」
「気持ちいいんだよ、実際……」
「そんなこと言っちゃっていいんですかぁ」
「もう……腰が抜けたらどうしようって感じだよ」
「まだ、まだ、がまんして」
耐える彼をもてあそび足りない。ぬるん、ぬるん。ずりゅん、ずりゅん。おっぱいで左右から代わるがわる責め立てる。これ見よがしによだれを亀頭へ垂らして塗りつける。滑りをよくしてくれるそれが白く泡立つほど執拗にこする。
「あら、あら……こっちのお口も、ぱくぱくってしちゃうんですね~♥」
「あ、ぅ、あぁああぁっ……!」
舌先を伸ばしてべろりとなめる。どちらかと言えば精液より先走りのほうが趣味に合う。泣き出すようにじわじわと漏れてくるところが彼女の心をくすぐる。
「もう……おっぱいと、舌と、同時にやったら、すぐ終わっちゃいそう……ふふ、安心してくださいっ、まだまだ付きあってあげますっ」
「まだまだ、って」
「ああ、気になるんですか」
冬優子は、名残惜しくなんてありませんから、と無言で主張しながら、机へ置きっぱなしだったスマートフォンをとる。
メッセージが1通。
「デートついでにお買い物行ってきてもいい? ですって。ママから」
プロデューサーの顔に浮かぶ葛藤と焦燥が、冬優子の気分を絶頂よりもう一つ浮かれさせる。
「返事をね……パパをヤキモキさせない程度にね、っと」
「えっ」
「ここで『ごゆっくり』とか返したらアヤしすぎるし」
送信済みを示すメッセージアプリを見せつけてから、ベッドにスマートフォンを投げるように置く。
「もうあんまりがまんできなくなっちゃいましたね……ふゆのおっぱいで、おちんちん気持ちよくして欲しいですか?」
彼の声が聞こえたが言葉はわからない。
「ンああぁああ……っ! あ、ぅ、あぁあぁっ」
「して欲しいんですか?」
何を口走ろうと冬優子を調子づける声音にしかならない。
「う、ぅう……して、欲しい……」
「もっと詳しく説明してください♥」
「……冬優子、の……おっぱいで、パイズリ……ぃいっ!?」
「ええと、パイズリってなんですか?」
いっそうざったいと思ってくれ、と念じながら首より上で目いっぱいあざとく甘ったるい顔と声音と仕草を作る。首より下では胸を張って腕で横乳を寄せてバストのボリュームを誇示する。
「冬優子の……おっぱいのあいだに、挟んで……こすって……」
「はい、はい」
「うぅっ!? う、うーっ」
もう物わかりよくペニスを挟みなおしてやる。不意打ちにざわめく表情や吐息と裏腹に、ペニスが熱いままで冬優子のパイズリを迎え撃つ。骨のように硬くなった竿と、それよりだいぶ柔らかい亀頭の違いを乳房でむにゅむにゅと味わう。
「こすって……どうしましょう?」
「出し、たい……ああ、もう、冬優子……!」
「顔はダメよ、顔は」
ぱくり、とカリ首をくわえる。最後の言いつけさえ守ってくれれば許してあげる、と上目遣いで突き刺す。
「あ、あ、あ、く、ぅ……ううぅっ……!」
鈴口と裏筋を舌先でずりゅずりゅ集中攻撃する。彼のヒザや太ももが細かい痙攣のように震えている、と気づく。“腰が抜けたら”も大げさではないかな、と納得する。
「ぴちゃ、れぢゅ、れぢゅ……ん、くん、んっ……プロデューサーさん、気持ちいいですか~?」
「す、ご……っ! くふ、うぅ……きもち、よすぎ、る……!」
再び舌先で責め立てる。視線での催促も重ねる――(出して、出しちゃえっ、ふゆに気持ちよくさせられすぎて、がまんできなくて、他人に見せたくない情けないようすでっ)――どくんどくん、と脈打つ。
「んぷ、んぐ……! ちゅ、れぅ、むぢゅっ、んんぐ、ぁぷ、んく……っ!」
舌裏で射精を受け止めるようにする。思ったより精液の量が多く勢いが強く、受け止めきれなかったぶんがくちびるからこぼれる。空気に触れた瞬間の風味がいちばんえぐいな、と一欠片だけ冷静になる。
手のひらをあごに添える。彼の視線を確認してから、あふれ精液を手のひらですくって口内へ戻す。
「れぅ、んぐっ、こく……はふ、む、んくっ……♥」
たまっていたよだれとぐちゅぐちゅ混ぜつつ、精液をゆっくり飲み下す。頬裏やノドに糸を引くような感触が彼の未練と思える。ねちねち絡みつかれるほど愉快になってしまう。
「ん、くっ……よいお年を、来年もよろしく……って感じかしらっ」
大壁の壁紙にプロデューサーをうっすらかたどった跡が残っていると気づいた。慌ただしい事後処理の手が思わず止まって、2人で引きつった笑いを向けあった。
※
「ねぇママ、クリスマスまでに、限界までダサいセーターを編んであげたいんだけど」
冬優子は両親とともにプロデューサーを見送る直前、そう母親に切り出した。3人からきょとんとした顔をされても、クスクス笑うばかりだった。
その夜、プロデューサーのスマートフォンに冬優子からメッセージが届いた。
『守れなかったルールは変えましょう。前と逆に、あんたがえっちしたいとき用の服を決めて、それ着てるときだけ誘って良いってルールにしようと思うの』
プロデューサーが返信を打ちあぐねているあいだに、続きの通知がやってきた。
『これ着て誘ってくるあんたの姿を一度見てみたいわ♪』
アグリー・クリスマス・セーターのデザインを次々と送りつけられ、彼は冬優子にさんざん身もだえさせられた。
それが深夜に差し掛かると、彼は勇気を奮い起こして通話用アイコンをタップした。
「続きは次の朝にしてくれないか? お互いもう寝たほうが……」
「あんたの跡が残っちゃった部屋に慣れるまで、どうしても寝不足……って言ったら、まだ付きあってくれる?」
なお冬優子は仕事で多忙だった。
制作時間が不足してさっさとセーターを諦め、ダサいクリスマスデザインのひざ掛けを代わりに完成させてこっそり贈った。
「メリークリスマスっ! これなら事務所でも使えますね♥」
「……事務所の全員にめっちゃ見せびらかしていいかな」
「開き直っちゃダメ~っ」
新ルールが来年まで続くかは定かでない。
(おしまい)