「ただいまー。」
「自分の部屋なのに『ただいま』っていうのは相変わらずだね。」
「えへへ、本当に習慣になってまして..」
「それじゃ、お邪魔します。」
二人は丸テーブルに隣り合うように座ると、お菓子と飲み物を取り出してテーブルに並べた。
「それじゃ、今日はお疲れ様。」
「今日はありがとうございました、お疲れ様です。」
「俺の運転怖くなかった? 大丈夫だった?」
「全然大丈夫でしたよ、木村さんの運転。安心感ありましたし。」
「あははは、ありがとう。高瀬さんを怖がらせちゃったらどうしようかと心配で。」
「本当に、全然怖くなかったです。」「なんか、私も免許取って、車の運転してみたくなりました。」
「そうだね、俺も車なんて単なる移動の手段だと思っていたけど、高瀬さんと一緒にあれこれ話をしながらドライブできたのは凄く楽しかったよ。ありがとう。」
木村はそう言うと
「じゃ、今日はお疲れ様ということで乾杯」
「かんぱーい。」
「ごめんね、今日は俺だけビールで。」
「いいんですよ、私は未成年ですし毎回お酒ってわけにも行きませんし。」「でも、木村さんは今日はお疲れ様ってことで...」
「うん、それじゃ遠慮なく....」
そう言って木村は美味しそうにビールを飲み始めた。
「じゃ、私もいただきます...」
木村の後を追うように、高瀬さやかもアップルジュースを飲み始めた。
「ところで木村さん、さっき滝を見ながらマイナスイオンを浴びた、って話してましたよね。」
「ああ、華厳の滝でね。マイナスイオンを浴びて癒やされたよ。」
「マイナスイオンって、疑似科学の類だって話ですよ。」
「ええっ?! それは知らなかったな、どういうこと?」
「え? 木村さんでも知らないことってあるんですね。」
「そりゃ俺なんかただの大学院生にすぎないんだから知らないことだらけだよ。」「ま、バイトでは年長ってこともあって色々偉そうにしてるけど。」「で、マイナスイオンが疑似科学って、どいういうこと?」
「あ、はい。まず、マイナスイオンという言葉自体が造語みたいなもので、科学用語ではネガティヴイオンというそうです。また、滝のそばでは負の電荷を帯びたイオンが多いらしいことは分かっているのですが、それと健康との関係については科学的な証明がなされていないそうです。」
「ふーむ、なるほどね。まあ、マイナスイオンって言葉を振り回すのはカッコ悪そうだね。」「ありがとう、今後は気をつけるよ。」「ところで...」
「あっ、はい。」
木村が語りを始める前触れを察知した高瀬さやかはここで身構えつつ、期待していた。
「疑似科学ってなんだと思う? いや、高瀬さんは、科学的な証明がなされていないものは全部間違っているって思う?」
「そうですね、科学的であるかないかに関わらず、証明がなされていないってだけで正しいものもあると思います。そういうものの中には将来的に証明されるものもあるでしょうし。」
「そうだね、それじゃ、科学的に証明されるってどういうことだと思う?」
「科学的に証明...ですか。科学的な方法で証明、つまり実験などによって証明するということだと思うんですが...」
「それだと実験ができない分野は科学じゃないってことになるけど、どう思う?」
「それはそうなんじゃないですか? 実際に確かめられないものは科学では扱えないんじゃ...」
「それじゃあ星の一生はどうなのかな?」
「それは、宇宙にある若い星、年老いた星、と色々調べることである程度予測はつくんじゃないでしょうか?」
「でも、予測は着くけど証明はできないでしょ。ある程度重い星は最後にブラックホールになるって話も、理論的にそのように導かれたし、実際にブラックホールらしきものも見つかってる。でも実際にその瞬間を見た人はいないよね。ただ、そう考えると辻褄が合うってだけで科学的な定説になってるけど、それだって本当にそうなのかは今のところ確認のしようがない。」「更にいうと、ビッグバンで宇宙が始まったって話も、我々人類にとっては1回きりの出来事で、しかも証明のしようがないほど大昔の話で、もし次のビッグバンがあるとすればそれは我々が滅びた後か、あるいは我々とは全く関係ない別の宇宙か...実験どころか観測も原理的に不可能だよね。でも今ではビッグバンによる宇宙開闢は定説になってる。」
「確かに確認のしようはありませんが、それでは現在の宇宙論は科学ではないということになるんでしょうか?」
「そうだね、科学的に証明可能な、例えば現在構築されている物理学などの知見からの洞察と、観測から得られる僅かな情報を元に組み立てた理論だからね。俺に言わせると、科学というよりはSFに近いと思ってる。」
「えっ、SFですか?」
「そう、科学を背景にしつつもちょっと嘘をいれて話を膨らませたものがSFとするならば、科学を背景にちょっと新しい事実を入れて話を膨らませたものが宇宙論。調味料がちょっと違うだけの同じ料理だって思ってるのね。」
「えーっ、それはちょっと乱暴じゃないですか?」
「うん、これは俺がそう思ってるってだけだからね。でも、SFと宇宙論って、カレーとシチューくらいの違いしかないと思ってるよ。」
「あはははは、カレーとシチューって...」
「でも、途中まで作り方一緒でしょ...実は作ったことないけど。」
「あははは、私も作ったことないです。今度作って比べてみようかな?」「それで、木村さんは宇宙論が科学じゃないって思ってるんですか?」
「いや、宇宙論は立派な科学だと思ってるよ。でも、科学の定義に「検証可能である」ことを含めると、宇宙論はそこから外れるよねって。」
「あー、つまり科学の定義がそこじゃないってことですか。だとするとどうなるんです?」
「科学的な方法を厳密に定義しようとすると結構な大問題で、今でも議論がなされているようだから、正解はないよ。」「さっき、SFと宇宙論はカレーとシチューくらいの差しかないって言ったよね。てことは、カレーとシチューくらいの差はあるわけだよね。」「で、俺はそのカレールーとシチューのルーの違いってのは、嘘への志向と事実への志向の差じゃないかって思うわけ。」
「大分精神論めいた言い方になりましたね。」
「うん、そうだね。でも、結局はその程度の差と言っていいんじゃないかと俺は思ってるよ。」「とまあ、いかにもそれっぽい言い方したけど、結局は俺の屁理屈だけどな。」
「はははは、でも面白かったですよ屁理屈。木村さんとこういう話をするのは久しぶりだったので楽しかったです。」
「いやぁ、今日は遠出した後でこんな話を長々と聞いて疲れたでしょ。」「でも楽しんでもらえたのなら何より、俺もこうやってダラダラ喋ってるの楽しいよ。」
「私は助手席で座ってただけなんで、木村さんこそ今日は疲れたんじゃないですか? それなのに私ばっかり楽しくて...」
高瀬さやかはそう言いかけて下を向き、言葉を続けることなく今度は木村の顔を見た。その表情に何かを感じとった木村は、そのまま高瀬さやかに口づけをした。
先週とは違い、今回はドライブの後そのまま解散はあり得ないと木村は考えていた。そのため、高瀬さやかの部屋に泊まることになるだろうことはある程度想定していた。高瀬さやかにしても、ドライブの後一緒に食事をするまでは既定路線で、二次会的に自分の部屋で話をしながら、とも考えており、その流れでもしかしたらという思いはあった。そして、二人共それが何を意味するかは理解していた。
「んっ! んんっ んっんっ...はぁはぁはぁ...」
木村から一度離れた高瀬さやかは口から糸を引きながら
「私、話の途中だったのに....」
「ゴメン、高瀬さんが可愛くてつい...」「話の続き...する?」
「いえ...いいです。」
そう言うと、今度は高瀬さやかの方からキスの続きとばかりに木村に抱きついた。木村は無言のまま彼女を受け入れた。
木村は、高瀬さやかの肩に乗せた両手を背中に回し、彼女の体を自分の体に密着させるかのように強く抱きしめた。高瀬さやかの体の凹凸を、体温を、その他全てを全身で感じたい。木村の舌は、それまで以上執拗に高瀬さやかの口内を徘徊し、彼女の舌にまとわりついた。
「んん゛っ! んっんっ」
木村の体に密着した高瀬さやかも興奮状態にあった、木村の体、手、腕、脚、足、彼女の体に接している全ての表面からの刺激が心地よかった。そして、今度は高瀬さやかが、木村の背中に回した腕で木村の体を自分に押し付けた。
「んんっ はぁっ はぁっ きっ木村さんの手...気持ちいい...です。」
木村の舌から逃れた高瀬さやかの口から出た言葉は彼をより興奮させる。木村の両手は、高瀬さやかの背中を徘徊し、そして腰、尻へと移動する。木村の手には、高瀬さやかの体温と肉の柔らかさ、そして薄っすらと湿り気が感じられた。
「んんっ んあっ! あン! あっ!」
高瀬さやかの吐息が、徐々に声を含んでくる。
しかし、高瀬さやかは一度動きを止め木村の顔をじっと見つめた。一瞬木村の顔がこわばる。だが、その表情を見て取った高瀬さやかは一瞬ほほえみ、そしてすぐに恥ずかしげな顔をしてこういった。
「あの...今日一日汗をかいていて恥ずかしい...ので...シャワー浴びて来ていいですか?」「その...木村さんも...シャワーを...」
木村はこの提案に驚いたが、どうとも取れるこの提案にどう応えたものか判断に迷った。
「じゃあ、高瀬さんが先でいいかな?」
一瞬がっかりしたような表情をした高瀬さやかだが、すぐに笑顔で
「いえ、それなら木村さんが先でお願いします...」
何か含みのある高瀬さやかの表情が気になる木村だったが、彼女の提案通り先にシャワーを浴びる事にした。
...
シャァァーッ
シャワーを浴びながら木村は自分の心臓の振動を自覚していた。十中八九今晩、人生で初めての体験をむかえることになる。だが...。
木村は中学時代のトラウマから、自分の体にコンプレックスを持っていた。そのため、高瀬さやかの前で自分の裸を晒すことにいささかのためらいがあった。
ギィィーッ
シャワーで汗を流していると、木村の背後で浴室のドアが開く音がする。ギョッとして後ろを向くと、そこにはバスタオルをまとった高瀬さやかが立っていた。
「あの...背中流しましょうか...それと...」
そう言いかけた高瀬さやかは、首だけ自分の方を向いている木村の体を見て一瞬目を見開いた。普通この角度からでは見えるはずのないものが脈打ちながら膨張している。
「それと、二人一緒に汗を流してしまえば効率いいですし...」
そう言って、石鹸で泡立てたスポンジを手に取って木村の背中をこすり始めた。
「いや、ちょっと...」
そう言いながらも高瀬さやかに背中をこすられるのは悪い気はしない。ただ、他人に触られることに慣れていないので、高瀬さやかの手の感覚がこそばゆい。
「後ろは洗い終わりました、それじゃあ...」
そう言って、高瀬さやかはそのまま背後から木村の正面を洗おうとスポンジを彼の胸のあたりに押し当てようとしたとき、
「ちょっと待って、正面は自分で洗えるから...」
思わず高瀬さやかの手を握って、彼女の方を振り返った。
(しまった...)
「っ!!」
木村には、高瀬さやかが、一瞬驚いたような表情を見せて自分から目をそらしたように見えた。今の木村にとって、一番見られたくなかったものをよりによって高瀬さやかに見られてしまった。彼女との関係を考えれば、いずれはそうなることは覚悟していたものの、それは今ではないと思っていたし、もっと暗い場所で、と考えていた。
(高瀬さん...引いたかな...)
木村のコンプレックスは、彼の男根のサイズにあった。彼は小学校の高学年から身長が伸び始め、それとともに身体の成熟も同年代の男子より早かった。中学生に上がると、彼の身長以上に男根の成長が著しく、プールの着替えのときにクラスメートからそれを指摘されからかわれることになった。いつしか、彼のサイズについてはクラス中の男子の間でからかいのネタにされ、女子にもその話が伝わることになった。それ以来、何かにつけ男子からはからかわれ、女子からは不潔がられることになった彼は、人前で裸になることをひどく嫌がるようになっていた。
高校生になると、他の男子生徒の身体的な成長もあり、そういったことは皆無だったが、それでも木村は他の生徒の前で自分の体を晒すことを極端に嫌がった。無論、彼は頭では分かっている、だが中学時代の体験に端を発したコンプレックスをこじらせた結果、今に至るまでそれは続いている。
「じゃ、じゃあ、私は自分の体を洗い始めるので...その...背中を洗っていただけますか?」
そう言って、木村にスポンジを渡し、背を向けたかと思う間もなくバスタオルを手に持ち替えて体を洗い始めた。木村にとっては、自分の母親以外で初めて間近に見た女性の裸姿である、心臓の音が高鳴るのを彼女に気取られないか心配にながらも、彼女の背中を洗い始めた。
(とりあえず、避けられてはいないようだ)
木村は、高瀬さやかに対しても一抹の不安を感じながら、それでもあからさまに毛嫌う様子を見せなかった彼女に対して少しホッとする気持ちもあった。一方で、目の前にいる裸の高瀬さやかに対して木村の男根は既に臨戦態勢にあった。
...
この5分くらい前、風呂場に入っていった木村の後ろ姿を目で追いながら高瀬さやかは考えていた。このまま木村がシャワーを浴びて戻ってくるのを待つのではなく、一緒に風呂場に行ってしまおうか、と。
高瀬さやかは、大場に初めてを奪われた後、彼に体を許す関係になり彼女自身も快感を得ていたこと、これら一連の事柄に対してある程度気持ちの整理は出来ているつもりだった。しかし、風呂場では初めての時を含む大場との行為の記憶が、ベッドの上では執拗に行われた大場との行為の記憶がふとした瞬間に蘇ることがあり、高瀬さやかは消すことのできないそれを木村との体験により上書きしたいと考えていた。しかし、木村の性格上、待っているだけでそれがなされるとは思えなかった。
(あのときの大場さんみたいに...)
風呂場にいる木村の後を追って風呂場に入ってしまえばなし崩し的に、そう考える一方で心配事もあった。
(でも、そういう女子って木村さんにはどう思われるんだろう?)
だが、着衣のままとはいえさっきまで抱き合っていたときのことを思えば、風呂場に入って行ったとしても木村に拒絶されるようなことはないだろう。結局、高瀬さやかは自分の中に「背中を流す」的な名目を設定し、バスタオルを体に巻いて木村のいる浴室に入っていくことに決めた。
...
高瀬さやかの背中をスポンジでこすりながら、木村はこの場における「正解」を探していた。元々慎重な木村だったが、体が既に反応している以上そこにコンプレックスを持つ彼にとっては更に慎重にならざるを得なかった。
「ひゃうっ!」
突然、高瀬さやかが奇妙な声を上げた。
「木村さん、そこ、くすぐったいです。」
「正解」を探しだすことに意識の大半を使っていた木村は、目前のミッションに対する注意力が散漫になっていた。背中を一通り洗い終えた彼は、次に高瀬さやかの肩まわりを洗い始め、脇の下に手を入れたのだった。
「あ、ゴメン。ここは自分でも洗えるところだったね。」
「いえ、大丈夫です。その、背中じゃなくても...。」
「そうか...じゃあ...」
このちょっとしたやり取りの中で木村はちょっとした気付きを得ていた。ぼんやりしていてスポンジを高瀬さやかの脇の下に手を入れてしまったのは、明らかに「正解」ではないが、にも関わらず高瀬さやかに拒絶されるほどの「不正解」でもなかった。つまり最初から「正解」を探すから難しいのであって、実際には「正解」とは言えないが「不正解でない」ことが沢山ある。正解でないときは、高瀬さやかが教えてくれる、そう考えると少し気が楽になった。
その後の木村は、高瀬さやかの反応を見ながら「正解ではないが不正解でもない」行動を探すかのようにスポンジを握る手を動かした。木村は、そこで、少しずつ答え合わせをするかのように、時に慎重に、時に大胆に、高瀬さやかの反応を感じ取りながら手を動かした。
....
(さっきまで、木村さん...ずっと遠慮しているみたいだったけど...)
高瀬さやかにしてみれば、風呂場で男女が洗いっこしているときに木村の脳内で理性と衝動が屁理屈で戦っているとは思いもよらず、彼の行動が遠慮によるものなのか、あるいは一つの可能性としてそもそも自分が女性として見られていないのか、そんなことを考えながら悶々としていた。ところが、ある時から急に木村の行動が積極的に変化したことを高瀬さやかは感じ取った。
「んはぁっ!」
木村のスポンジがお腹をこすり始めたとき、思わず声を上げてしまった。
「ここはダメだったか?」
「いっ、いえ、ちょっとくすぐったいけど大丈夫です。そんな感じでお願いします...。」
スポンジが通る場所が徐々に上に移動してくる、みぞおちの辺りから胸、そして首の下辺りまで。上半身が一通り泡で覆われると、今度はスポンジを持っていない左手が高瀬さやかの胸をこすり始めた。
「んっ!」
時々、木村の手が胸の先端に軽く触れるその感覚で軽く声が出てしまう。スポンジを持つ木村の右手が今度は高瀬さやかの下半身をこすり始める。ウェストから下、お尻から太もも、泡の領域を徐々に広げるかのように少しずつ。そして、スポンジが両脚の間に入り込むと、高瀬さやかは恥ずかしさのあまり思わず両膝を寄せ、両脚を強く閉じた。
「っ....!」
声にならない声とともに体を硬直させる高瀬さやかの反応を見て「正解ではない」を察知した木村は、「おそらく正解でないが不正解でもない」と思う次の行動として、スポンジをお尻の下から又の内側に滑り込ませた。
「んっ....! ま、待って...」
嫌、というわけではないがそこは他人にスポンジでゴシゴシこすられると恥ずかしいし少し痛い、そんな思いで高瀬さやかは木村の右手首を掴もうと後ろに手を回した。しかし、彼女が掴んだものは木村の腕ではなく別のものだった。
「んんっ!!」
不意を突かれて、今度は木村が声を上げた。その瞬間、高瀬さやかは自分が何を掴んだのかを理解した。
(えっ? ふ、太い...大場さんのよりも...)
このとき、木村はもはや自分のサイズについては隠しようがないことを覚悟し、思い切って高瀬さやかに訪ねた。
「高瀬さんは、その...俺のソレ...」
「えっ? あ、すみません!」
高瀬さやかにしてみれば、木村の真意が分からないので、そう謝るしかなかった。そして、そう言った直後、彼女は体ごと木村の方を向いて、そのまま顔を上げて木村の顔をじっと見た。木村は、そのまま高瀬さやかの次の言葉を待った。
「その...木村さんの...」
そう言って、高瀬さやかは少し背伸びしたかと思う間もなく木村のイチモツを腿の間に挟んで恥ずかしそうに再び木村を見上げた。拒絶とは程遠いその表情を見て、木村は長らく自分を縛り付けてきたコンプレックスが少し軽くなるのを感じた、そして、そのまま高瀬さやかの背中に両腕を回し、彼女を抱きしめた。その瞬間、高瀬さやかの方から唇を木村のそれに近づけ、木村はそれを受け入れた。
「んっ! んんっ!」
二人は抱き合いながら、少しずつ腰を動かす。自分のイチモツが女性の肉の弾力に挟まれながら摩擦運動するのは木村にとっては初めて体験だった。高瀬さやかにしても、男根が自分の性器をこする感覚は久しぶりで、その先の展開を予想してか彼女のそれは既に準備が出来上がっていた。風呂場にはニチャニチャという粘着質な音が響く、木村は気づいていなかったが、木村と高瀬さやかの肌の間は、石鹸と水以外の液体でヌルヌルに満たされていた。
「ふはっ...」
二人の唇が離れ、お互いの顔を見つめ合う。今まで見たことのない高瀬さやかの顔に大人の女を感じていると、高瀬さやかが何やら木村のイチモツを手に掴んだ。
「きむら...さん...」
そう言って、彼女は目一杯背伸びをしながら自分の中に木村のイチモツを誘導した。
ジュルジュル
高瀬さやかの動きに合わせて一度腰を落とした後、木村のソレは誘導されるがままに彼女の中に消えていった。
「んんんあンっ!」
木村と深く繋がった瞬間、高瀬さやかは思わず声を上げた。そして、木村に抱きつきながらゆっくりと腰を動かし始めた。木村も、そのリズム合わせる形で腰を上下に動かした。
「き...むら...さん...気持ち...いい..です...」
木村の胸に顔をうずめるようにしながら高瀬さやかが囁くように言った。その声を聞いて、木村のイチモツが高瀬さやかの窪内でピクリと動く。
「んんっ!」
押し殺したような声を漏らして、高瀬さやかはより強く木村に抱きつく。木村はそれに応えるかのようにピストン運動を繰り返す。
「んんっ! んっ! ん゛んっ! んあっ! はぁっ! んっ!...」
(ダメっ 木村さんの...おっ大きい...そんなに動いたら...)
木村の前で感じるままに声を出したい衝動と、木村の前だけに嫌われないよう声を抑えたいという思いが交錯する。それに、風呂場では声が反響して恥ずかしい。そんな中でひたすら木村の肉棒に突かれながら絶頂への高まりを抑えきれない。
ずっと中腰でピストン運動を続けて若干の疲れを覚えた木村が、ピストン運動を続行しながら少し脚を伸ばして腰を突き上げた。
「んあぁぁっ!」「きっ、きむら...さんっ!」
「突き上げ」によって木村の肉棒がこれまでになく深く挿入され、高瀬さやかが苦しげに喘ぎ声をあげた。この瞬間、高瀬さやかの窪内が一瞬キュッと収縮し、木村のイチモツを締め上げた。
「あっ...ごっ、ごめんっ」
咄嗟に謝る木村だったが、高瀬さやかのこの反応は彼をより興奮させた。木村はこれまでのピストン運動に時々この「突き上げ」を織り交ぜていった。
「んんっ! んっ! ん゛んーっ! んぁっ! ああぁっ! んっ! ん゛っ!」「んっ、んぁああっ!」
立った姿勢で木村に貫かれる中、高瀬さやかは快感のただ中にいた。挿入時こそ慣れない肉棒のサイズに異物感と圧迫感を覚えたものの、それらはすぐに快感に置き換わった。脳内で処理しきれないほどの快感を本能的に避けるためか、木村のピストン運動の刺激を和らげるべく、タイミングを見計らってつま先立ちを試みていたが、それも木村の「突き上げ」の前では無力だった。
(きもち...いい...)
頭の中に白いものを感じながらも、木村に必死にしがみついて自分の許容量を超える快感に溺れそうになる。目を閉じれば意識がそこに集中し、目を開ければ木村の肉棒が自分を貫いている光景に興奮が増す。自分が立っているのか、横になっているのかも分からなくなる中、高瀬さやかの快感の頂点に上り詰める感覚が強くなる。
「ん゛んっ! んぁっ! ああっ! あンっ! んぁあっ! あっ ああぁぁぁんっ!」
高瀬さやかの体が一瞬固くなり、次の瞬間彼女の力が抜けるのを感じた木村は、彼女が絶頂を迎えたことを理解した。
(これがイクってやつか...)
「はぁ はぁ はぁ... んっ! はぁ...」
高瀬さやかがそのまま立っていられるか心配しながらも、そのまま抱きかかえるようにピストン運動を続行する木村。そんな木村の顔を高瀬さやかが見上げる。
「んん あんっ んっ あぁぁン んぁああっ! あっ あ゙ぁっ 」
木村は、以前小泉から見せてもらった大場の動画を思い出していた。あのときの高瀬さやかの喘ぎ声はこんなものではなかった、もしかすると彼女は満足していないんじゃないか? そんな、嫉妬めいた気持ちが湧き上がってくることを自覚した、そして、自分にもそんな感情があったのだと驚いてもいた。そして、ピストン運動の中に「突き上げ」の頻度が高くなる。無論、彼には高瀬さやかが意図的に声を抑えていることは知らない。
「ああぁン んあああぁっ! きっ、きむら...さん 少し...休ませて...くだ...」
高瀬さやかの声を無視する形でピストン運動を続ける木村。今更、しかもこんな分野で大場と張り合っても仕方ないことは木村にも分かっている。しかしながら、高瀬さやかとの行為の快感と、彼女の遠慮がちな喘ぎ声とが木村を興奮させ、そこに無用な嫉妬心が絶妙はスパイスを加える。木村もまた、セックスによって心に変化が生まれてつつある。
「ん゙んっ あ゙あぁっ! ん゙ん゙ー はぁっ あっあ゙あぁぁん!」
木村の「突き上げ」で、高瀬さやかは軽い痙攣とともに二度目の絶頂を迎えた。
「ハァ ハァ はぁ はぁ」
流石にこのまま立った体勢で続けるのは厳しそうだと判断した木村は、高瀬さやかから自分のイチモツを引き抜いて、彼女を床に横たえることにした。
「んあっ...」
木村の肉棒が引き抜かれる瞬間、高瀬さやかが軽く声を上げる。こういったちょっとしたことが、木村にとってはとても愛おしく思える。引き抜いた肉棒は彼女の液体でヌルヌルしている。
「高瀬さん、ここに横になって...」
そう言って、床の上に敷いたバスタオルの上に高瀬さやかを寝かせる。
「んっ 木村さん...」
そう言って微笑んだ高瀬さやかを両脚を開き、自分のモノを彼女に秘部に軽く当てる。そして、それを少しだけ彼女の中に入れて、軽くかき回すように動かしてみる。
「んぁっ あっ あっ ...」
彼女の中も準備ができていることを確認すると、木村は彼のイチモツを彼女の中に沈めた。
「んっ んんんーっ ああっ!」「あンっ 木村さん...気持ちいいです。木村さんは?」
「ん? うん、気持ちいいよ。それに...」
「...?」
「高瀬さん、とても可愛い。」
そう言って、ゆっくりと腰を動かし始めた。
「えっ? んんっ! ホント...ですか? んぁっ! すごく...嬉しい...です。」
高瀬さやかは、そう言うと再び快感に身を委ねた。過去、この場所で大場に犯された、そして、それ以降、半ば調教されるかのように快感を体に刻み込まれたが、そのときは快感と罪悪感が混在していた。しかし、今度は違う、あのとき感じた後ろめたさはなく、ただ快感と安心感がある。
「んんっ! あっ! あんっ! ん゙ーっ! んんぁあっ! あ゙あっ!」
木村のピストン運動のリズムが上がると、高瀬さやかはもはや声を抑えることができなくなっていた。体内の肉棒の刺激によって、彼女の理性が消えてゆく。木村は、高瀬さやかの体との摩擦によって自らのイチモツへできるだけ刺激を注入すべく最大速度で腰を振り、高瀬さやかもそれに応えようと動きを合わせる。
「あうっ!」
「んんっ! ンああぁぁぁっ!」
高瀬さやかが絶頂を迎えるよりも一瞬早く木村がイチモツを引き抜き、高瀬さやかの上に白い液体をぶちまける。初めてのことでイチモツのなすがままに散らされた彼の精子は、高瀬さやかの腹、胸、顔にまで飛び散った。
高瀬さやかは、上り詰めた瞬間に何やら温かいものが体に飛び散るのを感じながら快感と満足感で満ち足りていた。この場所で過去起こったことの記憶が、木村との初めての思い出として上書きされたことが何よりも嬉しかった。
(こんなものか...)
一方木村は、達成感を得ながらも眼下にだらしなく横たわる高瀬さやかを見てそう感じていた。白い液体で自分にマーキングされたかのような体でぐったりと横たわる高瀬さやかの姿に、木村はまた征服感のようなものも感じていた。普段、あれほど眩しかった高瀬さやかは、ひっくり返ったカエルのような姿でぐったりしている、先程まで木村の肉棒を咥えこんでいた穴は自ら息をしているかのようにゆっくりと開閉している。高瀬さやかもやはり人間という動物のメスであったというわけだ。
(それでも...)
眼下の高瀬さやかの姿を眺めながら、そんな姿も含め、やはり自分は高瀬さやかが好きだ、木村は改めてそう感じた。そして、普段は偉そうに御託を並べている自分自身も、高瀬さやかの前で裸でイチモツを勃起させている一匹の動物のオスにすぎない、木村はそんなことも考えていた。
「せっかく体を洗ったのに、また流さないとね。」
「はぁ はぁ... そうですね...」
そんな会話をしながらも、高瀬さやかはまだ少し動けそうもない。木村はちょっとした悪戯心で、高瀬さやかの体の白濁液を手で延ばし始めた、液のヌルヌルした感触と彼女の肉の触感を味わいながら、彼女に自分の匂いを染み込ませるかのようでもあった。高瀬さやかの胸の先端がいつになくツンと固くなっている、木村の手が高瀬さやかの胸にも白濁液を塗りたくるように広げながら胸の先端部を指で弾く。
「んぁっ あっ!」「ああっ! んんっ!」
指で弾く度に高瀬さやかが軽く声を上げる。一度は精を使い果たしたはずの木村のイチモツが徐々に力強く張りを整えてきた。
「高瀬さん、起きられる?」「シャワーで流してあげるから一緒にベッドに行こう。」
「....はい...」
こうして、二人はシャワーで体を流すと体を拭いて、風呂場を後にした。