※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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ようこそダンジョンへ

剣と剣が黒い舞台上に火花の星を咲かせるなか──

 

虎視眈々…隙を見て威勢よく仕掛けた月山は、十分にホールドし溜め込んだオーラブロックを刃に乗せて敵にぶつけた。

 

「【テクニカルスピン】!!! ────アレ?? どっ」

 

少女の剣を華麗に受け止めた王様は、しかし、凄まじい回転をしながら舞台を滑り飛んでいった。

月山に設定されたオーラの共通概念の効果が剣を交えた相手へと発揮されたのだ。

しかし、月山が回転させ暗がりへ消えた王様という名のブロックは────何故か月山の隣へと華麗な高速スピンをしながら現れた。

 

「酔いしれたいのか、オレに?」

 

華麗なるターンから繰り出されたしなやかな長足は────間に割り込んだ白い盾が受け止めた。

まとめて蹴りとばされた学生たちはそれでも男子の海都が踏みとどまり、その盾を構え直して誘う。

レディのピンチにあらわれた小さな緑の王子役に誘われた王様はマントをはためかせ、走る。

しかし棘のある、黒床から不意に突き出た白いイバラの罠が王様の邪魔をする。

 

「その役はキミに向かない」

「ぬけ!?」

 

どこからギミックが飛び出るのか名優は分かっていたのか、かろやかなステップで白いイバラ道を越えて、目の前の白い月へと一直線。

 

そのオーラある演技に驚嘆した海都はその場ではりつけられたように盾を構えることしかできず。

口角を上げたまま少年へと走り込んできた白いきのこ髪は────赤髪にかっさらわれた。

 

剣と剣がステップし刃と刃を熱くこすり合わせて語り合う。

しかしムスイはその男の剣を言い表すことができない、今まで彼女が重ねた剣のどれとも違うしなやかさに力強さそして鋭さ……。

 

(だが、ヤれるようだ)

 

相手の剣を見極めながらたたかう、いつもの万能ノ流水剣で。そうしていると、剣を重く重ねた間近の男が嗤った。

 

 

「勘違いしているなお前ら。お前も」

 

「なに…?」

 

「お前が一番と重ねているソレは、オレのイチバンじゃないことに。そしてオレが────」

 

男はなんと片手をはなしムスイの両手で握る剛剣を受け止めたまま、空にあそばせた指を鳴らそうと────

 

「ッ…コイツ!?」

 

ムスイはその男の指の動きに気を取られたのか、阻止しようと二太刀目を強引に出した。

だがしかし、見え透いた剣筋。

手をパーに咲かせて、指を鳴らすこともない。

嘘に釣られ剣士がみせた致命的な隙に、光る星が突き抜けた。

 

「お前のイチバンだと喰(し)っておけ」

 

長い腕を伸ばし繰り出されたとてつもなく速い突きは、間に合わせただけの刃を力強く砕きながら赤髪の女剣士の体ごと果てへと突き飛ばした。

 

「お次は夏ちゃんだぞ!!!」

 

「元気なだけでどうにもなるのは子供だけだ」

 

赤を突き放した途端、交代したように一直線に突っ込んできた青い獣は────

剣と剣、オーラとオーラが合わさった途端に、後ろへと吹き飛んでいった。

いつぞやのビーチでの古井戸神子と同じように、雷夏のオーラは読まれ利用されてその元気な剣は王様の剣と一瞬かち合っただけで弾けるようにいなされたのであった。

 

しかし、この攻撃と誘いには終わりはない。

王様に休む暇は与えんとばかりに、巻き付いた菱形のチェーンが元気な青に気を取られていた彼を拘束した。

 

「一曲どうだい?」

 

「あぁ、誘うのはオレだ」

 

男が横目に睨むと、橙色のオーラチェーンが急に腐りゆくような気の色を纏いだした。

不吉なオーラが伝うのを感じたシデンレイラは即座に銃を捨てた。

手放した銃は拘束中の男へと巻き取られるように進み、やがて銃に突き刺していたスペードのトランプと共に爆発させた。

 

 

舞台上に起こった爆発の中、濁った煙のナカ……そのシルエットがマントをひとたび払うと、鋭い風は吹き、何事もなかったかのように王様は焼け焦げた舞台上に佇んでいた。

 

 

ダンジョン部の次から次へと誘った攻勢をも、王様には効かず。

どれだけ激しく付き合わされても汗ひとつかかない男のことを、態勢をととのえた彼らはそれぞれに目を凝らした。

 

 

(チッ────さっきの剣とオーラ…伊達じゃないな。いいだろう、次は油断するか…!)

 

(この人、う、うごきが…! 華麗っていうのか…)

 

(はぁはぁ……やばくない……クリスマス……間に合うの…!!)

 

(ボーンクイーンのような劇場持ち……異界でのたたかいは相手のオーラが高まると聞きます。起点物質、何かタネがありそれを破壊するのがこういった状況では有効になるはずですが……どうやら…雷夏と剣士ムスイはそういうことでもなさそうですね? しかしそれより、先程の不吉なオーラは…咄嗟にだした死のオーラのトランプに吸わせましたが────────)

 

「はははは、いやぁ、ヤルなぁ? まさかド神子みたいにバチバチされるとは思わなかったぞ。んや────でも、さっきのはこっちも本気じゃないぞ? 雷夏ちゃんはここからだ!!!」

 

盛大に転ばされた雷夏は鼻血を親指で拭いながら、勇ましくそう言った。

ここまでは自己紹介のウォーミングアップと言わんばかりに、ダンジョン部はその青ジャージの女教師を筆頭に、

 

再び戦闘態勢に移ろうとしたそのとき──

 

「幕間は終わりだ。俺は闘わない。お前らは好きに闘え」

 

「「な、なんだと???」」

 

真っ先に剣を握り構えていた赤と青の女剣士たちは声を揃えて驚いた。

驚いたのも無理はなく、敵の王様は勝手に終わりを告げ、勝手に背を見せて暗がりへと消えようとしたのだ。

 

当然そんな勝手を許すはずはなく、雷夏とムスイはすぐにその背を追おうとした。追おうとしたが何故か追いつかない。景色が不思議にも伸びてゆき走っても男の背に追いつくことができないのだ。

 

そして辺りは黒から、どこかの知らない荒廃した星へと移ろう。

ふたりは荒地を懸命に走れど追いつけず。

やっと歩きを止めてゆっくりとふたりに振り向いた王様は──

 

「いきなりきのぼり、いや塔、いやきのこのぼりかい…」

 

 

塔が伸びると、また景色が遠く離れていく。

舞台下からせりだしたように天へと飛び出した仕掛けは、きのこ。

その太い柄が地を鳴らしぐんぐんと空高く伸びてゆく。

 

やがて────

 

「意味のないただなんとなく闘うだけのクズ共。お前らの空虚な物語には呆れた。何がクリスマスデートプランだなにがクレパ、クレープパーティーだ、なにが自作小説だダンジョン救助隊だ?」

 

「アイツなんでクレパを!?」

「え……ちょ…!??」

「……こそばゆいところを盗まれたかい…」

 

「ロールプレイングゲーム? 自己満足の果て絶対的の果てだ? ダンジョン部だぁ?」

 

「安全地帯からべらべらとうるさくなったな」

「夏ちゃんまで心の宝箱を読まれたか? んや、やるな?」

 

((それはさっき叫んでた気が…))

 

「「って!??」」

 

男は知り得ない情報をべらべらと上から語り出す。

はるか天のきのこの傘に乗りながら性格が変わったかのように、他者を腐し尽くす。

 

さらにそれだけにとどまらず、

 

男を見上げていた雷夏たちの周りを取り囲むのは──数多のモンスター軍勢。たかいたかい一本のきのこの塔から降り注ぐオーラ胞子が、荒地から次々とモンスターを咲かせていく。ありえない魔法のように軍勢と呼べるほどのモンスターたちができあがっていた。

 

「くだらない闘争本能、くだらない正義、くだらない愛に、くだらない野心。お前ら……毒も薬もなくて足りねぇダロ?? だが安心しろ、オレ様が用意した今のお前らにイチバン似合う舞台だ」

「くだらねぇくだらねぇ闘いの果てには、何が待っているか見てくるといい。腐った魑魅魍魎の奈落でな!!! ハハハハハハ、ハハハハハハハ!!!!!」

 

魑魅魍魎の奈落。

まるでこのモンスターの跋扈するどん底がお前達ダンジョン部の行き着く果てだと言わんばかりに、男は大声で吐き捨て高笑いをする。

 

 

「アイツめ!! 本性はけっきょく卑怯な道化か!!! 気をひくためにわざわざな大根芝居を…チッ!!」

 

「これってぇ…!? 今まで見たようなモンスターたちがぁ??」

 

「さながら夢と恨みのモンスターハウス、きのこよりこっちが! 本命だったかい!!」

 

鼠に骨に巨人まで、ダンジョン部が今までダンジョンで倒してきたモンスターたちをシミュレートするかのように、見たことのあるモンスターたちが薄汚れた姿で彼らに牙を剥き襲いかかっている。

それは寄生された獣か、それとも恨みの幻体か。今までに見たことがないほどのとてつもない数の亡者モンスターたちがたった5人の人間たちへと群がりつづけている。

 

 

そんなもみくちゃな状況の中、月山はその焦燥をかたどった表情で寄るモンスターを処理しながら、

 

「ど、どうすんの!?? ってあ──」

 

背中と背中がぶつかった。ちいさな緑のブレザー背に、おおきな青い背中が──

 

「ツッキー、アレだ、たのんだ。必要なときだろ? ふふ」

 

「えぇ!? あ、────うん」

 

生徒は気付いたように頷き話しかけてきた先生の言う事をきいた。

 

そして女子高生はオーラを積み上げ願をかけた、赤くウインクするその青い背に────

 

 

 

 

窮屈なマントを脱ぎ捨て、茸の翼をひろげてイチバン上の風にあたる。

 

その塔に人はのぼることはできない。

その塔を人は建てることはできない。

その高みに人は近づくことはできない。

その王を人は知ることはできない。

オレ様の毒(あじ)を喰(し)るには、どいつもこいつも足りない。

 

いつからか人を求めてばかり、いつからか人を見下げてばかりいた。

 

今もこうして────

 

 

「ようこそダ〜〜ぁンジョンへ黒幕王子!!! 雷夏ちゃんが待たせたナ!!!」

 

「はははは、スナオな生意気は痺れるナァ!!! ナッツ・カミナリぃぃ!!!」

 

 

翔び立った一瞬の雷光が喰い破ったのは茸の片翼、塔を堕ちゆく王子は笑う。

痺れるオーラを纏いながら飛翔した…おもちゃの翼を手に入れた雷獣もまた笑う。

 

白い塔の道を逆行し風にうたれ流れながら、王子に会いにきた雷獣はスピードを上げ再度その高みに追いついた。

再び喰いやぶらんとした雷剣には、毒毒しく染まった頭上に浮かぶ天使の輪の小道具で殴り王子は返事をした。

 

出会いは塔の頂上、そして空中戦。

高く聳える王座にはブロックの翼で、翼には翼で剣には拳で追いつき合う。

雷夏と黒幕王子の選んだ闘いの舞台はだれもいない2人だけの空であった────────。

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