雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
鏡の中の景色、心が弾む豪華絢爛の賑わいはその中にあり。見知らぬが皆良い服を纏い良い顔をしている…皆の話し声笑い声が絶えまなく響く至福のパーティーはまだ終わらない。
肉を思う存分頬張った美味しいディナーの後で────躍る。
今日という日は特別だ、握るのは剣ではなく彼の手を。黄色いドレスはひらり軽やかに左右に揺らぎ、青い髪の黒スーツと黄色いドレスのお姫様お似合いの2人を羨望の目で貴婦人たちは噂し眺める。
勇壮なヴァイオリンの演奏にのって、それはもうノリにのって。
ダンジョンの果てに待っていたのはそんな彼との久方の邂逅とご褒美。
ささいな過去の罪など手を取り合い宝石のような赤目を見つめ、踊っているうちに失せてゆく。
激しいステップで笑い合う。
彼女はどれだけ速いステップもものともしない、ただただ笑いながら踏み続ける……足を、つま先を踏んでしまおうが彼女は合わせない。自分のステップを踏んでいく。
対する男も大したものだ、表情ひとつ変えずに、汗だけを垂らし、黄色いドレスに似合わない黄色いスニーカーに踏まれようが彼女の激しさとお茶目さに合わせて踏ん張っている。
「っていい加減にしやがれ!! おい痛てぇぞド神子! 相手の足の上で踊るワルツがあるか!」
「はは、ごめんごめん。あぁー、んじゃ────」
ついに耐えかねた男がおふざけがすぎた彼女に怒ると、黄色いドレスのお茶目なお姫様は笑いながら────
激しい剣音が鳴り響く。
踊りの最中の脈絡のない凶刃に、勇壮なヴァイオリンの演奏が止む。周りで踊っていた者たちがその鉄色煌めく危険地帯から驚き円状に離れてゆく。
刀と刀がぶつかり合った。
咄嗟に彼女から出た一太刀を受け止めた青髪の男は、面を食らった表情で意味の分からない行動を起こした彼女を睨んだ。
「おい!!? ド神子てめぇ何やってやがる!? あっぶねぇ!??」
「何って? はは、いくよ────」
うろたえる男に笑う女は切先のヤジルシを向けて────黄色いドレスのまま駆け出した。
慌てふためく剣に、弾み踊るような剣が打ち込まれる。そしてやがてその遊ぶような剣筋は、重ね──合わさらない。
バチリ最後に青い轟音が靴底から弾け、グラスや食器の割れる激しい物音がすべり鳴ってゆく。
「ガハぁッッ!?? なっ…ナゼだぁぁ我の扮するこの男はこの男以上に完璧だったはずだ、なぜこんなまのぬけた小娘に見破られてェ!?」
耳が尖り、牙が剥き出しに、青髪は白く染まり、肌は青白く。黒いボロのスーツを着た悪魔のような顔をした男が崩れたテーブルの上に無惨に倒れていた。
「はは、あぁー、ソレ、てことはまだまだ甘いんじゃない? 甘すぎてぇ……このままはらむかと思ったわ、はは、」
それは甘い甘いあますぎる幻想、変装。
古井戸神子が披露したきけんな踊りは、赤の他人には決して真似できないとおい記憶の2人だけの剣舞。そしてシメに放った黄色いスーパースニーカーの一撃が、雷冬牙になりきり化けていた正体、鏡の世界の住人インキュバスを一蹴した。