雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
また2日後の放課後に理科室に集められたダンジョン部の海都と月山の2人だけであったが。
現在白衣と金髪の似合う日米ハーフの才人にどういう風の吹き回しか珍しく授業をほどこしてもらえることになった。
【第一回 明智マリア先生の地球生物おもしろ授業】
そう題された価値のある授業の内容は漢字四文字が黒板にそこそこ大きく書き記されただけのものであった。
「この前の君たちの討論会の熱意にあてられてね、博士と名乗るワタシも一応ひとつの答えにたどり着いた。だからせっかくのことだと思い今日は君たちに披露する予定の私の講義内容が退屈でないか事前に判断してほしいと思ってね。お互いの都合のついた時間でつかまえたしだいだ。ではさっそくの本題、といっても今日ここに書くことはこれだけしかないが────ワタシが漢字を教えるというのも、フフッ、すこしおかしいがそこはあまり言わないでくれたまえ。さぁ授業をともに前に進めるために生徒諸君にコレの読み方をうかがってもいいかな?」
⬛︎
冬虫夏草
⬛︎
小学校で習う漢字しか使われていない熟語を、緑蜜高校の生徒である海都はおもむろに手を挙げながら読み上げた。
「トウチュウカソウ…それってたしか漢方薬とかの…?」
「よく知っているね。滋養強壮効果があるとされ、生薬やドリンクにされているその冬虫夏草。しかし今回は人間にとってじゃなくて昆虫の立場に立って考えてみた」
「冬虫夏草、冬は虫として生き夏は草になる由来はその名の通り。つまりこれはきのこ、虫に寄生した菌類の一種ということさ」
「え、虫に寄生したきのこ!? そうなの楽天くん?」
「いや俺も詳しくはないっすけど。クレープに使うこともないですから…。あのぉ、それより人間じゃなくて昆虫の立場ってのはもしかして?」
「うんつまり繰り返しになるがこのきのこは人間にとって貴重とされる薬でも、昆虫にとっては厄介な感染症を引き起こす菌ということだよ」
「どこかの種のアリがこれに寄生されてしまうと、寄生されてしまったそのアリは何食わぬ顔で普通に群れの中で生活をつづけるのだがある日何を思い立ったのかフラフラと酔ったような足取りで巣から出歩いていく。やがて見つけた高い葉の裏に噛みついたままじっとそこにとどまり、やがて寄生したきのこ菌の子実体が真っ直ぐに伸びてゆく……というデータがある。つまりこれも冬虫夏草……自分で説明してなんだがおかしな似たようなサイクルだねこれは、ふふふ」
「わ、わかったけど! わからないんだけど!(てか地味にえげつない話じゃん…)」
「つまりこれはゾンビ菌ということだよ」
「「え、ゾンビ??」」
「このきのこはゾンビ茸とも言われていてね。暇な学者たちに長年研究されつづけているおもしろ分野なのだよ。で、どうだったかなこれはいささか高校生向けのおもしろい内容だったろう? あ、これについてもう少し詳しく知りたいと思ったのなら後でワタシのラボに来るといいよ。ワタシも昔ハイスクールでこれに一時期興味を惹かれて別のクラスの友人と共同研究したことがあってねその時まとめた資料が────」
「「高校生向け……」」
いきなり始まった異国の先生の授業のオチは冬虫夏草、その比較的日亜人にメジャーな言葉の由来をもっと掘り下げた深く。人間にとっては乾燥させ煎じて飲む効能の高い薬で、昆虫にとっては自分の身を勝手にコントロールされてしまう恐ろしい寄生菌。
つまり人々の理解の落ちゆくところ、よりかんたんにゾンビ菌と形容してもいいようなきのこの恐ろしい生態、生存戦略であった。
海都と月山はゾンビというワードに、何を言われなくてもこの前散々大人たちに混じり語り合っていたことと共通する何かを見出してしまう。そしてお互いの顔を驚き気付いたような同じ表情で見合わせた。