雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
ドアからドアをひらき、赤い絨毯を踏みつけ走り、無限の廊下を駆け抜けてゆくがやはりたどり着かない。
青髪赤目に化けていたインキュバスを倒してもこの異界幻は失せず……。古井戸神子また立ち止まりだし、やはりおかしなミステリーの最中にいると……顎に手を当て考え込んでいた。
しばらくそこで考え込んでいると、なにやら小さなぬいぐるみようなものが浮かびただよい、神子の目の前に現れた。
「お? 象さん? 虎さん? パンダさん? どちらさん?」
それは象のような長鼻、それは虎のような足、それはパンダのような白黒。
神子の前に浮かぶのはそんなどれとも形容しがたい珍しいぬいぐるみだった。
「ついてこいって感じか、はは────いいよ」
それはその長鼻で指し示す。ながい廊下に等間隔に飾られていたひとつの絵だ。
誇らしい角の生えた神様がそこにいる。
そして神子があまり気にも留めていなかった絵画のなかへと、そのぬいぐるみは不思議にも水面に入水するように侵入していった。また長鼻だけを絵の中から突き出し、しつように誘っているようだ。
古井戸神子はそんな可愛げのあるぬいぐるみの誘いに乗ることにした。
壁に吊り飾られた絵画の中へと────勢いよく転がり込んだ。
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色がちがう。降り立った絨毯の色がちがう。
同じようかに思われた廊下景色は青を基調にし模様替えされていた。
さらに気付けばドレスの色まで、可憐な黄色からクールなネイビーブルーに色付いていた。
「あー? ──ははーん、めんどくせぇタイプの、ムスイと冬牙が好きそうなゲームってわけかい、はは、マゴニモおっしゃれー」
くるりと映画のヒロインのように一回転した青ドレス。その後ろから鼻でほっぺをつつき再び現れたぬいぐるみは縦に宙返りし、彼女に物言わぬ返事をしまた誘っているようだ。
神子はふたたび、ぬいぐるみと共に廊下を駆けてゆく──
そして目的の絵をまた見つけ出し──
同じ要領で飛び込んだ。
かわるがわる色調移りゆく廊下景色をただしい順番通りにめぐっていく。
しかし今途中で迷いだしたぬいぐるみ。
長鼻を右往左往させ迷った末に……
「攻略本と設計図はみないタイプ、(ぬすむたいぷ)、まかせな──」
ここまでそれらしい正当の道に導いてくれたお疲れのぬいぐるみに代わり、古井戸神子は自らふたつの内のひとつの絵画を選びゆくことにした。
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しかし、失敗したようだ。
背方から崩壊していく石畳の足場をスニーカーで駆けてゆく、横にごろごろと転がる石柱をタイミングを合わせジャンプし避ける。
戻りの道のない危険なアトラクションに、愉快な鏡鳥のセキュリティたちが阻むように現れては、走りながらの刀さばきで翼をもがれおち、鏡面が砕けてゆく。
しかし鏡はナニかを映すためのもの。戦闘能力の及ばない鏡鳥はまばゆい光を反射照射し、ストックしていた神子の見知らぬモンスターたちを召喚していく。
さすがの天才剣士にもこの数を前にこの崩壊するシチュエーションを背にするのは多勢に無勢、難易度高し。
さらに何故かいつものダンジョンの武器チップは使えず、唯一つかえた自身の身に宿る秘刀をごまかし用いながらも神子の秘刀の扱い顕現させうる時間は他3人ほど優れたものではない。
そんな中々に困った状況を切り裂き突き進む中、妖精のように尾いてきていた一匹のぬいぐるみが、その長鼻からとつじょ鋼鉄を吐きだした。
吐き出していくスクラップが両端に積み重なり悪夢にでてきそうなモンスターたちの侵入を阻む。そして連なる一本の鉄の道となるように、今あつらえられた。
『てつわまよけ、とべ、かがみへ』
「あぁーはは、なら刀もってわけ、──まかせな、」
ぬいぐるみは萎みながら邪のものたちが嫌がる鉄を吐きつづけ、うしろから来るモンスターの進行をなおも阻む。
そんな気を利かせてくれた象鼻のぬいぐるみのつたなくも話す通りに、古井戸神子はその鉄の刀を手に、スクラップを積み上げたふたつの高い壁をけんけん左右に行ったり来たり舞い蹴りながらゲームのように上昇してゆく。
下の地はすでに崩壊しきり、進むのは前ではなく天。天から見下ろし見守っていた八角神たちの集う鮮やかなステンドグラスへと──刃を前に勇ましくわらいながら虹色の光を浴びたドレスの剣士は突っ切っていった────────。
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『よっと、失礼、ばりーん!』
きれいなステンドグラスを豪快に破った先は────
地から天、いまは天から地へ、反転し落ちてゆく真っ暗闇。
真っ暗闇に逆さに落ちていき眼が合った。それはそれは大きな人ともいえない人型がそこにいる。様々なモノや者が映る…ちいさな鏡の数々をその大きな皺ついた手のひらの翳内にあたためマジナイを込めるように管理していた。
「うん、もう夢はお腹いっぱい。てことでどうやらそちらさんにも、眠気覚ましのおすそわけ、いくよ」
「神牙流秘刀秘技──【クリティカルショット】」
ガラスの破片がキラキラと光のシャワーのように降り注ぐ。それは救済の光か、それともただの輝きか。
さかさまに見つめ合う古井戸神子は、おおきなとんがり帽子のモンスターに、切っ先を向け撃ち放つ。
鏡と夢の世界をやぶり抜け出して、働き過ぎのどんよりオーラのおおきな魔女にもおすそわけする。
切っ先のさきへと出でる熱い熱い光線が、数千年は時のはざまで寝ぼけていた悪しき眼をつらぬいた────────。