※この作品はR-18です。

錬金術のアトリエ M,Re 1   作:東京のぷるぷる

10 / 17
ウルフ亭〜ザールブルグの街 2


錬金術のアトリエ M RE 10

10

 

 

 

……夜。

お決まりのディナータイムから、マルローネはアトリエへと帰る。

今日も充実の1日となったし、満足な帰り道。

アトリエが見えるか見えないかの所から、アトリエ前に何者かが居る事が分かる。

夜だから、暗い。

この辺りは街の出入り口への道でもあるので、灯火台が幾つも並んでいたりする。

けれど、充分に暗い。

だから、何者かが居る事は分かるのだけど、全く見えない。

……今までに無かった、不思議な感覚。

 

アトリエに近づくと、それがクライスという、変な髪型メガネの、イングリド先生の手先である事が分かった。

……少し気分が曇るマルローネ。

そしてアトリエの前へと辿り着くと、足を止める。

「な、何か用かしら?」

考えたら、錬金術を教えてくれるとか、食べ物を作る研究をしてるとか、別に悪く思う必要はないよな……と、思い直す。

「待った!ちょっとやり直す!……何か用かしら?」

マルローネは、なんか謎にやり直す。

ちょっとだけエレガントにしてみた。

「……な、やり直した割には、違いが分かりませんでしたが……こんな夜に押し掛けて、失礼なのは承知なのですが……実は貴女にお願いがありまして……」

クライスは頭を掻き、ぎこちなく話し出す。

 

内容としては、マルローネがマナの柱の加護を受けた事で、アカデミーから冒険者を雇う費用を出して貰えるようになる……との事で、そこで外へと出る際に、クライスも同行したい……という話だった。

クライスも貧乏学生……

成績が良かった所で、冒険者を雇うなんていうのは、お金には縁が無いので、こんな機会に拾って貰わないと、外に出る目も無いのだと言う。

 

「……アンタ……クライスも大変なのね?成績がいいなら、それで良いもんかと思ったわ」

マルローネは言う。

……今回は、イングリド先生の手先では無かったみたいで。

「成績なんて、学生時代の話で終わりますから。その先がやはり、人生の本番でしょう」

クライスは、メガネに手をやる。

……どこまでも真面目な男みたいだ。

 

……2人の間に沈黙の時間が流れる。

 

「……まあ、どのみち、私が冒険者を雇って外に出るなんて先の話なら……明日はハゲルジムに行かない?外の話も聞けるかも?」

少し沈黙があって、マルローネはそう話す。一緒に外に出るなんて言うのであれば、もはやパーティーメンバーだし。

「ハゲルジム……はて……?」

クライスは首を傾げる。

クライスも知らない場所のようだ。

「じゃあ、明日の朝、ここで。案内してあげるわ」

マルローネは言う。

「分かりました。明日の朝、ここに」

クライスは頷き、2人は別れた。

 

そしてマルローネはアトリエの裏、井戸で汗を流したりして身繕いをすると、眠りに入る。

 

……朝、マルローネは、いつものように爆睡からズバ起きる。

一体何時なのか……

今までの狭い学生宿舎の癖で、右を見る。

今のアトリエでは、右が部屋になっており、錬金釜と、壁際の机……その間、向こうの暖炉が見える。

左を見れば、すぐに窓……まだ暗い時分。

取り敢えず、朝はすぐに訪れそうな感じではあるので、井戸に行き身繕いをする事にする。

 

……アトリエを出ると、なんともう、すぐ向かいの木に寄り掛かるクライスが居た。

「はやっ!」

マルローネは驚いて声を上げる。

その声に、クライスは俯いて寝ていたのか、顔を上げた。

「……少し夜遅くまでやる事がありまして……ベッドで寝ると、起きれそうに無くて……」

クライスはそう言いながら、マルローネに歩み寄る。

「そう。じゃあ、ちょっと身繕いするから、もうちょっと寝てて」

マルローネは手のひらを向けて、言う。

そう言われたクライスはまた、さっきの木に寄り掛かる。

 

身繕いが終わる頃、朝日が周りを照らし出し、爽やかな明るさがやって来る。

マルローネは、クライスと共にハゲルジムへと向かう。

 

ザールブルグの白い石畳の道。

朝日を受ける、鮮やかな緑の木々の光景……

 

「……クライス、いつもならこの時間、あなたは何をしてるの?」

マルローネは聞いてみる。

「アカデミーの本に、向き合っている頃でしょうか。もしくは錬金術の実践をしているかも知れません」

クライスは答える。

「はえ~……まあ、成績がいいってゆ〜のは、そういう事よね」

マルローネは感心する。

「貴女は……錬金術を成功させた事が無いんでしたね。1度成功まですれば、錬金術も楽しんで貰えると思いますが……明日にでもチャレンジしてみますか?」

クライスはそう言い、マルローネは振り返る。

「え……でも、優等生に見て貰えば、ひょっとしたらひょっとするかも?」

マルローネはニヤケ笑いのような、苦笑いのような笑顔を見せる。

「マナの柱に選ばれた貴女が、錬金術が出来ないとは、考えづらいですから。何かしら引っかかってる所があるのでしょう」

クライスはメガネに手を掛けて、そう話した。

 

今日、ハゲルは噴水広場に居なかったけれど、マルローネとクライスはハゲルジムへと行く。

武器屋の4倍規模で、外もあるのだから、もはやザールブルグ名物とも言える。

 

「建物が、森に隠されているみたいな外観なのですね。貧乏学生にとって、鶏肉とミルクにありつける、というのは有り難い限りですが……」

クライスは言う。

クライスにとっても、やはりデカい特典のようだった。

……ここを知ってしまうと、タベクサ生活に戻れなくなりそうでもある。

「アカデミーの生徒さん、来てる人多いって言ってたけど、知らなかったの?」

マルローネは、不思議に思って聞いてみる。

……特に男の子に人気らしいけれど。

「貴女は、まるで部外者のような口ぶりですね。貴女も生徒の筈ですが」

クライスも、不思議そうに返して来た。

 

ともかく、ハゲルジムへ。

マルローネは女性用の森エリア、クライスは建物の中……と、別れる。

今日もフリージア先生が居て、お喋りに花を咲かせながら、トレーニングをする。

……鶏肉とミルクの為に。

そしてカエルやネズミを狙う為の服なら、武器屋に売っていたりするみたいだし、マルローネはなけなしのお金を、そこに使う事を決める。

 

お昼くらいにハゲルジムを出ると、クライスは噴水広場で待っていたようで、合流する。

……合流する必要があるのか、疑問ではあるけれど、目の前に居たのに、スルーする訳にも行かない。

「どのくらい待ったの?」

マルローネは聞いてみる。

「ついさっき、ですよ。確かに通う気持ちの分かる場所でしたね」

クライスは答える。

暑苦しい感じのする先生も、クライスに無理をさせる事は無く、程よくヌルいトレーニングを指導するので、心地好い疲れ……と、言った感じだそうで。

 

クライスとマルローネは、ハゲルジムの感想と鶏肉とミルクの話、明日の話をして別れた。

マルローネは武器屋へ。

そしてなけなしのお金を、全て使う決意を固める。

ところが……

 

「嬢ちゃんがマルローネって名前のヤツかぁ?」

ハゲルがそう尋ねる。

「そ、そうよ。嬢ちゃんとしか呼ばれてないから、知らなかったのでしょうけど」

マルローネは最近活躍する学生証を見せると、ハゲルは頷く。

「そうかぁ~……いや、アカデミーの先生から嬢ちゃん専用に、旅の服装を仕立ててくれって言われてな?まあ……革で鎧を作っておけば良さそうだよな?」

ハゲルはそう言うと、いつもの感じでニカッと笑う。

「あの……今欲しい服があるんだけど……」

マルローネはそう言うと、ハゲルは片眉を上げた。

「なんだなんだぁ?それ以上にオシャレな服なんて、この店にはないぞぉ?」

ハゲルは言う。マルローネは、カエルやらネズミやらを捕まえるのに、相応しい服が欲しいと話すと、ハゲルはまた笑顔に戻った。

 

なんか、マルローネに誂える服の代金は、アカデミーに請求出来るらしく、武器屋にあるそれっぽいサイズの、それっぽい服をマルローネに合わせて、それをくれた。

……なんか、至れり尽くせりになったもので。

まあ、アカデミーの扱いが変わった、アカデミーが、マルローネになら金を払う事を決めた。

と、言うだけの話なんだけど。

「まあ、大したもんじゃないからよ、このオシャレな服も、良ければ預かるぜ?こういうのを磨くのは、俺の趣味みたいなモンだからな!」

そう言うハゲルは、マルローネのオシャレな服も預かってくれると言う。

勿論、預かって貰って、マルローネは武器屋を出る。

 

少し太めの、膝までのズボンに丈夫な布の服。

革鎧が出来た際には、そのインナーとして着れるという服で、ダムへと向かう。

 

……この日は、シアは居なくてガッカリするけれど、釣り人達は居た。

「おうマリー。今日はシアちゃんはご隠居様と、ウルフ亭に行くらしいから、見掛けたら声を掛けてくれって言われたよ」

騎士団のお兄さん、エグルドレイブは言う。

「ウルフ亭〜!?でも、声を掛けてくれって事は……チャンスだね!」

せっかくのマルローネ専用の網は、今日も出番が無いようだ。

「そうだな。肉にありついて来いよ〜」

エグルドレイブに手を振られ、マルローネは噴水広場へと戻って行った。

 

網から手ぶらになり、マルローネは錬金術衣装に戻す為に武器屋へ。

そして錬金術衣装になると、釣り人衣装を仕舞う為にアトリエへ。

なんか、忙しくなって来たもので。

そして、アトリエ近くに見慣れない青い鎧、黒髪長髪の男の人と、シアが居た。

「探したのよマリー。今日はエンデルク様を護衛に、ウルフ亭に行くから、是非お友達も、ってシューマッハーが言うから」

シアは胸の前で指を絡めて、マルローネにそう話す。

「行く行く!エンデルク様ってゆ〜のは……」

マルローネは、黒髪長髪の男の人を見る。

なんか騎士団の偉い人……的なオーラを感じるし、鎧なんかもピッカピカだ……

「なんと可愛らしい娘さんが2人も……!本日は私も休暇……ご隠居様の警護も兼ねて、少し羽を伸ばそうと思った次第。よろしく頼む」

そう言って、エンデルクはぎこちない笑顔を見せた。

 

……またも街の出入り口。

つい一昨日、イングリド先生とドルニエ校長と一緒に歩いた道を、もう1度歩く。

エンデルク様、というのはどうやら俗称で、女性の憧れの的……みたいな感じで呼ばれるのだけど……

エンデルク本人は、剣の修行に余念がない生活をしているらしい。

道中も、あまりマルローネにもシアにも話し掛けて来る……みたいな事は無い。

話し掛けると、ちゃんと答えてくれるんだけど。

健脚でスタスタ歩く、ご隠居様との会話が弾み、シアもマルローネも、ご隠居様の両脇を固めて歩いた。

 

……そんな中、マルローネはふと、横を見る。

道路脇の奥で、キツネがふっ、と逃げる。

「なんでか、居る感じがしたら、キツネが居た」

マルローネは呟く。

「最近、マリーが鋭いのよね。前なんて目の前の大きいカエルに気付かないで、遠くばっかり探していたりしたのに」

シアが、そんな呟きを拾う。

「ならば、獲物に困る日も、減ったのかね?」

ご隠居様、シューマッハーが話す。

「これがね〜……鋭くなったと思ったら、ちょっと出番無くなっちゃってるんだよね〜……」

一行はウルフ亭への歩みを進める。

 

「……よくあのキツネに気付けたものだ……」

3人からは少し離れて、エンデルクは呟く。

そんな呟きに、マルローネは振り返り、エンデルクを見た。

「んなっ……」

聞こえる筈も無さそうだったが、ふとした呟きに気付かれて、エンデルクは怯む。

マルローネはまた前を向いて、ご隠居様と3人での会話に戻り、歩き続ける。

 

ウルフ亭に到着し、待望のお食事タイム。

この日の大テーブルも賑わっていて、シアとシューマッハーと、シューマッハーの知り合いのおじさん軍団が固まり、エンデルクとマルローネは冒険者集団テーブルへ。

「あっ!」

いつぞや、闇の宿屋通りに連れ込まれそうになった男が、冒険者として、同席している。

10人、10人が向かい合う大テーブルなので、そういう事もあるのか。

……まだまだ狭い世界である。

「おっ!?」

斜向かいの冒険者の男も気付く。

気付くと、ジョッキをマルローネに向けた。

「お嬢さん、エンデルク様の隣とはラッキーだな!」

少しジョッキを上げて、マルローネに笑みを向けると、隣の冒険者へと顔を戻す。

……気付いた訳でも思い出した訳でも無かったみたいで。

 

大テーブルに大皿に乗せられてやって来る、焼いた肉料理。

マルローネのジレンマとしては、これを切り分けるのが慣れていない事だ。

その隣で、エンデルクが鮮やかなナイフ捌きで肉を切り分けている。

マルローネは、そのお手本を見て真似てみたり。

ここの冒険者は、このお肉の切り分けが上手いものだけど、エンデルクのナイフ捌きが別格だった。

 

なんか、少し盛り上がりに欠ける冒険者テーブル。

なんでも、今日この日にウォルフ王が出て、2人の冒険者が犠牲となった話が、漏れ聞こえて来る。

隣のエンデルクと冒険者との話なんだけど。

そんな話をしているものだから、エンデルクはマルローネの方を見る事は無かった。

 

日帰り予定のマルローネとシア、シューマッハーはお泊まりとなり、明日の朝、冒険者と共に帰る事になった。

エンデルク様が、明日の朝からウォルフ王の討伐に行かないと行けなくなったので……という変更だ。

 

 

……夜。

ウルフ亭の2階の少し広めの部屋に、シューマッハー、マルローネ、シアと泊まる事に。

この日はお泊まりになったお客さんが多く、1番の大部屋を勧められたものの、シューマッハーが断って、この部屋となった。

 

「懐かしいな。俺が若い時に想い人と泊まった部屋だ、ここは」

シューマッハーは部屋に入るなり、窓を眺め、天井を見上げ、そしてぐるりと、部屋を眺めて回る。

……その場でくるくるしてる。

「思い出の部屋なのね?」

3人では狭い感じのする部屋。小さめベッドも2つだし、それしか無い部屋だ。

そんなベッドに座り、シアが言う。

「あの頃は若かったからな。俺の倅もぐるんぐるんしてたもんさ。今日だって美女2人だろ?若ければなあ……」

シューマッハーはテンション高めで、そう話す。

「ぐるんぐるんするには、狭いような……」

マルローネは、苦笑いを浮かべる。

「ベッド合体で使うんだよ。今日も、ベッド合体すれば、3人寝れるだろう」

シューマッハーは言う。

なんかしないのなら、マルローネとしては別に問題ない。

 

窓際壁際大好きシア、真ん中でうつ伏せのマルローネ、崖っぷちを椅子でフォローして、シューマッハーが寝る事になった。

「……マリーはうつ伏せじゃないと寝れないのか?」

シューマッハーが尋ねる。

「昔っからそうよね?なんか死体のポーズで寝てるのよ」

シアが答える。

「あの頃の夢でも見るか……」

シューマッハーが呟き、3人は眠る。

 

 

……朝になり、マルローネがズバっと起きる。

「おおぅ!?」

隣のシューマッハーも、それに驚いて起きた。

「……シアから聞いてはいたけれど、本当に爆発的な目覚めなんだな……」

少し寝ぼけながら、シューマッハーはベッドを降りる。

「ん〜……?」

シアはゆっくりと目覚める。

 

 

朝のタベクサをそれぞれ齧ったりして、身繕いをすると、お客さんが纏まり、駆け出しの冒険者の数名の護衛で帰る。

「朝帰りも、いいもんですな」

シューマッハーの友達おじいちゃんが、そう話す。

この日は天気も良くて、朝日に照らされた森が眩しい。

「ウォルフ王が2匹……エンデルクは討伐に目を輝かせてましたな」

シューマッハーは、そう話す。

「彼は昔から、ツワモノの匂いがすると、そうなりますな」

友達おじいちゃんも、相槌を打つ。

 

「あ!クライスが待ってるかもだわ」

マルローネは思い出すと、シアに向けて話す。

「クライス……優等生の子?」

シアはキョトンとして返す。

「そうそれ!なんか、旅に出るなら便乗して、外の見聞を広めたい、って言うもんだから、行動を一緒にしてたりするのよ」

それぞれが思い思いに、話しながら歩く道。

 

2時間の道は、それほど長くない。

何事もなくアトリエに帰って来れたけれど、アトリエ前にクライスは居なかった。

「約束すっぽかしたみたいになっちゃったよぉ……」

マルローネは、バツが悪そうにシアに話す。

「まあ、ウォルフ王が出た経緯を話せば、分かってくれるんじゃない?私も一緒に話してあげるわよ」

マルローネとシアで、アカデミーへと向かう。

もう日も高くなって来ている。

 

アカデミー生徒の学舎、寮、錬金場と巡り歩き、お昼にアカデミーの売店前で、ようやく出会う事が出来た。

 

特に不機嫌……という感じでもない感じのクライスに向けて、マルローネは手を合わせる。

「クライスごめん。昨日の夜には帰ってる予定だったんだけど……」

シアとマルローネで、事情を話す。

 

「そうでしたか……旅先でも色々と予定通りに行かない事はあるのでしょう。いつ頃にここに戻ったのですか?」

クライスは平常心のまま、そう話す。

……なんか、どこか嬉しそうな……

「10時くらいかしら……結構歩き回ったわ」

シアが答える。

「これは……これからは予定通り行かなかった場合も、打ち合わせておかないと、いけませんね。冒険者の方々に、はぐれた場合どうしているのか、学んでおくとしましょう」

クライスはそう言って、メガネに手をやる。どこまでも優等生な男だ。

「じゃあ、私たちは夕食を調達しないと、かな」

錬金術の事など忘れて、マルローネはそう話し出す。

「ふふっ、錬金術の話は、午前中に暇があれば、としましょうか。また明日の朝、アトリエに顔を出しますよ」

クライスは笑い、そう話す。

「忘れてたわ……でも、クライス、あなたはこれから何か予定あるの?」

マルローネは尋ねる。

「いえ……予定を空けてましたので、後輩の様子でも見ておこうか……くらいしかありませんが」

クライスは言葉に詰まり、そう話す。

「なら、一緒に行くわよ。パーティーなんだから。冒険者の話も、貴方が聞くんじゃなくて、一緒に聞いてみるわ。私の旅なんだから」

マルローネはそう、口を尖らせて話す。

「そう来ましたか。歩き回るのは得意ではないのですが……旅の練習という事で、歩き回るとしましょうか」

クライスは素直に応じて、マルローネの後に続く事にした。

 

まずはハゲルの武器屋で旅衣装に着替え、そしてシアも一緒にダムへと向かう。

錬金術衣装が派手なだけに、この旅衣装の地味さが凄く地味に思える。

「お待たせ〜♪やっぱり、コッチの方がしっくり来るわね」

マルローネはそう言って、地味な旅衣装で出て来る。

「そうね。私もまだ馴染みがあるけれど、派手な衣装の方が釣り人さん達も喜ぶわよ?」

元々が地味な衣装のシアは、そう話す。

「シューマッハーおじいちゃんを喜ばす為に、派手な衣装だったんだけどね?これから夕食を採らないといけないんだから!」

マルローネは笑顔でやる気の構えを取る。

「夕食を採る……ふむ」

クライスはそんな2人を眺めて、そして後をついていく。

 

晴れた、太陽が眩しいくらいのダムへの道。

綺麗な石造りで、今日は補修のおじさん達が手直ししてる場所も見かけた。

マルローネは、ダム入り口の管理小屋付近のロッカーから、マルローネ専用の網を手に取り、杖を預ける。

「ここは、来た事あるの?」

シアがクライスに尋ねる。

「初めて来ましたが、やはり水場の近くというのは、空気がいい場所ですね」

クライスは辺りを眺めて、答える。

やたらと鳥が多い。

人間くらいの大きさの白い鳥、サギ達が、そこら中に居るのが、目に付く。

 

この日はマルローネの網が大爆発。ダムネズミにウシガエル3匹と、今までにない大漁となった。

そうして、今日は釣果イマイチの釣り人と共に、噴水広場のディナーへと向かう運びになった。

釣果イマイチの騎士団の人も居て、旅の予定が崩れた時の極意も存分に聞く事が出来た。

 

賑やかな噴水広場。

その賑やかさからは、ちょっとだけ距離を取って落ち着いて過ごせる、ドナースターク家の庭の端っこ。

いつもの場所で、マルローネとシアは夕食の準備に入る。

賑やかだけど、夕食はこれからだ。

 

「え〜!?噴水広場の夕食、来た事ないの!?そんな事ってある!?」

カエルを捌きながら、マルローネが驚きの声を上げる。

そりゃ、アカデミーの生徒はあまり見かけない場所ではあるけれど、月に1度2度は訪れるもの……というマルローネのアカデミー交友関係者の話もある。

「夕食はカーボシェルばかりで……おかげで改良を繰り返している訳ですが……」

クライスが話す。

カーボシェルの開発なんかで、夕食材料は余っていたりするらしく、アカデミーで食べるに困らない男だったみたいだ。

これからの旅も、カーボシェルを大いに持ち込んで行こうと企んでいる話も聞いた。

「頼れるわね」

マルローネは呟く。

「貴方の手際も、かなり頼れる感じがしますが」

クライスも捌かれたカエル達を見て、少し笑みを浮かべる。

「クライス、アンタもやってみなさいよ」

2匹捌き終えて、マルローネは残り1匹をクライスに任せる。

「ナイフなんてあまり扱わないのですが……」

クライスはマルローネと場所を代わり、カエルに向かう。

 

「……なんか、あの2人、お似合いなんじゃないか?」

シアと魚を洗う釣り人のおじさんが、マルローネとクライスの後ろ姿を眺めて、シアに話す。

「年の頃が同じくらいだと、そう見えるものよ」

シアは小さく笑い、夕食の準備を進めて行く。

 

日が沈み、騎士団の人達が、噴水広場に背の高い灯を運んで来る。

幾つも運ばれて来る灯が、今日も夕食の時間を彩る時間。

「……こんなに華やかだったんですね?」

ドナースターク家の庭の端っこ、夕食を囲むクライスは、そんな灯達を眺めて遠い目をする。

マルローネもシアも、馴染みの釣り人達との談笑で忙しいみたいで、クライスは自分に当てられたベルグラド芋のスープを眺める。

ここに肉付きの良い鶏肉が刺さり、魚の身も散りばめられて、豪華なスープとなっている。

この鶏肉にしか見えない肉が、カエルの肉とは信じ難いが、食事となる段階では、美味しそうな感じになっている。

 

「マリー。彼氏を連れて来るなんて、お前さんも大きくなったって事か?」

お酒を片手に、釣り人のおっちゃんAが話す。

「そうじゃないってば。旅のパーティーメンバーとしてね、どんなヤツか品定めしてる所なのよ。私も品定めされてるってトコね」

マルローネはスープのお椀を手に、唇を尖らせる。

「この年頃の男、ってのはなぁ……夜には狼になるもんだ。宿を一緒にしないと分からん事があるんじゃないか?旅先じゃ、別の部屋なんて、お大尽は出来ないだろう?」

おっちゃんBが話す。

「いやでも、熟練の冒険者に押し倒されるより、あのくらいの兄ちゃんの方が、抵抗出来るんじゃないか?」

おっちゃんCも、そう話す。

「生殺しの旅か……」

そして釣り人おじいちゃんAが、ポツリと呟きながら、ニヤケ笑いを向ける。

「ぐぬぬ……」

反論しようにも、的を射てるとしか思えないマルローネは、変な音を立てる。

そして、ワフールを思い出した。

 

 

 

 

オリンジン・グランド、フリージア先生

ハゲルジムに居る、トレーニングの先生。

シューマッハー・ドナースターク

ドナースターク家のご隠居様。

エグルドレイブ・ハーレイス

釣り人 騎士団のお兄さん。

ワフール・ハイラム

異世界のエロ魔人

デイドリオン

デイドリオン・アイン

デイドリオン・ツヴァイ

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。