※この作品はR-18です。

妻が下半身を再生したら、別人のように   作:ふりーじ屋/家庭内禁書

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妻が下半身を再生したら、別人のように(前編)

 

『この子、本当にわたしの子供、なのかな』

 

妻は、そう言いながら、“彼女自身の下腹部を”撫でていました。

私がこれから名状いたしますのは、そんな荒唐無稽な話です。

 

 

 

皆さんは、テセウスの船という問題を、ご存知でしょうか。テセウスとは、古代ギリシアの英雄です。

彼はエーゲ海を乗り越え、クレタ島の怪物ミノタウロスを討ち果たし、歴史に名を残しました。

その偉業を称えるため、彼が航海に使った船が、アテネ市内に保存されていました。が、当時の船は木造。

船体は徐々に朽ちていき、市民たちは朽ちた部分を、新たな木材に置き換えていったそうです。

さて、新たな木材に置き換えられたその船と、テセウスが乗っていた船は、同じ物と言えるのでしょうか。

 

この問題は、私が少年だった頃に流行りました。ちょうど再生医療が、現場で実用化され始めたからです。

以前は、例えば足を失ったら、車椅子や義足を使わなければいけませんでした。

それが、自分の遺伝子や体格の情報を元に、失われた身体器官を再生することが可能になりました。

 

そういった背景で、先のテセウスの船のような問題を、多くの人が考えるようになりました。

もし、自分の身体が事故や病気で傷ついて、自然治癒で回復できない段階まで損なわれたら。

再生医療に頼ることで、身体の欠損を、新たな器官で補うことになったら。

その新たな器官の部分は、果たして自分自身だと言えるのでしょうか。

 

例えば手足なら、受容できる人が多いと思います。しかし、脳ならどうでしょうか。

脳を取り替えてしまえば、それは取り替える前とは別人になってしまうのでは。

私も、それがどうしても気になって、医学書や哲学書を齧(かじ)って、挫折したことがあります。

 

ただ、私が先ほど、流行って“いた”と申し上げたとおり、テセウスの船は既に廃れました。

技術的な問題で、脳の再生や移植が困難とされ、そのまま十年以上が経ったからです。

その十年以上の間に、私を含む大部分の素人は、テセウスの船を忘れていきました。

 

私が、テセウスの船について再び考えるようになったのは、妻が事故に遭った時です。

妻とは大学時代に出会いました。ツンとすました、ちょっとした高嶺の花だった妻に、私は入学早々から心を奪われ、

浮かれた気分のままアプローチを重ねました。そのまま交際を重ね、社会人になってから結婚。

事故当時は、詳しくは伏せさせていただきますが、お互い二十代後半でした。

 

話を戻しますと、やはり詳しくは明かせませんが、妻は事故によって、腰より下を全て失いました。

妻は生死の境を彷徨っていましたが、病院の方々の尽力で、命を取り留めることができました。

もちろん、しばらく入院することになりましたが。

 

妻の治療過程で、再生医療を用いて下半身を元に戻す、という話があって、私はテセウスの船を連想しました。

治療費の負担を考えてか、申し訳なさそうな顔だった妻の横で、私は少年時代の空想を思い出していたのです。

 

私の見知った人が、この治療を受けるのは初めてでした。

昔、本の中で哲学者が主張していたように、意識――を司る器官、すなわち脳――が同一であれば、

他の器官を取り替えても、妻は妻のままなのか。それとも、私の知らない彼女になってしまうのか。

そもそも、下半身を取り替えることで別人になるのなら、事故で身体が上半分だけになった彼女は、

既に事故に遭う前の妻とは別人になっているのでは――取り留めのない理屈が、頭を過ぎりました。

 

当時の妻は、身体に物々しい装置をたくさん取り付けて、失われた臓器機能を補っていました。

肉体的損傷が無いはずの上半身も、事故前に比べると、弱々しく儚げになっていました。

はっきりとした目鼻立ち――それが澄まし顔に似合っていて、私は妻と出会った頃から見惚れていました。

それが、あの時は目も当てられない程、痛々しく打ちのめされていました。

素人の私から見れば、記憶の中の妻とは、別人かと思えてしまう姿でした。

 

 

 

 

私は、それ以上の考えを押し殺しました。それこそ少年の空想と同じで、現実離れした思考だったからです。

私は治療費の工面や、妻のリハビリの助けに意識を向けることで、この考えを忘れようとしました。

 

ただ、その妄想じみた思考は、私の中に、ずっとこびりついていたようです。例えば、妻の髪の毛を見た時。

妻は地毛が黒で、それを茶色に染めて、髪型はショートボブにしていました。

それが入院生活で、髪の毛が伸びるままになり、徐々に黒く長くなっていきました。

 

以前の私は、妻が髪型を変えたのに気付けなくて、機嫌を損ねたこともある男でした。

そんな私が、一日単位の、ほんの少しずつの毛髪の変化が、どうしても心に掛かったのです。

妄想過多だ、と言われるのを承知で、正直に申し上げます。

私は、妻の髪色や髪型が変わるだけで、彼女が別人になっていく気がしていたのです。

 

その後も治療は続きました。

妻の遺伝子情報などを元に培養・再現された下半身を、上半身だけの妻に移植。

問題が無いかどうか、確認する日々が続きました。

 

経過は順調でした。移植の数日後には、妻は杖をついて歩けるようになっていました。

私も妻のリハビリに付き合って、一緒に院内を歩いて回りました。

リハビリ、と聞きますと、脳神経系の麻痺のように、うまく動かない身体に鞭打って必死に――

という悲壮なイメージが、まだ残っていますが、妻の足取りは軽快そのものでした。

再生医療によって作られ、妻に移植された下半身は、事故前の妻自身のそれを忠実に再現できたようです。

治療が順調に進んでいたため、妻も明るい表情を取り戻していきました。

 

歩行などの動作や、臓器などその他諸々についても問題が無いと判断され、妻が退院したのは、初夏の時分でした。

 

私は、妻から指定された着替えを持って、自宅から病院に向かいました。

特に念を押されたのは、綿地の白いタイトパンツ。クローゼットを何度も確認する羽目になりました。

『久しぶりの娑婆だから、お気に入りがいいの』と妻は言いました。

妻は、この下肢をぴったりと覆うボトムスに拘(こだわ)っていました。このタイトパンツの履き心地によって、

今動かしている下半身が、本当にかつての自分の物と同じか確かめようとしている――そんな気がしました。

私がそれを仄めかすと、妻は『ガラスの靴じゃあるまいし』と一笑しましたが。

 

帰り道の途中、私たちは地下鉄の駅で、エスカレーターに乗りました。

駅構内のそれは非常に長く、首を数十度も曲げなければ終点が見えないほどでした。

私は万一を考えて、妻を先に乗せ、私自身は一段空けて、妻から二段下のステップに立ちました。

妻は『そんなにあなたが気を遣うようになるなら、今度は上半身を吹っ飛ばしてみようかしら』などと軽口。

私は苦笑いを返すのが精一杯でした。

 

下のステップから妻を見上げると、入院前より、やや長めに切り揃えられた髪が目に入ります。

歩行可能になってからは、病院の理髪店にお世話になっていましたが、細かい注文はできなかったようです。

色もブラウンに染められていますが、以前より幾分明るめの色調になっていました。

 

目線を水平に戻すと、白のタイトパンツに包まれた、妻の下半身が目に止まります。

綿製の生地が、ぴったりと妻の下半身に張り付き、下着が浮き出ないか心配になるほどでした。

尻のこんもりとした盛り上がりが、タイトパンツの生地を縦に走るワンポイントを捻じ曲げています。

その歪みが、妻の持つ肉感を一層強調しています。

 

尻肉は、服越しにも見て取れる張りで、大きさ以上の存在感。

それを支える脚は、外腿を見れば尻肉に負けず劣らずの張り。一方、内腿には、むっちりと柔らかい脂肪。

妻は学生時代から水泳を続けていて、それでこの下肢を作り上げたようです。

 

この曲線美に妻が自信を持っていることを、私は独身時代から知っています。

デートの際は、このようなタイトパンツやタイトスカートなど、脚の線が露骨に出る服装ばかりを着ていました。

この、妻が女として振るう最大の武器で、私はまんまと餌食にされたのです。

その武器の威力は、こうしてエスカレーターから見上げていると、以前より増していると思われました。

 

 

 

 

妻がエスカレーターのステップの上で、軽く立ち位置をずらしました。

右足はそのままに、左足だけを一段下――私が空けておいたステップです――に下ろしました。

 

妻は右足を一歩前、一段上に出した姿勢で、私に下半身の曲線を見せつけてきます。

元々タイトだったパンツの生地は、姿勢の変化でパンパンに膨れています。

尻肉と腿の境目が、生地が寄せられてできた皺で、くっきりと描かれています。

いや、互いに押し合う尻と腿の膨らみが為す陰影は、もう谷間と言っていいでしょう。

この有り様では、完全に下着の線が浮き出てしまっています。妻が気づいていないはずがありません。

 

私は、ここが地下鉄のエスカレーターであるのに、勃起が収まらなくなってしまいました。

思えば、もう数ヶ月の間、性生活はご無沙汰でした。妻の下半身が“無かった”のですから、仕方がありません。

その状況の私が、妻のこんなセックスアピールを受ければ、たちまちに反応してしまいます。

 

妻がまた足を動かしました。もうエスカレーターの終点が近いようです。

私は勃起のため足取りがぎこちなく、ステップに押し出されるように、終点のフロアに立ちました。

 

『あなた、視線が露骨よ。独身の時を思い出すわね。ええ、あの頃もコレに釘付けだったでしょう。

 わたしがこういう服着てると、いつもそうだった。ちょろ過ぎて、心配になったぐらい』

 

追い付いてきた私に、妻は呆れ声で囁いてきました。

どうやら妻も、私の視線のせいか、結婚前の付き合いを思い出したようです。

とは言え、面と向かって指摘されると、私も羞恥心が湧いてきます。

もう公衆の面前で、じろじろ見ることはできません。

 

しかし私は、妻の足音ひとつひとつを聞く度に、あの下肢がどう曲げられ、伸ばされ、形を変えているのか、

思い浮かべることができてしまいます。自宅までの残りの道程は、気が気でありませんでした。

地下鉄では、同乗者の男の視線が、全て私の妻に向いているような気がして――

女房ならぬ、亭主の妬くほど、ということです。お笑い下さい――男たちの視線を遮るため、

妻を出入口ドア脇のスペースに誘導し、私が妻の姿を隠せる位置に立ち続けました。

地下鉄から地上に出ても、初夏の日差しを避けつつ、歩道の端寄りを、妻の手を引いて歩きました。

妻はいつになくしおらしい様子で、言葉少なに私に従っていました。

 

自宅の扉を開けてからしばらくのことは、よく覚えていません。

荷物の整理など、やるべき作業をやったはずですが、その後の印象が強く、記憶が霞んでいます。

 

妻は、キッチンで腰を屈めていました。冷蔵庫の一番下の、冷凍スペースの中を見ていたようです。

腰の屈め方は深く、水泳選手が飛び込み台からスタートする直前の姿に似ていました。

タイトパンツでそんな体勢をとってしまえば、もう何をか言わんや。

 

私は妻の背後から、ピンと張られたタイトパンツの曲線に触れました。

まだ、布の下の感触を味わうとまではいかない、ほんの軽いタッチ。

 

『ちょっと、病み上がりなんだから、もっと労ってよ』

 

私は、妻を背中側から抱き寄せました。

上体を起こさせ、ブラウンのショートボブに顔を埋めると、妻の汗の匂いがしました。

妻はブラウスに包まれた両肩を捩りました。

 

『ねぇ、シャワーぐらい、浴びさせてよ――はぁ、待ち切れないって、そんなの――もう。

 分かってたけど、エスカレーターの時から、か。煽っちゃったもんね』

 

 

 

 

私は、妻を寝室のベッドに押し倒しました。

退院に合わせて、前日に干しておいたベッドは、初夏の陽気を吸って膨らんでいました。

そのベッドも、倒れ込んできた妻の衝撃で、気の抜けた音を立ててしぼみました。

 

私は妻を四つん這いにさせ、彼女お気に入りのタイトパンツを引き下ろしました。

現れた下着は、タイトパンツに合わせた白。予想通りです。

これがもし、濃い色であったなら、脱がせるまでもなく、透けて色が分かってしまったでしょう。

 

『あ、イヤよ。そんな、嗅ぐ、なんて』

 

私は、妻の尻を両手で挟み、籠っている汗の匂いを、下着越しに堪能しました。

妻は尻肉を強張らせます。膨らみは張りに富んでいて、

肌を通して感じられる弾力が、私の顔や手を強く押し返してきます。

 

そこで、私は異変に気づきます。妻の匂い。汗に混じって広がる、覚えのある匂い。

私は、妻の下着越しに、彼女の秘部に指で触れました。

 

『あ、あっ――』

 

私は驚きのあまり、心臓の数拍分か、硬直していたと思います。

とにかく、反応が出ませんでした。妻の下着は、指先だけでそれと分かるほど、愛液で湿っていました。

妻は、今まで私が聞いたことのないほど、か細い声を漏らしました。

 

女性の性欲について、私は詳しくありませんが、妻は私に比べれば、性的に淡白でした。

今まで、こんな愛撫無しの時から、下着の色が変わるほど愛液を染み付かせていたことなど、覚えがありません。

私は、何かがおかしいと思いながら、一方、妻の強烈な痴態に興奮していました。

 

四つん這いで、尻を天井に向けて突き出したままの妻。

私はエスカレーター以来、ずっと頭から離れなかった丸尻に指をかけました。

 

『ずっと、舐めるように見てて、そんなに、コレが触りたかったの』

 

妻の尻肉は、まだ反発が強く、凝った筋肉を解すように、私は指を蠢かせました。

見た目は熟れた果実なのに、中身は外面に反して、青さと堅さが残っています。水泳のせいでしょうか。

強情な妻の尻肉をもっと味わうべく、私は尻の曲線に指を食い込ませながら、天井に向けられた尻の頂きに口付けました。

そこから上へ下へ、どろりと湿った舌の感触で、肌を犯してやります。

タイトパンツに抑え付けられていた汗の塩辛さを感じ、続いて鳥肌を立たせて、肌の引っ掛かりを味蕾で味わいました。

あのパンパンに張った様を誇示するような、強気な尻丘。その布一枚裏にある生々しさを、私はしゃぶり尽くします。

 

尻肉が解れてきたと見た私は、顔を妻の肌から離しました。

そして妻の足側で、後ろから手を突っ込んで、妻の股間周辺を弄びました。

乱暴だったのか、そうでなかったのか、それさえ曖昧なほど、私は無我夢中でした。

ただ、妻の愛液を、秘部から、鼠径部、下腹、会陰などに塗り拡げるのが、無性に愉しく、

妻の下着が、べっとりと使い物にならなくなるまで、玩弄を繰り返していたと思います。

また、愛撫が利く度に、私の手が妻の内腿に挟まれるのも痛快です。

力みと柔らかさの混じった圧迫が、私を有頂天まで押し上げていきます。

 

『何、あなたってば、んっ、あっ、童貞、みたいに、がっつい、てっ、くっ、んんっ』

 

私が秘部に触れる度に、抑えきれない反射が妻の下肢を駆け巡り、女肉が緊張と弛緩の間を揺れています。

薄暗いままの寝室で、妻の肌と下着が織り成す陰影が、私の手でぐらぐらと右往左往しています。

私はそれに愛液を上塗りしていったわけです。てらてらとしたぬめりが広がり、女の匂いが立ってきます。

 

最初のうちは、妻も何か声を上げたり、尻を振って私の手から逃れようとしていました。

ただ、この頃には静かになって、ベッドのシーツに突っ伏して、声を殺すだけになっていました。

 

 

 

 

私は壊れかけの理性を総動員して、妻のタイトパンツと下着を脱がせました。

妻のお気に入りですから、汚したり傷めてしまってはいけません。

もっとも、妻は私にさんざん下肢を嬲られ、下肢を捩っていたので、着衣はただの白いしがらみと化していました。

 

妻はベッドで、人の字で仰向けになっています。

夏物のブラウスは汗にまみれたまま、タイトパンツを剥ぎ取られた下半身だけが素肌を晒しています。

私はズボンだけをくつろげ、ベッドに膝立ちになって、妻の身体を見下ろしています。

妻とは都合数年、身体を重ねてきましたが、こんな中途半端な格好で挿入したことはありません。

 

『ね、ねぇ、あなた、その』

 

話しかけてきた妻の声は、こちらの出方を窺う色をしていました。

私は、妻の所作に征服欲をそそられると同時に、違和感を覚えていました。

一方的に身体を蹂躙される、こんな情事を、本当にあの妻が受け入れているのでしょうか。

かつて私も性欲に負けて、強引に妻を貪ったことはありますが、その後しばらくは口も聞いてもらえませんでした。

 

『あなた、何か、何か言って。黙り込まないでちょうだい』

 

なのに、今の妻は、私の野放図な行為を身に受けながら、おどおどとこちらを見上げています。

私は軽い混乱に陥りました。私は、妻がそこにいることを確かめたくなって、

ベッドにくっついていた妻の背中に手を回して、妻の上半身を引き起こしました。

 

妻の顔が、私の顔と拳一つ分くらいまで近づいています。

表情が弱々しく、それが、事故直後の妻の様子を思い起こさせて、目を背けたくなった私は、

自分の視線を誤魔化すために目を閉じて、その勢いで妻にキスしました。

 

『さっき、お尻をさんざん舐め回したくちびるで、そういうことするなんて。いやね』

 

くちびるを離してすぐに、妻はうつむき気味の顔のままぼやきました。

およそ数ヶ月ぶりのキスがこれでは、妻も立腹でしょう。

ただ、されるがままだった妻が、ほんの少しでも文句をつけてきたことに、私は安堵していました。

 

『優しく、してよ。久しぶりなんだから』

 

妻は再びベッドに横たわり、M字型に開脚しています。脛や膝側の線は、つるりと伸びやかで、

内側はそれと対照的に、脹脛と腿の肉が畳み込まれ、弾ける程の肉感を主張しています。

私が妻の肌に塗りつけた唾液や愛液は、もう薄れていましたが、それが却って、潤んだままの秘部を際立たせています。

 

私の意識が欲望と不安に取り巻かれているのをよそに、私の男根は勃起したままでした。

それどころか、ここ数ヶ月自慰でしか射精していなかったそれは、

今日いきなり妻の色香に中てられて、普段よりも大きくなっていました。

これでは長く持たない、と思った私は、男根を妻の秘部に宛がうと、呼吸を整えながら、慎重に挿入しようとしました。

 

『ん、あっ、あなた、もうちょっと、だから、奥、奥、にっ』

 

“しようとした”と申し上げたのは、私が亀頭を押し込んだ程度で、挿入を止めてしまったからです。

妻の秘肉は、およそ今までに経験がないほど、強く男根を圧してきています。痛みさえ感じるほどです。

妻の方も、細く整えた眉根を歪ませ、痛みに耐えている素振りでした。

まさか、移植した下半身に何か異常が――と、私が動揺かけた時、妻が声をかけてきます。

 

『ほら、残ってるのよ。コレには、わたしの、処女が』

 

 

 

 

私が、妻の言葉を飲み込むのに、たっぷり十秒はかかりました。

私が初めて妻を抱いた時は、妻の方が経験が豊富だったので、半ばリードされて思いを果たしました。

私は妻の処女を知りません。が、この締め付けの強さ。堅さ。痛み。妻の反応。

未通と言われれば、納得がいきます。

 

『こんな形は、考えもしなかったけど、改めて、あなたに』

 

どうやら、再生された妻の下半身には、処女膜が残っていたようです。

確かに、その女性が経験済みかどうかが、遺伝子情報に反映されるわけがありません。

再生した下半身に、処女膜が残っていても、病院がわざわざ破る理由がありません。

 

私は逡巡しました。妻の秘肉を、ゆっくりと拓いていくべきか、一思いに突き進むべきか。

処女を抱いた経験はありません。加えて、妻の処女はこの通り特殊な代物です。

 

『あなた、いいから、お願い。前みたいに、して』

 

前、というのは、事故前の情事のようです。

この、私の男根の侵入に、悲鳴を上げんばかりに広げられた秘口を、前のように、

勝手知ったる女にするよう行き来しろと、そういうことでしょうか。

 

私は痛みを黙殺して、妻の秘肉に踏み入りました。妻は脂汗を浮かべながら呻いています。

私の男根でさえ、締め付けで痛みを感じるほどです。妻の秘部に突き刺さる痛みは、さぞ鋭いものでしょう。

私は、男根を秘肉の奥まで沈めると、そのまま動きを止めました。ぜえぜえと荒い息をついている妻。

妻の肩を擦ったり、手を握ったりして、呼吸が整うのを待ちました。

 

『何よ、あなた、そんな、気障ったらしいこと、してなかったでしょう。

 わたしが、こんなだからって、ええ格好しい、しちゃって』

 

妻は私に笑ってみせました。口元だけの笑みでした。

普段は、きりりと鋭角的な線を描いているまなじりも、この時ばかりは痛みで揺らいでいます。

ああ、これが処女なんだな、と私は心中で呟いていました。

私が腰を動かさないままだった理由は、妻の身体を気遣ったというのもありましたが、

妻の処女喪失を脳裏に焼き付けるのに集中したい、という私情も含まれていました。

驚きで一旦脇に退いていた征服欲が、ぐんぐんと満たされていきました。

 

私が悦に入ったままでいると、不意に妻が両脚を動かしました。

挿入前にM字に開いていた脚を、私の腰に巻きつけて、下肢をもぞもぞと動かしています。

痛まないのか、と私が間抜けな問いを投げると、妻は私の首にしがみついて、吐息と動作だけで抽送を促してきます。

妻の頭が近づいてきた拍子に、明るいブラウンの髪から、汗とトリートメントの混淆が鼻に押し寄せてきます。

妻をここまで近くに感じたのは、本当にいつ以来でしょうか。

 

秘肉の感触から察するに、妻は未だ痛みに苛まれているはずです。

ですが、妻は私の腰にがっちりと両脚を組んで、男根に侵された内奥ごと、尻肉を頻りに揺らします。

妻の動きはぎこちなく散発的で、このまま抽送に臨むには、もったいないという気もしました。

が、エスカレーターからずっと焦れていた私の男根は、その刺激に反応し、妻の秘肉を食い荒らそうと藻掻きます。

私はその衝動に引き摺られ、限界がそう遠くないと悟りつつ、男根を打ち付けます。

 

 

 

 

私が、出そうだ、と囁くと、妻は脚だけでなく腕も私の身体に回してきました。

宣言から数拍と持たず、射精。妻は、男根の動きで、射精を察したようでした。

 

『ん、んううぅ、だ、して。出してっ、ここに、出してっ』

 

呻き混じりで、発音は覚束なかったものの、私は妻の言葉を、そう聞き取りました。

私の男根は、脈拍と重なるように、数回に分けて吐精を続けました――が、射精が止まっても、堅さが保たれたまま。

数ヶ月も女を絶たれていた私の男根は、一回の射精で収まりませんでした。

 

抽送を再開します。私の男根が、妻の秘部を出入りする音が、厚ぼったく、粘着質に変わっていました。

私が妻の中に放った精液が、妻の内壁で擦れて延ばされているようです。

その映像を脳裏に思い描くと、射精で収まりかけた征服欲が、再び噴き出しました。

さっきまで処女膜に閉ざされていた、妻の秘肉。さらに、子宮口や子宮。つまり女性器の隅々に、

今一度私の男根と精液を刷り込んで、妻の奥深くに残しておきたい――浅ましく甘美な願望が、私の意識を走り回ります。

 

『ん、くうっ、ひ、ひっ! くあっ、ひあぁっ!』

 

私は、抽送の前後方向の動きを一旦止め、左右の動きを重点に考えつつ、腰で「の」の字を描きます。

妻は、顔には苦悶を浮かべ、喉から掠れ気味の悲鳴を漏らしています。辛かったはずです。

後で風呂に入った時、私は自分の背中に、夥しいミミズ腫れがあるのに気づきました。

しかし、皮膚が削れるほど妻に引っ掻かれても、征服欲に酔った私は、その痛みを感じていません。

 

精液を刷り込もうと思って、妻の秘肉を行き来したのは、これが初めてでした。

妻の女性器全てに、満遍なく触れておかねば、という欲望に従って、

私は拓かれたばかりの妻の膣内を、襞の一筋一筋を確かめながら、丹念に味わっていました。

 

『あ、ひあっ、あ、ああっ、そ、それっ、んああっ!』

 

腰を密着させながら左右に擦ると、妻と私の陰毛がもみくちゃになります。

肌越しに恥骨の堅さがぶつかり、下肢に響き――それらの刺激に、妻の陰核が引きずり回されています。

指先ほどもない快楽器官を、私は妻の反応を頼りに、執拗に付け狙いました。

腰を押し付け、体重をかけて圧迫したり、腰を細かく動かして、摩擦を加えたりしました。

妻は私の攻撃に対し、腹を絞りだすような嗚咽で応えてきました。

 

妻の陰核を、ここまで乱暴に嬲ったのも初めてでした。

繊細な場所ですから、愛撫でちょっとでも力を入れ過ぎると、文句を言われてしまうのが常でした。

 

『いひ、イいっ、ひっ――あ、アっ、んアああっ』

 

妻の声が、徐々に追い詰められてきました。仰向けの妻の腰が、ぐっと盛り上がっています。

背中から尻にかけての曲線は、緊張感を孕んで、さぞ美しい曲線を描いているでしょう。

妻に正面から抱きつかれている私には、それを目で見ることはできません。

それならば、と私は腕を動かし、妻の素晴らしく引き絞られた腰に手を回しました。

妻の尻肉は、同じく興奮していたはずの私の手よりも、遥かに熱く燃えていました。

その感触を、指を広げ、掌を押し付け――尻肉への狼藉に、妻は秘肉までもが慄き立っています。

 

あっちこっちからの刺激で、抽送がズレてしまったのか、

私と妻の結合部からは、ぶっちゃべっちゃと、だらしない水音が響くようになっていました。

以前の妻ならば、こんな恥ずかしい不手際をしたら、怒って行為を取りやめてしまったかも知れません。

が、もう妻は羞恥心まで意識が回っていないようでした。

 

 

 

 

私は、妻の下肢が緊張したのを感じ、同時に一際高い声が寝室にばらまかれました。

妻が絶頂を迎えたのでしょうか。そう思うと、私の欲望も解放され、今日何度目かの射精を遂げました。

男根がようやく打ち止めになったと見て、私は妻の秘肉からそれを引き抜きました。

 

妻の秘部は、秘口はもちろん、陰核、陰毛に至るまで、白濁液に染まっていました。

私の精液か、妻の愛液か、それらの混合物か、にわかには判断できません。

処女血の赤さは流れ落ちてしまったのか、妻の秘部には見えず、かろうじてシーツに痕跡を残しています。

 

私の性欲を呼び覚ました妻の両脚は、ベッドの上で幼児のように無造作に投げ出されています。

私の腰に巻き付いていた名残でしょうか。両方の膝関節は、ほんの僅かに曲げられています。

あの、曲線美を誇りにしていた妻が、それをこんな不格好な佇まいで私に曝け出していることに、

私は非現実的な趣を感じていました。喪失感とも達成感とも呼べそうな趣は、ともかく心地よいものでした。

 

妻のこの姿態を目で見た私は、今更になって、妻の身体に精液を注ぎ込んだ実感が湧いてきました。

妻は、子宮や卵巣も再生医療で治しています。生殖機能も問題無いと聞いていますが。

 

『ねぇ、あなた、どうだったかしら』

 

妻の声はか細く、しかも混濁していました。

くちびるの微かな動きと合わせなければ、何を言ってるのか推測できませんでした。

妻の意識が戻っていると気づいた私は、秘肉を痛めつけた行為を詫びました。

いくら処女との経験が無かった私でも、妻に相当な負担を強いたことは理解していました。

 

『あなた。わたしの、どうだったの』

 

妻は私の謝罪を無視して、さっきとほぼ同じ言葉を零しました。私は妻の視線を見つめ返しました。

“わたしの”とは、どこからどこまで――処女膜のあった秘肉か、秘肉を含む妻の肉体全般か、

妻の肉体全般を含む彼女との情交か――を指しているのでしょうか。私の思考は、疲労と充足で鈍っていました。

すごく良かった――などと、一片の衒いも無い感想が、口から滑り落ちていました。

 

妻が、あの時どんな返答を求めていたのか、私が知るのはもう少し後でした。

手遅れだったのかどうかは、今の私には、まだ分かりません。

 

妻が退院して初めてのセックスは、こうして私の記憶に深く刻まれました。

この日以降の妻は、病院で移植後の定期検査を受ける以外は、事故前と大差ない生活へ復帰していました。

 

違いを挙げるとすれば、妻がセックスに積極的になったことです。

前に申し上げたとおり、私に比べると、妻は性的に淡白でした。私が誘いを断られることも、珍しくありませんでした。

逆に、妻から誘いを受けることは、ほぼありませんでした。妻からすれば『させてあげている』という意識でしょうか。

妻は、表には出しませんでしたが。私は不満を抱いていましたが、自分ひとりの胸にしまい込んでいました。

 

それが、あの処女を奪った日以来、妻から誘いをかけてくる夜が来るようになりました。

私が誘えば、日常では澄ましたままの妻の雰囲気が、たちまちに科を見せてきます。

あまりに食いつきが良くて、以前の素っ気ない態度が、懐かしく思えるぐらいでした。我ながら天邪鬼です。

妻の媚態はストレートでした。風呂あがりのバスタオルを緩く巻くなど婉曲な方で、

私に身体を擦りつけて甘えてくるのです。もっとも感触を味わったのは、やはり脚。

これでやられると、私の嗜好的にも、物理的にも、引き離すのが難しいのです。

 

こういった妻の変化が、急激であったり、程度が甚だしければ、私も危機感を持ったでしょう。

ですが、この変化は、まるで私の目を窺うかのごとく、徐々に現れてきました。

行為の回数も、私が応えられる範囲でした。妻に男として求められ、私はすっかり浮かれていました。

妻の誘惑が――学生時代からの高嶺の花扱いのせいか――どこかぎこちなく、可愛らしいとさえ思っていました。

 

つまり、性生活の満足度が上がっていたので、私は妻の変化を看過していたのです。

妻の入院中は、わずかな毛髪の変化に心を乱していたのですが。私は天邪鬼な上に現金でした。

 

 

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