雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
右腕の剣、それは秘刀を素早く受け止め対応する粘りとしなやかさ、そして強靭さを誇る美しい琥珀色。
尻尾のドリル、それは死角の防御を補いかつ戦闘で蓄積する痺れるオーラを外に放出する……そしてまた回転循環させ敵のオーラをも利用する発電器官。ぶつけ敵を穿つだけでない、敵の得意とする戦闘プランをも砕く。
そしてマグマのように赤らむ左の砲が灼ける口を開け火を吹いた。伸縮しながら噴火するように勢いよく放たれたのは黒く濁った火焔の槍。
攻めあぐねて刃を弾かれて体勢を崩していた青髪の男は飛んできたそれを避けた、体内のレスポンスを上げ無理な挙動で外側の身体を動かし不気味なステップをし避ける。
熱風が肌をあおり灼き過ぎる……お返しとばかりにカウンターの雷槍のオーラを手に掲げたそのとき──後ろからの殺気。火焔の槍が落ちたポイントに…火と地のオーラ粘り固まる即席の溶岩妖魔が顕れ、青髪の背にマグマ石の砲弾を叩き込んだ。
灰色のマントを焦がす不意打ちのお熱い弾丸に、集中が切れ練り上げていた雷オーラが霧散する。
青髪の剣士の戦い方に対応それだけではない上回る進化を遂げていく新獣エスカは、またひとつ琥珀に吹き込み吹き込まれビルドアップした自分の体、武装、技、手応えを感じたのか狂気するように獣のうるさい鳴き声をあげる。
変貌する姿、変わりゆく闘いの様相。青髪の剣士と新獣エスカ、オーラぶつけ混じり合うその頂上バトルはまた次の段階の激しさと速さへとエスカレートした──────。
なぜあの人は独りで闘っていて、居合わせた自分は何もせずに……。
そんな風にでも思い……青髪の男の背と一匹のモンスターの戦いを見守っていたのか、海都は手に汗をぐっと握りながら三角錐の結界の維持に集中している。
桁外れのオーラとオーラ技と技…強烈な個である一人と一匹の戦いの余波に巻き込まれないよう、要らぬ心配をかけさせぬようにとせめて自分たちの、じぶんの身ぐらいは自分で守る。
当たり前に実行していくされていく……だが、そう冷静に立ち返り考えとった行動も所詮状況に流されているにすぎない。彼が決めたことではない……選んだようで実は彼は本心からは選んではいなかったのだ。
その熱が滾るのは何故か。
その流れる汗は何か。
凝らしただ釘付けにオーラの騒ぎ立つ光景を見つめる瞳は────海都本人にもわからない。
「苦しそう。あなたも──」
「────え?」
そんな彼の横顔は分かりやすかったのかもしれない。
ハイロ・ドーフィン改めイロハと名乗ることにした彼女の見つめる藤色のその目には、はっきりと彼の事が映っていた。
唖然と顔を振り向いた彼に彼女は藤色の視線をそらさずそのままにつづける。
「私のことは守らなくていいわ。私の命も使って楽天海都。あなたはもっとやれるわ。きっと────あなたらしく」
「!?──── おれ…らしく」
離れぬ藤色の目は嘘をつかない迷わない。
たとえ結界が壊れても構わない、自分の身の安全がその中で縮まり保障されなくても構わない。
見守る握りこぶしは彼女の目に映る彼には似合わない。
楽天海都彼らしく、それはきっと────闘うことを望んでいた。
▼
▽
さらなる力を得た新獣エスカを止められる術は存在しないのか────その超生物モンスターを止めるには新たな技をあらたに繰り出すしかない。
だが、繰り出すほどに受ける程に学ぶほどに新獣エスカは黒い胃に沈む琥珀の記憶を改め纏い強くなる。
しかし男も正面勝負を避けつづけながらただ与えるだけではなくあらたな知恵を絞る。
ひらりひらり猛攻をいなし、数多の槍チップを砕きながらやっと練り上げた極大のオーラの雷槍をついに投げ放った。
あまりにも速く鋭い極大オーラの塊が直撃した白い獣を押し流すように猛進する。
投げ放ち捉えたもがく獲物を焼き焦がしながらただただ勢い減らすことなく直進する雷槍はやがて────轟轟と豪快な音鳴らし爆発した。
一気に迸る雷の柱が白獣の姿を青くのみこみ染め上げる。天罰のように、だが地から仕掛けられたかのように噴きあがったとてつもない威力の雷であった。
轟雷の柱がやがて細くなり…黒く翳るシルエットは消え失せない。
それどころかやがて色づいたそのシルエットは新たに纏う……炎熱の赤黒いマグママントをはためかせ、雷柱を右腕の剣で縦に一刀に切り裂いた。
轟く極大の雷を今喰らいつづけ、ドリルの尾が矢じりのような棘をびっしりと生やし更なる進化を遂げる。そして見つめる青髪の剣士によぎったそのゾクリと冷やす……予感は────
回転を増し続け唸るドリル部から発射された数多の青い棘ミサイルは、雷のオーラの尾を引きながらターゲットへと向かいゆく。
斉射されなおも続々と青髪赤目灰マント、そのターゲットに集束し向かいゆくミサイル群は【雷時雨】──対抗し放った飛び道具でも消し切れない。多勢の青いミサイルが敵の技を飲み込み、逃げる男を追いかけ続ける。
避けていく、避けていく、
青い剣士が刀一本で無謀にももつれる多連のミサイル群の中へと挑み、切り裂いては避けつづけて前へと出る。
爆発する視界景色に阻まれ弾かれ、いくら壊れ爆発してもまた青いミサイルが赤い目の元へと殺到する────
青く爆発する景色のなか…乱雑な放物線をじっくりと眺めていた……そんなときだった。
突如ソレはピンクに発光し、緑のオーラをふかし降臨した────赤い目をした男の目の前に。
「ソイツも闘いたいって! 派生技【トータルアップ】お、俺よりゼッタイ役に立ちます! ぜ、絶対的に!!」
浮かぶ純白の円盤が目の前に────うかんでいる。
聞いたことのある若い男の声を耳に聞いた男は黙って…神々しくも偉そうに佇むそれを、無駄な時に耽ることはそれ以上なくすぐさま掴み取った。
「盾か────もちろん…」
「シミュレート済みだ!」
一瞬に迫った右の琥珀の刃は、躊躇うことなく装着した右の白盾の上に弾かれた。
上から被せてきた右の太刀を弾くと同時に、左の秘刀雷剣を獣の胴へと叩き込む。
新たな武装と新たな剣士の動きに後ろに怯んだ新獣エスカはそのまま体を反転し、死角で溜めていたドリルをお見舞いした。
目一杯伸ばし来たドリル尻尾に対して、今度はオーラを込めた白盾で殴りつけるように荒々しく対処をする。反発するよう炸裂爆発したオーラがうるさく回転する円錐の尾を地へと一気に叩きねじ伏せた。そして中途にぴんと張る細い尻尾を刀ですかさずぶった切り、アンバランスだった敵の尾を短くスマートにした。
尾をちぎられて呻く敵獣にさらに──
白い満月はぱっきりと半月に、左右に装着し内に数多の銃口を忍ばせて……今斉射される。
「【ぶっ放し試してぇこと──その❶】!」
盾から放つ眩きカラフルは、ライトニングガトリング砲。左右分かれ装備した両砲からぶっ放すポップなカラーで無法な弾丸の雨が、横殴りにターゲットを虐めつづける。
突然の中距離射撃その止まない弾幕に面を食らった獣は堪らずそのおかしな雨から、赤い炎熱の合羽をひろげ逃げだしどこともなく駆け出した。
暴れるように雨を嫌がり走り、向かっていたその先は────
「どこを見てはしゃいでやがる。俺は──ここだッ! 刮目して喰らいやがれッッ」
驚く海都と借りたハンドガンを構えるイロハ、白い結界のすっかり今は弱まった2人が居た狙い目のポイントへと、身勝手か牙を剥いた新獣の暴走は────あらたな隙を晒しただけなのか。
纏う灰色のマントを黒雷に痺れさせ目の前に一瞬に現れた……青髪赤目その男が眼をギラつかせ、海都とイロハに背を向け新獣エスカへと睨み立ちはだかる。
腕を開き股を開きどっしりとしたそれは、剣士というよりはイカれたガンマンの構え。
また破茶滅茶に斉射するカラフルなオーラ弾幕が、隙を晒した新獣エスカの前のめりの勢いを真正面から派手に呑み込んでいった────。
激闘決着の❸へとつづく