雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
雷鳴が白い塔の柄を焦がす。
どちらが天使でどちらが悪魔か、そんな役の割り振りに意味はなく。ただ追いついた雷獣と待ち焦がれた王子は命と命、オーラとオーラを幾度もぶつけ交わらせダンジョン異界の朱空を戯れていた。
「【夏ちゃんヨーヨー】!!!」
嘴のように啄み抉る王子のレイピアに貫かれまいと防御行動を取った二枚の盾は──とつじょ雷電の糸をひき、危ういヨーヨーのように独特の弧を描き伸び進んだ。
高速回転する雷のヨーヨーの勢いある軌道につかまってしまった王子はその茸の両翼を痛くもがれた。
「ソレがどうしたァァ翼が無くてもオレ様はトべるぞ!!! はははははナラお前はどうだ!!!」
その茸の翼は飾りにすぎないのか。
両翼を失った王子は空に妖しいオーラ胞子を撒きながら浮遊したまま、もがれてもなお命を恐れないカウンターの攻撃を放っていた。
さっきのお遊びの攻撃を真似たように飛ばされた毒天使の輪が、おもちゃの片翼をスパっと切り裂いた。
雷獣は所詮地を這う獣か、不完全な片翼をもがれては飛ぶことはできない────堕ちてゆく。
しかしまた空で、その背で、積み上げて、その翼は息を吹き返したように雷電を放つ。
「電池がきれない! かぎりッ──夏ちゃんは折れない! 可愛い生徒たちも見てくれていることだからな!」
地から飛んできた気の利いたブロックを見事なオーラコントロールで空中ドッキング。
その背に頼れる翼にし、失った翼をまた雷獣は手に入れ空をおよぎ笑った。
「ははは、なんだソノ生物は!! 己の格好を忘れてまで、まだ不恰好に舞いたいかァ!!」
「あぁ、子どもの頃ちょうどいつもながめるおなじ空に描いていたぞ。願わくば格好いいキレキレのハチドリのようにな!! 絶対的に!!!」
背に返ってきた毒の輪を勇ましく斬り裂いた。
一閃の雷剣のオーラは昂り、地に轟き堕ちるほど。
王子の毒をも喰らいちぎり、彼女のダンジョンへ…目の前に浮かぶ強者へ挑むココロは絶対的に変わらない。
王子は彼女の語り魅せたうわべばかりの甘い
またカタチ作った毒の輪は、ひとつ、ふたつ、みっつ────幾多も並べて嗤ってみせた。
「ハチドリだと? ははは、へたくそに化けているのは天使か悪魔かどっちだ? どちらにせよははは──忘れ物だ、輪っかつけて飼ってやるよ」
「くだらない輪っかはへし折る! 夏ちゃんは天使じゃなくて、あくまでダァンジョン!! どうにもよわい神様の言う通りにはできないらしいゾ!!! はははは!」
「言う通りになるんだよ、神様も獣も雷もすべてオレの前ではな!!!」
「ナラッ──もう上だぞ!!!」
目にも止まらぬ天からの強襲──
雷光は疾り、雷は降る。
王子は毒々しい輪を束ねてひとつの腕輪にし、上から轟いたその鋭い雷牙を受け止めた。その痺れる栄養をたんと受け取り、蠢く茸の翼をまた生やしながら、また表情と滲み出るオーラは邪悪さを増し毒を増す。
雷夏と黒幕王子、白い塔を螺旋しながら焦がしていくふたりの熾烈な闘いはもうその熱を、ぶつけ混ざり合った闘いのオーラを止めることができない。