雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
ステンドグラスを破り降りた光の先、
廊下を走るとも辿り着かない。変わり映えのしない無限の果てに迷い込む。
「迷子のド神子、こっちはしあさって、あたしはどこで明日は出口はどっち?」
赤い絨毯を走り、横のドア群を勘で選び取り開く。そしてまた赤い絨毯の上を走っている。
どこにも出口がない……古井戸神子が迷い込んだ奇妙な繰り返す現象に不思議そうに立ち止まり考えていると────。
「目を離すとすぐにふらふらと何処へ行くつもりだぁ? ドミコおおおおおお探したぞ小娘はっはっはーー」
青髪赤目、心なしか以前より人相が色々尖り悪くなったアイツがド神子の前へと現れた。
「あぁー、よかった、こっちも遊園地をゼッサン迷子でさぁがしてたんだわ、はは、親、はは、ド神子の保護者────ありゃ?」
「ははははははは──ハハハハハハ!!! 3歩ほっつき歩いて忘れたかぁ脳足りん?? 貴様はもう先ほどこの世界の食べ物をばくばくアホ面を晒しながら食べておろう。夢の中のモノを食べてはいけないと、貴様の卑しい馬鹿親は教えてくれなかったようだなぁ?」
「なぁるほど? それで、どーりで胃がむかむかするかんじだったんだわ、うぉありゃ? からだが──かってに──」
「そうだ…こっち来いドミコ。俺様が直々に優しく教育してやる、まずは靴磨きの練習からだ」
一歩一歩得体の知れないオーラに全身を縛られ引き寄せられてゆく。夢の中のモノを食べてはいけない──ご馳走があるなら平らげる…そんなことを知るよしもないド神子の体はその毒がまわったように既に支配されていた。自分では自分の体を動かせない状態までおちいった操り人形はたどたどしく…青髪赤目の澱んだオーラを勝手に纏わされ、その舌舐めずりし待つ主の元へと歩きだす。
一歩一歩。
見開いた血のような赤目は優しい顔などではない。
おおきく一歩。
くいくいと誘う爪を長くして待つ人差し指は────赤目の視界からぽっきりと失せる。
忽然と消えた右の人差し指はミステリー。指に灯っていたオーラの蝋燭の火は消え、床を探しても見当たらない。
天からぽたりぽたり滴り青髪を濡らす、突き刺さった指がありえなくそこにあり……。
乱れた青髪の悪魔は吹き抜けた風におくれて振り返る。
その後ろ背は黄色のドレス、不似合いな刀を煌めかせ、さっきまでそのドレスの上に着こんでいた澱む色を消し真っ青なオーラを塗り替え纏い、さっぱりと黒髪を掻き上げている。
「ド神子は内側からうごく。はは、」
「ばかな、そんなありえぬ!?? オッ、オッ、俺の指があああああこの女あああああ!!!」
激昂する悪魔はスーツの背をやぶり翼を広げて向かいゆく。
爪を恐ろしく伸ばし、黄色いドレスの女の背に掻っ切らんばかりに襲いゆくが。
チラリ一瞥するその黒瞳は、かっこつけでも間抜けでもない。
斬り捨てた相手を嘲笑う目。
「ありえぬ? アイツはもっと速いんだわ。真似るなら次はもっと内面も磨きな、────なんちゃって、はは」
爆発するように燃える。飛びかかる悪魔はその向かう先の夢を見ることはない、たどり着くことはない。爆ぜた翼、一気に燃え上がる身、醜く焦げた一片だけが黄色いドレスの足元へと転がる……。
古井戸神子はその出来の悪い夢には振り返らない。前を目指し赤い絨毯を渡り、また次のドアを開いてゆく────────。