雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
斬られても撃たれても怯まない、どこぞと構わず猛る獲物を誘い込んだ雷の罠にかけた。
「【電柱斬】×16破ッ──【雷酎斬】集え伝え巡れェ!!!」
番犬を覆い守っていた妖しいオーラはそれよりも猛る雷のトラップが燃やし減らし、
眩き青雷が五つ目の視界を奪ったその隙にそのおおきなバケモノの背に乗った雷夏は、刃を突き立て、一気に刺し込んだ。
バケモノの体に飽和した雷電をまた利用し背に刺した刃に集め、オーラと手の込んだトラップと同じような規模の雷技をもう一度繰り出すことに成功した。
焼け焦げた背の痛みに、左右の犬は首をぐるりと向け、無作法に背に乗る青髪に噛みつこうとしたが──
「痒い所には手を届かせないさ!! 【ダイヤル9】【テン】【ジャック】────【ライジング♦グレイプニル♦フィールド】!!!」
トラップはもう一つ。
雷オーラで肥えた土壌を利用し、熟練者はオーラの階段を駆け上がった。
地から噴出した────雷電を帯びたダイヤチェーンが、みっつの獣の首を、六つ足を、胴体を貫きがんじがらめに絡め取る。
拘束した獣はそのチェーンを食い破り、固い束縛から逃れようと暴れた。
「雁首はそろった、一世一代……【
トラップ、チェーンしつなげた……そして本命のイチゲキは練り上げたオーラを鋭く放った。
赤髪を突風に散らし、爆発するように放たれた秘刀水剣の突きは、並んだみっつを仲良く穿った。
真横から突き抜ける水のオーラに、綺麗に削がれた三つ首の番犬はそれ以上吠えることはなく────────
地に倒れた巨大モンスターから黒いもやが噴出しつづけている。
死体はダンジョンへと還ることはなく消えずに……いつものモンスターを倒したときとは異様な雰囲気を醸していた。
人の本能を、ソレは近づいてはいけないモノだと刺激し警鐘をならすような嫌悪感に、
ダンジョン部の面々は身構えたが…………何も起こらず、ただ消えない死骸がそこに臭気を放ち残ったままであった。
「秘刀をつかうことになるとはナ……ふぅ……」
「やはり常にオーラを纏って防御に転じ利用していました。あの規模の連携攻撃でないと…ここまで寝かしつけることは難しかったといったところでしょう(まるで、それも本能で高いオーラ技術を纏っていたような……それが戦う上で当たり前であったかのような……今までのモンスターとはちがう……?)」
秘刀秘技をつかったムスイはひとつ長い息を吐く。
シデンレイラが総括したように倒したモンスターは侮れる強さではなかった。
ダンジョン部の全力の攻撃をもってしてやっと倒せたほどの、強烈なオーラによる硬さを誇っていた。
そんな凶悪な強さをみせていたモンスターをやっと倒すことができた……仮称ケルベロスとの戦闘が終わり、次に優先すべき行動をとる。
雷夏が海都に手当されている安全な場に離れた黒幕王子の容態を確認しにいこうとしたそのとき────
彼女が気配に振り返ると、
傘をさした男がいる
左の耳に電話をあて、
おもむろにソレを手の下へとさげた
黒いスーツとシルクハットに青く透明すぎる肌。
いつの間にか彼らの後方には、そんな存在が突っ立っていた。
「なんだ?」
「これはこれは申し訳ない。最近多いようです、いたずら電話」
青肌の男は翼のように開いていた傘を一本に仕舞い、用の済んだ壊れた携帯電話のようなものを地に捨てた。
そして────空いた両手でマイペースに手を叩く。
「遅ればせながら、おしみなく────」
自己紹介もない遅ればせながら、ケルベロスを討った彼らへ対して謎の男の拍手が送られる。
当然そんなものを彼らは要求していない。
いきなり現れたその黒衣を纏った青い男はなんなのか、ダンジョン部の彼らはその謎の存在を注視し警戒を深めた。
「もっとくらい…黒幕を纏った仰々しい存在といったところかい…」
「どいつもこいつも手を鳴らして叩いて何がしたい? ──明かされたいのか? この剣で」
現れた新たなあやしい存在に、ムスイとシデンレイラがそっと武器を構える。
まだ鳴りやまない、人の気もとめないマイペースな拍手が鳴りつづける。
その男の鳴らす手のリズムが耳を揺らす……その手拍子に誘われたのか────
「おい、雷夏!! 勝手に先走るナ!!」
「ナツカミナリ! ソレは油断ならないオーラさ!!」
仲間たちの呼びかけにも、前のめりに靡く青髪は振り返らない。
動き出した彼女の体はどうしようもなく、彼女の目が見ても見ても凝らしてもおぼろげに透き通るその青き存在に────噛みつかずにはいられなかった。
「すまない、ムゥちゃん、シデンレイラ。どうにもこうせずにはいられなかった!!!」
「おや? おやおやおや? その髪そのエネルギーは────フフフ、奇遇ですねぇ。ワタシとおなじ、青がお好きなようで」
傘にしていた竜杖と、剥き出しの剣が、互いの至近と至近にオーラはじけぶつかり合う。
待つよりも窺うよりも、挑むともちがう、ただ磁石のようにカラダが引き寄せられるように向かった。
挨拶も敵の様子も待たずに飛び出した雷夏は、ゼリーのように透ける青肌の男に、疾る雷のオーラで斬りかかった────────。