雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
黒吹雪と琥珀の流星とともに幕開けた──最悪の宴に人間たちは迷い込んだ。
青髪は刀片手に急ぐ……彼が生み出した霧はひとつも残らず吹き飛び、変わりゆく黒い世界のただなかで雷光を纏いながら。
男の急ぐ迷家への帰路を覆い隠すのは魑魅魍魎のモンスターたち。辺り黒い景色に散らばり落ちた琥珀から脈動し生まれゆく古の化物たちが行手をふさぐ。
「そんなに俺の邪魔をしたいか、どけッ!!!」
流れる青髪、流れるオーラ、流れる汗。
青に群がり青に染まるモンスターたちは滅されてはまたざわめく黒紙のあやしい文字を読み込む琥珀から、ひび割れ生まれゆく。
そしてついに──壊れゆくは迷家。
その位置を晒し佇んでいた隠れ家は、壁を屋根をつついていた灯りに集った化け物たちの図体に覆いのまれた。
激しい音も鳴らない、耳に聞こえるのは刀で切り裂く鬱陶しいモンスターの断末魔だけ。
ただ、そこに構えていたソレが今は平らに壊れゆく……なんてことはない一瞬でだ。行手を阻むモンスターたちをついに突破するが間に合わず──当たり前に失った。
「……!」
しかし男は一瞬そのひしめく魍魎たちの隙間から舞い上がった白い飛翔体を見つけた。
そしてそれはやがてふかしていた緑の光の推進力を失い堕落した。
迷家が壊れる刹那、甲羅を大きく拡張した白い海亀の盾に捕まり宙を飛びあがり間一髪逃げ出した2人。海都はイロハを連れ乗せて化物たちに囲まれていた迷家の中から脱出に成功した。
「あいたた……。一体何が──えやっ!!?」
墜落し白い甲羅の中にちょうど蓋され覆われていた2人は、覆われていた暗がりが黒く勝手に明けてゆくのに気付いた。
それは長腕長爪に小さな白をつまみ上げて首をかしげる黒い一角を生やした巨人、下からなめるように白い甲羅の中身を覗き込む……ぎょっとする巨大な顔に巨大な瞳と海都たちは目が合った。
小さな人間と大きなモンスターが時が止まったように見つめ合う……隠れ潜んでいた甲羅はどかされ、迫るもう片方の巨手が見つめた中身にゆっくり迫りゆく。
訳が分からず遅れて海都がハンドガンのチップを起動した次の瞬間──
巨人の傾げる首がすとんと地に滑り落ちてゆく。
一瞬光った青いフラッシュに、舌を出し目をもっと見開きおどけた巨人の首が地を転がり朽ちる……。
「早く立て。どうやら異界はもう乗っ取られた」
「は、はい!? あのッッ何があっ!?」
舞い降りた剣は、青白く妖しい切れ味、急襲する一太刀で巨人の首をオとした秘刀。
青髪赤目の男が転んでいた海都とイロハにすぐにそこから立ち上がるように手を貸さず、緊迫を帯びた言葉とモンスターを裂いた行動で促した。
すぐに立ち上がった海都が何かを問うも返している暇もないのか、青髪の男は突如羽織っていた灰色のマントをばっと広げた。突如視界一面に、みるみると広がったそのはため揺れ動く灰色の布景色に海都とイロハは────訳も分からずのまれた。
そしてまた宙からどこかの地へと落ちてゆく。
落ちたそこは相変わらずの黒い景色。だが煌めく点が辺りに3つそして上に1つある。
それはダンジョンのチップであると海都の目にも認識できた。すぐにその点と点がカラフルな線を引き染まり繋がる。2人のことを囲うように三角錐のカタチを作った。
「動くな、お前らはそこにいろ。その中で【策咲CG弾】を張り続けろ。異界では唯一お前のそれが有効だ。そのレアチップ製の三角の中で敷き続ければ自動的に堅牢な派生技になるようになっている!」
そう言われても海都は青髪の男の次々と展開する思考にまだ追いつかない。
それでも海都はとりあえず言われた通りに【策咲CG弾】のスキルチップをその雷線で繋がった三角錐の中で練り上げようとした。
だがそのとき、脳天を汗で濡らすような殺気が圧し寄せて来た。
奇怪な檻の中から天を見上げた海都とイロハの視界に、ドリルのように嘴を回転させ近付く七色の怪鳥がいる。その危うい切っ先で風をうるさく唸らせ渦巻かせ──一直線に突っ込んできた。
「【サンダーランス】!!! ──いいな! ラクテンカイト!!」
「!? ──は、ハイ!!!」
海面に入水するように獲物へと勢いよく降下した七色の怪鳥は、ドリルのように唸る特異に進化した嘴のそれよりももっと高速で回転し飛翔した雷刀にその首を穿たれた。
青く一色に染まった羽根がバチバチと焦がす音鳴らし舞い落ちていく……。
怪鳥を仕留めた遠くの赤目がともり彼を睨む────その注ぐ眼差しの先にいる楽天海都は驚愕の事態の連続にもはやおどろきつかれた顔で深く頷く。そして男の指示に真剣に従い、すぐさま今いる三角錐の結界内で派生技の準備にオーラを集中し取り掛かった。