雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
「オーラをもたない…平和……しかしそれではッ八つの世界の根底をも脅かすケイオスはッ止め──」
「んやそれはちがうぞ? オーラがあるから守れるモノも確かにある。それは土俵際、ダンジョンの土俵に立つ夏ちゃんにこそできることだ」
オーラのない世界その彼女の知らない世界ガイアの事実に、衝撃を食らったガライヤが何かを反論するよりもはやく。
雷夏は手を広げてみせた、そして早乙女雅なるものの説いた平和説の間違いを正してみせた。オーラを持つことで使うことで守れるものもあるのだと、つまり平和へと向かい解決できる力がオーラにはあるのだと、堂々と自分の今までやってきた考えを示し、口を挟んだ。
「いえ、雷夏。あなたのように冴えた個人のチカラがどこまでも肥大するそのオーラこそ。あなたが仮に今にでも極悪の瘴気を吸いよからぬ狂気に染まれば、その逆にもなりうるのよ。殺意の狂気にかられ、その悪しき雷のオーラを行使し好き勝手に地を焦がし暴虐する、そのようになったあなたを止める手立ては世人にはないわ」
「私が殺意の狂気で悪に? ははははは、いやさっきからおもしろい話ばかりだがそれも違うぞ。さすがの夏ちゃんもオーラの薄いあっちで……そうだな? ──戦車3台でも用意されればお手上げだ!! はははは」
「そうね。雷夏あなたがいうように。たとえケイオスの魔王があらわれ攻め込んできても、あちらでは無力だわ」
「!?」
連続して笑い飛ばしながら否定する雷夏であったが、彼女の言葉を受けて早乙女雅はまたすらすらと説いていく。早乙女雅の提示した考えは雷夏に否定される前提であったかのようにも見える。最終的にその答えへと行き着くのを知っていたかのように、何度も議題にあがった魔王に対する結論をさらっと添えた。
予期せぬ答えへと誘導されてしまった雷夏は顎に手を当て少し考えた。だが、やがてゆっくりと首を縦に頷くしかなかった。自身が戦車3台とオーラのここよりも薄いあちらでの戦闘力を例えたように、魔王の戦闘力というものは未知で測りようがないが全力のパフォーマンスとは絶対にいかないことを彼女自身、身をもって知っていたからだ。
ガライヤ・ガラシャは今ふたりにより導き出された答えに驚きを隠せない。驚きながらただただ自分ひとりだけ話についていけずに困惑する。思い当たる節のあったようなそれぞれの表情を浮かべた雷夏やダンジョン部の者たちとは対照的に……。
「そうね。あなたのいう戦車50台でも用意すればいかなる強力なオーラをもっていても十分に対応できるわ」
「50ときたか…ははは!」
(なんで戦車の数でまた例えてるんだろう……なんかこのひと…神っぽくなくない? って雷先生2台までは倒せるってこと…!? 本当にやりそうなんだけど…)
「あら神っぽくなかったかしら。でもよかったわ、そうおもってくれていて」
思わぬタイミングでいきなり目のあった……その黒髪黒セーラーのまるで欠けぬ月のように綺麗すぎるかつシワひとつ見受けられない面に、心でぼやきツッコんでいたはずの月山は驚いた。他人の心を読む能力でもあるのか……何も言い返せずにぐっと固唾を飲み込んだ。
「でもそれぐらいのことよ」
「オーラを放棄することと唱える平和の関係性がわかったかしら。破滅はさせられないけど破滅することもない。そして牙を研いだ獣たちのいる土俵の外の縄張りにあなたたちが出向く必要はないということよ」
「なるほど、オーラの薄いこの世界はオーラ頼りの連中には容易には攻め落とせないということかい。となると逆に鉄の下駄をうまく履いたこちらが有利まで……考えられそうかい?(WASAには培ったダンジョン亜空間を封鎖する技術もあるさ、現世にぽつぽつ出没する亜空間が閉じられれば…オーラの通り道はなくなり風通りが悪くなる。つまり風通りの悪いことにもおっしゃる多大なメリットはあったということかい)」
「戦車50か……どう斬りふせる……」
「はは、さぁすがに戦車相手はでまかせ時空剣術も想定不足だわ」
シデンレイラはオーラの薄い現世の有用性と防衛力を今認識し直し理解する。早乙女雅なるものがただガライヤ神に対抗し当てつけに言っているわけではなく、その根拠に話を整理しながら納得した。
ムスイは自分ならどう剣をもってして戦車を相手取るか……真剣か思い悩み……。
名のある剣術流派の当主代行である古井戸神子は想定していないしたこともない馬鹿らしい巨大無機物相手の闘いに、意味のない微笑とやわらかなため息を投げかけた。
ダンジョン部の者たちは現世とダンジョンの己の発揮できるチカラ・パフォーマンスの差異に既に気付き、早乙女雅の唱える魔王討伐方法の空論をすぐに真っ向から否定することはできなかった。