※この作品はR-18です。

錬金術のアトリエ M,Re 1   作:東京のぷるぷる

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錬金術のアトリエ M RE 17

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結局はコテンパンにされて、マルローネは眠った。

赤いプニプニベッドは、そんなマルローネをしっかり温めていた。

 

「……んはっ!」

朝になり、マルローネはズバ起きる。

心得ているワフールは離れて過ごしており、そんなマルローネを眺める。

「おはよう」

白と青と橙色の3色テントの中、ワフールは窓というか、外に向けて開いた丸い口から、外の景色を眺めていた。

「おはよ〜……結局コテンパンのコテンパンにされたわ。なんか凄く気分がいいけど」

マルローネも、外を見ようとテントの壁に顔を向ける。

ぽこぽこと口が開いた。

 

1つ口を選んで外を見る。

そこの口は大きく開き、他の口は閉じていく。

そして、森の上的な場所だった。

「んな!?テントごと移動してる!?しかも空中じゃない!?」

マルローネは驚きの声を上げる。

……いつの間にか赤茶色のローブになっているし。

「クライスの坊やに、マリーの大騒ぎが聞こえても良くないだろうから、移動したそうだが」

ワフールはそう話す。

……年季の入ったシャツに、だぼっとしたズボン……謎に2本の剣を差しているのも格好いい。

「ふむ。私もローブよりもこういう服がいいかな……」

マルローネは考える。

赤いプニプニベッドが変形して服になっているのだから、変化も出来るハズ。

 

そしてあーでもないこーでもないを始める。

テントの壁も、鏡になってみたりして。

マナちゃんと2人で服の改造、アクセサリー部分までこだわりがどこまでも続く。

ワフールは窓から飛び出し、適当な場所で走り込みに出掛ける。

 

………………

クライスも目を覚ます。

紫のテントに1人……

「おはよう」

黄色いプニプニはそう言うと、プニプニ的笑顔をクライスに向けた。

「おはようございます……非常に深く眠れました」

クライスは身体を起こす。

青いローブは後ろがベッドになっていて、身体を起こすとベッド部分が服へと戻っていく。

「それは良かった。マリーをコテンパンにしたのはいいけど、クライスもコテンパンになっていたからね。これからは暫く回復に専念させる予定かな」

黄色いプニプニは、そう話す。

 

クライスは紫のテントを出る。

日陰ばかりの野営地は、誰も居ない。

急に1人にされた寂しさを思う。

……あまりに1人だったように思う。こうした寂しい気分というのも久しぶりだ。

 

紫のテントはプニプニに戻り、プニプニ的笑顔で留まっている。

黄色いプニプニも、同じように留まっている。

 

「さて、この1日をどう過ごしたものか……」

クライスは呟く。

「あの7色タベクサの洞窟で、朝のタベクサを齧る所から始めるのはどうだろう?」

黄色いプニプニが、その呟きを拾う。

 

……初めてマルローネと身体を重ねた、7色タベクサに溢れる寝室……確かに洞窟の入り口だ。

 

「確かに。そうしておきましょうか」

クライスは洞窟へと歩みを進める。

「食べる事は大事だからね〜……」

今度は、服となっている青いプニプニから声がした。

背丈の低い花々の絨毯を歩き、洞窟の中へ……

 

マルローネの錬金コートと錬金帽子、クライスのローブが預けられている場所を通り過ぎ、相変わらず7色の光をそこらじゅうに湛える場所へ。

青いプニプニの靴で守られて地面の硬さは分からないけれど、泥みたいな地面だ。

 

……地面を考えると、2人で大騒ぎしている場所でもないのだけど、白いプニプニが平たく地面として在ったから、大騒ぎした場所、となった訳だ。

黄色いタベクサを手に取り、齧る。

やはり、瑞々しいコーン的な甘さ……非常に美味しい。

 

「さて……ここからどうしたものか……」

食べ終えて、クライスは呟く。

「魔法の訓練としとく?結局ジャンプ大会になっただけだし」

青いローブから声がする。

「それがありましたね。是非やりましょう」

クライスは乗り気で言う。

「コッチの世界で魔法を馴染ませても、地上に出れば10倍くらいしんどいみたいだし、効果も10分の1くらいになるみたいだからね」

青いローブは、そう話す。

 

……野営地から川の中を通り、そして広い草原へと移動する。

その移動には、橙色のプニプニと、黄色いプニプニも付いて来た。

「ドコでやりますか?」

クライスはこの辺りか、と思いつつ、尋ねる。

「中心地から離れた場所が適してるね。マリーも離れた場所に移動中かな。中心地だと、僕の心臓部の魔力が乗るから、魔法を使うのがラクになり過ぎちゃうからね」

青いプニプニは、そう話す。

 

……それから、草原をひたすら進み、森を越えて森を越えて……桜の木々の草原を抜ける。

咲いてる桜があり、葉桜があり、枝だけの桜があり、なんか季節が狂っているのを目の当たりにする。

……いずれ整っていくらしいけれど……

 

そうして進み続け、クライスは汗だくになる。

空中飛び跳ね放題だとしても、1日移動だけ……というのはキツイものがある。

昼にはタベクサを齧ったけれど、それはいつもの感じだった。

あの中心地の緑の柱の辺りだけ、7色のタベクサがあるそうで。

 

「今日は、あそこの沼までにしようか。夕飯に出来そうな生き物も居そうだし」

青いプニプニが言い出したのは、もう夜になろうとしてる頃だった。

「はぁ〜っ……ふぅ……回復になるとか聞いて油断しましたが、こんな移動になるとは……」

クライスは脱力する。

脱力すると、青いローブが空中に座るように固定されて、リラックスできる感じになる。

火照る身体も冷やしてくれるのだから、快適だ。

 

「じゃあ、夕食を作るから、待っててね」

青いローブから声がすると、橙のプニプニは沼へと向かい、黄色いプニプニはベッドとなる。

「……こんなに至れり尽くせりされていて、いいものでしょうか……」

クライスは暮れゆく空を見上げて呟く。

「クライスは僕の期待に応えてくれてるからね。マリーと一緒にここへ飛び込んで来てくれたのは、本当に有り難いんだよね」

青いローブからの声。そして、これがマナノハシラの声。

「期待に応えていますか……あまり自覚はありませんが」

クライスは呟く。

アカデミーの錬金術の勉強も実践も、成績も。本当に自分がすべき事なのかは確信を持てない感じがある。

「今日も、1日中、真面目に移動してたじゃない。マリーの思う通り、素直で真面目な男なんじゃない?」

マナノハシラは言う。

「……まあ、素直で真面目……と言われても……何か嬉しくないのは、何故でしょうかね?」

クライスは尋ねる。

「ヒネくれた人生、ヒネくれた先の世界線に憧れがあったりするんじゃない?素直で真面目な世界線ばかりだから」

マナノハシラは答える。

「……世界線?」

クライスは考える。

 

橙色のプニプニが戻り、夕食にする。

焼けた魚と蓮の根……という食事が出て来た。

橙色のプニプニがテーブルとなり、服の袖がフォークになり、上質な食事に驚くばかりのクライス。

しかも、量も丁度いい。

そんな食事中に、世界線の話も聞ける。

 

世界線とは、クライスが身を置く世界の事。

素直で真面目で、アカデミーの優等生になり、マルローネにパーティー志願して、ここに居る。

それが実際の世界線。

でも、過去に違う選択をしたなら……

アカデミーに入らず、田舎で友人と手を取り、そこで家と家を繋ぐ為に結婚とかして、穏やかに暮らす世界線もあったのだろう……と、想像は出来る。

また、現状に不満があるなしに関わらず想像してしまう。

ただ、世界線は1本だけだ。

クライスはここに居て、ここで夜を迎えている。

そんな、ふわっとした話をされた。

 

「ご馳走様でした。あまりにも上質な食事に驚きです」

クライスは、夜の闇の中、ぼーっと光る橙色のプニプニに向かって、少し頭を下げる。

「身体が疲れてるだろうから、より深く眠れるんじゃない?口の中とか、メンテナンスは任せて貰って、寝る時間になるね」

マナノハシラは、そう言うと橙色のプニプニの顔の向きを、黄色いプニプニテントへと向けた。

そしてこの1日が終わる……

 

 

「んはっ!?」

マルローネはズバ起きる。

魔法の訓練……と気軽に言うも、その為には中心地から離れなければならない、との事で移動を始めるものの、1日中移動に費やして、それでもまだ中心地が近いらしい。

だけど、この広い世界をひたすら駆け進むのは、なかなか気分の良いもので。

ワフール式早駆け術を学びながら、昨日は走り込みの1日となった。

マナノハシラは、色とりどりのプニプニを移動させている都合で、クライスの場所、マルローネの場所は離れてはいるけれど把握している。

どうやらマルローネの方は、ワフールの早駆け術もあり、クライスの進む倍は進んだようだ。

 

「クライスが魔法の訓練に入るのは、少し遅れそうだね〜……」

白いジャケットに半ズボン、でかいブーツ……

服の体積が小さいとプニプニ君に負担となるらしく、でかい頭飾りと繋がるケープ……そんな姿に落ち着いたマナちゃんが言う。

「とはいえ、コッチも辿り着いてないからね。今日もとにかく全力で進むしかないよね」

マルローネは、やる気の表情で話す。早駆けの1日はお気に入りだった。

こちらは、明るい赤茶色の錬金コートと頭飾りで体積を稼ぎ、歴戦風のシャツに歴戦風のダメージズボンという格好となった。

シャツとズボンは、道路時代の格好だ。

 

そして、朝のタベクサを齧ると出発する。

 

更に気合いの入る早駆けの1日。

マルローネに迫られるワフールがムキになって逃げる所があり、マルローネも必死に追い掛ける都合でそうなる。

「合法的に走り込み出来るとなると、ワフールは生き生きするね〜……」

白いプニプニで移動するマナちゃんは、そんな2人を遅れて追い掛ける。

 

お昼に差し掛かる辺り、ワフールのスピードもマルローネのスピードも落ちる。

足が、身体が重くなり、疲れも大きくなった。

「中心地から離れると、こうなって行くんだね……」

自分を追い込むのが目的のワフールは走り続け、マルローネは歩き出した。

「まだ影響が強いから、進まなくちゃなんだけどね」

マナノハシラが言う。

マナちゃんはギリギリ見えるくらいに後ろに、白いプニプニに乗っているようだ。

 

「あそこ、でかい動物が居るような……」

マルローネは緑の薄い土地を眺める。

深い森が深い草原、もしくは川とか湖とか……緑が薄いけど水ではない場所、というのは見受けられなかったから、貴重かも。

「じゃあ、そっちに向かってみよう。ワフールにも伝えておくから」

マナノハシラは言う。

ワフールの服もプニプニちゃんの変形なのだから、伝えるのは容易みたいだ。

 

マルローネは90度、進行方向を変える。

草木で地平線は見えないのだから、川とかなのかも知れないけれど、やたら大きい生き物が一瞬だけど、遠くに見えたのだ。

 

「獣的な生き物は確認出来てないけどね……」

マナノハシラが言う。

マルローネもワフールも、移動中も動く物には敏感で、虫と蛙、トカゲに蛇、鳥なんかは数多く認識している。

1番大きいのは、サギ的な鳥と鶏的な鳥を時折確認するくらいのものだった。

 

とにかく、マルローネは見えた方へと走る。

草の上を走れる、というのは相変わらずなのだけど、身体が重く感じる。

とはいえ、ザールブルグに居る時よりは身体が軽いのだけど。

 

そして、赤い目をしたネズミを確認する。

全身の茶色の毛が長いネズミ達が、木質化してる草に群がっていて、それらはネズミにしては大きい。

そして、マルローネに気付いたハズなのに、逃げたり隠れたりせずに、それぞれが食事を続けていた。

 

……違う草にも、それぞれに黒い毛だったり灰色だったり、色違いの同じような姿のネズミが食事をしてる。

かなりネズミ達のエリアとなっている草原だ。

「ふむ……こんな大きさじゃないハズだけど……」

マルローネは更に辺りを眺める。

 

そして巨大ネズミが、のそのそと動いたのを見つけた。

白い長い毛に全身覆われた、小さいネズミ達と同じ姿の、100倍程あろうかと思われるネズミが草を食べている。

「ぅわ……どういう事!?」

図体がデカいのも違和感だけど、目がデカい。

草の上を走ったり飛んだり出来る都合で、安全な場所から眺めてる訳だけど、なんか逃げ隠れするのが普通なのに、気付いた上で逃げ隠れしないのは、怖い。

 

「ネズミが湧いてるのか……獣的生物がちゃんと出てきてるんだね〜」

マナノハシラがマルローネの服から話す。

「あのデカいのは何?」

マルローネは聞いてみる。

「ネズミだけど、牛になるんじゃないかな?確かそういう順番で獣が出てきたハズ……?」

マナノハシラは自信なさそうに話す。

 

マルローネは、そんなネズミ達を眺め、ワフールの到着を待ち、マナちゃんとも合流する。

 

「デカいネズミだが……規格外過ぎるのも居るな……」

ワフールもネズミ達を眺めて感心する。

「牛になるとか言ってたけど……」

マルローネは、黄色いプニプニに乗るマナちゃんを見る。

「獣が出る時はネズミから出てくる……という記憶なんだけどね。特に注目する事でもないもんだから、覚えてないんだけどね」

マナちゃんもネズミ達を眺めて話す。

「ふ〜ん……あの100倍ネズミが牛に?……でもなんでネズミから一気に牛なんだろ?」

マルローネは疑問に思い呟く。

「まあ、こんな魔法世界に色んな疑問を持ってもねぇ……」

マナちゃんは苦笑いして言う。

 

まあ、考えても仕方ないけど、どうせクライスがかなり遅れてるので、夕方までネズミ観察して、夕食にネズミを頂く計画となった。

 

「まさか昼過ぎから、こんな所でネズミ観察で1日を浪費する道を選ぶとは……」

ワフールは呆れた声で言いながら、黄色いテント辺りで佇む。

マルローネはネズミを眺め続ける。

見慣れると100倍ネズミ……目が大きいし、下ばかり見てるし、可愛く見える。

ひたすら草をむしゃむしゃしてる所を見るに、本当に牛っぽい。

 

「……100倍ネズミは尻尾短いね。普通のネズミは尻尾長いのにねぇ……」

マルローネが呟く。

「ネズミだけに、無限に居るね〜……」

この辺り、草の根元はネズミだらけなのを眺めて、マナちゃんも感心する。

100倍ネズミは、1匹だけのようだ。

「青い毛のネズミも居るね」

マルローネが青い毛のネズミ軍団を発見する。オレンジ色っぽい集団も居るし……

 

「シアに見せたら、凄く興味津々で過ごせそう」

マルローネは、そんなネズミ達を眺めて言う。

「シア……病気だって子だね。僕の所に来れば病気も治るね」

マナちゃんは言う。

死んだ人すら蘇るのだから、そうなんだろう。

「でも、ヘンタイにされるからなぁ……」

マルローネは苦笑いを浮かべる。

シアがどう思ったものか。

「ヘンタイは、楽しい事じゃないの?マリーを思うに、楽しそうだけど」

マナちゃんが言う。

「クライスも楽しそう?」

聞いてみる。

「楽しそうだよ。色々とね」

マナちゃんは答える。

「あそこのネズミの気持ちも分かる?楽しいのか、つまらないのか」

マルローネは聞く。

なんとなくの質問だったけれど、聞いてみて、何よりも知りたい事だと思った。

……クライスには後で聞いてみれば分かるかも知れないけど、ネズミの気持ちは難しい。

マナノハシラならば、分かりそうなものだ。

 

「毛ヅヤの良いネズミは楽しそうなネズミだね。色んな事に夢中だよ。毛ヅヤのイマイチなのは少し辛い思いを抱えていて、毛が落ちてる、ボサついてる群れから離れてるネズミは、辛いばっかりのネズミだね」

マナちゃんが答える。

なるほど、納得の行きやすい答えだ。

「ネズミの世界も色々なんだね?」

マルローネは感心して言う。

「そうだね。死ぬ命ばかりの中、生き延びた所で色々だよね」

マナちゃんは言う。

 

「!!……虫の気持ちも分かるって事!?」

マルローネは目を見開く。

「知ろうとすれば、分かるけど……彼らはちょっと次元が違うから説明が難しいというか、理解が難しいね」

マナちゃんはそう答えると、100倍ネズミを眺める。

のそのそと次の草へと移動してる。

「草木って、何考えてるの?」

マルローネは聞く。昔、シアと一緒に考えた事。

答えなんて出るハズもない疑問。

「草木は分からないね。ザールブルグって何考えてるの?って質問と同じだから。草木はそれぞれが世界だから、そこに生きてる無数の命が無数の思いをしているよ」

マナちゃんはあっさりと答える。

「無数の命!?マナノハシラは何でも知ってるの!?」

マルローネは驚いてマナちゃんを見る。

「知ってる事は多いんだろうけど、何でもと言われるとどうなんだろうね?」

マナちゃんはそう言って空を見上げる。

分厚い雲が、雨を降らせながらこちらに迫って来ていた。

 

……夕方が来る前に、分厚い雲と雨が来て、黄色いテントの光に頼る事になった。

結構、大粒の雨を草地の上に展開されたテントで防ぎ、ワフールとマルローネ、マナちゃんの3人は雨の景色を眺める。

マナちゃんの緑のプニプニは、夕飯の準備として、外に出ていく。

テント地面から、たるみたいなのが生えて来て、ハダカのマナちゃんは、そこに入ってリラックスポーズになる。

「羞恥心的な話か?」

ワフールが訊ねる。

「いや、ハダカで居られても落ち着かないのかな、と」

マナちゃんは変形する黄色く光るたるごと、少しうにょうにょされながら答える。

「その動きも落ち着かないけどね。でもなんか気持ち良さそう……かな?」

マルローネは、そんなマナちゃんを笑顔で眺める。

 

黄色く光るたるに、うにょうにょされてるのが、2人に増えた。

 

やたらと雨の音がして……

ドバーン!

「うきゃあぁぁっ!?」

一瞬、世界が青白い光と、轟音だけになる。

驚き叫んで、たるから飛び出そうとしたマルローネは、キッチリたるに捕まって、元居た場所に戻る。

「ここに落ちるんじゃないか?」

音と光が同時……つまりかなり近くに雷が落ちた。

ワフールも少し慌てて、マナちゃんに聞く。

雨の音も強くなった。

 

「夕飯準備のプニプニちゃんで処理したけど……おかげで夕飯は準備出来てないね。もうちょっと距離を作るかな」

マナちゃんは言う。

そして黄色いテントは、すす〜っと動き出し、バサバサと音を立てる。

テントから見える景色が、草だけになっていて、低い場所になっている感じだ。

 

「まだ雷が起きそうだねぇ……こんなリスクがあったとは驚きだね」

マナちゃんが言う。黄色いたるに掴まった姿勢のままだけど、うにょうにょは止まっていた。

「深刻な事態か?」

そんなマナちゃんを見て、ワフールが言う。

「まあ〜……とはいえ、遠ざかっているし、雲はここから離れて行く感じだから、峠は越えた感じだね」

マナちゃんはそう言うと、またゆらゆらと揺れ出した。

 

そして、雨音だけの時間……

マナちゃんとマルローネは、音もなくゆらゆらうにょうにょと揺れて、リラックスしてるだけの時間。

ワフールは外を眺めたまま、座ったまま。

雨音は弱くなり……

また強くなり……

 

……何となく、こんな雨が近い時には、道路時代の事を思い出す。

こんな暗い時間の雨の時、マルローネとシア、2人のお気に入りのおじいちゃんと一緒の事が多かった。

不安に思う時も多かったけれど、黙って寄りかかっていられるおじいちゃんに寄りかかっていると、どこか安心出来た。

仲間のおじちゃん達は、10コール賭けのサイコロに興じている事が多く、少し騒がしかった。

寝室は2階の端で、そこは静かで不安になるものだから、シアと2人、騒がしい場所の程近くを好んだ。

そして、眠気が限界になると、おじいちゃんに連れられて寝室へと行ったものだった。

 

……雨音だけの空間。

テント全部が光ってるという、非常識な明かりも、慣れてしまえば驚きも無くなる。

たるみたいな筒に身体を掴まれて、ゆっくりとふにゃふにゃされてるのが、なんか不安が紛れる。

テントの外は、草の根元しか見えないし。

……雨音は少し強くなり……そしてまた弱くなった。

 

……雨音は、止んで来たりして、黄色いテントはまた草地の上へと浮かび上がる。

もう半分以上沈んだ夕日が、暗い雲も多めの素敵な景色を明るいオレンジ色と、深い黒で彩っていた。

黄色いたるみたいなやつは解けて、マルローネはテントから出る。

雨の後と匂いが残る素敵な景色は、思い出していた道路時代の事なんて吹き飛ばして、マルローネを夢中にさせた。

「すっごい景色!」

思わず口に出て、テントの方を振り返る。

ワフールはテントから出ていて、マナちゃんはテントの中でうねうねされてるまんまだった。

「雨上がりは、いつだって外に出たくさせるな」

ワフールはそう言うと、ぽんと飛んで、ぽんと飛んで……それを繰り返して夕日を眺める。

マルローネも真似をする。飛び放題な世界だし、飛び上がる事で沈む夕日が、ちょっとだけ大きく顔を覗かせる。

 

大袈裟な錬金コートが、ちゃんとふわふわする。

元はプニプニちゃんなのに、良く出来てる。

……なんか、そんな事を思いながら、垂直飛びをぽんぽんしながら、ワフールと夕日を眺める。

 

夕日は、それでも沈んでしまう。

オレンジ色は細くなり、そして遠くだけがオレンジ色になったかと思うと、暗くなる。

黄色いテントの明かりだけが頼りになった。

 

テントの入り口側で、佇む事にする。

「もうすぐ夕飯になるかな。緑のプニプニちゃんが帰って来るよ」

マナちゃんが言う。

「夕飯は……ネズミか?」

ワフールが訊ねる。

「そうだね。ここの名産品ってコトで」

マナちゃんは答える。

「ネズミは……色々と病気を持っていて……いや、この場合は平気なのか」

ワフールが呟く。

マルローネとしては、ダムで良く取れるので食べ慣れていたりするけれども。

「病気持ちじゃないのを獲ってるから平気かな。まだそういう病気が蔓延する程、ここは複雑な世界じゃないし」

マナちゃんが言った所で、緑に光るプニプニちゃんが帰って来た。

 

「ハーブ煮込みとは、驚きだな……」

夕飯は、緑色のプニプニちゃん製のテーブルに皿、スプーンと共に供される。

葉っぱと木の実と共に、美味しそうなお肉がゴロゴロの熱いスープ。

「2匹分?」

「いや、2人分で1匹だね。彼等は食べるには大きいサイズだもんね」

マナちゃんは、ハダカでテーブルに向かう。

緑色のプニプニちゃんから、マントが出てきてフォローされた。

 

「しかし、器用なプニプニだな……」

ワフールが、色々とプニプニボディーから飛び出してる姿を見て呟く。

「マリーのエネルギーをプニプニちゃんに集中してるからね」

マナちゃんは言う。

コテンパンの産物が、このプニプニちゃんという事らしい。

 

「おお〜……ハーブの香りにお肉の甘み……」

また、ポイントの高い夕飯を食べる。

「これはまた上品に仕上げて来たな……」

ワフールも唸る。

プニプニちゃんの中で、しっかり分解調理されるらしく、マナノハシラ的には何て事もない作業らしい。

そんな夕飯を楽しみ、後は身体のメンテナンスをされながら寝るだけだ。

歯磨きなんかもしてくれるものだから、ラクで仕方がない。

 

明日はまた、1日中移動……なのかも知れない。

 

マルローネの赤茶色の服は、赤いプニプニに変化して、マルローネはテントの隅っこで寝る構えに。

赤いプニプニも大きくなるものだから、テントに専用の穴が出来て、そこから赤いプニプニははみ出している。

ワフールの紫っぽい服も、プニプニになって逆の隅っこ、はみ出しベッドとなり、取り込まれて寝る構えに。

 

体温より少し温かいプニプニベッドは、寝るのに快適だ。

うつ伏せでも、顔がラクだし、呼吸もスムーズ……しかも心地好い温かさ……

マルローネは眠りに落ちて行く。

 

 

 

 

オリンジン・グランド、フリージア先生

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