雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
ケイオスただよう黒い胃袋は満足したか、それはそれは胃に穴があくほどに。
異界を形作っていた黒紙がざわめき、じょじょに風にイチマイイチマイ払われてゆく。
そしてそんな天がところどころ騒ぎ明けゆく光景と同時に、ワープするように黒雷を放ち舞い戻った──それは青い髪をなびかせて……。その剣と盾で勝利をつかみ帰ってきた戦士はひとり崩壊する異界から降り注ぐチップのシャワーを浴びながら佇んでいた。
「おまえ余計なことをしたな」
「え?」
やがて山積みになったチップを眺めひとつ手に取りながら、帰って来た男はそう言った。
ちらりと振り返る赤目は、背方にいる海都のことを睨んでいる。
そしてたじろぐ海都のことを見つめ、こうもつづけた。
「勘違いするな、アレには設計図を全て出し尽くさせてから倒そうと思っただけだ」
「えっと……」
『あ、きっと途中のは苦戦じゃなくて利用しようとおもったんだわ。あの進化するモンスターのことを、彼は自分が強くなるために演じていたのかも。そう──言いたいのだと思うわ』
不安気な顔を浮かべ…男の放つ意味深な言動を難しく考えこんだ海都に、隣にいたイロハは彼に耳打ちし分かりやすく解釈し伝えた。
「な、なるほど…。演じて……ってま、まじすか…!!?」」
海都が一転仰天し見つめ返す……ギラつく赤い眼差しは、まじのようだ。
余計な事とはきっと、その白い盾状のお節介のことだろう。
驚かされた海都は溜息を少々吐きながらも大いに納得していく。青髪の男の実力は未熟な自分とはくらべものにならない程に隔絶した異次元のレベル。逆に今になっては悪手を選んでいたとも……その男の右腕に飾られたよく知るレア盾のことを今一度見つめながら反省するのであった。
「しかしよかった。予定外だが、この盾は────最初から目をつけていた。クレープ屋にすぎたるものだと思ってな」
男は白い装備の曲線をゆっくり撫でながら、そんなことを言い、海都のことをまた睨んだ。
「え? たしかにそうっすけど…。はい? あははハイ、俺もこいつには何回もヤバイ時に助けられ──」
『あ、もしかしてカレ、盗む気なんじゃない。あなたのものを』
「て……ええええ!??」
イロハは気付いたらしく、また青髪の男の意味深な台詞を独自解釈で海都に耳打ちする。
〝盗む〟そんな危ういワードを右耳に吹き込まれた海都はまたもうるさく仰天する。
「とんでもないヤツだなお前。フッ──」
「おわっ!?? えっと、はい…。ありがとう…ございます…? あははは……」
生命吹き込まれたてんとう虫のように青いオーラの翅をひろげて、なつかしの深緑のブレザーの右腕に留まった。
突如、空をかろやかに舞い飛び返却されたレア盾に……海都はおどろきのリアクションを重ねつつも礼を言う。
生き抜いた異界での激しい闘いは終わりゆく。
迷いこんだ悪しき存在、うつむく者に乗っ取られていた異界景色はやがて周りの黒紙をすべて取払い。剣に宿る特別なチカラを引き出した秘刀青蜜から流し込む白い霧の様相にまたつつまれてゆく。
今度はあたらしく探す迷家への道へと、海都とイロハそして青髪の男と……3人一緒にもどることにしたのであった────。