※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

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かわりゆく敗北の味

「はやくダンジョンで試したいのにもどかしいぞ! あのゼリースーツとたたかったときより断然パワーアップしている実感があるというのになー」

 

「まったくぅ…………ま、今は休むか。はぁー、しかたない。ミッチー校長の命令には夏ちゃん先生とてかなわないからな」

 

「あはは、っすね。あ────じゃぁ……俺がその間、先生の分も鍛錬しておきます!」

 

「ほぉ、いうなー!! はははは、そうだな? ならもう見舞いには来なくていいぞ! 夏ちゃんはこの通りッッ──大丈夫だ! カイト生徒はクレープのこともダンジョンのことも学校のことも、今は自分のことに悔いなく集中すればいい! むしろ先生を病人扱いすると怒るぞおおお! ハハハハハ────」

 

「え? (たしかに病人は小指で逆立ちはぁ…しないかな……あはは…)あ、ハイ!!」

 

左の小指で逆立ちし、その入院患者はじっとはしていられない。相変わらずの雷夏先生の元気な様子に海都も元気に頷いた。

 

海都には海都のやるべきことがたくさんあり。雷夏も今は充電期間である。

逆立ちしながら笑いみつめる先生の言葉にしたがい、海都は明るい病室をあとにした────。

 

 

 

 

 

 

 

 

▼ダンジョン 部室ビーチ▼にて

 

 

水面にこまかな波が立つ。砂浜から海をみつめる白髪の彼女が、その星色に輝くカラーコンタクトにそんな様を捉える。やがて波紋が重なり合い、波となり海が揺れている。

 

羽織っていたマントを豪快に風に投げ捨て、シデンレイラはさざめく海の中へと降り立った。

 

「海を裂いてどこにいくんだい」

 

「鍛錬の邪魔をするな。私のじかんだ」

 

海底に沈み、木刀を振っていたのは赤髪。

それで海を裂こうなどできるはずはない。だが赤髪は一心不乱に剣を振り続けた。

水中で息をするのはもうお手の物、ダンジョン部の仲間がもちかえった新しい鍛錬法を取り入れ体に大きな負荷をかけつつ、彼女はおおきな海を相手に打ち込んでいた。

 

ここまでストイックになれる人はシデンレイラの周りにはあまりいない。

いつもその赤髪の姿は真に迫るものがある……。彼女がしている鍛錬はただの肉体の維持や、自身の腕が劣化しないように怯えながらやっているようにはみえない。

ただ真っ直ぐ、念じるように祈るように強き剣をもとめて振りつづける────

 

「ふふふ、お邪魔だったかい。でも────困ったものです、こうも珍しくオーラが昂るというのに……今日はちょうどいい相手がいなくてね。────私の実験(たんれん)にも付き合ってくれるかい」

 

シデンレイラがそう言うと場の雰囲気が変わる。昂るオーラを水に溶かし漂わせながら、それは殺気となり赤髪の背を刺した。

構わずに自分の鍛錬をつづけていたムスイが感知した得体の知れない殺気とオーラに振り向く。

 

「!────フッ……ちょうどいつもの邪魔が来なくて退屈していたところだ。いいだろう、全力で来い、この前みたいに我を失っても私の剣でまた寝かしつけてやる!」

 

注文通りの勇ましいお言葉にあまえて、白髪はやがて黒く染まりゆく。深く深く黒く、あぶないオーラをじょじょに高めていく。

 

さらなる実験に危険はつきものか、だがセーフティ機能がわりに相応の実力を助手の剣士に要求する……この暴走装置を止められる実力を。

 

やがて海底に冷たい死のオーラをただよわせて……

 

その先に待ち受けるのは、無知ゆえの無謀か未知の宝か得難き経験か。

シデンレイラとムスイ、見つめ合った瞳はやがて迷いをなくした同じ色に同化するように。

一度燃えだした互いの闘志は、とどまることなく今か今かとソレが交じり合う瞬間を待ち望む……。

秘刀黄蜜そのまだ真なるチカラ眠れる刃と、澱んだ黒いオーラからぬすみだした盗賊の短剣を、今顕現させた────

 

 

 

 

 

 

 

 

手痛い敗北から得たものは、この世間一般にのらりくらりと評される女にもあったのだろう。

 

何を思い立ったのか古井戸神子は冬の山へと訪れた。まだ早朝の寒さのなか霧のなか、久方の獣道を抜け出し、たどりついた──山の中にひっそりとある隠れ家…その外にその男は当然のようにいた。

 

 

「寝ても醒めぬ恐れ、火のよう揺れ選ぶ剣、毒のよう染みついた……。去れ、剣を剣としてみえぬ弱きもの」

 

「それが〝天〟? それともだれのこと? 弱いかなんて、はは、バージョンアップ。今を試してみないとわからなくない? それと、負けたら、代行はそっち」

 

 

久方ぶりに面を合わせたその娘は寝ぼけた眼はしていない、真剣を向けながらその剣士に問うている。

すると老人はおもむろに、みすぼらしく伸びきっていた髪を後ろに纏め上げた。

そしてさげたその手にはいつの間にやら真っ白な鞘がひとつあり、中身はないそれだけだ────。

 

道着姿で向かい合う若き剣士と老剣士。

これから行うふたりの危うい行為は親子でありながら、懐かしくもあれ当然のようにもあれ。

それで十分と十分、たたずむ白鞘に対する赤鞘をなげすてた抜き身の秘刀真剣は構え向けられた。

 

同じ神牙流、現当主と現当主代行の座をかけた怪戦がだれもいない山野でひっそりはじまってしまった。

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