※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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ニュース&ライブラリー

『たまったもんじゃないよ。うちの椎茸を食べてなんで〝ぞんびぃ〟になるというのかい』

 

『そんな〝でぇま〟をひろげたのはどこのどいつだい。あんたらテレビのかたがたもほらっ──こんな風にぎっしりミの詰まった真実だけを報道してくだせぇよ。椎茸のない鍋、椎茸のない汁物、椎茸のないしいたけ昆布、そんなのそうぞうできませんわ? むかしから日亜人はねぇ椎茸がだいすきなのよ、もう生活の一部、椎茸もこうやってむっかしからなげぇこと人間様ときょうせぇ関係にあるわけ。それがあんたらぞんびぃやでぇまやらごちゃごちゃ言ってぇ、椎茸がないとねぇ!! そのうち日亜人みぃんな不健康になっちゃうよ!!』

 

『い、以上椎茸農家えのきださんちの現場からでした!?』

 

世間を騒がせたゾンビウイルスの正体が茸類の摂取からくるものという憶測の情報はいつの間にか流布され多くの人々に共有された。sns報道機関に飛び火し通じたこうした注意喚起は感染者数を減らす一定の効果を及ぼしたものの、そのはっきりとした因果関係は不明である。きのこといっても種類は様々、本当にすべてのきのこが人間にとって悪であったかというのは…怪しいものだ。

 

『はい、ありがとうございます…なにかものすごい怒りというものを感じるお声でした。いやー日亜でもこういった我々の日常生活にも密接に関連するところで第二第三の被害は出ているわけですが……。事態は落ち着いてきたものの日亜にも感染者が少数ながらでているゾンビウイルスの感染方法や経路については諸説ありますが……私個人としてはsnsなどに出回る確定情報のうすいデマに負けず、また我々もそういった情報に流されず、えのきださんにはぜひとも今後もおいしい椎茸の栽培を頑張ってもらいたいものです。さて……、一方でゾンビウイルスの発生現場であるアーメリガでは事態どのような終息の模様をみせたのでしょうか。スタジオから海外への生中継がつながっております、現場デスタニア州の真田アナ、きこえていますでしょうかこちらシンジツ屋の新道です』

 

そしてある期を境にこのゾンビウイルスの感染者数は劇的に減り、現在、異常行動のみられる感染症状の最も多かったアーメリガでは……。帝国軍隊やWASA、消防隊、そして賞金稼ぎなどの活躍で事態は終息に向かいつつあった。新たに開いた亜空間は専門分野のWASA主導の精ある封鎖活動で閉じられ。夜な夜なに暴走しはじめたゾンビの鎮圧も、刑期を終えた犯罪者や法に裁かれなかった悪人を民間の依頼で私刑にする賞金稼ぎたちにより依頼の取り合いが起こる程であったという。

対象を気絶させての捕獲、はたまたそのまま退治の依頼……結果的にほぼ全て鎮圧され、怪奇事件から世間の知るところまで発展した事態はほぼ終息を迎えることになった。

 

『日亜のカメラマンかちょうどいい──カセ! ────おい、クソ日亜人どもみてるか。ちょっとヤキュウとかいうおままごとの大会でこないだ一回勝ったぐらいで調子乗ってんじゃねぇぞ? 【ニューヨークホウェールズvsデスタニアデスウルブズ】こいつはワタシから視聴者プレゼントしてやる! 本物のベースボールを見たけりゃ本場アーメリガリーグを観に来やがれ、その上でまだ【ヤキュウがベースボールに勝った日】とかクソ記事の寝言を書きほざく暇のあるヤツはワタシがじきじきのボコボコに歓迎してやるからカビたバンズの間のミンチになりたいヤツからかかってきやがれ!!! あぁそれとジンガ流とかいうえせ田舎サムライのマスター。くだらねぇゾンビの次は稼いだこの金で海を渡ってそのうちてめぇを狩りにいくぜ、そのくせぇ首と寝ぼけたツラを半年前の半分のこったボディーソープで洗って待っていやが』

 

『ちょっと困るよ!! そういうの!! あぁもう何やってんだかこのアーメリガ女……』

 

『うっせぇ!! だまれ能無しのパンクズ!! 端役の雑魚がアタシの役に立つなら本望だろうが』

 

『はぁあ!?? って痛いいたたたたたァ!?? ちょっととめてとめてカメラぁ────』

 

『いやー、ちょっとアクシデントがあったようで……。また後ほど、現場の真田アナとの中継をつなぎ必ず視聴者の皆様にシンジツをお伝えします。ではここは予定を繰り上げ……さきにベースボールではなくプロ野球の話題…アーメリガリーグのペナントレースのほうも大変熱くなっており気になりますが、こちらも私新道慎司含むファンの熱さでは負けておりません、山陰ジャガーズの冬のキャンプの方をネ! もうやっちゃいましょうか! ネェ!! ではでは本日のスタジオゲストの流星(ながれぼし)さんの解説をまじえて────』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

12月20日 

▽緑蜜高等学校1F図書室▽にて

 

本日緑蜜高校2年図書委員小谷螺夢がおすすめする一冊は。栃木ギャルでありながら読書をたしなむ彼女の古いおぼろげな記憶の中にあり。

 

「あった都市怪奇ファイルⅢ。えーとたしかこの辺りのページに────『ひとりでに鳴りつづける公衆電話の受話器を取ってはいけない。それは霊能力をもつびんかんなキミにしかきこえていないのだ。興味心から電話に出ればさいご……ゼリーフェイスにさらわれるぞ。』」

 

鉛筆画の陰のあるイラスト付きで紹介されている。傘を持つスーツの男。顔が真っ青なその姿。

 

「おー、なにそれ。そんなのナリッパならきになってとっちゃうかも? ちょっこし?」

 

「なーはは。とりそうだねぇ、わたしも謎はほっとけないから。一旦死んだり、銀髪美女になったり、色んな目にあっちゃったり?」

 

「「あははは」」

 

牛頭梢と死の探訪から復活した小谷螺夢、ここ最近なかよく共にいるペアの笑い声が休日の学校の図書室に響いている。

そんなダンジョン部の生徒たち2人が賑やかに騒ぐ中、ひとり考え込み集中する教師がいた。

ちょうど話題に出た想像力をかきたてる怪人のイラストをみながら、この前のダンジョンダイブ中におきた過去の危ういシーンを振り返ってゆく。

 

(怪人ゼリーフェイス……一体何者だったのでしょう。あのあとの楽天海都の報告によるとあの怪人はどこかでまだ生きていると……緩衝世界で共に行動していたカレがそのように言っていた、と。カレが現れるまでダンジョン部の主力雷夏、ムスイ、古井戸神子、そして…総出でも倒し切れなかったあれ程のオーラ力と馬鹿げた耐久力です、あの凄まじい黒い雷から逃れ生きる術をもっていたとしても……不思議ではないのかもしれません……何より本人がおっしゃっているのでしたらそうなのでしょう。そしてこれまた突如出現した起点物質のケルベロスの門、なんのために開かれたのかはわかりませんが儀式じみたそれも含めてゼリーフェイスの仕業だというのはどういう意図が────)

 

(あの強さ、名乗ってはいませんでしたがゼリーフェイスもシーズという敵対組織の一角なのでしょうか……それにしては黒幕王子にオーラ攻撃を仕掛け再起不能にしたことも不可解ですし、しかしボーンクイーンのように独自の世界観と野望をもつ悪と悪は相容れずシーズも一枚岩ではないのかもしれませんね、そう解釈すれば一応の納得はいきます。ダンジョンにおけるあのような厄介なそれも並外れた力をもったトリックスターのような存在はひとりであってほしいものですが……まったくソレはシデン・レイラだけでいいものです。冗談はさておき…そういえば、並外れた力をもつのはひとりではありませんでしたね。颯爽と雷のオーラとともに現れたカレについて、──楽天海都には協力をした。今はその事実だけでも好材料でしょうか。何か考えや戻れぬ理由があるのか分かりませんが、…ただの狂戦士というわけではなさそうです。私もあの古家に誘われたあとあの巻き戻しのマジナイのオーラ操作に協力するようご丁寧にも仕向けられましたが……やはりそこまで万事周到であるカレが敵であるとは思えないものです。なによりも私があれこれ浅い思慮をするより楽天海都自身が多分にカレとの行動を共にし経験し証明しているでしょう、カノジョに本気で向けた一点の不可解をのぞいては……。とにかく雷夏がオーラと体調の不調で休んでいるうちは、私シデンレイラもうかうか休ん──)

 

「え、そんなにヤバかったの? そのダンジョンの怪人?? 笑えないぐらい?」

 

「顔色がまっさお。髪もさっきからまっしろ。しでんれいら。ちょっこしなら女子どーし相談?」

 

居合わせていた生徒たち2人に考え込んでいた表情をずいぶんと食い入るように覗かれていたようだ。岬麗でシデンレイラな彼女は、独り物思いにふけていたセカイから覚めて、並んだふたりの心配そうな顔を見た。

硬くなっていたさっきまでしていた良くない表情を一転、和らげながら、岬麗は先程まで考え込んでいた事とちがう話題に切り替えた。

 

「!────いえ……ふふ。相談するほどのものではなく。ただ、いざ…ちかづいていくとどうじに寂しいものだと思いましてね(髪はあとでまた染めないといけませんね)」

 

「ちかづいたのに…さみしいの岬麗? いきなり謎ナゾかな? うーん謎ナゾだとすると?」

 

「あ、牛頭梢ナゾとけたかも。────これでも、さみしいのしでんれいら?」

 

「ええ、謎ナゾなぞではなく。ちかづくのは別れ……1人の生徒が自分の中のこたえをみつけ、ひとつのところへと巣立っていくのはやはりさみしいものだなと……。この時期になると卒業の春になる前にそうおもいふけながら、心にワンクッションの準備をおいてしまうもので。一種のこの仕事の病ですかね?」

 

「「おおー。きゅうに教師っぽいしでんみさき」」

 

「それはいったい誰かい……(それと年上の頭はあまり撫でないでほしいさ…10年ぶりぐらいかい…)」

 

岬麗でシデンレイラ、椅子に座る真っ白に色が抜けた彼女の頭を、灰髪と銀髪の少女たちが慰めるように笑みを浮かべながら撫でていく。

 

成長を見守って来たカノジョが答えを見つけたとき、いったいシデンレイラにはこの先何がどれだけできるのか。

しかし堅苦しい岬麗では足りない、不意にあらわれてはおどける黄金の守り人シデンレイラの役でももうカノジョにとっては物足りない……。

 

そのとき、ひとつの答えがわしゃわしゃと音立てる彼女の頭にもよぎり浮かんだ。

 

『求めるお宝と答えはやはりダンジョンの中にしかない』────岬麗はそっとかけていた眼鏡を外し、机上に置いた。開いていた都市怪奇伝説Ⅲの本を勢いよく閉じ、唖然と立ち待つ二人の生徒を今思い立った特別課外授業へと誘った────────。

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