6
「さて、客人が来ているようだが」
寝転んでいるワフールは、ゆっくりと身体を起こす。
ワフールが目を覚ました時、少し遠くにただならぬ気配を放つ者が居た。
マルローネは、辺りを見回す。
霧が深くて、何も見えない。
「本当に〜?」
そうワフールに言った。
「気付かれてたか」
マルローネとワフールの所に、青い影が見えたかと思うと、その姿を現す。
でっかい青プニだった。
「……でかっ!」
マルローネの5倍くらいの高さがある。
横幅だと、20倍くらいあるだろうか……
それが目の前まで近付いて来た。
「……」
マルローネは手を伸ばし、青プニの口の下のプニ部分に触れてみる。
……冷えた水の塊みたいな、プニだけに、プニプニしてる。
「僕の世界に、力があまりにも大きくなっているものだから、僕もこんなに大きくなったみたいだ。マリー」
青プニのでっかい口は、そう喋った。
……歯が無いのに、流暢に喋るものだ。
「喜んで貰えて何よりだけど、私はアカデミーに戻りたいのよね。ここはここで良いけど、退屈だわ」
マルローネは手を引っ込めて言う。
「帰りたいの?何をしに?……捨てられた復讐でもするの?」
青プニは意外そうな顔をする。
なんか、寂しい的な表情をする。
「復讐?そんなの考えてなかったわね。取り敢えず、シアに会いたいかな。それと、錬金術をやらなきゃだわ」
マルローネはそう話す。
また、温い風が吹き抜ける。
「なるほど……確かに、そんな気持ちを感じるね。でも、帰すにはまだ僕の力が足りてないね。帰る所は、すごく高い所にあるからね」
青プニは空を見上げる。
この場所で空を見上げても、タベクサ世界しか見えないんだけど……
「……まだエロエロしないといけないの?」
マルローネは、苦笑いを浮かべて尋ねる。
……ここまでで、結構エロエロの洗礼を受けて来たけれども……
……もうすっかり、エロエロ人間になってる感もあるので、まんざらでもなかったり。
「そういう事になるね。でもマリーが帰りたいのなら、帰す事が出来るようになったら、帰すよ」
青プニはそう話す。
「……そんなに価値のあるエサを、そう簡単に帰らせる、というのは理解が出来ないな。とは言え、こちらは為すがままにされるより他に無いのだから、取引も無いものだが」
ワフールがそう言って、青プニにジト目を向ける。
「ワフール、君は帰せないよ?人間の血液が無い君は、ここからは出れない。出たらたちまち、死んじゃうからね」
青プニは事も無げに、張り付いた笑顔のまま、そう話した。
「……それは残念だな」
ワフールはカクン、と頭を垂れる。
「……人間の血液が無いってどういう事!?」
マルローネが、そこに食いついた。
「死んでから時間が経っているからね。腐る前に僕が吸い尽くして、代わりに魔力が流れているんだよ。マリーのお陰で充実した魔力が流れる事になったから、ワフールとしても、存在がしっかりしてるね」
青プニは答える。
「え?死んだ人なの?」
マルローネは驚く。
……でも、なんか1度死んだ、みたいな話はワフールも、していたのだけれど。
「正確には、死んでいないよ。血液が無いだけで、ちゃんと魂も生きてるよ」
青プニは相変わらずの張り付いた笑顔のまま、そう話した。
喋る為の口の動きが、デカいし目の前だしで、あまりにも目を引きすぎてキモい感じもする。
また、温い風が吹き抜ける。
幾つも、幾つも吹き抜けて、かなり派手に葉擦れの音が鳴った。
わさーーーわさーーーわさーーーっ、と鳴り続ける。
「ここの外も、凄く変わったの?」
風が弱くなるのを待って、マルローネはタベクサ世界の壁を眺めて、青プニに尋ねる。
「少し暖かくなった……くらいじゃない?この木は、僕の心臓部だから、この場所から大きく取り戻してるんじゃないかな」
青プニは張り付き笑顔のまま、答える。
「……この木が中心部って事か……」
マルローネのすぐ隣で、ワフールが呟く。
「この木の中に入れなくなってるから、どこにも行けないんだよねぇ……」
マルローネも、青プニにそう話してみる。
……なんか、この世界の主っぽいし。
「木の中は、もう入れないんじゃないかな?取り敢えず地上への道は、作っておこうかな」
青プニは、ぷにょんぷにょんと跳ねて、横に移動する。
顔が横に移動して、前に移動してる感じになる。
「……!?」
そんな青プニを眺めて、マルローネは絶句しつつ、そのナナメ後ろを歩く。
なんか、軽そうな巨大青プニ……
七色のタベクサを踏み潰して進むのだけど、七色のタベクサは、平然としている。
タベクサが丈夫なのか、青プニが実は軽いのか……
青プニが壁に近寄ると、タベクサ世界の壁は、なんかキリキリと音を立てて……
ゆっくりと、向こう側へと倒れて行く。
「おお〜……」
マルローネは青プニの隣へと行き、向こう側へと倒れてゆくタベクサの壁を見送る。
キリキリと音を立て続け、タベクサの枝はナナメ下へと伸びている状態になった。
かなり広い階段が、下へと伸びているのだけど、それは、まだ遠い地面には届いていない。
「3日もあれば、地面まで届くかも。どれだけ掛かるのかは、ちょっと分からないけど」
青プニはそう話す。
「……3日……ヒマなんだよね〜……」
マルローネは肩を落とす。
そして何気なく辺りを見ると、壁が無くなっていた。
天井は相変わらずだけど。
なんか、地平線と日の光がダイレクトに、この場所を照らしている。
青プニのプニ肌も眩しい。
「おお〜!」
つい今、肩を落としていたマルローネは、そんな日の光の方を向くと、目を輝かせた。
「なんか、機嫌が良くなったな……」
ワフールは、そんなマルローネを眺めて、日の光に目を細めた。
「落ちないでよ〜……」
青プニは、ふらふらと日の光に導かれて行く、マルローネの後ろ姿に言う。
後ろ姿のほとんどが髪という、ぶっとんだボリュームをしている。
……広大な草原色の地面……波打ってそこを隔てている川……
タベクサ世界は壁を開き、強く入るようになった光に、七色のタベクサを輝かせている。
……幻想的な風景……
そんな景色に見とれているマルローネも、日の光を浴びて、金色の髪を更に強い金色に輝かせ、白い肌の裸体も、輝いている。
そんなマルローネに、ワフールは見とれていた。
「お腹空いたね。ここのタベクサ食べまくってるけど、大丈夫なの?」
マルローネは、日の光に輝く巨大青プニに尋ねる。
「マリーのお陰で実ったタベクサ?……だから、幾らでもどうぞ〜……タベクサって名前なんだね。これ」
青プニは答える。
今回は黄色いタベクサと、紫のタベクサをワフールと分け合う事にする。
「ここのタベクサは、なんでこんなに美味しいの?」
そんな食事中。
マルローネは青プニに尋ねる。
「魔力を多く含んでいると、栄養状態が良くなるから、美味しくなるんじゃないかな?あと、この場所の日の光が強くなってるのも、植物には良いんだろうね」
青プニは答える。
「……そう言えば、これは何の木なんだ?あまりにも太くて高い……」
ワフールも尋ねる。
この不思議な世界は、疑問がいっぱいだ。
「僕の心臓部で、魔力を送る管だね。今は空の果てまで伸びたんじゃないかな?これも、マリーのおかげだね」
青プニは答える。
壁を通らない温い風が、強く吹き抜けた。
騒がしいくらいの葉擦れの音と共に、2人と青プニを吹き抜けていく。
青プニは、風に吹かれてる形になる。
……やたらと柔軟性がありそうだ。
壁が遮っていないと、これほど強い風だったのかと思わせる。
風が止むと、青プニは元に戻った。
「空の果て?」
マルローネは尋ねてみる。
「空の果てのどこかに、あの錬金術の壺への出入口があるよ。まあ、平原の飛行場からなら、その出入口に繋がっているから、そこに行くと、マリーはあの小屋に帰れるね」
青プニは答える。
なんか、小屋に帰れる方法まで、さらっと出て来た。
「……価値を生み出し続ける金のタマゴを、やけにあっさりと手放すもんだな……」
ワフールがそう呟く。
……この青プニにとって、マルローネは強烈に魔力を生み出す存在……
……なのに、帰りたいなら帰り道を案内する……
ワフールからすると、なんか不思議な感じだ。
「そうだね。でもなんか、主となる者が来た時、僕は主が思うようにする手伝いをする存在なんだよね。だから、マリーが望む事を邪魔しないよ?」
青プニは、相変わらずの張り付いた笑顔を、日の光に向けたまま、そう話す。
「……私は、主なの?」
マルローネは青プニを見て、尋ねる。
「これだけの魔力が戻るって事は、もう主で間違いないよ。きっと」
青プニは答える。
今度は、緩やかな心地よい風が吹き抜ける。
葉擦れの音も、さらさらと鳴った。
「ふむ……」
マルローネは何やら考え込み、そして青プニに手を伸ばす。
「主の願いを叶える事が出来る……なら、私の髪の毛にボリュームを!」
そして目を見開き、願い事を言う。
既に充分と思われる髪の量、ボリュームなのだが、マルローネとしては、もう少しふんわりしてくれるのが理想なのだ。
ワフールは、ずっこける。
「分かりました主」
青プニが答えると、マルローネの髪がぶわん!と広がり、そして閉じる。
閉じてみれば、前よりもふんわりとしてボリュームアップに成功した。
「おおおお〜!鏡!鏡になって!」
マルローネははしゃぎ、青プニの後頭部に望む。
青プニは、マルローネの姿を映す。
青プニが膨らんだ形なので、マルローネの姿も膨らんで映る。
太ましいマルローネと、更にボリュームアップして見える金髪が映った。
「これは!可愛い!可愛いよ!」
はしゃぐマルローネ。
……それでいいのか……と思いながら、ワフールは、そんなマルローネの姿を眺めている。
「喜んで貰えて何よりです主」
青プニがそう話す。
「うむ。寝床といい、食べ物といい、苦しゅうないぞ……名前なんていうの?」
ふんぞり返って、顎を撫でるポーズをしたマルローネは、ふと気付く。
「大昔、マナの柱なんて呼ばれていたけれど、僕には名前が無いなぁ……」
青プニは答える。
「ん〜……マナノハシラ?マナノハシラって名前なんじゃないの?マナノハシラって呼んで行く事にしようかな」
マルローネは思いを巡らせて、でも結局は呼ばれていた、という名前に落ち着いた。
食事も済んで、風も浴びて……でもまだ日は高い。
「ヒマヒマからのエロエロというパターン……どうにかしたいよね?」
マルローネはワフールを見る。
「確かに。そればっかりになってるからな」
ワフールは頷く。
「パンチゲームでもしようか?」
マナノハシラが言う。
「パンチゲーム?」
マルローネは張り付いた笑顔の青プニを見る。
そしてパンチゲームを始める事に。
巨大青プニは先端を丸くした細い水を伸ばし、マルローネに寄せる。
寄せられた丸い水の先端を、マルローネがパンチすると、その細い水は巨大青プニに戻る。
何本も、細い水がゆっくりと迫り、そしてパンチされると帰って行く。
「おおっ!……ほっ!……ほっ!……ほっ!」
マルローネもワフールも、それぞれに迫り来る細い水をパンチする。
青プニとしては、どのようなパターンで迫れば、相手が夢中になってパンチするのか……
という、試行錯誤のゲームでもある。
そして、これがマルローネとワフールの思考を読み取る訓練にもなる。
少なく迫り、息をつかせる時もあれば、多く迫って忙しくしてみたり……
が、訓練するまでもなく読めるので、2人は夕方くらいまで、パンチゲームに夢中になった。
「なんか、すっごく夢中になった!」
日の光がぽっかぽかだったのも相まって、汗に濡れるマルローネは、何も無い所にパンチを出してみたりする。
「俺の方、かなり多い上に早くなかったか?」
ワフールも、汗をかいている。
……風呂なんて無いのに、ヘンな物に夢中になった物だ。
「2人とも、僕の中に入ると、汗なんかの汚れが吸収されて綺麗になるよ」
巨大青プニは、ぺた〜んと広がり、張り付いた笑顔は上を向いた。
顔じゃない所が、結構広い。
「なら、入ってみるしかないよね?」
マルローネは素直に、平べったくなった青プニに歩いて突っ込んでみると、なんかすんなりと青プニにめり込み、取り込まれる。
「ぅわ……温かい……キモいかも……」
そして、そんな感想を述べる。
「俺も便乗しておこうか」
ワフールも、青プニに取り込まれておく事にする。
……マルローネがここから出たら、自分はどうしたら良いのか分からない。
……この青プニと親睦を深めておくのは、有益なのだろう……との思惑もあった。
「……なるほど……」
少し粘性を感じる水は、温い。
それでいて、細い水の集合体なのかと思わせる感触があるのだ。
キモい、という感想は的を射ている。
「……お〜……暖かくなって来た……」
少し経つと、青プニは熱を上げる。
「温泉みたいな感じになってきたな……」
ワフールも、その熱を感じる。
「もうちょっと熱くすると、丁度いい感じかな」
マナノハシラがそう話す。
「もう少し温かくなるなら、素敵だね〜……」
マルローネは、頭をもたげる。
取り込まれてる身体と、取り込まれていない頭の境界線が、プニっと動くので、枕として優秀だったりする。
そして、更に暖かくなって来た……
「……全身の表面がツブツブされてる〜……」
マルローネが身体をうねうねし出す。
「何か生き物が、蠢いているような感じがするな……」
ワフールも、そんなうねうねマルローネを眺めながら、感想を述べる。
「このデカいプニプニも急造品でね……さっきパンチしてたのが、身体の表面を食べてる感じだね〜……」
マナノハシラは、呑気な感じで言う。
「そうなの?」
マルローネは、自分の身体を目を凝らして見つめる。
見つめても、見えない。
輪郭ぐらい見えたりしそうだけど、それすら見えない不思議。
「なんか……のぼせて来たかも……」
そんなこんなでまったりしていると、マルローネは顔まで赤くなって来た。
「温泉馴れしていた頃を思い出すな……それよりものぼせる感覚が無いのだが」
ワフールは首を傾げる。
「ワフールは、人間の血の代わりに僕の水みたいなのが流れてるから、そうなるのかもね」
マナノハシラは、そう話す。
「それも凄いよね〜……ん?……そうなると、私からは、青プニが産まれたりする?」
マルローネは、ぱっ、と顔を上げた。
「……そこに気付くとは、マリー。君は実は頭が良いんじゃないのかい?ちなみに、子供は産まれないハズだけど」
マナノハシラは、相変わらずの呑気な感じのまま、話す。
マルローネは、顔を確認してみる。
相変わらずの張り付いた笑顔が、上を向いていた。
……今度は、青プニの中が温くなっていく。
そして、マルローネの身体に、涼しい風を感じるようになった。
「はふ〜……これ凄い心地いい〜……」
涼しい風が、身体を渦巻いてる感じ。
凄くまとわりつく感じが、のぼせた感じを残らず消し去って行く。
なんか、とんでもなく心地良い。
「凄いな……どんな芸当なんだこれは?」
ワフールも、その感覚に驚く。
「いやぁ〜……魔力充実なんてすると、こんなのも思い出すね〜……昔の主様も、こういうの喜んでくれたものだよ〜……きっと」
マナノハシラは、そう話す。
「きっと?」
マルローネが突っ込む。
「……魔力切れ状態が長かったみたいでね。記憶が無いんだよねぇ……」
マナノハシラは、呑気な感じのまま、そんな話をする。
「マナノハシラも大変だったんだね〜……」
マルローネも、呑気な感じで話す。
「さて、そんな大変なマナノハシラに、こちらとしてもお礼をしないといけないな……」
そんな呑気なマルローネを、ワフールが後ろから捕まえる。
「……まあ、なんでか……お股の汁がご馳走みたいだもんね?なんでなの?」
大人しく捕まるマルローネが尋ねる。
「ん〜……人の血から魔力を得ているみたいなんだけど、ストレートな血よりも、変化された血の方が魔力を得られるんだよね」
マナノハシラは答える。
……このお股のエロ汁って、血が変化した物らしく、この変化した血というのが、マナノハシラの好物となる。
ただ、これが人によるらしく、マルローネの場合は普通の人の、100万倍くらいの価値があり、マナノハシラの世界が変わって行くという仕組みになっているらしい。
そういう、100万倍の価値のある人を、マナノハシラは主と呼び、主と出会う事で、めちゃくちゃ元気になるという。
……凄く大昔にも、主が居たハズなのだけど、魔力切れ状態も長かったみたいで、覚えていないらしい。
けれど、マナノハシラに生贄として人間を捧げる事で、魔力切れ状態でも、多少の魔力を得られる事から、ザールブルグから、ワフールやらマルローネやら……
……以前にも、数多くの人間が捧げられていたのだから、人間側が詳しいんじゃないか……と、マナノハシラは話した。
「なるほど……アカデミーの本の山の中には、そういう話もあるのかも……」
マルローネは、ワフールに後ろから取り憑かれながら、そんな話を聞く。
「……なんか、魔法の不思議な力というのも、人間の犠牲の上に成り立っていた、という事か……とは言え、辺境の村でさえ、何かしら後ろ暗い事はあるがな……」
ワフールは、この話に、そう言った。
そしてマルローネの肩に、顎をぐりぐりする。
「ぅおうっ!痛い!それ痛いから!」
マルローネは肩を竦めて、緩めて、竦めて……そんなワフールの顎に抵抗する。
そして最後には長い髪の毛を使い、ワフールの顔を離す。
「そんな技まで使うとは……」
髪の毛だらけの顔で、ワフールは言う。
口に髪が入る。
「髪の毛って丈夫らしいんだよね」
マルローネは、両手髪の毛の構えのまま、素敵な笑顔で言う。
そんな感じからエロエロに発展していく……
ワフール・ハイラム
デイドリオン
デイドリオン・アイン
デイドリオン・ツヴァイ