雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
駆け抜けた瞬雷と青髪の躍動に一同が注目し押し黙るなか──。
「手を組まずともここに集った知恵で考えればわかることもあるサ。手を組むかどうかはそれから考えればいいかい」
床に倒れた骨を菱形のダイヤチェーンで操りながら、別の椅子へと片付ける。
おもむろに腰を上げ動き出したシデン・レイラはそう語った。
「というと、な、なに?」
月山はまたシデンレイラへと聞き返す。そもそも集って自分たちが何を分かろうとしているのか着地点がまだ月山には漠然としていて不明瞭であったからだ。
⬛︎
墓場
カジノ
ガンショップ
etc…
──────
────
⬛︎
そして月山の質問に安直な言葉では答えず。何を思ったのか手に取ったチョークで前の黒板にみじかいワードを書き連ねていくシデンレイラ。
「え、これってぇ…」
「さっきのデータで見た気がするけど?」
「ななんか……あるんすかね……?」
「キミたちも習ったことがあるだろう獅子くん。万能色や表裏色がもっとも得意なこと、そう自らに設定した共通概念。役割を決めた自由で便利で不便なオーラのことさ。あぁ、鷲ちゃんの方が知っているかい?」
「知ってはいるけど…てか目の前のひとに直接習ったけど…。これゾンビとかクリーチャーを見かけたって場所のことでしょ? いっぱい並べられてもここからじゃ何のオーラかなんかすぐにはわかんないんだけど…(デマも含んでそうだし…)」
「あぁそうか!! ってことはこれに共通する何かが??」
「うーーんそれはわかってるんだけど…………あえていうなら…うーん……死? 死神?」
「そそそれっすよきっと!!月山さん!!」
「あ、楽天くんちょっと黙ってて、今まだ考えてる最中だから」
「……えぇ?」
「んやや? 武器を買ってカジノに潜入…きっと暗殺者だな! 凄腕の!」
「フッ、成仏できない亡霊か」
「フフフフフ、シンキングタイムはたのしめたかい? みんな想像力豊かで切れ者だね、しかし手放しで正解のハグをするにはすこし惜しかったサ」
「惜しい? なななんだろ?」
「ちょっとちょっとクイズなんていいから教えてくんない! シデンレイラ? 釣られて考えてしまったけどそもそも本当にオーラが関係あんのぉ?」
「はじめからクイズのつもりはなかったサ。じゃあ時間が惜しい者もいるサ、背骨が盗られる実力行使になる前に、もったいぶらずに言わせてもらうと、おそらく未知の敵の設定し自動操作した共通概念は────〝うらみ〟サ」
丸で囲われたワードのひとつひとつが、一つの言葉へと蜘蛛糸の中心のように集まる。
空欄の丸に新たにチョークをすり減らし書かれた言葉は〝うらみ〟。
「うらみ? なななんで? …だろう?」
「フッ、死人に口なし、だとすると恨みのオーラは募るばかりだな」
「んやんやははーんそうきたかシデンレーラ! いやいや恨みがおおきなオーラになることはありえないわけじゃないな!」
「そういえば…前コインゲームで賭けた馬のことはちょっとはうらんだかも……」
「た、たしかにアレはざんねんだったっすね……あはは」
「貴様らは何の話をしている?」
「「な、なんでも!!!」」
死にたいほどの、仮に暗殺者になるのも厭わないほどの、このままでは成仏できない、──うらみ。
未知の敵のオーラ攻撃の正体は、うらみの共通概念と黒板の上にはまことしやかに記されている。
集めたデータとそれを独自の観察眼で読み解いたシデンレイラの線と丸で繋げた推論が示したのは、はたして本当に広大な土地をもつアーメリガ帝国にぽつりぽつりと表面化した恨みか、それとも別の恐るべき何かか。
緑蜜高校ダンジョン部は休日の理科室で、やがてチョークを奪い合い、黒板をカラフルに汚していく。
ひとつの推論があらたな推論をよび、いつの間にか灯り白熱を帯びた議論が進みゆくのであった────────。