雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
ボロついた灰色のマントは思い描く死神のようで。
赤い瞳は鬼のように灯り、するどく。
のびきった青い髪は妖気を纏い長く……。
その汚れが化石のように固まった乾いた土色の足元と、紺と緑赤の混ざったマフラーはその青に似合わない。
そんな男が構える刀身まで黒に染まったその剣、切っ先は彼らを拒むように遠くから見つめている────。
恐ろし気ともいえる、見ようによってはとても奇抜ともいえる、何かを集めツギハギしたような存在は。
消し飛ばし平らげたゼリーよりも、未知の色をしていた。
されど、墜ち、渦巻き、その轟く音さえもかき消えた不死身のゼリーを討った黒雷は鮮烈にして唖然。
傷付いたダンジョン部の彼らを静寂の場におしとどめ、青い男が向けた刃は、息を詰まらせた。
一瞬にして場を支配したその切っ先から光が失せる。バチバチ…と帯電していたエネルギーはやみ、ただその剣はあまりにも暗く光さえ宿さない。恐ろしいこの世に存在しないような拒絶の色を向けていた。
そんな雷がやんでもまだ冷めやらない光景と状況に、ダンジョン部は各々に息をのむ。
そしてのんだ息よりもはやく、────青い髪を止まっていた時に靡かせ、ギラついた瞳がトツゼンの風を起こした。
その手にその胸に、その胸から抜き出した切っ先に、
バチバチと疼く雷獣のカラダと本能が、ソレを見た途端に斬りかかっていた。
「お前はなんだ! 夏ちゃんのなんだ!! そのオーラッ、その剣、止まってないで答えてみろ!!!」
「チッ──寄るナ」
「答えないなら──」
「「【爆雷斬】!!!」」
雷と雷。その黒い剣、その彼女の内なる白刃を合わせたとき。
ギラつき熱帯びた赤目と赤目は目撃する。
爆発するように流れた色は、青く────重なり合って、青い流れは強い方に惹かれ、膨らみ咲き──弾かれた。
飛びかかっていた雷夏は技を放ったその秘刀緑蜜ごと、猛烈な勢いでそのまま地に吹き飛ばされた。
ムスイは酷い疲れ身であってもその鍛錬した剣士の目に見間違えない。
幾度と受けたことのあるその雷剣と、あの爆ぜるような雷剣を。
「雷夏と同じ技…どういうことだ??」
「どういうことも姿カタチオーラまで何もっ、あの役は……」
シデンレイラも同じく、ダンジョンで初めて覚えたというその技にこだわりを持っていた彼女のことを間違えない。そして彼女と同じ色、同じオーラの色を見せたその存在のことも……。
「亡霊のわりには、────はは!!」
時が止まったようにそれを唖然と眺めていた黒いパジャマは、珊瑚の柄を手に刺さるほど握りしめて──駆けだした。
雷夏がそうしたように自分も遠慮のない剣をとり、渦巻くように湧きめぐり思考した言よりも速く、目の先に捉えた青いヤツの元にその剣で挑んだ。
オーラと刃の衝撃か、カラフルなマフラーがほつれおち男は舌打ちする。
そして雷を放ち雷を薙ぎ払ったその黒剣に、息つく間もなく、刃と刃が今勝手にも合わさり。
黒い刃に黒尽くめの女が噛みつき男の目と鼻の先で、なんとも表せない必死な形相でワラっている。
されど男は鬱陶しいその軽い剣を拒み、二合目で砕いた。
「その程度で、────くるな」
「そのていど? ならこれ!!!」
何を思ったのか内にある4つのオーラを一切放たず纏わず、即復活した珊瑚柄の剣を片手に喚び戻しド神子はただの剣術で仕掛けた。
するとその魔の赤目に透け覗いた男は面を喰らったのか、同じようにオーラのスイッチを切りながら、剣を持ち替え────切り結ぶ。
風のようにやがて嵐のように舞い続け、火花を咲かせ合ったその剣術剣筋は────やがて同化するようにその悪戯な足裏を合わせ合った。
乾燥し固まっていた土の穢れがひび割れる、そしてその裏足に強くインパクトし轟いた雷。
その女の物より一回り大きくあらわれた黄色いスニーカーが黄色いスニーカーを彼方へとそのまま蹴り飛ばしていった。
雷夏に当主代行、その2人して相手の出方も見ずに身勝手に挑み手痛く吹き飛ばされた。
そんな置き去りにされるような状況に、ムスイもこれ以上黙って見ているわけにはいかなかった。
しかし──
「動くな」
男は持ち替えたその穢れてはいない白刃の刀で、また切っ先を向け直した。
それは挑発ではない。
瞬間、ビリビリと痺れる気がムスイの冷えた足元を伝った。
ムスイが剣士のダイバーの本能か……咄嗟に敷いた流水陣。
その水たまりの間合いより何倍も遠くから、やがて彼女の握る刃の切っ先、青い男を見据えたその先まで『動くな』とシビれさせる。
鍛錬を重ねた赤髪のいち剣士に嫌でもわかる間合いの差、すなわち速さの差、さらにオーラ練度の差であった。
(コイツ…この間合い…!? どんな鍛錬を…)
ムスイはそれ以上、近づけない、動けない。
その切っ先の先を振りアクションを起こすことは、──できない。
挑発にも感じられたのはその痺れる間合いとオーラ、だが反面男の向けた剣は拒んでいるように……幾度も試合を真剣を闘いをこれまでに経験したムスイの剣士としての闘志にはムスイの握る剣には感じられたのであった。
絶対的の果てに待っていた…。
ダンジョン部にとって果てにも思えた強さの透けるゼリーの壁を、その剣と黒雷で一太刀に討ち取り。今対峙する青髪赤目、雷夏と同じ色をしたおおきな存在はダンジョン部の誇る剣士たちをその剣と勝る剣術、技、そして痺れるオーラと得体の知れない凄みと鋭さで凌駕した。
敵か味方かはたまた亡霊か、ダンジョン部彼らの目に映るその青い正体が…向けられていた刃の意味が……どこからともなく覆いゆく青白い雲に紛れるように秘され霞んでいく────────