雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
それは魂を求める者。
元は優れた剣客たちであったが死してなお人を斬りたい邪心が募り集い渕まで至り、その身がケイオスに浸かり染まってしまった哀れな姿。
ふらりとあらわれては人を斬り、手持つ鉢に他者の魂をかさねとりこみ優れた剣術と力を己のものにしようとしている。
邪の首を刎ねたのは邪なる風か。
ぽとりと、橋から凪いでいた水面へと放物線を描き灰色の首がおちた。
ことりと音鳴らし……残った鉢を拾いあげる。
興味津々に鉢に揺らぐ魂炎の色を覗き込んでいた黒の化身は、──その魂炎を摘み、美味しそうに舌上で舐めずり転がししゃぶっている。
それは見たこともない妖。
白黒のツートン髪は長く黒く染まり、紫色の舌をだしおどけた遊びに興じている人の皮を被ったナニか。
赤髪の剣士は首の皮から滴る血と沁みる汗をぬぐい……立ち上がる。
「ハァハァ……フッ、どうしたヘタクソ…まだオチない首が…ここにいるぞ? おどけてないで来い。伊達者────」
赤髪が抜き出した秘刀の妖しい輝きに目を奪われたか、煙草の煙のように飲み込んで遊んでいた魂を吐き出し、ソレは一層に口角をつりあげ笑った。
前へと放られ、おちる鉢がまたことり……静寂に音鳴らし伏せたと同時に、
吹き荒れる黒い風が立つ橋を壊していく。
始まってしまったのは赤髪の剣客と黒い妖、橋上のあやうい攻防か。
やがて風は暴風に、水は驟雨に。
崩壊する橋上で嵐のような剣風を巻き起こす。
激しいオーラとオーラが秘刀と盗賊の短刀に乗せて絡み合う……剣士宮本遂廉と暴走するシデン・レイラの死闘が始まった。
夢のようなパーティーは始まったばかりだ。
銀鏡を不思議に抜けて今絢爛豪華の中を歩き、ドレスコードはオーケー。淑やかにざわめく貴人貴婦人の中をするりするりその手にひかれて、慣れぬ黄色いドレスの裾を手持ち抜けてゆく。そして行き着いた……2人のために空いていた白いテーブルクロスの席に、腰掛けて彼とご対面する。
彼との積もる話はそれはそれは幾星霜ほどあった。
しかしやっと出会って語ることは何故か、剣や戦いやダンジョンのこと。そしてみんなの妹の夏ちゃんのこと。
2人は学生時代にタイムスリップしたかのように、いつものように笑い話を咲かせていた。
「たしか、アレっていつだったか……。そういえば俺たちが出会ったのってさ」
「栃木美少女コレクターの
「ははは、ナンパじゃねぇよ。(なんだその不埒な称号は…)そうそうそんな噂は全然吹いてこなかったんだけど、なんかべつの風の噂でお前が神牙流道場の天才剣士ってきいたんだ」
「そうそれでいきなし鼻息荒く告白されたけど、ばちーーんってフったんだわ」
「あながち間違っちゃいないけど、言葉のチョイスどうなってんだよ。そう俺はお前を緑蜜高校のダンジョン部に直接隣町まで自転車こいでスカウトしにいったわけだ」
「はは、でもそっからまた毎日ストーカーされちゃうどみこ、どみこ歴イチ諦めの悪い男が存在したのであった」
「あぁ、そのようだな。一応ダンジョンでモンスターをぶっ殺しながら常人より鍛えていた気でいた俺は満を持してお前のいる道場に殴り込みにいったはいいものの、そこにひょいと出てきた変な爺さんに木刀一本で何度も殺されかけたわけだが……俺はそれでも諦めなかった。まじで全身の骨が砕かれそうな勢いだったがオーラ全開でなんとかな、あんときゃ──どうにか一太刀浴びせるために、持ってるモノも技も設計図も全部使ったなー」
「──なんで?」
「え? あぁ…そりゃ、そのときは……ほしかったから。どうしてもお前が、ダンジョン部にな」
「はは、」
「でなんで俺はお前に、お前のそのあほぅみたいにひらけた口にさっきからぁ……肉をせっせと運んでいるわけだ?」
「あー、んー? ────ふひほほほひ?」
「──ハッ…それで滅ぶなら安いものだな……ははは」
「うん今滅ぼしてる、なるべくおいしくド神子の腹ん中で、はは──────」
厳かなバイオリンの演奏と、豪勢な食事と、目の前で笑う彼と。
青い髪した彼は彼女の冗談に赤い目をワラわせながら、ナイフで皿上の肉を切ってはフォークでその肉を、前のめりに顔をだす彼女の口元へと運んでいく。
それはとてもおいしいおいしいエピローグ。
これ以上はない夢心地、だがパーティーはまだ始まったばかりだ。古井戸神子は雷冬牙と誘われた鏡の世界で、夢のような至福の時間を過ごしていくのであった。