7
「あう〜……こんなコテンパンにハジケ回るとは……思わなかったよぉ……」
夕方になり、マナノハシラの中で身体を冷やされながら、マルローネはボヤく。
……マナノハシラの、この巨大青プニの中は触手みたいな長いヤツだらけで、それが椅子になってみたり、冷たくなったり熱くなったり、非常に自在に動くし、固まったり存在を消したりする。
「マリーがノリノリだったから……」
マナノハシラは呑気なトーンのまま、そう話す。
マルローネの尻の穴から膣の穴から……ガッツリ詰め込んで、エロ汁採取しまくってしまった。
「俺も……もう立たない感じがするな……食事にしておこうか」
ワフールも、そう話す。
黄色いタベクサに、赤いタベクサ。
そんな2本を2人で齧り合う夕食。
……夕陽が沈んで行く……
「また、真っ暗闇になるねぇ……」
ワフールと、2色のタベクサを渡し合いながら、マルローネが、呟く。
今回はマナノハシラに取り込まれていれば、なんかぐっすりと眠っていられそうだけど。
「僕が光る事が出来るけど……」
マナノハシラは、黄色く光る。
お月様の中に居る……みたいな感じになった。
「うわぁ〜っ!これはロマンティック!ロマンティック過ぎるよぉ〜!」
ワフールの身体も、マルローネの身体も黄色い光の中に居る感じ。
マルローネは大はしゃぎする。
本当にどこまでも夢の世界だ。
「驚いたな……!こんな事まで出来るのか!?」
さすがのワフールも、驚きを隠せない感じになる。
……夕陽は、頭のてっぺんを残して沈み、空は紫色やらオレンジ色やら……
いよいよ夜になる色になった。
「……僕の中で、マルローネが頑張ってくれたお陰で、僕が2人を乗せたまま、飛んで行けそうだよ。飛行場まで行けば、僕に乗ったまま、マリーは念願の小屋にも帰れるね」
マナノハシラが言う。
でも、マルローネはやたら重い瞼で、こっくりこっくりしてる。
「……やたらハジケ回ったからな。さすがに疲れが出てるんだろうな……」
ワフールは、マルローネの身体を支えて呟く。
「じゃあ、ゆっくり眠って貰うのがいいね。夜になる訳だし、ワフールも疲れてるでしょ?」
マナノハシラが言う。
そこで夕陽が沈みきり、真っ暗闇が迫り……この場所を包む。
「……んはっ!」
マナノハシラの中でうつ伏せになり、ゆらゆらふらふらしていたマルローネは、ズバッと起きる。
……既に日が高くなっていて、鮮やかな七色タベクサ世界が、相変わらず広がっている。
「おはよう」
「おはよう、マリー」
ワフールとマナノハシラが、そう話し掛ける。
「夢見た……なんか……どこだろ?草の凄い道を抜き歩く仕事のお手伝いしてたんだけど〜……でっかいサカサガエルの群れがね〜……」
マルローネは、夢の話を始める。
ドナースターク道路の仕事の話をしながら、朝のタベクサを齧り合う。
黒いやつと黄色いやつを、ワフールと渡し合いながら、マルローネの話は弾む。
ワフールとマナノハシラは、その話を大人しく聞いておく。
「……あんまり長くラクしてるけど、流石に散歩とかしたいわね」
マルローネはマナノハシラから出て、自分の足で立つ。
……昨日のエロエロとか、ずっと取り込まれていたものだから、自分の体重が久しぶりだ。
……少しフラついた。
「こんな感覚、初めてだな」
ワフールも、そう言ってフラついていた。
そして、見事な七色タベクサ世界を、ぐるぐるする。
「……まだ地面には、到達してないかな?」
七色タベクサ世界の、壁の向こう側を見るマルローネが言う。
昨日よりも、かなり伸びてる……
「あの辺りで、終わってるみたいだからな……」
ワフールも、ついて来る。
「……エロエロ仕込まれたからかな?なんか……変な気分ね」
歩くマルローネが、そう話す。
「こんな場所だからだろう。俺みたいな落伍者でも、素敵な気分になれるのは」
ワフールが、呟いた。
また、葉擦れの音と生温い風が、通り過ぎていく。
ボリュームアップした、マルローネの髪がふわふわと揺れた。
「落伍者同士、仲良くやるんじゃないの?」
髪が治まり、マルローネは足を止めて、ワフールに微笑み掛ける。
そして、また足を踏み出す。
七色タベクサ世界の地面は複雑なので、歩くのは少し苦労する。
「マリー。お前はアイツの主だろ?俺は何者でもないままだ」
ワフールは、ひょいひょいと歩き、マルローネを待つ。
そんな歩き方。
「スネてるの?優秀な案内人だし、私の旦那様なのに」
マルローネは足元を選びながら、景色も見ながら……ゆっくりと進む。
強靭な葉っぱに、足が上手く乗ると心地良い。
「……まあ、これからの事を考えると不安だな……今までは、不安を感じる心も覚束なかったから、そう感じなかったが」
ワフールは、そう話す。
マルローネは、次の足をタベクサの葉っぱに、綺麗に乗せる。
「これからの事……あんまり考えてなかったなぁ……今日のこれからは、パンチゲームしたいって思ってるけど」
マルローネは、次の足元を狙いながら、話す。
「なるほど……帰った時にどうする、とか考えないのか?」
ワフールは、そう尋ねる。
「……取りあえずは〜……イングリド先生から貰った服を着たいかな。誰にも見せる事なく、ここに来ちゃったし。それに、このふわふわヘアーと合わせると、凄い可愛いと思うのよ!」
尋ねられて、マルローネは考え……そしてあの錬金術士の衣装に思いを致す。
「……なるほど……あまり将来の事を考えなければ、悩む事もないという訳か……」
ワフールは納得し、呟く。
「え〜!?将来の事は考えてるよ、失礼な……将来は、凄い錬金術士になって、凄い物を作るんだ!」
マルローネは次の1歩、次の1歩と選びながら、ワフールの呟きを拾う。
歴代最低成績なのに……
恐ろしい鋼メンタルの持ち主である。
「そ、そうか……」
ワフールは気圧されながら、そう相槌をしておく。
それからも色々と語り合いながら……
七色タベクサ世界をぐるぐるして、2人はマナノハシラの場所へと戻る。
「パンチゲームしたい!パンチゲーム!」
マルローネは戻るなり、そう主張する。
そういうのが無いと、またもコテンパンにエロエロされそうだし……
ワフールは、パンチゲームはやらずに、のんびり過ごす……
とか思ったのだけど、何故かマルローネに呼ばれて、汗だくになってもパンチゲームは続き、夕方になった。
また、なんか人の心を読むような迫り方をして来るし、時折、光らせながら迫る水の……触手?を出して来るし……
マナノハシラの触手達は、人を踊らせるのが上手い。
そしてまたもマナノハシラに取り込まれ、ホカホカしながら、タベクサを齧り合う夕食。
「あと2日……明日はエロエロ地獄に捕まりそう……」
マルローネが呟く。
「エロエロ地獄になれば、帰れる時も早まったり、七色タベクサにも、新しい色が出て来たりしそうだな」
ワフールはタベクサを受け取り、反対の手で、マルローネの乳房に手を当てる。
……マルローネは、タベクサを齧りながら、そんなワフールを眺める。
もはや、あまりにも動じない。
「そうだね。僕が飛べるようになれば、飛行場を使わなくても、ここからひとっ飛びなんだけど。そこまで魔力は溢れてないね〜」
呑気トーンで、マナノハシラが言う。
「え!?飛べるの!?」
マルローネは、目を輝かせる。
空を飛ぶのが好きな女だ。
「僕だけなら、今でも飛べるよ。でも、2人を乗せたまま飛ぶには、まだだね〜……」
マナノハシラは、相変わらずの能天気トーンで話す。
とはいえ、パンチゲームに没頭した疲れがあり、暗くなるぐらいには、マルローネは爆睡となった。
マナノハシラに取り込まれて、頭だけ出して、プニプニの境界を枕にうつ伏せに眠る。
なんか、仰向けで寝る事をしない女だ。
また、朝が来る。
深い霧が辺りを包み、ナナメ上に飛んで行く雨も降っていた。
それでも真っ暗闇は居なくなり、霧で神秘的になった、朝の七色タベクサ世界。
「おはよ〜……」
マナノハシラに取り込まれて、うつ伏せで眠っているので、水死体みたいな寝方だったマルローネは、相変わらずズバッと起きる。
「……色々な女を見て来たが、毎回こんな起き方をする奴は覚えが無いな……」
既に起きていたワフールは、そんなマルローネを眺めて呟く。
ワフールは毎回、なんか暗いうちに目が覚めていたりする。
「……ん〜……それは田舎の頃から、結構言われてるかな」
マルローネは、そう言って笑う。
……この日も帰るには至らず、エロエロされて過ごす。
もはや、完全になんか別の生き物にされた感がある。
「……本当にコテンパンなんですけど……」
夕方、マルローネは水死体の構えのまま、ボヤく。
「マリーは、なんか全て終わるまでノリノリなのに、その後でボヤくよね」
マナノハシラが呑気トーンでそう話す。
「俺もコテンパンにされた気分だ……」
ワフールは仰向けで、天井のタベクサ世界を眺めながら、こちらもボヤく。
そして夜にはぐっすり眠り、マナノハシラに癒される。
そして朝……
話によると七色タベクサ世界が、地面まで伸びてる日でもある。
今日もマルローネはズバ起きて、ワフールとタベクサを齧り合う朝食。
「……さて、マリーは帰れるかも知れないね。飛行場まで行けるなら……だけど」
マナノハシラは、呑気なトーンでそう話す。
「ん〜……お別れとなると、名残り惜しい感じもするね……」
マルローネは呟く。
「ええ!?……また来たり帰ったりすればいいじゃない。マリーなら、自由に行き来できるよ?」
マナノハシラは驚く。
……初めて、驚きアクションされた……
「……あ、そうなんだ。じゃあ、またコテンパンに、されたくなったら来ようかな?」
マルローネは首を傾げる。
「毎回コテンパンコースだと、俺は持たないぞ」
そんなマルローネに、ワフールは笑い掛けた。
そして、マナノハシラに乗った状態で、七色タベクサ世界の壁へと動く。
なんか、スイーッと滑るように動き出した。
ぴょんぴょんしない……
マナノハシラに取り込まれてる身体に、無数の触手が絡まり掴み、身体が安定する。
そして……
「わお〜っ!」
「うおおぉぉ……!」
マナノハシラこと、巨大青プニは、かなりの角度で地面へと伸びる、七色タベクサ世界を滑り落ちて行く!
かなりのスピードで地面が近付いて来る。
……こんなトンデモな高さだっけ?
マルローネは思う。
巨大青プニは、頭から落ちて行く。
身体も髪も固定されている、マルローネとワフールは、そんなスピードに強く目を閉じたり、スピード風景が気になって目を開けたり……
そして、まだほんの少し地面に届いていない七色タベクサの道の果てで、巨大青プニはぴょこんと跳ねる。
そして、今度は地面をスイーッと滑る。
地面はやたらと石がころころしていて、色んな草が、めちゃくちゃな生え方をしている。
緑プニだらけで、歩きやすかった地面ではない。
そして、そんな草々の上をスイーッと滑り……
やたらとスピードが落ちて来て、凄くゆっくりになった。
「なんか、凄い長さだったね!タベクサの道!」
興奮冷めやらぬマルローネが、少し身体を高くする。
身体をガッチリ掴んでた触手は、まるでそんな思いにリンクするように、掴みを緩めて、身体を押し上げてくれる。
「3日で、あれだけ伸びるとは……」
ワフールは後ろを振り向き、長かった七色タベクサの道を見る。
そして振り向くと……
今まで住んでいた大木が見えるのだけど、最初に見た大木よりも、更に高く大きくなっている。
城なんて軽く超える大きさ……
そして空の果てまで伸びた大木は、地面から天空へと続く1本の七色タベクサ世界……
木の幹が見えないくらい、七色タベクサ世界の皮を纏っているのだ。
しかも、川が海みたいになっていて、水から生えてるみたいだ。
「な、なんじゃこりゃ〜!?」
マルローネが驚く。
「お陰様で、僕は元気いっぱいになって来たんだよね。主様々だよ」
マナノハシラが呑気トーンで話す。
「これは……歩けないね……」
マルローネは下の草々を見て、言う。
鋭い葉っぱを持ってる奴とか、硬そうな奴とか……
それの上を巨大青プニが、ゆっくりと滑っている。
「時々タベクサもあるな……それは地上と同じか……」
ワフールも、そんな草々を眺める。
……タベクサは、大きい植物に時折生えてくる1枚の葉っぱ。
寄生しているのか、植物に生える植物で、木の葉っぱに紛れていたりする事が多い。
どこにでも生えていて、食べられる。
ザールブルグには、タベクサ法という法律があって、タベクサについてはルールがある。
陽の光が出てる時間は、タベクサ以外の物を食べない。
タベクサは、売買禁止。
タベクサは、調理してはいけない。
このルールのお陰で、誰もが1日の終わり、豪華なディナーを楽しみにしていたりする。
王様であっても、ドナースタークの貴族であっても、日中はタベクサを齧るのみ。
ディナー以外は、平等だったりする。
「この辺りのタベクサは、七色じゃないんだね?」
マルローネは、マナノハシラに問いかける。
今まで見て来た、齧って来た白とか緑のタベクサが見受けられる。
若いのは緑で、時間が経つと白くなるタベクサ。
「そうだね〜……植物こぶって呼んでいた記憶があるなぁ……魔力を受けて、感染する病気みたいなもんだって。あと、キノコこぶと虫こぶ虫ってのがあるとかなんとか……」
マナノハシラは、そう話す。
……まだ覚束ない大昔の記憶では、植物こぶと呼ばれていたのだけど、マルローネとワフールはタベクサと呼んでいる。
「キノコこぶは、なんか覚えがあるな。憑依キノコと呼ばれていて、重宝したもんだ」
ワフールが、キノコこぶの話に食いついた。
キノコに生える、白い幽霊みたいなキノコ。
憑依キノコの方が、元のキノコよりも3倍程大きい傾向にある。
「幽霊キノコは、ディナーでよく食べた!」
マルローネも、そんな道路時代を思い出す。
クセが無くて僅かに甘くて……味付け次第で、ご馳走の側に居るデカいキノコ。
キノコは毒があったり無かったりして難しいんだけど、どのキノコに生えていたとしても、幽霊キノコには毒が無いんだとか。
そんな話をしながら、巨大青プニは草世界を滑り行く。
草の上を滑って行くのは、これまた……なんか不思議な光景。
「草も丈夫なの?」
マルローネはそう聞いてみる。
「存在の上を通ってる感じなんだけど〜……伝わらないよね?」
マナノハシラは、呑気トーンで答える。
「伝わらないね〜……」
マルローネは、苦笑いを浮かべる。
なんか、色んな花が咲いてるのを眺めて、巨大青プニは進む。
「季節感の無い風景だな……あのピンクの花が咲いてる横で、ゴールデンロッドが咲いてるとは……」
そんな中、ワフールが話す。
春の花と、秋の花が同時に咲いていたりするらしい。
ほとんどは緑の景色。
時折、花が咲いていたりする。
……そんな景色が流れて行く。
「旅かぁ……帰ったら色々と旅がしたいかなぁ……」
そんな巨大青プニに半分取り込まれてる、マルローネがそう話す。
なんか、湿った風が吹き抜けて行った。
「俺はここに残って……まあ、こちらを冒険しておくとするか……まあ、自由があれば、だが」
ワフールは、そう呟く。
何であれ、死なずに済んだので、これからの話も出て来ると言うものだ。
そうしていると、今度は雨が降って来た。
ナナメ上に飛ぶのではなく、ちゃんと上から下へと雨が降って来た。
「上から雨が降って来るなんて、久しぶり」
マルローネは、雨の降る空を見上げる。
「結構、強い雨だな……それに少し冷たい雨だ」
ワフールは、横の草世界を眺めながら言う。
「僕の心臓部では、水を巻き上げたりするからね。そこ以外では、水は落ちてる事があるよ」
マナノハシラは能天気トーンで、そう話す。
それからも、草世界の上を、巨大青プニは滑り続ける。
雨の中、マルローネのドナースターク道路の頃の思い出の話をしたり、ワフールの調理人時代の話をしたりして、時間は過ぎていく。
巨大青プニは、ゆっくりと滑り進んで行く。
……歩くよりも少し早いくらいなので、こんな草世界を行ってると考えると、かなり早い。
と、いうか全裸でこの草世界を進むのは、単純に無理だと思われる。
草の背丈も、マルローネの身長くらいの背丈がありそうだし……
「マナノハシラは、疲れないの?」
ずっと滑り続ける巨大青プニに、マルローネが尋ねる。
「マリーをコテンパンにした事で、魔力が充実してるからね〜……このまま1年くらいなら、余裕で滑り続ける事も訳ないんじゃないかな」
マナノハシラは、相変わらずの空を向く張り付いた笑顔で、呑気なトーンで答える。
「1年!?」
ワフールは驚く。
「……俺もコテンパンになっている感じはあるのだが……俺も魔力に貢献してたりは……?」
そして続けて聞いてみる。
「ワフールは、貢献というか……生きるのに魔力を消費してる側だね」
マナノハシラは、呑気トーンで答える。
「コテンパンにされたもんなぁ……」
マリーは苦笑いで、ワフールを見る。
……エロエロするという生業で生きていた男。
……おかげでなんか、違う生き物にされてしまった感じもする。
……でも、色々と吹っ切れる感じもするというか、エロエロ未経験よりも、動じない人間になれた感があると言うか……
マルローネは複雑な気持ちに思いを致す。
「コテンパンにされたら、世界が変わるなんて女が居るとは……驚きだな。俺もそれに救われている、という謎の状況になっているみたいだから、驚きだ」
雨で乱れる緑の髪を、オールバックに整えながら、ワフールは話す。
「ま〜……それだよね。喜んで貰えるのは嬉しい感じするけど〜……」
マルローネも、そう話す。
「また、コテンパンって言い出すのは面白いな。色んな女を調理して来たが、コテンパンとか言い出したのは、マリーが初めてだな」
ワフールは草世界を眺めながら、そう話して笑う。
四方、何処までも草世界だ。
……ナスとか実ってる奴が居る。
……ひまわりが1つ、咲いてる。
……そのひまわりの花の下に、タベクサを2つ抱えている。
「なんか、お腹空いたなー……ヒマだと、お腹減るよね?」
長く振り続ける雨の中、マルローネが言い出した。
「お昼だね〜……タベクサを狙う〜?」
マナノハシラが、中の触手を身体に巻き付けて、固定する。
そして、取りやすそうなタベクサに向けて、マルローネを捕まえたままの触手を伸ばす。
ワフールの方も、反対側で同じように伸ばす。
巨大青プニから、飛び出しての採取を狙う訳だけど、こんな芸当もあるのか……と、マルローネは感心する。
「あ、こっちのタベクサは、すぐ折れるね〜」
びよ〜んと伸ばされたマルローネは、目の前になったタベクサを折る。
七色タベクサみたいに、規格外の強靭さはなく、慣れた手応え、慣れたサイズの白いタベクサ。
そして、僅かな甘みの、100点のタベクサだった。
七色のタベクサが規格外で、1000点とか2000点とか……
もはやタベクサではないのだけど、こちらは普通な感じのするタベクサだった。
「ふむ……これが懐かしい味だな……」
ワフールは、小さめの、まだ緑の残るタベクサを3本ばかり取り、巨大青プニの背中へと戻って来ていた。
「……おじさんって、その感じのタベクサが好きだよね?親方も、そんなの齧ってた」
マルローネは、そんなワフールを眺めて言う。
……苦味が少しあるタベクサは、緑がかっていて小さい。
……巨大青プニは、進み続ける。
2人がタベクサを齧り終えて、少しすると雨は止んだ。
水滴を湛える草世界は、なかなかに素敵な景色となっていた。
……夕方くらいになり、草世界の中に、草の全くないサークルが出てきた。
「やっと到着だけど……」
2人は仲良くくっついて眠っていて、マナノハシラはサークルの手前で止まる。
雨上がりの夕陽が、草世界と巨大青プニ、そして広大なサークルを照らしている。
……朝が来る前に、ワフールは目を覚ます。
真っ暗闇に、青プニの中と思われる縛られてる感覚。
この青プニの中で縛られてる事で、身体の位置、体勢が安定して……よく眠れたりする。
……マルローネの肌と、青プニの中を触る。
あまりにも暗く、触覚しか頼れる感覚がない。
顔は青プニから出ているハズなのに、何の音もしない。
……どのくらいこの場所に居るのだろうか……
そんな事を思う。
考えた所で答えは出ないのだが。
そんなこんなで、朝日の気配がしてくる。
腕にマルローネと髪と背中の感触……というか、ガッチリ抱き締められている。
この女、必ずズバ起きするから避難しておこうかと考えるが、もはや不可能な状態だ。
……明るくなって来て、ワフールを抱き締めている爆弾が、少し蠢き出した。
そして、マルローネがズバ起きる。
「はうっ!」
「ぐえっ!」
両ヒザ蹴りを食らって呻くワフール。
「おはよう、マリー」
そんな事は気にも止めず、相変わらずの呑気トーンで、マナノハシラが挨拶する。
「……おはよう……」
解放されたワフールは、マルローネから距離を取りつつ、挨拶する。
「……さて、ここのサークルに入れば、あの小屋に行けるけど、ワフールは行くと死んじゃうと思うから、ここからはマリーだけで行く感じだね」
マナノハシラは、そう話すとマリーを触手で縛ったまま、サークルの端っこに降ろした。
……草世界の高さが、マルローネよりも高く、その上に巨大青プニが居て、サークルに降ろされたマルローネは、そんな巨大青プニを見上げる。
張り付いた笑顔が下に下がり、マルローネに向いた。
「まあ、また戻って来たり出来るみたいだし、ちょっと錬金術士を目指す生活に戻りますか」
マルローネは、そう行って巨大青プニに笑顔を向ける。
「まだマリーをコテンパンにして、魔力を増幅したいからね」
巨大青プニは、相変わらずの張り付いた笑顔で、そう話す。
そして、顔が横滑りしてマルローネからは見えなくなると、マルローネから離れ、草世界だけが見える感じになった。
……手頃な所に、デカいネコじゃらしに付いたタベクサの葉っぱがあって、白いタベクサを抱えている。
1人取り残されたマルローネは、なんかタベクサを取ってしまったので、それを齧る。
……やたらあっさりと居なくなったもので……
……食べ終わり、サークルの広い地面を歩く。
……なんか、急に1人にされて、やたらと寂しい感じがする。
少し歩くと、小さい緑プニ的なのが遠くに見えた。
1匹だけ居る場所に、近付くように歩いて行く。
……襲い掛かって来られたら、ハダカなんで詰むんだけど……
……おそらくはマナノハシラの手の者のような気がする……
とはいえ、トンデモない弾丸タックルとか、意識と体力を奪い捕食する、謎の液体攻撃とかの噂も聞いているので、少し緊張する。
……近寄ると緑プニ的なのは、やはり緑プニで、口の無い顔をこちらに向けて、目をぱちくりさせる。
マルローネは一応構えつつ、その緑プニに近づいて行く。
すると、緑プニはぽんぽんと跳ねて後ろを向くと、ぽんぽんと進んで行く。
マルローネはそれについて行く。
サークルが広すぎて、草世界がやたらと遠い。
振り向くと、まだ近いハズのタベクサを食べた場所の草世界も、やたらと遠くなっている。
……やはり、不思議世界だ。
結構歩く。
緑プニは、ぽんぽんと進み続ける。
……少し硬い地面。
裸足に心地良い、砂の地面を歩き続ける。
……結構長く歩いて、歩いた先に髪の長い人影が見えて来た。
マルローネみたく、ボリューム満点の長い髪ではなく、細く長い髪……
緑プニは順調にぽんぽんし続け、人影に近づいて行く。
銀の髪の女の子である事が、分かって来る。
マルローネより先に行く緑プニは、銀の髪の女の子に近寄ると、すーっと色が薄くなって消えた。
「今回は驚かないんだね?」
銀の髪の女の子は、そう言うとマルローネに微笑み掛けた。
「今回は?初めて会ったんだけど……」
マルローネはそう言って、その女の子を見る。
「初めて会った時、気絶してたから、そういう認識なのかもね?青プニでお迎えした方が覚えが良かったかな?」
銀の髪の女の子は、そう話して首を傾げる。
マルローネよりも背の低い女の子は、胸も小さいしお尻も小さいし……男の子っぽくもある。
いや、女の子か……とマルローネは思う。
「青プニで居られても、ここじゃあんまり沢山の青プニが居たからなぁ……」
マルローネは、そう言って苦笑いする。
「まあ、僕もマナノハシラだからね。これからは空を飛んでマリーを小屋に送り届けるよ」
銀の女の子は、そう言うと微笑む。
「マナノハシラって女の子なの?」
マルローネは、そう尋ねる。
「この子は人間目線で綺麗みたいだったから、こういう意思疎通に使ってるだけだね。僕は……性別ってあるのかな?分からないんだよね」
銀の髪の女の子は、その女の子の声なのか、やたらと可愛い声で、そう話した。
「綺麗だったから?……その女の子はひょっとして、死んでたりするの?」
マルローネはそう尋ねる。
「残念ながら、そうだね。魂はもう消えてる命だよ」
銀の髪の女の子は、可愛い声でそう話す。
「なんか、複雑な気分だわ。ワフールみたいに、魔力で生かされてる感じなの?」
マルローネは、銀の髪の女の子の身体をぺたぺたと触る。
……張りもあるし、それほど冷たい感じでもないけれど……
「ワフールとは違うかな。こっちは魔力で操られてる感じだね」
触られても、ノーリアクションの銀の髪の女の子は、そう話す。
ワフール・ハイラム
デイドリオン
デイドリオン・アイン
デイドリオン・ツヴァイ