雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
それは夢か幻か、一瞬の時間旅行だったのか。
どちらにせよ男はついにずっと目をつけていた覗くことのできなかったその赤い宝のありかを────
「この箱の中身がみえないか忘却の姫にはァァ! 忘れ草の茶でも飲んで寝ていたか苦しみから逃れるそういう術もあったかただ酔いながら逃れの町にただりつけるとはソレは盲点だはっはっはゼロへ誘う忘却の味とは強烈だな! 無知で人を殺す毒なぞよりィィ!!」
「さっきから何をいってる!」
「ははははは良かったなァ、お前のたのしげにうたうダンジョンは終わっていたのだよ! オレが先にみつけたぞナッツカミナリ!!」
「んや! ちがう! 夏ちゃんはダンジョン生まれで! 絶対的の果てがダンジョンにある!! 今もこうして挑みつづけている!! 何を言っても構わないが勝手に人の旅を終わらせると怒るぞ!!」
「怒るだとォ?? ははは考えなしに挑みつづけるそうしていないと不安で死ぬんだろハミングバードおおお!! 甘い幻想の蜜を求めてせっせとうるさく必死だなはっはっはあっはっははは!!! ここからはもうないぞ!! オレと会ってしまったからには半端な進化を遂げたお前にも痺れる憎悪の味をタップリと教えてやる!!!」
「何を見たかは知らないが! 例え甘い蜜の花はそこにない、そうであっても夏ちゃんはダンジョンに憎悪なんてないぞ!」
「憎悪がない人間はァァ!! 不自然なのだよハミングバード!! きっと絶望のあまりお前は置いてきたのさそのダンジョンに!! そして俺はそのおぼろげで錆びィィィィ月光に照らされたお前の無くした鍵を今にぎっている!! コイツはイきそうなほどに最高だぁぁ!!! ナァ、そうだろぉお!!!」
「最高なのはダンジョン!! ダンジョンでめいっぱい体を動かせる! ただそれがたのしい!! そこに憎悪なんて味は感じたことがないな! ははは鍵ならもうひとつ自力で見つければいい!! 錆びてないとびきりのヤツをな!!」
「その果てに燃え尽きてもその甘さを囀れるかハミングバード! やがて逃げ場さえなくしィィ自分の雷に打たれ燃え尽きるその果てがぁぁはっはーーー!!!」
「あぁ…夏ちゃんはな! たとえ果てで何がどんなバケモノが待っていようとも! 強くなって突き進むただそれがたのしい!! だからこじあける!! 自分自身の刃、この雷のオーラでな!!」
「こじあけたその果ては悪臭の焦げこびりついたドス黒い憎悪だ! そうだミタいのか、お前もこっちにこい!! ナッツカミナリィィ哀れな哀れな……ハミングバードぉおおおお!!!」
その毒に終わりはない。
他者に覗き見た至上の毒を味わいながら、王子は毒の輪を飛ばしつづけた。
囀りなど意に介さず昂りつづける王子のオーラは舞う青い鳥を圧倒し、
ついにとびきりの毒輪でその鳥を両腕胴ごとひとくくりにし拘束した。
はばたくオーラさえ封じ込め奈落へと落ちていく……じわりじわり染み渡り締め付ける毒の味は……
────雷のオーラが迸り、砕かれた。
鳥は自分で自分を雷で打ち、拘束する毒輪を解いた。
奈落の底へはオチない。その青い鳥は再びオーラをうるさく唸らせはばたいた。
「めいっぱいカラダを動かすダンジョンは!!」
「そんなに気に入っているのかァァその妄想物語が!!」
「あぁッ、絶対的の果てを今みせてやる!!!」
「オレの舞台で魅せるのはオレだぁあああ!!!」
「この速さで!!!」
「この程度の速さがか!!!」
「お前に勝つ絶対的に!!!」
「お前は崩れ落ちる! オトす!! 絶対!!!」
スピードを上げ囀りながらもつれあった、剣と剣は激しく鳴りつづける。
両者譲らない攻防に、傷ついていく雷翼と茸翼。
まっくらな暗雲たちこめてきた異界の空に、決着へと向かうオーラがトばされた。
青い鳥はその翼を突如捨てた。
男にはトんできたそのおもちゃのブロックが最後の足掻きにみえた。
しかし男の目に映るその赤い宝石の輝きは増して────
「つよいな…! おかげで元の姿を思い出したぞ!! オーラパージ&プレイ────【雷夏獣連撃】!!!」
飛び道具のように放たれた欠けたブロックは、王子の周りに星のように散りばめていた。
壊れかけのブロックを足場にし、跳ぶのは鳥ではない元の姿を思い出した雷獣。ブロックからブロックへ、スピードを上げ続け噛み付くその牙はもっともっと速く、ただありったけの速さで叩き込む。
「馬鹿ナ!!? これは……この
「【二獣四連劇】でりゃァッ!!!」
それは覗き見たあの勇ましいアオとデジャヴする──
最後に回転しながら放ったオーラと元気迸る雷剣は王子を白い塔へと吹き飛ばした。
やがて遅れ咲いた雷が降る。
決まり手となったのはいつもより速い、いつもより威力を増した神牙流秘刀秘技【雷夏獣連撃】。
とてつもない雷のオーラに打たれ、斜めにゆっくりとへし折れていく焼け焦げた茸の王子の塔。
力の限りを尽くし、翼を失った演者たちがふらふらとオちてゆく────轟雷に沈み、静寂の煙たちこめる妄想物語の結末は────
瓦礫に埋まった砂まみれの茸を、上から見つめる赤いガーネットがふたつ。
力尽き地にへばりつきかすみゆく景色に、青い髪した綺麗な赤がふたつ咲いていた。
「そうだ黒幕王子に言い忘れていたことがあった? んや、──半端じゃなくて絶対的だ。────ぷっ…ははは! ほら、夏ちゃんは憎めないだろ?」
奈落の底へと堕ちた男の視界には……変わらない綺麗な赤目がふたつ咲いていた。
手を伸ばすその不思議な青と赤のチカラの誘惑に、とても抗えない生物は、じめり気のない眩しい方へとその手を伸ばした────────。