雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
このところ冬の山に篭っていた古井戸神子は久方ぶりに緑蜜市のダンジョン部室エリアに訪れていた。
あの黄色いドレスを一点掛け飾られた部屋はお姫様の住む部屋か。彼女は両手で窓を開けて暗雲の景色を眺める。
ここ最近の機嫌はどちらかというと斜めにギクシャク傾いている。それはなぜなのかイヤな風に打たれながら考えてみる……。
やはりいちばんに反芻するシーンは、鏡の魔女やインキュバスのことではなく、冬のきびしさを再度味わわされた老剣士のことでもなく、
「剣士古井戸神子、さいきん、遅れとりすぎ説────」
やはりここ最近の出来事、全部含めてか。いや、さいきんどころではなく、今一度彼女は昔の自分と今の自分のその実力を並べて想像してみては疑いだすことにした。そして独りそうしているとやがて暗がりの舞台、チャンバラの場面に、浮かびだしたカレのことも。
そういえば開けた窓際の狭所にとまり、ダンジョンのチップを啄むその青い鳥の名を知らない。だがしかし今はそのちいさな青から連想する……。
「たのしい化かしあいは、もうバレてるって感じだけど、こうされたら────どうする? はは、」
彼女は餌にしていたチップをひとつ与えるのではなくつまみ、そのまま剣にし刃を向けた。
しかしその鳥は切っ先の先にある彼女の眼を睨み返して微動だにしない。やはりその落ち着いた怪しさは青く青くより深まるというものだ。
しばらく睨み合っていると青い鳥は飛んだ。
改修中の部室魔王城の一室、その部屋の内へと。
そしてシュバルミラーおしゃれな全身鏡の前にとまった。青い鳥が身だしなみを整えるわけでもなく、じーっとその立ち鏡に映る自分のちいさな青と睨めっこしだした。
すると────何やらオーラを纏いだし、その鳥は突然羽ばたき鏡の中へと飛び立った。
鏡の前にいた青い鳥は消えシュバルミラーが白いオーラに染まり、神秘的な美しさを纏っている。
誘っているのか、そうに決まっている……古井戸神子は役に立たない剣を捨てて、古い赤い鞘を握りしめた。
「遅ればせのロマンチックをあげたいってわけ? はは、────いいよ。偽物より甘い誘いかどうか? ド神子が受けて立つよ。よっと!! はは、冬牙のロマンチックあげ────」
挑むように構える刃で青い鳥がしたように、全身にオーラを纏いそのまま突っ走った。
臆せず飛び込んだ光る鏡の中へと、セカイへと、今にも弾けそうなワクワクとドキドキを胸に大きく潜ませて──────
「あげ? ────は?」
あげたいのは何のロマンチックか冗談か、それとも剣士の彼女にカレからの気の利いたプレゼントか。
サプライズという他ない。誘われたヒミツのセカイに待っていたのは大きな大きなネコ科のプレゼント。
たった今眠りから覚めたのか宙吊りの天から舞い降りて、6つ足で地に面した。
顔は青ざめた灰色のたてがみをしたライオン、翼は蝙蝠のように黒くさっきまで寝袋のようにして天に逆さに寝ていた、百足のようなかわいくない尾をもち、二足で今立ち上がり腕は4本、爪や牙を剥きだしてアクビではないだろう……威嚇している。
「鏡ヨ鏡ヨ小鳥さん? これだぁれが世話すんの? もしかして? もぐもぐのぉ~~
~…おやつタイム? …はは────」
脳裏に色濃く思い浮かべた青いヤツの容姿とは随分ちがうそんなマッチング詐欺に今遭い、ここはどこかのお城の中か、他人の屋敷のペットルームか。にしては広い。
おおきく姿を翼をひろげ威嚇する四つ腕の青獅子…その背にある祭壇のかけあがる上には、丸い光がひとつあった。どうやらその大きなペットは輝き続けるソレをよそ者から守るよう
青い小鳥に誘われて意気揚々とやってきた鏡の中、またしてもこれは夢幻想でありカレの仕業ではないだろう。
この頃いろいろと運やタイミングの悪い古井戸神子は珍しく呆れ溜息を吐きつつも、用を見失い暇になってしまったその剣を────構えた。
大きく開いた獅子の口が火を吹いた。夢でも幻でも剣を握ったからには……今一度試してみる。大きな獅子を相手に自分の力量を。
ご挨拶の火炎に包まれた剣士は、オーラを吸い寄せた炎剣を手に、イマ瞳を凝らし、ただ用意された敵を斬るために────────