雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!! 作:山下敬雄
神の影その足元に立てた矢は挑戦か贄か。どちらにしろ無謀か。
もはや雷夏、彼女のはなち向けたその闘志と興味の矢印が止まることはないだろう。
周りの者は息をのみ、緊張感が高まり空気がぴりつく。とんでもないことが今起こっている、だが同時に当たり前のことだ。青髪赤目のダイバーが目につけてずっとうずうずとオーラを燻らせていたそれに挑むことは。ガライヤに向けたそれの発言が気に喰わないなどは闘いに向けての些細なこじつけのひとつにすぎないのかもしれない。
「もっとはやいのかと思ったわ。意外と慎重なのね」
「ふふ、あぁ夏ちゃんは速いぞ…! おもわぬゴ馳走を前に穴でもないかすこし慎重になったのさ」
「……そう。おかげで用はあらかた片付いたわ」
「傘なんかでいいのか?」
「お気に入りよ。不満かしら」
早乙女雅は天からゆっくりと降りて来た黒い番傘を手にした。
優雅に佇みさすその黒傘に雷夏は冗談を言ったが、ぎろりと睨み返すその黒眼表情はまばたきをしない。その傘の上でこれから曲芸を披露したいといわけではなさそうだ。雷夏は口にする愚問をやめ表情を引き締めて笑った。
「はは、んや気に入った」
「そう。あなたはソレでいいの。もっと鋭くても構わないのだけど」
「あぁ、これもリハビリ明けの革命夏ちゃんだ。というのもどうやらコイツも試してほしいらしいぞ、ははは」
雷夏が選んだのは槍であった。【
その穂のない槍に鋭さはなくても、その赤目は鋭くワラい睨む。今は静止せど食って掛からんほどの彼女の気迫とオーラがもうにじみ出ている。
返答には頷きもせずに傘をさしたまま、早乙女雅はしずかにつづけた。
「──影を踏んだらあなたの勝ち」
「──踏んだあとは?」
「好きにすればいいわ、その先はわたしは一切のチカラをあなたに向けて行使しないと約束するわ」
「自信だな」
「あなたほどではないわ」
足元怪しげに蠢き…賢く整った……円い影が彼女をスポットライトのように黒く照らす。ルール説明はシンプルにそういう遊びをしようというのだ。
しかし分かりやすいルールにすぐさま要領を得た雷夏は念を押し確かめた。その先の話を。
神はルールのない終わりのない遊びは好まない────早乙女雅はその取り決めた遊びで捕まればそれ以上は抵抗はしない、そう目の前のヤル気に満ちた目をもつ者へとはっきりと伝えた。
感情乏しくうつるポーカーフェイスに覗かせたものがそのギラつく赤目の視界にはあったか、それを自信だと雷夏は言い表す。
おなじく、もう既に急かすように滾り漏れる…バチバチと焚き火のような音を立てる青いオーラの火を見つめながら……早乙女雅はさらりとお返しした。
それ以上交わす言葉はなく押し黙る、静寂の空気を味わいながら昂りすぎた闘志と速まる息を一流のダイバーは整える。
そこに変わったちいさな黒影の土俵がある、しかし目もくれない。見据えるのは足元ではない、影を踏むことなどどうでもいい。そんな事をほんの片隅でもアタマで考えていては喰われる、その槍をすこし構えた瞬間に雷夏にはもうそんなことは分かっていた。
頭上その場で握り掲げる柄をゆっくりと回転させてゆく。それは今まさに飛び立つヘリのように、エンジンを始動させ見立てたプロペラの回転数を上げてゆく。そして青いオーラを唸り練り上げながら、ただ来たるべき合図を待つ。
突っ立ち番傘さす影の円中心からひとりでに飛び立ったのは──股の間に中り突き刺さっていた矢。それっが今地から引っこ抜けるように高く浮かび────オチた。
うるさいプロペラを後ろに風を巻き起こし推進する。ターゲットへと一直線、イマ挑む雷風に小細工はいらない。
高速回転するその槍は突くよりもまた頭上に掲げて──
荒ぶるオーラは止まることはない、廻りめぐり捻じれ増幅するエネルギーを全て、叩きつけた。
その青き危うい熱量につられて、視界一面に咲いた黒い華を。
視界いっぱい青く青く染め上げた。青く青く染め上げて、それだけにとどまらない……突き破れぬ感触に叩きつけては激しく落ちた轟雷のオーラが車輪となり轍を描く、槍の先端が土をつけ防ぐ傘から離れてもその勢いは止まらない。
その技の名は【
魔槍竹輪丸がそのパイプ空洞機構に叩くと同時に器用に奏でた…永久に廻りつづける摩訶不思議あらたな雷の技・メロディーが、いざ獰猛に地を蹴散らしてどこまでも進みゆく。
膨大なオーラそのエネルギーで運びゆくのは神、女神。蛇の顎に尻尾を咥えた丸く鮮やかな雷車輪を誰にも止めることはできない。生身に重くのしかかる緊張やこれまでにないプレッシャーをも叩きつけては彼女はいっぺんに吐き出した。全力で見開きギラつくその赤目は、手加減という