雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
螺旋する魔王城の手すりを軽やかな鼠脚で慣れたようにすべり、大挙する追手を撒いてゆく。
壁や床いたるブロックをひとつひとつ盗み、その特異なオーラを用いて思うがまま宙に配置する。ブロックの家をばらしながら白フードの鼠は俊敏巧みに空を駆ける。
「チュチュ…くちゅんッ……。チュチュンもたんれん、ダンジョンブ」
大量に釣れて採れたきのこモンスターの胞子は彼女の敏感な鼻先をむずむずと刺激するが、我慢する。
鍛錬を重ねたチュチュンのオーラ操作術は部内でも一級品との評価を得ている。
そしてやがて降り注ぐ……空をただよっていた足場にしていたブロックたちがメテオのごとく、彼女の色を放ちながら。
人間たちのよくするお遊びも学び、ダンジョン生まれの彼女はより強くなった。
チュチュンは白いミトンをはめなおし、風にとんだ白いフードをかけなおした。そしてまた騒乱のなか他の仲間たちの元へと素早く手助けに向かい走った。
鼠の足音もあれば、人間の足音と、茸の這う変な音もある。
揺れる城内の一室、黒い保険室のベッドから寝ていた患者を動ける者は運び出した。
「ちょっとなにが【お城でお忍び冬の豪華お食事会にダンジョンの方々をご招待】よ!! 無駄ドレス、無駄化粧、無駄腹すかし!!! 来てみれば話がぜんぜんちがうじゃないのおおンぼおおおお!!!」
「はいだだだだんおねぇ……さっきクソデカいへそのごまが取れたとおもったらぁ…ハナクソでしたぁ…ダンおねでちゅ…というわけではじまっておりますぅ……」
「クッソしょーーーもない吐信オープニングトークっ!!! って同業者の背中でやってんじゃないわよおお!!! ほらほじってないでひとりで歩きなさいよぉ!!(鼻が親指になってもしらないわよ) 何が悲しくてお姉さんがいい年した変なお姉さんおぶってスタコラやってんのよぉおおお ……ほっ!??」
病人のダンおねをおんぶし担ぐンボおねは廊下をスタコラ走っていたが、やがてその愚痴を吐きながら走る足場はいつの間にかなく────底が抜けて落ちてゆく。
「んべっ!!?」
「だべっ…」
開いた本から伸びたミドリ魔法の蔓が、下へと落下していたお姉さんたちの腰を絡めとり支える。
緑蜜高校2年図書委員の小谷螺夢はひとつ安堵の息を吐いたが、安堵する息を吐くのは間違いだとすぐに気付いた。さっきからお構いなしに崩れてゆくこの城内、ねじりのばしたのばした太い蔓道の先、穴のあいた風通りのいい外の景色とその背中を彼女は見つめる。
「なーはは……なんか死の探訪ってより、ハラハラドキドキ死の綱渡ってかんじ。おもえばここ10年20年で変わったものってなんだっけ、でも昔の方がよかったなんてそんな事言ってるうちはまだ世の中穏やか。ヒトの闘争本能にほんらいレトロもモダンもないらしいから、その背を見習えば昔のギャルがスマホの扱いもオーラの扱いもできちゃったり。たとえここまでが上手くいきすぎのちょっこし良い夢で、ある栃木R市の空想体験物語なら、タイトルはきっと、恋と読書とダンジョンと! 最後は──」
「ちょっこし【ダイナマイトプラン(と)】!」
城を突き出た蔓に乗りながら狙い澄ます……。
蔓に巻き付け幾多も束ねたバズーカの砲門は一斉に唸り、牛頭梢の灰色のオーラが城へと近付いてきたおかしな髑髏巨人の右膝へと直撃した。
『アイタタあああああ膝にバズーカを受けてしまってもおおおお骨折なんて大丈部位!! 骨キノコだから♡。オウオウオウオウさぁそのタマすぃぃを吸われたくナクバいけいけいけええええ骨のある野郎どもおおお! ってきのこだあああ!!! えぇーマイタケェちがったマイテェ……特段特選シイタケている訳ではございません彼らに魂はマッタケございません。なぁぁんテかんじでいってミヨーーーー!!! エンジョイ&デストロイ♡♡(このように♡)』
『えぇ~~わたくしぃぃブロックコロシアム実況のホネズナーあらため、いつぞやの黒焦げのリッチあらためぇ〜〜の、子実体のタケズナーがおもちゃの城をぶっ壊しはしゃぎながら場外乱闘いや城外乱闘の模様をお届けしておギっ────』
「これでマケズナー、よっと────」
膝にバズーカを受けながらも割れた皿までスクスクと再生。その熱ある実況でモンスターたちを扇動していた骨と茸のハイブリッド巨人は起き上がりまた魔王城のブロックを子どものようにはしゃぎ壊していたところ────
そのうるさい実況と破壊活動をしていた手が止まる。
宙を舞った髑髏首はやがて地に落ちて、土へと還ってゆく。
一瞬の炎がその首を焼きおとした。巨躯モンスターの肩に乗った黒パジャマの剣士は秘刀名刀赤蜜に宿った熱に生の息をふきかけて冷ます、そして試しも用もなくなった刀のその胸の鞘へと仕舞おうとしたが……。
空の足場からモンスターたちの燃えてゆく地をながめて何かをみつけた。
×ボタンの雷光で一瞬で地に降りたド神子は見つけた気になったソレを拾った。
(きのこだと思ったら、よさげな携帯だった、)
そしてきのこのような携帯電話らしきモノをさっそく耳にあてがい、交信を試みる。
「もしもーし、きのきのー、たけたけー、マツマーツ、ちがうか? はは、」
『────────────────おやおや? ────────どちら様デ?』
「おやおや、ド神子だけど」
『────────そうですか。ワタシに────つながるとはきっといいエネルギーをおもちですね』
「エネルギー? オーラじゃなくて? いやー、それほどでも、あるかな? まだ、はは、」
「────────あれ、きれた?」
再度耳から離しぽちぽちボタンを押してもどこにも繋がらない。
その拾い物の携帯で意味のない行為をやめたド神子はおおきく欠伸しながら背を振り返った。
「さぁて、セクシーダイナマイトさくせぇ~んも終わったしどっかに仮眠室は、────────ないか? はは、」
静けさに佇んでいたブロックの城が平静を装うもついに耐え切れずか、じんわりと音鳴らしその身を崩壊させてゆく……。
ダンジョン部は災難に招かれたンボー・マラスカットや復活した小谷螺夢の手助けもあり、部室エリアを襲った茸や骨やらの敵勢力を平らげることに成功した。
やがて半壊した城から脱出した仲間たちが、汗ばんだ黒パジャマの元へとブジな足音をならしながら駆けつけてきた────。