少々不満そうにしている傾の背中を、鞘の先で小突いてやる。振り向いた顔。苛立ちが募っている。それでも一応付き合ってくれているだけ、義理堅い女だといえるのか。
大きく揺れる始末屋の旗。それもそのはずで、いまは旗は朱里ではなく、傾が背負うことになっているからだ。
あの瑞姫という妹は、姉より余程したたかな女であるように思えていた。とろけるような質感の乳房。その奥に隠された心に触れるのは、そう簡単なことではない。
「私は女の子同士親睦を深めてくるから、あとはよろしくね、姉さま」
そう言って、ほどなくあらわれた思春すら巻きこんで遊びに行ってしまうのだから、芯のぶれなさ加減は相当なものである。
自分と傾の二人は、別れ際に、少しでもいいから稼いでくるようにと言付けられているのだ。あの時見せた朱里のツンとした表情から察するに、どこまで本気なのかはわからない。とはいえ、始末屋稼業は開始したばかりなのである。何事も、地道な一歩が大切なのではないか。たとえ些細な問題でもいいから、ひとまず依頼を受けてみることだ、と一刀は気持ちを新たにしていた。
「おい、始末屋」
平坦な声で傾が言った。
面倒で仕方がないという感情を、この女は一ミリたりとも隠そうとはしない。だからこそ、こちらも遠慮のない態度をとることができるのか。ひねくれたところはあっても、嫌な感じのする裏表の顔があるわけではなかった。
「この私がわざわざ売り子をしてやっているのだから、分け前はきっちり支払ってもらうぞ。タダ働きなど、絶対にしてやるものか。はあ……。瑞姫が仕掛ける前に気づいてさえいれば、こんな面倒にはならなかったのになぁ……」
「たまには、真っ当に銭を稼ぐことだ。それこそ、いつかおまえが役人に突き出されても知らないぞ、傾」
「大きなお世話だ。われらには、われらのやり方がある。生き抜いてやるさ。どこまでも、這いつくばってでもな」
話しながら、傾が拳で肩のあたりを叩いてくる。
まだ、底にあるなにかには触れさせてもらえそうにない。二度あることは、三度あるとも言う。それだけに、この絡まった
いつ終わるとも知れない、長い旅路だ。だったら、その道中はなるべく賑やかである方がいい。
「あのう。万事始末請負って、つまりはなんでも屋ってことでしょうか」
「おう。銭さえ貰えれば、この男があくせく働いてくれるぞ。犬の糞の世話でもなんでも、言いつけてくれていい」
駆け寄ってくる若い女。落ち着いた色の着物に、整った顔立ちと黒髪がうまく調和している。渋々といった様子であとからついてくるのは、女の連れなのか。どちらも切羽詰まった雰囲気ではないから、表の仕事の依頼なのだと一刀は思う。
自分は売り子に徹するつもりなのか、傾が勝手なことを話している。一旦関わったからには、逃してやるつもりなどない。ほんとうに糞の世話をさせられるとしても、その時は傾も一緒だ。
「ええっと、そうではなくてです、ね」
「なんだ、歯切れの悪い女だな。まさか貴様、殺しの依頼があるとでもいうのか?」
「ちっ、違いますっ! あの……。私、この人とお付き合いしているんですけど、その」
「なるほど。その男が貴様を満足させてくれないから、こいつにどうにかしろと言いたいのか。よし、それならさっさとおっぱじめろ。おい、一発いくらだ、始末屋?」
「そ、それも違いますっ!? その、お恥ずかしい話なのですが、私……」
「ほう、ほうほう。うげっ……。なんでまた、こんな面倒な依頼が、私のいる時に……」
顔を赤らめて依頼の内容を話す女。
連れの男は、なんとも申し訳なさそうに頭を下げるばかりだった。どちらかといえば、断られることを望んでいるのかもしれない。それでも、女としては勇気を振りしぼって自分たちを頼ってきたのだから、どうにかしてやりたいという気分にはなる。
「役人にばれて咎められたら、すべて貴様の責任にしてやるからな。覚悟しておけよ、始末屋」
「そうしてくれていい。依頼人を守ることも、私の仕事の一環なのでな」
「つまらん男め。少しは動揺しろ、まったく……」
結局、四人揃って人気のない路地に移動することになった。
女は、自宅で普通に交わるだけではどうしても満足できず、屋外に緊張感を求めているのだという。二人だけで何度か試したこともあるが、男の方がどうしても尻込みしてしまい、肝心なことをできず終いになっているという話だった。
それで始末屋の旗を見つけ、依頼をしてくるに至ったのである。野外で男女の交わりをしてみたいから、他の誰かにも参加してほしい。つまりは、みんなで越えれば赤信号もこわくない、ということなのか。
「ほ、ほら、はやく。せっかく始末屋さんが手伝ってくれるんだから、愉しまないと」
「わ、わかったよ。俺も男だ、こうなったら覚悟を決めてやる」
「あんっ……。やっ、んっ、んはっ……。ふふっ。たくさん文句を言っていたくせに、あなたも随分やる気になっているんじゃない」
路地の奥で、二人が濃密な口づけを交わしている。
愛のかたちなど、千差万別なのだろう。現代の価値観でいえば、自分もまったく褒められたことをしていなかった。まだ大人になりきっていない朱里だけに飽き足らず、思春にまで手を出してしまっている。そして、そういう流れだったとはいえ、炎蓮とも外での交わりに及んだばかりだった。
傾を壁側にやり、身体を密着させる。二人に付き合うだけなら、男女のことをしているふりをしているだけでも十分だった。
その一線を狂わせる程度には、傾は女としての魅力を備えている。絡んだ奇縁。踏みこめば、間違いなくさらに複雑になるのだろう。それで困るようななにかがあるわけではない。自分は単なる旅の始末屋に過ぎず、気のままに生きるだけだ。
「お、おい。するならさっさとしないか、始末屋。それとも貴様、この私を焦らして愉しんでいるつもり……」
懇願に従い、傾の肉体に手を伸ばした。肌の表面は女らしく繊細で、触れた指が吸い付くような感覚がある。
そこまでする必要があるとは思わないが、迷いなく唇を合わせた。意外と真面目なところがあるのか、それとも肉欲が勝っているだけなのかは知らないが、傾もこれで乗り気になっている。
舌の表面同士が擦り合う。息継ぎのため少し唇を離すと、粘っこい唾液の糸が間に出現した。口づけだけでなく、身体にも触れてほしい。傾の荒い吐息から、そんな気持ちが伝わってくるようだった。
「んうっ、あっ、んぐっ……。私の身体は、安くないからな。丁重に扱うのだぞ、始末屋」
熱のこもった視線。それを向けながら話すものだから、そういう誘い方をされているのかと勘ぐってしまう。
衣服をずらし、大きな乳房を拘束から解放してやる。ぷっくりとした乳輪、それから尖る先端を指で確かめるように転がし、首筋に吸い付いた。雌の香りが鼻から肺に抜けていく。横目で観察してみると、依頼人の二人もできあがったこの場の雰囲気を堪能しているようだった。
「ねっ。いつもと違って、あなたもすごいでしょ? 開放感があるのって、気持ちいいよね」
「それについては、否定しないよ。始末屋さんがいい人で、おまえもよかったな」
「うん。これで自信がついたなら、今度は二人きりで、ね? きっと、どきどきもっとすごくなると思うから」
理性による枷が、次々に外れていく。女の乳房を大胆に吸い上げ、男の方は自分でいきり立ったものを扱いていた。
こうした愉しみ方が、世の中にはあるものなのか。指で傾の肉体の感触を味わいながら、眼では別の女の痴態を追っている。倒錯的というか、日常から外れた行いであるだけ、人の本能に突き刺さるなにかがあるのかもしれなかった。
耳たぶを引っ張られる。自分の得ている昂揚の正体に気がついているのか、傾はちょっと面白くなさそうに舌を鳴らした。
「貴様はこの私を抱いているのだぞ、始末屋。それなのに、向こうの女に眼移りするなどと、許しておけるものか」
傾の指が乱雑にズボンの中の男根を探り当てる。強い刺激。指で輪を作り、雁首を重点的に責め立てられている。
同時に、じゅるじゅるとわざとらしく音を出し、舌を執拗に絡めてくる。別の女に気を逸らす隙など与えない。器用にベルトを外し男根を露出させると、傾は一瞬怖気づいたのち、つばを飲みこむような仕草をみせた。
「お、おうっ……♡ これでなかなかのモノを持っているではないか、始末屋め。どうだ、んっ……。私の手が、気持ちよかったのだろう? だから貴様のチンポは、こんなにも、んはあっ……♡」
傾が男根を扱く手のひらに唾液を垂らし、我慢汁と混ぜ合わせる。
すぐに淫猥な泡ができあがる。ぐちゅり、ぐちゅり。ねっとりとした手つきで亀頭を何度もこね回し、傾は顔を紅潮させている。
こうまでされては、依頼人たちの交わりに気を向けている余裕などなくなってしまう。傾だけに視線をやり、与えられる快楽だけに意識が集中していく。血管の浮いた男根。限界まで張り詰めていて、女の手の内で脈打っていた。
「いいぞ、始末屋。立派なチンポが情けなくふるえていて、なんだかかわいらしいくらいではないか。くははっ……♡ こ、こんなもので中をかき回されたら、絶対におかしくなってしまう。ああっ、想像するだけでたまらないな。んっ、むうっ、はあっ、はーっ……」
どろどろになった亀頭の先。短いスカートにも似た服の裾をめくって、傾は下着の中心に擦りつけている。蒸れた質感。愛液と我慢汁による染みが瞬く間に拡がり、秘部を覆う布を使い物にならなくさせていく。
わずかに腰を突き出し、膣口をうかがうような動きをしてみた。返ってくるのは淫靡な笑み。傾は完全にその気になっていて、双眸にはすでに怪しい光が宿っていた。
「ふう、んっ、あっ、ああっ……♡ ん、んんっ……。これも仕事ゆえ、挿入を特別に許してやらんこともないぞ、始末屋。ど、どうだ、さぞうれしかろう。貴様の連れは、揃って貧相な身体つきをしていたからな。だから……、あっ、んぐっ、お、おうっ……♡」
「これがほしいのなら、素直にそう言えばいい。ン……。おまえに私を煽り立てる意図があるなら、話はまた違ってくるのだが」
いきなりの結合に驚いたのか、傾の膣肉がひくついている。反応からして、いまの一撃で軽く達したのだろうと一刀は判断していた。
手に余る尻肉を引き寄せ、腰を打ち付けた。自分と傾の淫行で火がついたのか、依頼人の二人も後背位のかたちでまぐわっている。どちらも快楽を貪る姿はけもの同然だったが、それでいいと思った。本能を解放した先にしか、たどり着けない感覚がある。思考を挟まないだけ、動きは研ぎ澄まされていくのだ。だらしない喘ぎを洩らす傾の下顎を撫でる。それが恥ずかしかったのか、肉の窄まりがかすかに強くなった。
「な、なんだこれ、あっ、はっ、はひ……ぃ♡ 始末屋のチンポが、私の内蔵ひっくり返るくらい、マンコの奥をついてきて……ぇ♡ んっ、おっ、おーっ、おうっ……♡ ああっ、ずんずんくるぅ♡ こ、こんなチンポ知らないぃぃ♡ あふっ、んぐっ、はぅ、んひ……っ♡」
これではそのうち、失神してしまうのではないかと思えてくる。
激しく乱れる傾の首に片手をやる。強気な発言をしている裏で、責め立てられることを望んでいるような節が見え隠れする女だった。交わってからは、それがより色濃くなっている。
人体に対する負荷の加減は理解しているつもりだった。ちょっと不安そうにする傾の首を、じわりと締め上げる。呼吸は制限されているが、死ぬようなことはないはずである。
「んぐっ、んっ……♡ かはっ、あっ、く、苦し……っ。し、始末屋……?」
「やかましい口を、少し閉じさせてやろうと思ってな。こうまでされて鳴き声をあげられるのなら、大したものだが」
「おぐっ……♡ んぅ、んっ、ふーっ♡ い、いきっ、んっ、はっ、はふ……っ♡ チンポで突かれて、い、息吸えない♡ ら、らめっ。こんなの、うおっ♡ いくっ、ほんとに、いく……いく……ぅ♡」
強烈な締めつけ。膣肉の痙攣がずっと激しくなる。
命の危機を感じてなお、襲いくる快楽から逃れることができない。生と死。その狭間であがく傾の痴態は、どこまでも美しく尊いものだった。
落ちる寸前のところまで責め立て、緩めるという動きを何度か繰り返す。タイミングに慣れさせてはやらない。それがわかれば快楽が薄まることを理解しているから、傾も必死になって抗ってみせる。
「おくっ、うっ、んうっ、うひ……ぃ♡ ああっ、また、い、いかされる。このままだと私、チンポにめちゃくちゃにされて、いっ、イキ死にゅ……ぅ♡」
「精液が欲しくはないのか、傾? ここで果てては、最高の快楽を知らないままくたばることになる。私としては、正直どちらでもいいのだが」
「ら、らめっ、らめだっ♡ いくときは貴様も、ふひゅ、一緒に……いっ。マンコの奥にびしゃびしゃって、いっぱい射精して♡ してくらひゃい……っ♡」
「ははっ。いい子だな、傾は。ならば、しばらく我慢しているのだぞ。私がいいと言うまで、絶頂はお預けだ」
「はひっ、は……ひぃ♡ が、我慢する。ちゃんと我慢しているから、あっ、んっ、くふぅううう♡」
酸素の回らなくなった頭を、傾が大きく三度縦に振った。
期待には、応えてやらなければならない。ぎりぎりまで指に力をこめた状態で、深い抽送を行う。膣奥はほとんど馬鹿になっていて、痙攣が止まらなくなっているようだった。吹き出す潮のせいで、濃厚な雌の香りがあたりに立ちこめている。
「いぎっ、あーっ、んひっ、んいぃいい♡ また、また大きいのきて、くふっ……♡ おおっ、おっ♡ おく、マンコの奥きもひぃいぃい♡」
「は、ははっ。すごいな、始末屋の二人。外だってのに、あんなに叫びまであげてさ」
「だ、だって、それだけ気持ちいいんだから仕方がないじゃない。ねっ、もっときてぇ♡ 始末屋さんたちに負けないくらい、私たちも気持ちよくならないと、んっ、ああっ♡」
異様な熱量が路地の一角を支配している。
どうやら、二人もラストスパートに突入しているようだった。傾はとっくに限界を越えている。頭では我慢しているつもりなのだろうが、もう身体の状態など把握できていないのではないか。ふるえの続く膣肉をいじめ抜き、男根を突き入れる。そこから送られる強い信号だけしか、傾には認識できていないはずだった。
「もう十分だ、傾。ここまで、よく我慢してくれた。好きなだけ絶頂するといい」
「は、はやくチンポきてっ♡ ずっと頭おかしくなりそうで、いひっ、んっ、んぐ……おふっ♡ んひっ、ああっ、い……ぐっ♡ 本気で、いぎ死ぬ……ぅ♡」
首を締める力を少しだけ強め、そのまま最奥に亀頭を擦りつけた。
傾の意識がほとんど飛びかかっている。そんな最中、一刀は溜めていた精液を吐き出した。
声にならない声が響く。下腹部を満たす濁流にすべてを押し上げられ、傾が背中を仰け反らせている。強すぎる快楽。そこから逃げようとする身体を引き寄せ、子宮口に鈴口を密着させた。溢れ出す精液が、次々に飲みこまれていく。なにもかもを吸いつくされるような感覚。呼吸を自由にさせてやると、傾は再び全身をふるわせた。
「ふうっ、んっ、あーっ、はひ……っ♡ チンポも精液も、全部熱くて……っ。はあ、はっ、あっ、はぁ……。まだ、まだどくどくってぇ♡ な、中出しされるの、しゅごい……、んぅ♡ 弱い雌だとわからせられるの、さいこ……ぉ♡」
豊かな胸を何度も上下させながら、傾がうわ言のように呟いた。
汁という汁が、結合部から溢れかえっている。止まらなくなった獣欲ほど厄介なものはないな、といまは笑うしかなかった。
†
満足した依頼人から銭を受け取り、事前に決めてあった集合場所に向かう。
快楽の余韻を引きずっているのか、傾の様子はまだどこかおかしなままだった。時折気味の悪い笑い声を発したかと思うと、全身を身悶えさせる。通行人から浴びせられる奇異な視線が、それを増長させているようだった。
大店の前に三人の姿が見えている。手をふっているのは朱里と瑞姫。思春は壁に寄りかかったまま、顔もあげようとはしなかった。
「あっ、一刀さん。どうでしたか、仕事の方は」
「ただいま、朱里。ひとまず、満足してもらえたのだと思う。依頼料も、この通り」
「わっ、すごいです。傾さんも、お疲れさまでした。まさか本当に、仕事をとってきてもらえるとは考えていなかったので」
「ふへっ……? あ、ああっ。すごいのだな、始末屋というのは。うへっ、んっ、うふふっ……」
「なんだ、この女の反応は。一刀、まさか貴様……?」
異変に勘づいたのか、思春が傾に歩み寄る。
後始末は一応つけてきたつもりなのだが、探られて隠し通せる自信はない。それに、自分たちは仕事でそういうことをしてきたのだから、そもそも隠蔽する必要はないはずだった。
「えっ、えっ? 思春さんのこの反応、一刀……さん?」
「ふうん。かわいい顔をしている割に、意外と女の敵だったりするのかしら、あなた?」
二人の視線が突き刺さる。
妹のことはまだよく知らないが、面白がって思春の生んだ流れに乗っているだけなのではないか。薄く笑んだ口もとが、そのことをよくあらわしている。
「……痴れ者」
ぽつりとそれだけ言い残し、思春が何処かへ去ってしまう。
街に流れる乾いた風。影の跡を追うことを、一刀はするまいと決めていた。