雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
白い三角錐は邪を寄せ付けない。黒い異界に穴をつくり、周囲のざわめいている黒いページを剥がし燃やす。取り囲むモンスターたちはその白い聖域に近寄れない。
数匹の小鬼が息を合わせ悪だくみか、今無謀にも飛びかかったがその存在を保てずにことり……間抜けな音を鳴らし落ちる。断末魔を上げながら浄化されただの琥珀の石へと還った。
「うん。うまく作用してるみたい。この黒いページのエリアが生命を吹き込んでいるのかしら。出てしまうと琥珀の石に戻るみたい」
「!──な、なるほど…っすね……」
4つのレアチップを点とし成す三角錐の中心に【策咲CG弾】のスキルチップをとどめてはじめてやる派生技の白い結界の制御に集中する海都。
その海都にかわりイロハは冷静に今の状況を解析する。
とにかくあの人に言われた通りに己の身に流れる汗水をかまわず楽天海都は実行していく。
それが今堅牢なオーラの結界となり、2人の身をすっぽり中へと覆い。白い明かりに集い始めたモンスターの群れの攻撃と突撃を退けていた。
そんな実力以上自分のオーラ力以上の結界を張り続けるのに手一杯精一杯な海都は、それよりも……彼の視界の先に今もなお轟き続ける青い眩さに、心の底で理解していた。
ただ置き去りにされたように映る……動かずに動けずにいる自分と、動き続けるその青髪その刃そのオーラを。
彼は何故そこまで1人で戦えるのか。
彼は迫り来るモンスターの軍勢を恐れもしない。
彼は一時も迷わない、彼の時間は誰にも止められない。
その剣は牙を剥きだし噛みつく化物の首に噛みつき返すように一刀に落とし、
そのオーラは怒れる雷のように轟き彼に仇なす全てを焼き尽くす、
死闘演じる最中に放つその冴えた技の数々はどれもが襲う襲い来る刹那刹那に鮮やかに組み込まれ刻み込まれる……敵の命を効率良く奪うためにまるで計算し尽くされている。
獅子奮迅の躍動をみせる男はやがて醜い化物どもの屍の山を築いた。
だが、何色とも分からない色の血をその刃に払った青髪はその赤目で次のターゲットを見上げる……。
蓑虫のように黒紙を纏い貼り付けていた巨大カタマリは──今妖しげに赤く文字を刻み灯る。風騒ぐように黒いベールを脱いでいき…
そして晒された…天に吊り下がっていたその剥き出しの光を放つ巨大な琥珀は滴り落ち、ひび割れた。
生まれ出でたその屍の山をゆうに超える全高を誇る竜は、産声とともに火焔を吐いた。
黒い野を染め上げる一気に燃え盛る火の海が広がる……。
青髪は不意打ちの豪炎に飲まれたと思われたが、火の海を走る車輪がふたつ。
青い轍を描きながら、吹き荒れる火の中を前へと突っ切っていく。
やがて炎熱に溶けゆく無銘の剣を捨て、青髪は飛び上がる。
秘刀を片手に放った雷剣は──急に頭蓋に飾られていた赤い宝玉から突出したギミックに弾かれた。
それは角か剣か、角のように生やした刃が赤熱しながら雷のオーラを切り裂いた。
さらにその剣角は指揮する。黒舞台を彩っていた炎が剣のカタチへと変幻し、男に降りかかる災いの赤い雨のように降りかかった。
「!──【
対する青髪の男はチップを宙に豪快にばら撒きそれを青い剣の数々に変換し浮かべて、同じような技を使い迎え撃った。
赤と青のオーラが干渉し合い、宙に波紋を浮かび重ね、雨ともいえない轟音を鳴らし白煙たちのぼるとともに相殺する。
剣竜と剣士を分かつ白煙の仕切りに……呼吸する灼熱の吐息は荒く──
「【真田サンダーランス】!!」
オーラの流れを感知し放った技はまた奇しくも同じ。
竜の口から吐かれた焔槍と投げ放たれた雷槍に見立てた技がものすごい速さでぶつかり合った。
それはまたも相殺する威力同士かに思われたが、オーラとオーラの塊が互いに押しのけ合う中を……水が押し出され別方に枝分かれ流れるように青い鋭いヤジルシが飛び出した。
青い尾を引き分かれ飛び出したのはオーラの塊を纏っていた刀。急に飛び出しその激しい勝負を避け、曲線を描きながら鋭く不意をついた。
竜の顎下の死角へと突き刺さった秘刀の元へと、【
「姿を変えてまで俺を喰らいたいか──なら思う存分喰らえ」
痺れる突き刺さる隙を逃さない。竜の顎から剣を引き抜くと同時に、その存在は体内と気のスイッチを入れる。
そんな首にゾワリ張り付いた違和感異物に対し、額の剣は設計ミスか届かず、暴れた末に噛みついた顎と顎火花を起こす牙と牙の間には既にその青い存在はいない。
そして虚空を飲み込んだ竜の行動選択を置き去りにし、そのオーラ全身に痺れ昂る攻撃は始動した。
身を刻むのは秘刀その刃、息もつかせぬ連撃を。
大きな赤蜥蜴の図体を駆けるその雷影は、捕らえることはできやしない。
刮目することもかなわない竜鱗の上で激しく踊りつづけるその剣劇は────
「【雷牙──四十八連撃】」
最後のイチゲキが天より下る。
全身尾の先腹の底まで次々と遅れ咲いた、終わらない痺れ狂う程の連撃が──終わる。
仰け反りもたげたその長首、天に掲げても届かぬ剣竜の角へと、届き轟いた溢れんばかりの豪雷青雷がスベテを焼き尽くす。
「お前を喰らって強くなる、俺も────」
ひらり舞い降りた小さな剣、へし折れ舞い落ちていく大きな剣。
剣竜…その恐ろしい巨躯を喰らい尽くし黒い舞台に揺らぐ赤い焔までを葬ったのは、たった一人の剣士。
化物たちが列をなす最悪の宴すらその恐怖勢い足りず、彼に喰らわれてしまうのか。
恐ろしい程の力と技とオーラ、そしてその刀で青髪赤目の剣士は眼に見える厄災の全てを余さず喰らい尽くした。
「これが…………この人の……」
楽天海都が目撃した狂気と正気の狭間で化物たちと踊り続けた青い剣士の姿。
やはりその背その姿その全ては彼の知る青い姿とどこか似ているようで重ならない……。
彼の斬り裂くダンジョンは、誰も分かつことのできない鬼気を背負い纏っているようだ────。