※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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1♡ダンジョンバトルチュートリアル

ひとつ、この世界は未知に覆われている。

手の届かない天の先には広大なる宇宙、無数の星々。しかしそれよりもはるかに身近に現れ、世界各地で続々と発見されていった未知の空間に繋がるいびつな入り口がある。そのような外部亜空間を総称して【ダンジョン】と人は呼ぶだろう。

 

ふたつ、昔はダンジョン探索者育成専門学校なるものも存在していたが、学生の遭難事故が絶えず、その危険性がいつしか問題視されるようになった。

結果、続々と廃校が決定。それに伴い関連団体の多くも解体、もしくはその規模を縮小された。一部の学校では流行に乗りダンジョン部なるものが創設された例もみうけられたが……これもまた訪れた時代に差す闇に葬られ、表舞台から姿を消すことになる。

 

みっつ、発見報告がされたダンジョンは、その入り口を封鎖工事される。何しろ、その身近さ故にふらっと不用意に引き寄せられる者が多いためだ。

厳しく特殊な訓練を受けた極一部のスペシャリストたちが、国や世界政府の命を受けて準備万端で挑む、それがダンジョンに挑む最も正当な道だ。それ以外の数多くの一般市民にとっては、結局のところ、現在におけるダンジョンというものは世に気まぐれに現れる災害の一種であり、多くが無関係に過ぎない空間なのである。

 

 

しかし、ダンジョンとは、世に発生した草創期においては、元々、災害という意味合いの日常ではなかった。裏を返せば、身近で好奇心をくすぐる自由な存在だったのだ。興味を持ち、勇気を持ち、はたまた一攫千金などの夢を抱いて行き来していた世代がいたこともまた事実である。

黒歴史というにはその挑戦と失敗の歴史はあまりに浅い。そんな短くも濃いグレーな時代背景もあってか……。

 

世には、ダンジョンの魅せるその不思議で刺激的な〝魔力〟に取り憑かれ、あえて邪道をゆく者もいるのであった。

 

 

 

さわやかな早朝の校門前に、ひとりの人物が突っ立っていた。その赤い目をギラリと凝らす。

 

(はずれ、はずれ、はずれ、スカ、オーラなし……今年の新入生もスカばかりか)

 

青い上下ジャージに身を包んだ、青いロングヘアが目をひく。竹刀を杖代わりに、見晴らしのいい中央にドンと鎮座するその存在を、緑のブレザーを着た学生たちはどうも近寄り難く避けて通っていく。

 

すれ違う九割九分がスキルなし、一分がダンジョンで使用可能なスキルを持つ。魔に満ちた赤い目はその1パーセントの存在を見極めようとしていた。

 

(緑のブレザー、いや……これは……微かなミドリのオーラ……! ────風か植物に関するタイプか……回復系!)

 

じっと遠くから訝しみを深めていたその目は、やがてハッと極限まで大きく見開かれた。その赤い目の視界に入ってしまった……ごく普通の容姿をした黒髪黒目の男子学生は、呼び止められた。

 

「おいそこの生徒」

 

「おれ? ……はい?」

 

「ここは学びの場だ。まずは先生にあいさつをしようじゃないか」

 

「あ、おはよう……ございます?」

 

「よし、ついて来い」

 

「よし? ええ!? ちょっ────」

 

 

 

▼

▽

 

 

 

▼第イチ体育倉庫(閉鎖中)▼

 

 

連れられてきた謎の古い体育倉庫の中。人目があるとまずいという事で閉じられたその空間で、既に先生が初対面の生徒へと話を聞かせ、なにやら熱烈な勧誘行為をしていた。

 

「────────てことでダンジョン部に入れ。私がこの目で確認したところ。お前にはちょっとした未知の才能がある」

 

「はは……ダンジョン部? ダンジョンってたしか……えっと、先生? そんなの危ないしあるわけ……あの、俺ここ来たばかりの1年でもう教室に行かないと遅れ──」

 

話す内容の荒唐無稽さに苦笑いを浮かべ、男子生徒が閉ざされた重い扉にそろそろと手を伸ばそうとしたそのとき──

 

パンッ!

 

素早い平手が生徒の右側の青扉に突き刺さった。あまりに唐突な出来事とその音に、彼はびくりと背を振り返る。

現在の状況……。ここを出ようとした男子生徒は、女教師に壁ドンならぬ壁パンをくらってしまっていた。

心臓を打たれるような音と、前のめりに見つめてくる見知らぬ女教師の圧。まったく理解不能な謎の行動の連続に彼が身じろぐと……。

 

見つめられる長い時間と共に────

 

じっと近付く圧と息遣い。

おおきく覆われていく影。

パーソナルスペースを悠々と侵していく、目の前に迫る青髪赤目のアクションに、

 

「え、え?」

 

「お前はダンジョン部以外ありえない。ハイか、入るか。返事は?」

 

「いや無茶苦茶……ちょ、ほんともう行きま」

 

これ以上の接近は異常だ。おかしな人だと呆れて、その青ジャージのつくる「牢」の隙間を抜け出そうとした、その瞬間──

 

左の頰をぐっと抑えられ、キス。

 

逃げようとした唇と、不意に襲いかかってきた唇が正面で合わさった。青髪青ジャージの女教師に、男子生徒は唇を奪われていた。

 

「ンンンンん!?」

 

長く、長く、吸いつくようなキス。顔を両手でロックされ、やがて舌が口内にまでぬるりと侵入し、逃れられない。鼻息荒く食すように深いキスが続く。柔らかい唇のエロティックな行為が、意味不明に流し込まれ、味わわされた。

 

「べちゅあぁー」

 

「あっ……にゅぁ……ぁ」

 

やっと青髪の女教師の唇が離れた頃には、青い扉に力なくへろへろと溶けるように寄り掛かかる……未知の恍惚に溺れてしまった、男子生徒がいた。

 

そして、いつのまにか脱力する生徒が女に誘われ押し倒されるのは、敷かれていたグレーの体育マットへと……。そこに仰向けになっていた体は、両腕をガッチリとのしかかる女教師に掴まれている。

 

さらに繰り出された追撃のキス。男子生徒に考える間を与えないような勢いで再び貪っていく────女教師の艶めく桜色の口紅に同色になるほど染め上げられていく……。

 

────完全に、とろけた。

 

大人しくなった男子生徒の表情を確認して、睨む赤い目は予想通りの戦果を上げ、ニヤリと笑っている。与えられた二度のディープなキスに、彼は理解到底間に合わずとろけている。その間にも、ガサゴソ、チャカチャカと……下方からひびく音がする。

 

────脱がされていく、そして脱がされていた。

 

青ジャージの下と、下の制服ズボン。彼女は迷いなくたのしげにその先へと進める。彼の下半身が恥ずかしく丸裸にされていく。

 

ぼんやりとする彼の視界の先には、丸み帯びた肌色に黒いレースのパンツが見えている。数度のキスでギンギンに勃っていた、育て上げられた待ちきれない様子の若いペニスに手を添え……手早く誘導。彼が目の当たりにした事態は、もう寸前挿入へと────。

 

「ナッ!? にゃにを……まっ」

「もちろん、大切な新入部員は雷夏(かみなりなっ)ちゃん先生で童貞卒業だ♡」

「あ、ああああああああ♡」

 

ずっぷりと────一気に挿入。

 

一気に根元まで食べられてしまった童貞おちんぽは、その高い刺激に耐えられず嬌声を上げた。押し寄せた快感に歪んだ顔を、じっくりと見られている。ニヤリと、しめしめと……。前傾姿勢で生徒を覆う女教師は、彼の反応に赤い瞳を細め、ワラわせながら、何度かこきざみに頷いていた。

 

やがて咥え込んだ腰は前後にグラインドし、助走をつけるようにペニスの期待感とイライラを膣内でさらに高めていく。

 

「あっ、ふああぁ」

 

「フフ、大喜びだな。い・く・ぞ♡」

 

そうして始まった、未経験の童貞おちんぽを暖かく咥え込んで離さない騎乗位ピストン。容赦なく打ち付けられる豊満な尻の柔さと重み、ぬちゃぬちゃと背徳の愛液とカウパーがナカで混ざり合っていく。

 

男子生徒は気持ちよすぎて何も考えられず……雷夏ちゃん先生に犯されていく。未体験の「気持ちいい」という経験値を、訳もわからず積み上げられていく。人生にたった一度の、華々しい高校入学式の儀を迎えた新入生のはずが……これまでの人生をたった一度の交わりで唐突に崩され、大胆に失っていく。

 

「あ、あひゃ、ああぁ、あ♡」

 

「いいぞ。もうイクって感じの表情だな。遠慮なく先生の中にDオーラをぴゅーしろ♡」

 

乱れ垂れる長い青髪が近い。両手首をがっしりと掴まれ、魅惑的なその少女のように輝く赤い瞳に見つめられながら……彼は泣きそうな程に崩れた顔で、

 

ぴゅー、どぴゅどぴゅ……どぷっ。

 

白濁が放出されていく。ずらされ、一秒でもはやく挿入された黒いパンツの尻に、そのナカ深くに。

 

跨る女体は味わうような最後の尻でのピストンを彼の華奢な身に打ち付け、瞳を閉じながら仰け反り、若いペニスを存分に最後の一滴まで堪能する。

 

激しい卑猥な水音は止み────荒げる息が、第イチ体育倉庫、この閉ざされた空間にふたつ重なり合っていく。

 

やがて、まだ硬さを失わないおちんちんはキュッと離さず締め付けられていた……膣内から抜かれた────。

 

どっぷりと溢れ垂れていく初物のイヤらしい粘りのシロを手のひらにのせて────。左手首に巻き付けていたDウォッチと呼ばれる機器で詳細の測定を開始する。

 

「おおおお、ぬおおおお!? 昨夜の探索で負傷したDSシールド値が回復している? 喉から手が出るほどに欲しかった回復系だとぉ!!! ふふふ、ふっふっふーーーー!!!」

 

女教師、雷夏。二十七歳。

 

緑蜜(りょくみつ)高等学校に勤める体育教師は、入学式で吟味し見つけた希少な回復オーラ持ちの男子生徒を発見し、狂喜────。非公表の部室にて、ダンジョン部への熱烈な勧誘の儀をほどこした。

 

密室に反響する明るい声は止まない。

 

第イチ体育倉庫…………その中、不自然に配置されじっと鎮座する古めかしい跳び箱のさらに中に隠されているのは──未報告のダンジョンへの入り口。

 

ダンジョンの魔力に取り憑かれた中毒者は、邪道をゆく。

 

 

 

 

 

 

桜の花びらが濃く色づく。陽光は誰もが想像しうる春の麗らかさで、緑を揺らすさわやかな風が吹く、はじまりの青の季節に……

 

入学式当日、薄暗い体育倉庫で女教師とセックス。新入生として初々しくも華々しい儀を迎えるはずが、彼の身は未だ、教室に行くことも、戻ることもできずにいた。

 

────続く二回戦。

 

またもくねくねと、たのしみ踊るような腰使いで前後。淫靡なテクニックが雄の欲望を刺激し増幅させていく。ナカでみるみると膨らむ亀頭、根元まですべてが蠢く膣壁に甘く支配され、締め付けられていく。

 

「ふっふーーーー念願の回復系だーーーー!!! ……誠に喜ばしいコトだぞ、これはっ!」

 

「ああああああああ♡ ひゃめ♡」

 

「ひゃめひゃめー♡! あぁん、やめないぞ?♡ 雷夏ちゃん先生のDSシールド値を、その可愛らしい低レベル童貞ちんぽで全回復させろ♡」

 

「じゃめええええええええ♡」

 

なおもつづく騎乗位での背徳の性行為。先生は容赦なく、また前傾姿勢で尻をパンパンと叩きつける力強いピストン運動で、眼下のターゲット、男子学生を一気に追い込んでいく。

 

はげしい水音を立て、青髪を乱し、汗ばむ女教師は邪魔な熱いジャージを脱いでいく────。ジャージの下は、なぜか素肌と黒のブラジャーだけであった。あらわになった中身は重く、支えられている豊満な胸がそこに露わになる。

 

先程まで着ていた青ジャージの中で蒸れて、だくだくと汗ばんだ女体は、それが余計に雄という生物にとっては艶めかしい。黒い下着姿の女教師はまた前に倒れピストンを再開。杭打つような激しい一方的な交わりが続く。

 

「じゃめりゃめ♡ああああや♡」

 

「いいぞぉー、こら耐えるな♡ 2回目の回復薬注入だ、童貞ひんぽザーメンひねり出せ出せっ♡ほらっ、またぴゅーぅ、しろッ」

 

「にゃあああああ、ああああああ♡」

「くっ……んふぅッンんん♡」

 

激しく甘やかされた腰と童貞ちんぽはまったく耐え切れず、あえなく二回目の射精。

気持ちの良すぎる寝転び見上げるイケナイ激しい行為に溺れ、今この場にある彼の自己という存在は確かに存在するがおぼろげ……。青髪の雌にじっと見下ろされながら犯され、与えられる快楽だけがハッキリと熱を帯び、つながり合い、わかる────。

 

放出した射精の余韻と、みちみちと収縮し締める膣圧に、喘ぎ声を未だ甘えるようにおもらししている。

 

またがる雷夏は染み込んでいく若い生徒のザーメンを味わい、歓喜恍惚に浸る。天を仰ぎ、恥ずことなく嬌声を上げながら海老反り、普通の人種が持ちえない特異なエナジーが染み渡っていくのを感じていた。

 

行為終われど依然年の離れた彼と彼女は繋がったまま……。

彼の表情出来栄えを見つめて離さない赤い瞳の輝きが近い。その見下ろす瞳にじーっと、すっかりとろけ果てた恥ずかしい様をニコやかに凝視され、

 

「ふぅふぅ……盛大にぴゅーしたな♡えらいぞえらい」

 

「あっ、あぁあ…………ぁほわぁ……」

 

騎乗位で散々に跳ねて犯されて乱れてしまった彼の黒髪をなおす。

なでなで撫でる、伸ばした先生の手が染みた…マット上に脱力する生徒をあやしていく。

恍惚としている彼は与えられた突然の慈愛そのギャップに、思考はぽわぽわとぼやけ染まり余計に何も考えられなくなっていき……ふかくふかく全てをゆだねていく。

 

すっかりできあがった子猫のように従順な表情を、またじっと間近に見ていた女教師はその可愛らしさに我慢できずに────

えぁあ……静かに卑猥な音をたて伸びた舌が、ぽかんと空いていた男子生徒の口内に滑り込んでいく。

ぬぷり……深く貫き、味わい合う、男女で唾液と唾液を交換していくエロティックなキスをする。

 

「んんん……んんぁ♡」

 

もう完全に自分の意思ではどうにもならない、犯す犯されるようなキスがクセになり気持ちいい……。自分のナカのテリトリーがシコウまでもが全部、雷夏先生のもつ自分には絶対にない魅惑的な色に染め上げられていく……。

 

目を閉じながら生徒を犯し満たすながいながいキッス。

パッと再び咲き開かれた赤目は自分のせいで最高にダメになった男子の表情を見て、それでもまだ離さずキスをしながら鼻息でふふっとワラう。最後には彼のだらんとした情けない舌を唇を窄めて吸い込みついばむ。

 

ちゅーじゅーーーー

 

ながく、ながく……さいごは惜しまず格別なキスをしなおし、細めた赤目で表情を眺めながら────やがて離れた。

 

口をぽかーん…………舌をだらーん…………情けなく突き出したままの……。

この第イチ体育倉庫に連れられてきた何も知らない反抗的な頃とは様変わりした、ナニかを深く体を密着させる快楽でわからされた男子生徒がそこにいる。

 

一体となっていた口元は離れて深く互い息を継ぐ。

 

つぷっと繋がったブレンドされた唾液の線は先生と生徒が長くお互いの口内でこね混ぜたもの。

やがて先生はぐちゅぐちゅになった口元を左手に拭いプツリとその卑猥な産物であるつながりが途切れる。

 

「ふふふふ、」

 

笑いながら舌を口端から口端になめずり、一連の数度のセックスとキスの余韻を舐めとり味わっていく。そして先生はDウォッチでまた自己の今の状態を確認した。

 

「ぬおおおおおおお!? し、シールド値マァァァっっっクスッ!!! やはりこの男子生徒の持つDスキルは回復系、決まりだぁ! ハハハハハふふふふ……はっはっハッハーーーーーー」

 

狂喜、反響するデジャブ。

 

二度のセックス、三度のながく深いキス。

青髪の女に味わわされて深く人生を経験させられて横倒れた男子生徒がいる。

新品のまだ匂いの薄い緑のブレザーは、くしゃつきしわつき男女まぐわい分泌された汁に濡れ……真新しい取り返しのつかないシミがつくられ汚れてしまった。

 

ひとつだけある高い小窓は閉められ風通しが悪い……密閉された空間はむわりと、歳の一回り離れた男女がはげしくセックスし合った果てのこびりついたような臭いが漂っている。

 

第イチ体育倉庫へと二人入りセックスしてかれこれ1時間以上。

今日1番重要な初々しい顔出し顔見せの行事よりも、優先されるべき濃厚な先生と生徒の愛溢れる初コミュニケーションは────

 

ガラッと重い扉が開かれていく。

新しい風が吹き込む。

 

景気良く脱ぎ捨てていた青いジャージを纏い直した雷夏は、まだ高い太陽の陽射しに体を野良猫のように大きく伸ばした。

同時に心地の良い深呼吸をする──そして、パチン、両頬に気合を注入!

体内のどこかにあるもうひとつのスイッチを自ら入れる。

さらりとべたつく青髪をなびかせて、笑顔の若き女教師はどこかへと走り向かっていった。

 

 

 

 

 

 

薄暗い青と赤と桜色の夢から覚めると、そこは────────

 

「────ンん…………んぁ?」

 

寝そべる彼が見上げた天は、濁ったシャボン玉の色合いのようで、まったく訳が分からない。夢でもこんなのは気持ちが悪いものであり、それでいてやけにはっきりと視界に映っており、瞬きしても混ざり合うようにゆっくりとその色が動いているだけである。

 

数秒ソレをぼーっと眺めても、彼は釈然としない。やけに身体が冷える。夢の中でそんなのは初めてだ。体育倉庫に居た彼は、今はまったく様相の異なる景色の中にいる。この光景が何なのか、考えども凝らせども納得のいく解にはたどり着けやしない。

 

くるくると巻かれた緑のマットを枕に、知らない床に寝ていた。じゃりつく土色の床だ。寝心地は決して良くないだろう。

 

寝覚め悪くボサボサの黒髪の頭を起こす──そして手をつき、ゆっくりと上体を起こすと、

 

緑のジャージを着た、青い髪……。どこか奇妙な色違いのような気がするその人物と、それから醸し出される雰囲気に、デジャヴを感じる。見てはいないが、どこかで見たような背姿が、お目覚めの彼の目の先にあった。

 

不気味なほど静寂に包まれた空間で、小さな気配と音に気付いたのか、ソレは彼の方へパッと振り返った。

 

その女性の表情は明るく、元気な赤い目をしている。彼が夢で覚えている、あの目だ。

 

男子生徒はそんな印象的な赤い色をふたつ見つけ、ハッと自分の目を見開いた。

 

「ん? 回復系男子生徒、起きたか! ならッ、ダンジョン部の絶対的顧問、雷夏ちゃん先生の新入部員に捧ぐダンジョンバトルチュートリアルといこうかァァ!!!」

 

「な、なに!? バトルチュート??? マエぇッなんかいる!?」

 

不意にカタチを成し現れたのは、鼠色の鼠顔。全高170cmほどの不気味な人形のような敵だ。それがふにゃふにゃとした手足で雷夏へと迫る。

 

「なんかいれば先ずは! 斬ィィィる!」

 

取り出した小さな木片から光が発する──何が出るか、種類が分かっていた武器を召喚する。右手に取ったシンプルな鉄の刀を、地から左上へとしなやかかつ素速く払い、敵の殴る手よりも何手も速く、威勢の良い掛け声とともに、左腕と胴をブッた斬った。

 

パリン、と砕けはじけるような音がポップに鳴る。

 

彼女の目の前で、敵はすぐさま数多の鼠色の三角片へと分解され、ダメージ限界を迎えたバケモノの存在が失せていく。

 

「ダンジョンでは当然武器が必要だ。武器はチップと呼ばれる小さな板から入手、召喚できる。乱暴に扱いすぎると壊れてしまうからな。取り扱いには注意だぞ♡存分に刃を労わりながら、ド派手に痛めつけるように手早く斬れ!」

 

一殺一仕事をした刀を勇ましく地に払い、振り返りながら生徒の目を見て、得意気にさっきの流れを先生は説明をしている。

 

呑気に説明をしている間にも男子生徒はまた必死に何度も指を指す。

彼が必死に指すのは先生ではない──そのウシロ、さっきと似たような敵がもうそこまで来ているのだ。

 

「ははは、次ィィィに、」

「きてッ!!! あっ!?」

 

そんな男子生徒の鬼気迫る指摘ジェスチャーもむなしく……先生は生徒の方を向いたままニヤついたとぼけ顔をしている。

 

そして、あらぬ方向にぐねった鼠色の腕が重く叩きつける。迫る危機に余裕をかましていた雷夏は、鼠人形のモンスターに体を殴りつけられてしまった。

 

その結果の乾いた打撃音が空間に響く。

 

「ふふふふふ、必死か。安心しろこの程度で絶対的先生はしっなーーーーん!」

 

敵へと素早く向き直った防御態勢。

しっかりと畳んだ腕でガードを固め、受け止めることに成功。敵の攻撃のインパクト時に微かに見えた、彼女を覆った青透明のおおきな卵型の膜が光り煌めいた。

 

「ブッ刺す受け取れっ!!! ────ひゅふぅーー……DSシールド値。略さず言うとダンジョンソウルシールドの値だ。ソウルは魂や精神、気合いの意味があるだろ! 気合いで作った精神の膜が探索者を守る基本の盾と言っていい。こうして攻撃を受けると当然モノは減る。やがて膜はひび割れて失せる、それをシールドブレイク状態という! 我々人類のやっわい身体のやっわい生命が剥き出しで敵に晒されるパッリ~~ンと死に近付くヤバイ状態ということだ! わかったな!」

 

既に鼠人形の気味の悪い面に右に溜めた刃を鋭く突き刺しながら殴り飛ばしていた。あまりの鋭さに彼方へ吹っ飛んでいったバケモノは、やがて四散する。

 

「次にィィィ!」

 

ビッと風を鳴らし刀を横払い、前傾姿勢のまま、どこからか湧いてきていた敵の第二陣へと、勇ましくも青と緑の背姿は駆けていった。

 

「Dオーラ解放。砕けッでええええええあああああ!」

 

解放──刀身に青く荒い炎のようなオーラを纏わせる。

素速く迫りやがて跳躍、急襲──。

そして頭より尻が上になるほどの勢いで、天から刃を振り下ろし、敵集団をまとめて面打つ。

面打ち、地まで打つ。

並々ならぬ青いオーラが地を砕く。

そのままやがて壊れた噴水のように豪快に溢れ湧くオーラが、判断の遅い鼠の集団を巻き込み……まとめて青く滅した。

 

目に映るその衝撃の破壊行動は鼠人形たちとの戦闘の終了を意味する──────。

すべてを雷夏のオーラ色に染め上げ、焼き加減激しく平らげた。

 

土色を砕き、さらに焦がして白煙がしゅーしゅーと……。ついさっき出来上がってしまった力強いクレーターアートから上っていく。

 

そして、遠くにいた人物は振り返りゆっくりとした足取りで、一歩一歩味わうように、誰かに味わわせるように近づいていく。

近付いていく────男子生徒へと……のぼりつづける白煙をバックに、高まったテンションで熱く彼女は語りかけながら。

 

「今、夏ちゃん先生がやってみせたのはDオーラをすこしノセたただの初歩的な斬撃だ。DオーラとはDはただのダンジョンでオーラ量。分かりやすくいえばRPGのMPといったところだ。というかその認識でいい! 膜とはまた違った利用方法の多いモノだと覚えておけ。ただし無駄撃ちには気をつけろよ♡」

 

不意にでたエネルギッシュに煌めく赤色のウインク。チャーミングなそれを受けて余計に受け取った側は彼女のテンションについていけず、困惑顔が深まっていく。先ほどの破壊行動とその笑顔のギャップもあわせて……。

 

何を言っているのかほとんど分からない……。男子生徒の耳には理解が追いつかず、彼女の言う懇切丁寧らしきどれもが念仏に聞こえた。

そして、それよりも……。

それよりも聞きたい。

とにかくここが何処なのか分からなくて、不安で不安で、彼はたいへん気になった。

 

本当に不安気な表情で身を縮こませながらも、なんとか立ち上がっていた男子生徒は、先生にそれはそれは非常にシンプルな言葉で質問をぶつける。

 

「あの分からないんですけど……ここ……どこですか!??」

 

「フフフふふ……はっはっは────分かれよ寝坊助、ダンジョンだ♡」

 

剥き出しの刀身を肩に担ぎのせ、斬れない棟(むね)のほうで小刻みにリズム良く首筋を打つ。

赤い瞳はワラっている。この人はよく笑う。

それは正気か狂気かどうかは彼には判別はつかず、ただただ彼の目に映る……。

其処にいる雷夏ちゃん先生の、これまでの表情、仕草、声色すべてが、こどもが広い庭ではしゃぐように楽しそうに見えてしまっていた。

 

 

 

 

 

 

ダンジョン部顧問、雷夏ちゃん先生の懇切丁寧なバトルチュートリアルその①は終了し、辺りの敵をついでに殲滅されていた。

 

そして、「ダンジョン」。

先生からおどけるように発されたそのワードを聞き唖然とする少年。

そんなはずはないだろうと……先ほどのバトルの説明以上に、ここが、この場が、この空気が『ダンジョンだ♡』とは訳が分からず、彼は持て余していた手で頭を掻いた。

しかしいくら黒髪を掻いて乱しても、どうしようもない。なんでそんな進入禁止で、行方不明者が出るほど危険だと言われている噂の場所。その親しみやすいゲームじみた名前を今は「ポケット災害」と変えられて、ニュース災害警報で時折目にする、その奥に……ただの今春四月高校一年生になる自分がいるのか、理解できない。

この土色の地面と濁るシャボンのような空間がダンジョンだと、先生は生徒に堂々と告げるのだ。

生徒はダンジョンを知らない。ネットの情報などで又聞きして少し知っていても、生のダンジョンを知らない。自分がそこにいるなど、やはりわかるはずもなく、聞き返すしかなかった。

 

「ここがダンジョン……?」

「そうだこここそダーーーーンジョンっ!」

 

生徒の目の前の人物はすらり長い脚をクロスさせ、手をおおきくいっぱいに、まるで風船でも膨らませるように広げ、陽気に「ようこそ」と出迎える。

快活に笑う青髪ロングとは対照的に……苦い顔をした緑ブレザーの高校生はもう一度、辺りをキョロキョロと見回して────

 

「……えええええダンジョンなんでェ!?」

 

息を溜めて今一度おおきく驚いてみせた。

 

「なんでぇ? シールド値がピンピンにマックスになったんだ。そんなのダンジョンに行くに決まってるだろ? ははははは」

 

大袈裟な彼のリアクションに先生は笑い飛ばして答えた。そして、ビュンビュンと元気よく二度、握る鉄刀を虚空に躍らせた。

 

「じゃ、いくぞこのステージはまだ終わっていない。そこの荷物を持って雷夏ちゃん先生に付いて来い!」

 

「ええ!?」

 

その場でえっほえっほ急かすようにおどけた足踏みをし始め、そのままどこかへと青い髪をはねさせ駆けてゆく。

こんな不気味で異質な空間でも明るく笑う雷夏先生に置いていかれないように……焦る。

説明されてもどんよりとした不安が解消されていない男子生徒は、今は先生の言葉通りに、慌てながらも置かれていた荷物を背負い、後を付いていった。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

代わり映えのしない広大なエリアを探索すること数分────

またさっきと同じ種類の気味の悪い鼠の集団と遭遇してしまい、襲い襲われるのが当然のルールであるかのように、始まった戦闘。

先生はさっきのチュートリアルと同じように鉄の刀を握り躍動し慣れたように鼠たちを処理していった。

 

そしてあれよあれよと倒していき、ご丁寧に残していた一匹と対峙し攻撃をいなしながら、注意を引き付けて、

 

「よぉし、今だ撃て!!!」

 

余裕を持った実戦にて援護射撃のタイミングを指示。

生徒はこの威勢の良い声に覚悟を決め、指示通りにやったことのない狙いを付けてターゲットから15mほど離れた距離から数発撃った。

 

トリガーを引き銃口から撃ち放たれたピンクのエネルギー弾、その放った連射が鼠に二発当たった。

 

ラッキーにも撃ち抜いた右脇腹と左肩口をジワリ染め上げて、致命傷となった──。先生が散々その刀でしていたようにパリンと三角片に砕け散り、ターゲットの敵が滅されていく。

 

銃口と見据える彼の目の先に居た敵を倒した。ぼーっと破片の散る前方を確認し、生徒は次に両手でしっかりと構え持っていたガンを今更ながら確認した。

 

チップから召喚し先生に貸し出してもらった物はいかにも未来的な銃のフォルム。彼が見たことがないものだ。一般的に想像し得るハンドガンにしては少し大きくがっしりとしている。上部は白、下部握り手トリガーは黒く、広い台形の銃口から実弾ではなくピンクのエネルギーガンが飛んでいったと思われる。銃口から上る熱い白煙が少しだけ現実感を演出しているようであった。

 

「ほぉ冷静に当ててくれるとはやるじゃないか! どうだそのチップはガンだぞガン、エネルギーガン。このノット銃社会な日亜国(にちあこく)でSF地味た兵器をぶっ放せるなんて特別アガるだろ新入部員? さぞ男のロマンってヤツを感じたことだろう」

 

語り終わりに左手でつくった手銃でウインクしながら生徒を撃つ。不意にお茶目に身体を空砲で射抜かれても……男子生徒は初戦闘で高ぶった脳での情報の処理がどうも追いつかず……。自分が敵を撃ち殺したという事実でさえ曖昧であり、返す言葉があまり出てこず困った。ただただ感情が錯綜し、困った。

 

「ロマン……というか俺いろいろとそんなの感じてるどころじゃ……。あとなんか倒したら浮いてきたんですけど……」

 

生徒は力なくへなっとした指でソレを差し示す。

なにやら下手な絵が描かれた木片がそこに、存在を誇示するように浮いている。

取ってくださいと言わんばかりの手頃な位置に、ふわりと。

 

「ん、それは? ほぉほぉまたネズミかぁ……! ──あぁ、そうだ味のある絵の描かれたそれは切符チップだな。てことでやったな、それを見つけたらこのステージにもうそれほど用はないという事だ」

 

「……きっぷチップ?」

 

歩き──パシリと、いい音を鳴らしそれを豪快に手に取ってみせた先生は疑問ばかりを浮かべる生徒をくすりと笑う。

そして目を見て一度深く頷きしっかりと説明を始めた。

 

「んーーーー先生はこの未知の外界であるダンジョンのランダムシステムみたいなものだと聞いたなぁ。1ステージ1ステージ一歩一歩、このどこまでも広大であろう先に進むための分かりやすい切符がいるだろ? モンスターを倒したりエリアを探索していれば見つかるぞ。あぁ、あと飽きさせないようにかは知らんがこの先電車旅のように景色も変わっていく。様変わる環境に適応できるよう常に心掛けておけよーー回復系男子生徒!」

 

先生の話を真面目に聞いていた生徒であるが……ある言葉が彼のナカで喉に刺さって気になり仕方のない魚の骨のようにつっかえて引っかかり、

 

「先へ? え、ちょっと! 行くのは先じゃなくってこれどうやって帰るんです!?」

 

必死に浮かんだ疑問をぶつける。それは彼にとって解消されなければならない問題だ。

そんな男子生徒は溜まった唾をぐっと飲み込み────顎に手をやり考え込む目の前の青髪女教師を見つめる。

ただただ見つめ続ける……。

にやにやと目を細めて顎をさすりあそぶ動作の果ての……もったいぶった返答を待つ。

 

「なんだ男の子がもう帰りの心配かぁ? ふふ、安心しろ帰りの切符を手に入れれば帰れるぞ。稀に落ちているから人数分探せばいい」

 

安心しろ、さきに聞こえてきたその先生の言葉と落ち着いたトーンにすこし安堵し……生徒はやっと息をひとつ吐き胸をなでおろす。

 

「はぁーっ、なんだぁ……そうなんすか。──ん、稀に……? …………えっと、その帰りの切符ぅ?」

 

 

 

「ははははは、ふふふ、ふっふーー……今はない!!!」

 

 

 

さっき見たような気のするお茶目な手銃に撃たれた。

雷夏ちゃん先生のふざけた態度のそれは決して可愛いものなどではなく。

ネズミの落書きが描かれた謎の片道切符しかないという現状に……さーっと、男子生徒の表情は小天国からド地獄へと青ざめていった。

 

 

 

 

 

 

緑蜜高等学校の第イチ体育倉庫から目覚めたら、いつの間にかダンジョンに入場していた。

そして夢の中のステージからステージへと乗りついでいく片道切符……味のある鼠の絵が描かれた「切符チップ」を使用する。雷夏と回復系男子生徒の2人は先を目指し、用がなくなったステージからぶわりと魔法のように存在が消えて行った。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

バチバチと雷電伴う演出で2人は召喚され、辿り着いた先は────────ネズミ工場だった。

 

鬱々とした、風通しの悪そうなやけに広大な工場内。ウィーンと響く機械の稼働音と、謎のガイド光が騒がしく。ベルトコンベアには灰色が運ばれていっている……つい先程直立する姿をどこかで見た事のある力なく横倒れの人形たちだ。その光景はまさに異様で、突拍子もないモノであった。

 

「え……先生……なん……」

 

「あぁヤバイなこれは……工場だ。ははははは」

 

「工場!? ええ、さっきのモンスターの!? なんですかそれええええ」

 

「どうやらあの切符チップは先程のようなイージーな鼠駆除のチュートリアルではなく、こんどは鼠達が我々を駆除歓迎する為のトラップだったようだな! ふふ」

 

「そんな馬鹿な……えでもこいつらまだ動いて」

 

「あぁいいから質問ばかりしてないで援護射撃の準備だ、ダンジョンで怠けていたら死ぬぞ! 渡したチップは全部使っていい! どこかにある生産機能を破壊するから先生の後ろにぴったり付いてきて援護しろ、ほらみろもう来るぞ! ならばこちらも同じく覚悟だ! イクゾ!」

 

「覚悟ぇ、援護ぉぉ!? うわちょ、先生待って!!!」

 

運ばれていった鼠人形達は流れ着いた先────機器精密アームの発する紫の雷電にその身を撃たれ、おもむろに起き上がり、器に生命を得ていく。

 

やがて、寝起き早々にも侵入者である冒険者たちを取り囲むように、彼方からゾロゾロと現れた。二本足で立つ、従順でイカれた鼠の集団だ。

 

「さっそく撃てえええ! どこでもいい垂れ流せえええ! ふっふーー!」

 

まったく臆さない先生は笑い走りながら鼠をひと撫で、鮮やかに刀で頭を取り、効率良く滅していく。流れるように次々と、小うるさい鼠色の道を斬り裂き渡る。

 

そんな勇猛と狂気の混じった美しい背姿に必死に付いてきた────言われるがままの覚悟をキメた生徒は、二丁持ちしたハンドガンで、とりあえずは先生の背に当てないように援護射撃をし始めた。

 

ピンクとミドリのエネルギー弾のヤケクソの連射が、目先の壁と化した鼠の集団に狙わずとも吸い込まれるように当たった。

 

次々と撃ち抜き人形を破壊する事に成功。その光景と、握り両手のトリガーを引く異常行為により、彼にとてつもないアドレナリンが分泌された。やがて残弾を撃ち尽くした銃がパリンと音立て、突然に散り失せた事に今気付き、ダンジョン素人は両手に起こった予期せぬ事態に慌てだした。

 

そしてまた突如、そんなおぼつかないアクションを見せる生徒に、灰色の弾丸が向かい飛んで来た。

 

「なんだガッ!?」

 

そこまで速い弾速ではないのに、完全に予想外のソレに吸い込まれるように、身動きまるで出来ず間に合わず、直撃。緑ブレザーの生徒を覆う青いDSシールドの膜が、少しひびを負いキラリと煌めいた。

 

ターゲットから中距離より放たれたのは鼠人形の練り上げたワザ【鼠弾】。シンプルな灰色の弾をぶつける、ただそれだけの飛び道具だ。

 

刀右手に寄る鼠を払う──左手に構えたハンドガンが、さらに生徒を追い打ち狙おうとした鼠の腹を射抜き、粉砕。チラリと横見した一瞬の狙いで生徒を助けた雷夏ちゃん先生は、前方で戦いながらもハッキリとした声量とよく通る勇ましい種類の声で助言を垂れ流す。

 

「ナニやってる気をつけろっ当然相手もワザを放ってくるぞ! 垂れ流すだけじゃなくオーラを放出している企んでそうな気配を優先して狙え! チュートリアルのピクニックじゃないんだぞフフフフ!」

 

「痛ったァ…………ワザァ!? って先生マエ!! デカイの来て!?」

 

「あぁ、ワザとはこうだ! Dスキルチップ!」

 

熱量上げる頭、その額から……バチバチと光る一片を左手に引き抜く。そして刀身を撫で上げつつ……今、生成したオーラの塊であるチップをインサートする。慣れた手つきで一連の準備を終え、ギラリと妖しく光る切っ先と赤い瞳は、聳え立つネズミの山を見上げ、挑んだ。

 

「【電伝電柱雷酎斬(でんでんでんちゅうらいちゅうざん)】!!! ブッ刺すッ伝え散れええええええええ」

 

両足底と腹の底に力を込めた──高くすばやく跳躍し、頭頂を鉄の刀が突き刺し刺さる。そしてすぐさまデカブツネズミは青く染まり、飽和する。

できあがった雷電柱から垂れ流されるオーラが、地と空を伝う……。やがて辺りを徘徊していた小さき鼠共に、青い雷電はビリビリと疾り、繋がっていった。

 

辺りを効果的に焼き焦がす膨大なオーラ量を注いだ一刺。道に陣取っていたデカブツネズミ一匹と数多の鼠が激しく三角片に散っていくと同時に、役目を終えた鉄色の刀が宙に砕け失せた。

 

「ナンダコレ…………やばすぎる」

 

「よぉぉし狙い通りのチャンスだ。このまま射程距離まで突っ込めええええ機器をとにかく破壊しろ。こぉら雷夏先生の美技に見惚れてボケっとするな着いたら先生と撃てええ!!!」

 

「ええ!?? そうかっこれが破壊チャンス……ハイーーーー!!!」

 

開いた道を一気に駆ける緑ジャージの尻についていき、生徒はまだ余っていたチップから召喚する未知のフォルムの2種類のガンのトリガーをとりあえず引く。ここまでのチュートリアルで分かったこと──トリガーを引けば素人でも鼠を殺せる弾が出る。また生徒は先生の発言に従い覚悟をキメ、乱射する。

 

ディフェンス陣の崩壊したガラ空きの生産ライン、精密機器の数々に火力を全力集中────────。

 

先生生徒、男女二人、雄叫びを上げ、砲火していく数多のカラフルが炸裂し、ついに────激しい破壊行動が明けて、工場の生産機能を完全に無力化することに成功した。

 

焼き焦げ崩れ落ちる鉄色のアーム枝と、

汚い鼠たちを乗せて止まった煤汚れたコンベアと、

バグったようにチカチカ点滅するガイドランプ。

その光景を作り出した張本人ペアは……すぐさま女がはしゃぎ、ひとり大盛り上がりをみせる。さらに高まった極限のテンションで、制圧した敵の工場内にピンク色の祝砲を一発撃ち上げた。

 

「ははははふふ、これはまた若い仕上がりだなぁーー! ふふ一丁上がりだー。ばーーーっン♡」

 

「ハァハァ……はぁ、ッこれが……ダンジョン……想像より殺しに来てた……」

 

対照的に彼女の生徒はひざに手をつき荒げた息を整える。思ったままの何かを考えず言葉にして発していた。黙していては狂ってしまいそうなテンションを、なるべく平らに整えようと吐き出すように……。

 

「ふふふ。ここまでやっておいてなんだそのすこし分からない読書感想文は。──あぁ、ここがダーーーーーーーーんジョン!!!」

 

脚をクロスさせ、未知のガンを持つ両手をおおきく広げる。乱れた青髪のまま、見開き過ぎた赤目をやがてニッと笑いしぼる。

 

激しすぎた……数多の気味の悪い鼠たち相手の戦闘は終了。

最後は生徒を元気づけるためか、それともただ元より底無しに明るいだけなのか。またも雷夏ちゃん先生は一層元気におどけている。

 

そしてそんな彼女の様子を余り見ていた1人の男子生徒は、少し釣られて自分も笑おうとしたが──できず。

一転、汗に染まる青ざめた表情で……その存在にふるえる指を差す。

 

「ん? おいそんなに棒でつつくように指をさされたら流石の夏ちゃんも」

 

「ちがッなんか来てッ後ろおおおおおおにデカイのおおおお!!!!!」

 

「なんだよネズ……どうやら工場長のお出ましのようだな……。ははははふふ、ふふ……!」

 

「なんですそれええええええええ!!!!!」

 

壁面を派手に粉砕されたネズミ工場。

風通しの良くなったこの空間に……ゆっくりとずっしりとした足音は、生き残ったちいさな四足の裏に震え伝わり、響いていく。

 

大きな赤いキャップを被り、アタマがあるのか分からない。ずんぐりと膨らんだ恰幅腹に、鼠色のオーバーオールを着た緑肌の巨体がいる。

手に持つのは、その背丈と重量に見合う巨大鉄色のミンチバット。

それが〝工場長レッドキャップ〟。

 

熱こもる額から下にまでゆっくりと流れ伝う汗を、彼女は舌を伸ばし、その良い塩梅を舐めとり補給する。

そして一瞬目が合った先生は舌をチャーミングに出したまま、こくりと同調するように一度頷いた。

 

同調するよりは、はげしくどうにかしてほしい。

 

回復系男子生徒の表情は、最悪に驚き困っている────────────。

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