雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
▼青蜜──異界霧迷家▼にて
緑蜜高校1年D組ダンジョン部部員楽天海都。クレープグレープグループの若きクレープ職人の端くれとして緑蜜市道の駅前の母親のクレープ店を手伝っている。
その男子高校生が何に属する何者であるかなかなか詳らかに明らかになった。そして向けられていた刃はそのままに、ここに来た目的や、白い盾についても問いただした青髪の男はまたひとり黙りこくり何かを考えだした。
ぴたりと止まっていた切先が揺れている。
それを見つめていた海都は沈黙する雰囲気に、おそるおそる遠回しな言葉を流した。
「あのーぉ…やっぱり先生と何か……」
「お前、そのさっきから耳にする〝先生〟とはなんだ?」
「え?? あっ!?すんません! 先生は…その……あ、かみ」
「待て! ────……!」
「は、はい……!? ……」
(いきなりどうしたんだろう…。また俺何か言っちゃいけないぃ…)
椅子にかけていた男は不意に立ち上がり、さっきまであそばせていた剣をまたぐいと海都へと突きつけた。
突然の待ての指示に、海都は驚くも黙った。
そしてまたしばらくすると男はため息のようなものを少し吐きながら元の椅子へとかけた。
「はぁ……。ところでお前の宿すオーラ色はさっき聞いたので嘘偽りなくあっているか」
「えっとそれならハイ!! 緑の回復オーラって教えられていま」
「皮肉だな──」
「…ひにく??」
「いや。なんでもない。まさかこんな場所で回復色のオーラもちを拝めることになるとはな」
「あはは……なんかそんなに回復ってだけで…そのみんな気にするほど珍しいものなんすかね……」
「……探索者にとってはな。────それに回復だけじゃなく思ったより使い道がいろいろとありそうだ」
「そ、そうなんすか……」
手をしきりにぐーぱーしている。その使い道の意味はなんなんだろう。
海都は青髪の男のことはよく分からないながらも、自分に関することは嘘偽りなく答えていった。
「アレ? これってダンクレー?? なんでこんなところに???(リュックをどこかで拾ってくれたのかな)」
「この異界に設定された効果だ。つまりお前の今一番欲しいものはそれか。使える武器のひとつでもと思ったが、平和なものだな」
「え?? 異界の効果……あはは……すんません…………。あのっ、これせっかくなんで使ってもいいですか! そのぉ…モンスターは倒せませんけどクレープなら焼けます! コレでも!」
「どうでもいい、好きにしろ」
今一番欲しいものが、クレープ焼き機のダンクレーと探索時に失ったリュック。クレープの材料を見つけたリュックから取り出して見せながら、海都は許可を得ることに成功した。
若葉色のバンダナを黒髪の頭に結んで、コンパクトな姿になっていたダンクレーの三脚を立ち上げる。
甘い匂いを焼きただよわせながらも海都はまた訪れた沈黙の状態に、なんでもないことをクレープを焼きながらきいてみた。
その男の熱そうなファッションがすこし珍しかったからだ。
「あのそのマフラーって? ずっとしてて…その、暑くないんすか?(ちょっとクレープ焼いちゃってるんでよけい…)」
「これがざわめかないということは、お前とはどうやら話をしても問題がない。ただそれだけのリトマス紙だ、とくに暑くはない気にするな」
少しほつれた赤紺色のまじったカラフルなマフラーを少し手に取りながら、青髪の男はそう答えた。
海都は自分の思っていたなんでもない答えとはちがいその意味を理解できなかったが、
「俺とは? リトマス紙??? ……そうすか…あのところで! ついでにっていうのもなんなんすけど……そのっ、これだけ聞きたいんですけど! あなたはえっと敵なんですかそれとも俺たちの味方なんですか!? 味方してくれるんならなんで先生たちにあんなことを…」
思い切ってもうひとつ聞いてみた。
それは海都にとって男と行動を共にしながらもずっと心にひっかかっていた重要なことであった。
意を決して言い切ってしまった。敵か味方か、雷夏たちにした敵対行為はどういう意味だったのか。
海都はまた訪れた沈黙に不穏な汗をながしながらも……返答を待った。
「敵か味方か……。あまり意味のない質問だな。ゼリー野郎、ヤツを討たない限り俺に未来はない。それだけだ」
「ゼリーやろう……? えっとそれってたしかあのすごい黒い雷で倒された」
「あぁヤツを倒すために放った技は【
「だがどういうわけかヤツはまだどこかで生きている。あの門もクソ野郎の置き土産、そう考えるのが妥当だ」
「アレで生きている……!? え、どういう!??」
「さぁな。だが過去に遡ってでも俺の倒すべき相手だ。──焼けてるぞ」
「あっっ!?? やばっ!!!」
ゼリー野郎は生きている。青髪の男はそう言うが海都は信じられない。
クレープを焼きすぎてしまうほどに青髪の男の表情に集中し食いついていた海都は慌ててひっくり返す。
返された裏面の黒い色はもう手遅れであった。