雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
一閃の雨は降り、雷は降った。
道化師は笑わない、撃ち抜いた弾丸にささやかな鎮魂の意を秘めた。
雷夏、ムスイ、シデンレイラは生徒を前に出さず狂える三匹のハイエナたちを同時に始末をつけた。
盗賊団のアジト、その黄金に染まった舞台上で繰り広げられた唐突なさんびきの復讐劇はやがて植物のように腐りゆき…移ろう暗闇の景色にとけゆき────
「灰色の浮雲にとぎれとぎれの月は満ち輝く──復讐はならずか」
「ようこそ。よくぞたどりついたな」
「険しい道中をそれも5人全員か。気が利かなくてすまないな。一番前のチケットを用意すべきだったか」
煌びやかさと物騒さは打って変わって、場面は黒い木板の簡素な舞台。
その中央にぽつり、設置された王座に頬杖をつく男がひとり。スポットライトに照らされた。
「んや……一体どういうつもりだ。こいつらはあのとき夏ちゃんが追い払った骨拾いのハイエナだろ?」
「余裕なようだが、解せぬな」
「予習復習はばっちり、おおかたの察しはつくサ。寄生されたといったところかい」
雷夏たちダンジョン部の大人組は動じずに問いただす。その王座に座る男に。
それは王座ではないが、その男が座ればただの木椅子も王様が座っているかのように見えた。しかし王を前にしても物怖じしない3人の役者たちに問われた男はずっとしていた仰々しい頬杖をといた。
白いマッシュヘアーは目元まで隠れたままだが、隠された情報からも十分に端正な顔立ちであるのが脳に補完しうかがえる。そして注目を浴びた男の暗い紫色の唇がゆっくりと口角を僅かにあげて……。
「寄生か。そうだな、普段ならそんなヤツらは追い返すところだが望み通りノせられてやったのだよ。
「さぁて。獣の牙も恐れないなかなかの演技をみせてくれた盗賊たちにはその演技に見合った褒美をやらないといけないな。何が
「コケコッコーーーー!!! ──お上手な芝居はもういいのかい?」
金銀財宝だらけの先ほどとは違うお金のかかっていない簡素な舞台に、頬杖をやめた王様がいる。
鶏鳴を真似ておどけたシデンレイラはその王様の芝居はもう終わったのかと問うた。
「ははは、返答しだいだな」
答えはあなたしだい。
そう言わんばかりに余裕たっぷりなクールな表情で、男はその身に武器を向けられていても攻撃する素ぶりもみせず木椅子に腰をかけたままだ。
「んや、それならそうだな。────今すぐこっちの世界へのオーラ攻撃をやめろ。きのこの菌で人に干渉していると既にネタバレの把握をしているぞこっちはな、ははは。ダ〜ンジョンしてない者たちは関係がないからな、うん! まずはそうしてくれ」
雷夏は顧問部長としてダンジョン部を代表し堂々と答えた。少し考えたそぶりをみせたが、雷夏の返答は短いながら他の部員たちも各々頷き肯定する内容であった。
「──なんだそのことか。いいだろうちっぽけな復讐劇の延長にすぎないことだ」
ひとつ、指を立ててギラつき睨む青髪赤目をみて、
男は冷静な様子でそう言うと、とつぜん指を鳴らした。
はじける音が広がり、この場にいる全員の耳にクリアに届き、おおきく響き渡った。
ながいながい残響が止むと、ムスイはゆっくりと刃の振動を振り払った剣を男に向け直した。
「椅子にふんぞりかえっていたわりに随分聞き分けがいいな。いきなりつよく指を鳴らしてどうした、緊張をとくためのおまじないか?」
「復讐者はお前らが討った。それでこの犬どもの物語はおわりだ。望むならもう一度鳴らしてやろうか?」
男はそれでも動じない。しなやかでながい指をゆっくり擦り合わせ溜めながら──パッと、その手を開いてすかした。
「そういう区切り方かい、おもしろいセンスだね」
「あぁ、何だそれと思うようなあっけない結末が案外好きでね。経験上分かってしまうのさ、これ以上を望むのは蛇足というんだろうな、と。それでオレに──まだ用はあるか?」
男は椅子に深くかけながら、両手をゆったりと広げて彼女らに再度問う。
「無論、自分の手も汚せぬ遠くから他者にヤらせるばかりの卑怯者の言うことだ。真偽を確認するより、その指を鳴らせなくした方が早そうだ」
「幕間に片付けるのもありサ。黒幕の王様を」
「あぁ、いくらダンジョン、盗みをはたらいたハイエナとはいえさっきのようなので帰れと言われてもこっちが納得いかないからなぁ? それにそっちのしたいように踊ったんだ。今度はそっちから夏ちゃんを納得させてみせろ、絶対的に、ははは!」
「俺も、いい気分はしなかったっす…(たしかにあのときのハイエナ……)」
「そ、そういうの、趣味悪い気がするし…!」
各々は迷いのない返答を。
やはりダンジョン部はその男と敵対することを決めた。
遠隔からのオーラ攻撃をやめたという真偽もわからない、仮に本当であったとしても、直接の危害を加えていなかったとしても、その座に悠々とついている黒幕は一体だれか────
「はははははははは。クロマク……黒幕の王様か…気に入ったいい響きだ。そういうことか……」
おもむろに重い腰を上げ、
華美なマントを翻す。
はためくマントに見えた引き締まったシルエットは王様には見合わない白い水玉と黒の総身タイツ。
一癖ありそうな舞台上の王様は舞台袖のきのこ人間ドクピィに暗がりから投げ入れられバミリ(舞台上のマーキング)に突き刺さったサーベルを引き抜いた。
「わかった。幕間のあいだだけ、そうだな…──まとめて相手してやる。盗賊どもを
黒幕の王様は向けられたそれぞれの敵意に向けて、その鋭い剣の切先で返答した。
それは演じているのか、素であるのかこの場の誰にもわからない。
だが、白髪の王様は舞台上で微笑う。
リハーサルもない、ただ真剣を向け合い。
やがて視線が絡み合った疼き輝く赤目と、お互いに合図するように……激しく刃を交え合った────暗雲は吹き飛び、舞台を照らす青い月の明かりが煌々とひろがった────────。