雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
剣士はユラユラと祭壇をのぼり、その頂上、煌々とかがやく光の欠片に手を伸ばした。
眩く包まれていたまっしろな光が明けてゆく────────
佇み立ち部屋の高貴さを上げていたそのシュバルミラーは姿見の役割を果たせない程にひび割れていた。そこから漏出していた黒ずんだオーラは鏡の内へと引き返すように吸い込まれて失せた。
少し中の様相が荒れてしまったものの元いた部室魔王城内のお姫様の部屋へと古井戸神子は誘われた鏡の世界から戻って来れたようだ。何はともあれ状況をクリアした、己のツルギで……。神子は独り、ひとつお疲れのひと息でもつこうとしたが────つこうとした息をのむ。
見たことのあるお召し物の黄色いドレスを纏い、目の前に立つソレは神々しく光っていた。
長く艶やかな青い髪が暗がりの部屋の宙を川のように流れる。無い羽を伸ばすように天を見上げ、深く呼吸する。やがてゆっくりとゆっくりと降り立った……。その女神のように美しい存在が、傷ついたひとりの剣士に微笑んだ。
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それがどんなに美しい誰であろうとも、いきなり神々しく現世に顕れようとも古井戸神子は知らない。
期せずしてまたしても青色ちがいのマッチング詐欺に遭ってしまったものの目の前、いや眼下に映るそんなものを強要した覚えもなかった。
丁寧な丁寧な、それ以上その部屋のあかいカーペットに沈まない土下座などを。
「申し訳ございません!!! 小鳥に示現していたときのことも今になって全て覚えています!! あなたのその力を見込んで、いや甘えてしまい……此度、一度砕かれ奪われていた私の
「もういいからさ、あぁーあ、────だれなわけ?」
それ以上の土下座はもういい、彼女は冗談は好むが本気の土下座をぺこぺことされて喜ぶタイプの者ではない。それに青獅子の守護するその危険が牙を剥く部屋に誘い込んでしまった件の謝罪ももういい。ほつれた黒パジャマのボタンを片手であそばせながら、そんなけだるそうな雰囲気で神子は次の話を促した。
そんな彼女の様子に察したのか……地べたから神子の表情を見上げ、やがてその美貌と気品に似合わない土下座の姿勢と行為をやめた。青髪の女はおもむろに立ち上がり。慌てた心と口調それに拝借した黄色いドレスのスカート裾を正し、忘れてしまっていた自己紹介を丁寧な導入で語り始めた。
「は、はい?? そ、そうでした…………私はブルーコスモスのリーダー、ガライヤ・ガラシャ。訳あってあのような小鳥の姿で示現することになってしまい、今回あなたが魂角の一部を取り戻してくれたおかげでこうして人としての姿で顕現することができるようになりました。そ、そうでした! それどころではなく!! ……神牙流剣士、古井戸神子その素晴らしきオーラと力を今一度見込んでブルーコスモスに協力を、いえッ、私ガライヤ神にマオウを討つための力を手をッその剣をッッかっ────────」
「ごめん、もういっかい。さくらんぼ────なぁがいわ(耳痛いし)」
「し、しぇ…???」
まだ痛む耳を凝らし長々と話を聞いたものの古井戸神子にもカレに関してもまったく関係なさそうな話であった。少しイラついたように珍しくも表情をしかめ、左の耳を指でほじりながら……神子は目の前の知らない青女にそう言った。
はじめて人間のくだけた冗談というものを直接耳に入れてしまったのか、ガライヤ・ガラシャと名乗った人物は面をくらった顔で固まってしまった。