※この作品はR-18です。

剣聖外史始末旅   作:KKS

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五(思春)

 眠っている朱里の吐息を首筋に受けながら、一刀は歩いた。背負っている身体の位置を軽く直す。尻に触れてしまったせいか、朱里がちょっと艶かしい声を洩らした。

 じっと正面を向いて歩く思春のことを、風は観察しているようだった。正直に言って、あまり反りが合いそうな二人ではない。思春からしてみれば、風は余計な部外者でしかないはずだ。

 

「お兄さんを絡め取った先ほどの動き、なんともお見事でした。お近づきの印に、おいしい飴でもいかがですか? あっ。風としたことが、ちょうど手持ちを切らしていたので、舐めかけのものしかありませんねぇ。それならば仕方がありません。普段は簡単に呼ばせたりしないんですけど、今日だけは特別大特価なのですよ。風の真名をお預けいたしますので、よろしくどう……」

「いらん。それから、眼にしたことはすべて忘れろ。面倒事に巻き込まれたくなければ、われらの存在もきれいさっぱりとな」

 

 風のだした提案を、思春が食い気味に拒絶していく。

 飴がないというのは、おそらく嘘だ。風ほどの愛好家が、街をふらつく時間があったのに、予備を補充していないはずがない。

 

「くふふっ。組紐のお姉さんは、見事なツンツン気質をお持ちのようで。これは、攻略のし甲斐がありそうです。ね、一刀さん?」

「むっ……。おい、一刀。まさかとは思うが、貴様この女に始末の話を」

「なにも。ただ、長沙までの道案内の礼として、私の置かれた特異な状況については、隠さず教えた」

「ああ……? まったく、貴様という男は」

 

 一刀さんは痴れ者です、という糾弾する声が、寝ている朱里の口から流れてくる。

 いったい、どのような夢を見ているのだろうか。こうして無事に再会するまで、随分と心配もかけてしまった。世間知らずの自分であっても、その埋め合わせをする必要があることくらい、なんとなく理解できる。

 

「いいんですよ、こそこそ内緒話をしていただかなくても。始末屋さんの評判は、風の噂で耳にしていますから。あっ、とってもややこしい字面になってしまいましたけど、(ふう)ではなく(かぜ)ですので。そこのところは、きっちり区別してくださいねぇ。くふふっ」

 

 殺気を放ちかけた思春の肩を、一度手でたたく。

 別に、裏で受けている仕事をひた隠しにしてきたわけではない。近隣で風の噂が立つ程度には、始末屋も働いてきた、というだけの話だ。

 風の口に含まれていた飴が、ちゅぽんと勢いよく外に抜け出る。表面は唾液に塗れていて、妖しげな輝きを放っていた。

 

「これもなにかの御縁ですし、風にも一枚噛ませてもらえませんか。お兄さんが、長沙まで追手から逃れてきたこと。それに、孫堅さんの軍に潜入したことを照らし合わせますと」

 

 飴を再びうまそうにねぶってから、大仕事の匂いがぷんぷんしてきますねぇ、と風が笑った。

 

 

 宿でひと息つける暇すらもらえずに、城外の森まで歩いた。

 久しぶりに剣を振りたいから、付き合え。そうやって、一刀は思春に連れ出されている。

 熟睡したままの朱里を寝台に寝かせてから、風に朝帰りになりそうなことだけは伝えた。もちろん、思春には勘付かれていない。

 青草の匂いが鼻につく。月光に照らされて、鋭さのある思春の目元が浮かび上がっていた。日中、情けない姿を傍観させているだけだった刀の柄に手をかける。抜くことに迷いはなかった。やはりこれだという感覚が、手のひらから拡がる。

 

「斬られたくなかったら、手は抜くな。いくぞ、一刀」

 

 低い態勢。そこから繰り出される思春の一撃は、さながら強弓から放たれた一矢だった。

 眼で追えたところで、反応できなければ意味がない。音もなく、時をかけずに標的を始末するための必殺剣。そういうものを、思春は練り上げようとしているのか。

 いつもの仕事道具ではなく、剣を使うのは一種の意地。武人として、錦帆賊の元頭領として、黄祖の仕掛けた謀略にけりをつけるつもりなのだ。

 殺気迸る切っ先をいなす。浴びせるように土を蹴り上げると、思春がちょっと顔をしかめた。

 

「ちっ……。だったら、今度は」

 

 しなやかな四肢を駆使した連撃。体幹を崩さないことを意識しながら、すべて捌く。宣言通り、手加減は一切なしの果たし合いだ。

 今度の始末は、大戦(おおいくさ)の渦中で行うことになる。だから、いつも以上に手段を選んでいられない。敵も、黄祖を守るためならなんでもやってくるはずだ。

 

「くっ、おおっ……!」

 

 攻め一辺倒になりかけている思春の刃を押し返す。さすがに、バランスを大きく取り崩すことはしない。だったら、これならどうだ、と即座に剣を握っている腕を手繰り寄せた。

 

「はあっ、はあっ……。ぐっ、くそっ……」

 

 地面に倒れた思春の首を、肘から先を使って押さえつける。

 絞め落とす。あるいは、へし折るのもこちらの自由。全身を被せて、足を使った反撃もできないようにしている。思春が悔しそうに洩らす吐息が、肌を撫でていた。

 

「感謝するぞ、一刀。いまここで、私は貴様に殺された。いくら黄祖であろうと、死人は簡単に殺せまい。なあ、そうだろう。ふっ、あはははっ」

 

 吹っ切れたような笑顔を、思春が見せる。

 勝負はここまで。互いに刃を納めると、合図をするまでもなく唇がふれあった。自分はきっと、思春を欲している。強い衝動。これも、ごく自然な流れの中で生じた感情なのではないか。

 

「あっ、その……。始末料の足しとでも、思ってくれていい。肉体も魂も、私の全部を、貴様にくれてやる。だから、一刀。んっ、はんっ、んっ……」

 

 たどたどしく言葉を紡ぐ唇。舌を侵入させて、強く絡め合わせた。気持ちよさそうな声を、思春が洩らす。粘膜同士の繋がりを保ったまま、脱いだ上着を背中の下に敷いてやる。初めてくらい、少しでも楽な状態で。

 昂揚でモノを大きくしている自分に言えた台詞ではないから、しばらく黙っていた。

 

「んうっ、あっ、んあっ……。一刀、くふぅ……」

 

 思春が好んで着用している褌を、緩めてやる。それが恥ずかしかったのか、唇を吸う力が明らかに強くなった。

 

「不思議なものだな。水浴びを覗かれた男と、よもやこんな」

「これも、旅のひとつの結果なのだろう。私も、始末屋なんてものをやることになるとは思わなかった。思春や朱里との出会いにしても、そうだ」

 

 少し汗ばんだ思春の肌に、秘部からすくい上げた粘液を塗り広げる。吸い付いて、指を離してくれない。切なさが強くなっているのか、思春の声がずっと艶っぽくなっていた。

 ズボンの中から、勃起した男根を取り出す。普段気になることはなくとも、臨戦態勢になると猛りの凄まじさが手から伝わってくる。なにもかも、しばらくお預けだった。早くも先端に汁が浮いているのは、そのせいなのか。

 

「むっ……。じっと見ているだけとは、どういうつもりだ。準備なら、ほら」

 

 焦らされているとでも思ったのか、思春が自らの指で秘部を開く。暗がりで細部まで確認することはできないが、なによりその気持だけで獣欲を刺激される。

 

「思春」

「一刀。はっ、ああっ、うっ、あぐっ……!」

 

 張り詰めた亀頭で、狭い門を突き破る。手加減はしてやらない。そういうことを、思春も望んでいないと思ったからだ。

 締めつけがかなりきつい。初手から全力で精液を搾り取ろうとする肉襞をくぐり抜けて、思春の奥を突く。いまここで、私たちは繋がっている。その事実を、念入りに教えた。

 

「これが、うあっ……。男に、抱かれる感覚なのか。ひどく痺れる。それに、思考まで白く滲んでしまうようだ」

「苦しめるようなことがなくて、よかった。思春も、感じてくれているのだな」

「うっ……。は、恥ずかしくなるようなことを言うんじゃない、この……痴れ者ッ……♡ はーっ、んっ、はうっ」

 

 肉の詰まった太腿を撫でながら、しばらく思春の弱点を探った。

 奥。手前。どこを、どう責められるのが心地いいのか。着衣越しに、勃ち上がった胸の先を同時に愛してみる。反応がいい。そのまま奥をしつこく擦ると、思春が軽く背中をのけ反らせた。

 

「あっ……!? な、なんだ、これっ……♡ 気持ちいいのが、どんどん奥からあふれて。一刀、あっ……、はひ……っ♡」

 

 自身に訪れた感覚の変化に、思春はまだついていけていないようだ。

 ただ一度しか訪れることのない感動なのである。それを、充分に引き出してやれるのも、自分だけだった。

 

「な、なにか、くる……ぅ♡ 一刀、あっ、ああっ。貴様は、どうなんだ」

「もちろん、いいに決まっている。思春のかわいい顔を、こうして間近で見られているだけでも、感涙ものだ」

「なんだ、そのちょっと気に障る言い草……、あっ、あーっ、んっ、ふうっ……♡ おっ……、このっ……♡」

 

 思春の呼吸が、乱れに乱れている。ひとまずこれが最後だと思い、唇を塞いだ。文句を発する代わりに、甘く切なく舌が絡んでくる。

 切なく締め上げられているのは、男根も同様だった。精液を、早く奥で吐き出せ。急かされているのは、たぶん気の所為ではないはずだ。

 

「いいな、思春。このまま、おまえの奥で」

「んふぅ……? んれっ、んっ、んーっ……♡」

 

 全身夢見心地でいる思春の中に、欲望のすべてを打ち付ける。

 

「ふーっ、ふぐっ……♡ ふっ、んっ、ふう……ぅ♡」

 

 絶頂にふるえる思春の身体を、抱きしめた。

 種を注ぐ勢いは少しも衰えない。むしろ、思春の中が無意識に行う要望に応じて、次々と新鮮な精液を作り出している感じですらあった。

 

「少し、やりすぎてしまったかな。平気か、思春」

「全部くれてやる、と宣言したのは私のほうだ。その気持ちに、嘘偽りはない。いまも、これからも」

 

 ひとまず休憩する流れとなり、並んで夜空に浮かぶ月を見上げた。なんとなく返す気になれないのか、思春は背中に敷いていた上着を纏ったままでいる。

 思春のほうから、肩を触れ合わせてくる。抱き寄せてやると、満足そうに頭が乗りかかってきた。

 

「こういうのも、たまには悪くない。らしくないことをしてみるのも、一興ではあるな」

 

 余計な口を挟む必要はない。

 穏やかな吐息が、隣から流れてくる。更けていく夜を愉しむには、それだけで充分だった。

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