雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
「ですからはい、事態はしゃべる小鳥がただここで囀っているわけではないのです。八つのあらゆる世界にもうその悪しき者たちの息がかかっているのです、この世界と世界をつなぐ外庭も含めて。そして……やはりあのマオウの暴走を絶対に止めねばなりません。対峙したアレは…どうしようもない破滅の願を抱え望んでいます、このままではいずれ彼は全てを己の好きなように破壊し染め上げていくことでしょう。邪を率いるほどの過ぎたる邪は世界の根幹を揺るがす存在です、ここにお集まりのダンジョン部の皆さまどうかマオウを倒すために人々の星々のセカイの平和を守るために協力してくださいこのガライヤ・ガラシャにッ!!」
「ケイオスの魔王とはな。フッ、いいだろうおもしろい。どれほどのものか……易く斬れる名前負けじゃないといいがな」
「ははははそれさっき夏ちゃんが言っといたぞ。ムゥちゃんが言いそうなセリフだとおもってあらかじ」
「だまれ」
「ははは」
もう一度あらためて必死に熱く語り始めたガライヤ・ガラシャの話に遅れて登場したムスイも魔王の存在と話にうなずき興味を示し、先に来ていた雷夏同様に乗り気であった。
「しかし今のダンジョン部にはそのおもしろい話は関係ないところかい」
「どういうことだシデンレーラ? そんなクールぶっちゃって? 関係なくは」
「元気に囀るばかりでなく止まり木ですこし考えてみるのさ。こっちにはもうすでにシーズという実体のしれない敵対組織や商売敵がいるさ、それについ最近派手にヤラれたことをもう忘れたのかいカミナリナツ? あの怪人ゼリーフェイスのことを突如舞い落ちた黒い雷のことを…。噂ではアレがしぶとくネバネバ生きているらしいのはキミも知っているとおもうが、そう……いつ神出鬼没なトリックスターが搦め手をもちいて襲いかかってきても不思議じゃないさ、ダンジョンは広大かつ繋がっているからね。そして、ダンジョン部にはもうそれぞれくっきりとした目的らしい目的があるということさ。最優先のはずのそれを一旦投げ捨ててまでは善意から別の問題に首を突っ込み協力するメリットは薄いということです。──かい?」
「な、なるほど夏ちゃん? もっともらしいことを……言われている気もするな?」
ムスイと同時刻に現れた白髪のシデンレイラは総括したように、現在のダンジョン部の立ち位置を明かした。乗り気ではない理由は敵対組織のシーズのことや、恐るべきオーラとしぶとさを持つ怪人ゼリーフェイス、そしてあの日颯爽と現れて霞んできえた雷冬牙のこと。直近のダンジョンダイブで生えてきた取り掛かるべき優先事項が多いからだ。
シデンレイラのご丁寧な状況説明に振り向いた雷夏もひとり頷きながら情報を整理していく……。
「馬鹿め。やはり何も考えずに二つ返事でかえしていたのかお前は」
「やはりムゥちゃんも──」
「それこそやはり馬鹿か、私はこの剣に足りうるなら試し斬る相手がべつにまだヤツらでなくてもいいということだ。魔王ならば部下のひとりやふたり強い奴がいてもおかしくないからな、先ずはそれを討つ、その真剣勝負らしきを鍛錬とはいわないがそれが私のやり方だ。もっとも、ぶっ倒れたお前がこの前の戦いのことをどう思っているかは知らんがな……」
「んー、なるほどムゥちゃんらしいな……いやもちろん考えてはいたぞ。それはすぐにでもゼリー頭とアレにリベンジをしたいほどにな!!」
ムスイの考える話を受けて、雷夏はじぶんも強敵へのリベンジに向けてアレコレ考えていたと熱く頷いている。離れて突っ立つ男子生徒のことを遠目にウインクしながら。
「なら今のその手はなんだ」
「こっちはこっちの別腹夏ちゃん♡(手だけど)」
「はぁ……見境ないお前らしいな……」
もう既に握手していたその手は雷夏が即断し決めたこと。
彼女を頼り離さないガライヤと頼りにされて熱くこたえている雷夏、青髪のペアがすっかりできあがっていた。ムスイは呆れた様子だがそれもまた雷夏らしいとその青の単純明快身勝手な行動パターンは既に読めていたようだ。
それとは別にシデンレイラの話に真剣に耳を傾けていたガライヤは、まだ虚ろな記憶を探り……今、思い出したように面を上げてまた語り始めた。
「シーズ……たしかそのように……。それこそケイオスの化身であるマオウが世界に撒いた悪の種、今もなおその数を増やし尽きぬ〝シーズ〟です。マオウをはじめとする巨悪が悪に集いだし、ますます膨らみその悪しきながれの歯止めが効かなくなりはじめました。様々な悪敵を倒していくうちにその動きと横の繋がりと目的を察知した我々はその強大な戦力に対抗すべく以前からガライヤで立ち上げていた救済同盟ブルーコスモスにさらなる同志を募りました。それこそまだ見ぬココロ共にする仲間を求めあらゆる世界を問わず、駆けて、海を渡り、ときに海に挑み、しらぬ青さの空をも舞い飛んでゆき────そして出会えたあなたたちもまた……そうであると」
ガライヤが両手を広げる、すばらしい大翼をひろげるように。
その手の指先の届かずとも彼方まで全てを包むように彼女はそこに在る。
ブルーコスモスはやぶれても、自分の存在が散り散りになっても、〝あなたたちダンジョン部に出会えた〟……それこそがまぎれもないガライヤ・ガラシャに残された確かな強い運命であるのだと、青い草原のまんなかでこれ以上ない真剣に説いた。
また舞い降りたのは迷い込んだあの時のちいさな青い小鳥でない、そうは見えない。
今そこに在るのはとてもとても大きな存在、博愛と勇気と希望に満ちた真の平和を願いつづけるガライヤの女神。
白き