雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
▼ブロックコロシアム▼にて
四角い建築大好きモンスターでお馴染みのブロックんたちが作り上げた、かの部室闘技場にて。
今まさに雌雄を決する……ではなく、女剣士と女剣士の真剣勝負が久々の再び、その舞台とルールをおおきく変えて始まらんとしていた。
「また泣いて逃げてもいいぞ、最近はこちらの方が命懸けの鍛錬を積んでいるからな。私は手加減というものを上手くできるかは知らないぞ」
「うーうん、もう絶対泣かないし逃げない。(おにぎりはノーカウント)それに手加減なんてしたくてもできないと思うよ。スゥちゃんもこっちでは負けまくってるってさっき聞いたよ! ならそれってスゥちゃんを目の前で泣かせるチャンスだからぁ!」
「青い馬鹿な誰に聞いたかは知らぬが、出鱈目とでまかせで勝てるほど勝負は甘くないィ!!」
「知ってるよ! だから鍛錬してきたよ! あっちで! いっぱい!」
「それはどういう鍛錬か興味をそそられる… ナッ!!」
今度はダンジョン、ダンジョンルールで、オーラ唸るお互いの剣を交わし合う。
流水の剣は、どちらが真で上か。再びの決着をつけるために、剣士、宮本遂廉と西川苺茅は手加減なしの真剣で一切の遠慮なく打ち合った────────。
「まったくよー。ロックというよりパンクかこれは? にしてもスイレンのやつ田舎でまた山籠もり生活かと思えばこんなとこで鍛えていたなんてルール違反じゃねぇか」
「うん。剣術協会はダンジョン禁止だったはず、ずるい」
「なんだよそのピンポイントな縛り、聞いたことねぇな。まぁどうせ我が流派の剣は獣に向けるための穢れた剣じゃねぇ、みたいなことをお偉いジジイどもが集まって声明したってのは想像できるがな」
「ジーナはやりたい? このへんなゲーム」
「さぁな。でもこんなのに打ち込んでたら、いまごろ音楽ライターなんてなってねぇかもな」
「サンもそろそろゲームライターなろうかな」
「やめとけゲームもつくれない馬鹿なんだから」
「……あ、イチがピンチ」
「んだと? チッ、攻め方が相変わらずゴリ押しの雑だな! おいなにやってんだイチーーーヘタクソーーーーかわれーーーー!! そうだ、そう!! オマエに技なんていらねェ、力でツブせええええ!!! さっさとそのむかつく赤毛を」
「「ぶっコロせえええええ」」
水色姉妹の熱い物騒な声援が対岸の観客席の耳を貫く。ウロボロシー側の応援席に座っていた海都はその熱量に苦笑いしつつも、まじまじと苺茅とムスイふたりの熱き闘い模様に見入っていた。
「ここはすごい熱気だな」
「はい、すごいっすね…………ってハイ!?? え、ななな、なななんで社長!?? CGG!??」
渋い声に振り返るとCGG。麦わら帽子をかぶったクレープグレープグループの社長が、小麦色のスーツ姿で海都の後ろ席にいた。
「なんでと問われれば? 私はCGGであり、海とクレープが私CGGを呼んだからだろうな。海都くん、君の熱意、私CGGの未だ見ぬクレープがな!」
「聞いたぞ聞いたぞ聞かせてもらったぞ!! たとえ嵐、ダンジョン、深き海の中、熱心に探究し異国の地で作りあげたキミのそのフランベした情熱のクレープ冒険譚をおおおお!!!」
「え…えぇぇ……」
まさかの人物の登場に、海都はひどく困惑する。
クレープの焼かれあるところにCGGは降臨し、海都のウロボロシーでの苦難極秘クレープ製作冒険譚を鯛貝笑海のエベザリスからすでに脚色されて聞いていたようだ。
観客、珍客、賓客を迎えながらブロックコロシアムでダンジョン部とウロボロシーの交流試合と名を打たれた白熱の催しはつづき……。
迎えた待望の試合、
ダンジョン部雷夏vsウロボロシー楽天海都戦。
「あのぉー、せんせい? なんで俺が先生と??」
「裏切り者はたおす!!」
「ええ!??」
「なぁーんて夏ちゃんジョークだははっはは!! 聞いたぞ聞いたぞ、なにやらあちらでダンジョンのコツをえらく掴んだらしいじゃないかカイト生徒?」
「いや、コツというより……た、たしかに、俺海でふつうに呼吸できたり、大砲を作れるようになったり、オーラのこともいろいろウツボ姫様やサンゴさんに教わってぇ……はい(なんかみんな俺のこと聞いてる気が…)」
「フッフフフ。言わずともわかるぞ以前より研ぎ澄まされパワーアップしたそのオーラが、先生のこの目にはな」
「つまり……分からないかぁーー鈍感少年! この最強夏ちゃん先生が今一番戦いたい相手は────なのだよ、ハハハハハ」
「まじ……ッすか……!!」
威勢よく指をさす。
雷夏が今もっとも熱望する……そのお相手はまさに、対面する彼である。
先生からのまさかのご指名に、海都は目を見開きゾクリ……何故か己のカラダに武者震いを起こしてしまう。
いつもとは違う。その立ち位置が、現在地がちがう。
そんな熱き誘いに、久々のギラつく赤目を見つめ────海都は盾とハンドガンを構えていた。
数々の足跡や刃の跡が闘技場に刻まれた。
その後、次々とダンジョン部とウロボロシーの交流試合はつづき、流水流の三姉妹ジーナやサンまで熱気に釣られて出場するしまつに。もはや闘う相手は誰が誰を『下りてこい、そこのムカつく青髪!!』と指名しようとも自由であった。
渦巻くオーラと熱気に釣られたのは、それだけではなかった。
おもむろに腰を落とし、長脚を組みながら、この地のみじかく小さな変わった煙草を吹かす。
従者に艶やかな黒髪を結われながら、ウツボ姫は一等高いところにある賓客席にて乾いた地の闘いの模様を見下ろしていた。
「ふむ、小僧の棲む海はどれどれと遅れてきてみれば。なぜこうなったのじゃサンゴよ? 詳らかにワシに説明してみぃ(わるくはない
「彼女らダンジョン部と我らウロボロシーの親睦を深めるための交流試合らしいです。今、ちょうどその18試合目です」
「ダンジョンブ…血の気の多い種族じゃな…。にしてもなんと身の程知らずなこ────んじゃ?」
豪華席のうしろ、お付気の従者たちを跳ね除け、肩を叩き睨む赤目がいる。ゆっくりと振り返るウツボ姫は、ギラつく瞳で見つめる珍生物に遭遇してしまった。
雷夏のその挑む熱は、ときに見境なく。
その赤目は常に強きオーラを見つけては、見つめたまま離しはしない。
「これがあの小僧の師であったか。フフフフフ、じゃが、頭の方は残念、相手の実力とオーラを測れんとは大したことはなさそうじゃな。どれ、未海の珍獣はすこしふかし撫でてやろう」
煙管をふかしながら、ウツボ姫は小手調べを始めた。もくもくとオーラを固め形成された、龍のような泳ぐ煙大魚が雷夏へと牙を向き襲いかかった。
『先生その煙のオーラは────!!! 攻略法が!!!』
海都は思わず観客席から叫んでいた。先生のその構えはきっと真っ向勝負を挑もうとしているが、彼はその煙大魚を斬ることはできないとその身をもって知っていたからだ。
「あぁ、わかってる!!! 煙は剣でビリビリ斬れば、【爆雷斬】──攻略 ダァァ!!!」
「なぬっ!? 雷の…オーラ……。ハハハハハ、おもしろい。命知らずの種族じゃのぉ!!!」
煙靭を引き裂いた雷剣。
煙る景色さえ、一瞬に染め上げ斬り裂いたその雷のオーラは────ウツボ姫をやがて驚き笑わせる。
命知らずの青髪赤目、その種族に、ウツボ姫は煙草を吹かす遊びをもうやめ、姉上以外には久々にみせるその牙を剥いた。
水の牙が一瞬で地を砕き、紙一重で反応し躱す雷獣が前へと疾る。
カイジュウとライジュウ、研ぎ澄まされたオーラが激しく混ざり、トばし、ぶつかり合う。
鋭くワラう黄眼は本気か?
真剣にワラう赤目は本気だ。
ダンジョン部顧問雷夏とウロボロシーの支配者ウツボ姫はもはや交流試合のことなど忘れ、互いの熱とオーラを上げて、闘いながら激しく語り合っていく。