※この作品はR-18です。

雷夏先生とゆく、緑蜜高等学校ダンジョン部!!!   作:山下敬雄

26 / 192
26♡生存会 《第1章 新ダンジョン部-完-》

逃れようと前かがみになっていく姿勢に、背後から不意に抱きかかり密着している。

 

背にあたる柔らかい感触と、右の耳元でささやく、呼吸音がちかく…熱量を帯びた声がきこえる。ふれていたい…すごくいい、オトナの香水の匂いがする。その匂いもシデン・レイラ彼女を表す記号であったのかもしれない。

 

ブロックベッドの上に座り、背からするりとおそいかかった彼女は彼の体をやさしくまさぐる。

 

まちがった制服を交換しなおす…そういう理屈でシデンレイラは海都に密着し体のあちこちにちょっかいをかけていた。

 

仕掛けられた表情の見えないイタズラな手に声に、海都は声を漏らしてしまう。

 

気分がのってきたのかシデンレイラはやがてねちっこく海都の体をまさぐりだし、この今まさぐっている服のことを耳元で話した。

 

「そういえばこの制服は誰が着ていたのかい?」

「カミナリナツかい、それともあの赤髪の剣士かい? すんすん──…ふふ。ニオイじゃもうわからないね」

 

耳元でそういたずらに囁くとささやかれた耳がじわり…紅潮していく。白とグレーのこれは先刻雷夏の着ていた制服、海都が寝ている間に何故か着せられていたものだ。

 

雷夏ちゃん先生の着ていた制服を着せられている…その事実が得体の知れない恥じらいと興奮をうながす。説明されるほどに海都は気付く、その経験したことのあるはずない恥ずかしいシチュエーションに。

あらためて自覚させられてしまう。

 

シデンレイラの右手は既に、彼のモノの方へと伸ばされ──すりすり…と、さすった。

グレーのスカートを押し上げていったふくれあがる棒が、びくりと幾度か彼女のやわくつつんだ手の中ではねた。

 

「おや、びくっと反応したね。ふふ、獅子くんは果報者だね。これはすこし宝を盗まれないように私もすこしがんばらないといけないさ。ふぅー…ちゅるぢゆーーー」

 

なまあたたかな吐息の合図で右耳の中にすべりこんでいく柔い舌、舌先。

 

その口で耳を愛され、その左手は白シャツの中を細い指先でまさぐり見つけた、浮き出た彼の乳首を爪先であそんでいる。

その右手は興奮しぬめったペニスを擦り上げていく。

 

ぞくぞくと…多方から高められてうながされていく達者な性技のコンビネーションに、シデンレイラの全身に絡め取られついに────

 

どうしようもなく喘ぐ彼が耐えられるはずもない。

 

「宝は宝じゃなく、愛するほどに宝なのさ。私が愛してあげよう獅子くん、ほらいっぱい射精しなさい♡♡ちゅぢゅーー」

 

「あああひゃめああああで♡♡♡♡」

 

海都はシデンレイラの手コキで盛大に射精した。

 

最後は首筋にキスを、宝に自分の印をつけるように唇を押し付け──びゅーーーーっ、シゴきあげ添えたしなやかな右手の肉筒からザーメンが勢いよく噴出した。

 

興奮のあまりに噴き出た白濁の線は高く高く宙を描きベッドから床まで、落ち────汚していった。

 

噛みつくように吸い付いた唇がはなれる、オレンジ色に滲んだ彼の首筋。

 

シデンレイラは予想以上の大興奮の射精を目撃し、わらった。

 

脱力しもたれかかるダメになった海都を後ろから支えて、その黒髪をよくできましたと言わんばかりにやさしく撫で上げていく。

 

しかし、甘い空気になにかがじーっとつきささる……シデンレイラは第三者の視線に気付いた。

 

そう、そんな密着一体となった男女の愛し合う行為を目撃していたものがいる。

 

何故かガタついていたピンクの扉は開かれ、勢いよく射精して描いた白い線を見て。やってきた者は突然の事におどろき笑った。

 

「うわー、なぁにやってんの、ソレ? 開幕からヤァばいじゃん、はは、」

 

ボロボロに破れた緑のダメージジャージは、笑いながら黒い頭をかいた。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

事後数分後────

 

とりあえず服だけはやっと元のものに交換してもらえた海都だが、

視線の先、突飛にがらりと変わった空気に……困惑の目を向けている。

 

その恰好は見るからに、大胆セクシーされどクールでフォーマル、豪華絢爛であり燃え上がる炎の意を感じる。

今もなお古臭さは感じない担う最先端。

 

おとなり中真国(ちゅうまこく)の伝統衣装、チャイナ服だ。

 

赤青それぞれの生地にスリットが深く入った肌色のセクシーは、目のやり場が困るものだがそれよりも何故チャイナ服を彼女らが着ているのかが海都は気になる気持ちが勝った。

 

「な、なななんでぇ……チャイナ服を……。ど、どこからぁ…?」

 

「なんでかい? ふふ、────わからないさ! アチョー!」

 

「アチョー! 期間限定チャイナド神子、チャ神子だよ。でででででっでーなんちゃららー、──はは、やば、肉まん、」

 

 

アチョー! 日亜国の人々が想像したこってこての真国人の掛け声と動作を披露している。

 

チャイナ服を着ると拳を突き、脚を蹴り上げたくなるものなのか…2人はノリノリでたのしげだ。

 

ド神子のボロボロになったジャージの代わりにシデンレイラが着替えさせたものの、どこからそれが出てきてなんでチャイナ服なのか海都は未だわからず。

 

困った顔を崩さない海都を2人してじーっと見つめたと思えば────赤と青のチャイナ服を着た美女2人はごそごそとなにやら耳打ちし合っている。

 

2人のあいだで何かが決まったのか頷き合い、何故か吹き出し笑っている。女性2人が何がたのしいのか海都はわからない、困惑はより深まり────

 

 

「「鼠はチューてことで、アチュー……からのアチョー!!!」」

 

「んえ!? えええどうゆうどわっ!!??」

 

 

意味不明な言葉をそろえて言っても意味は不明。おおごえで言っても意味はまったく伝わらない。

 

だが、青いチャイナ服のド神子と赤いチャイナ服を纏ったシデンレイラに左右から同時に襲い掛かられ────

 

海都は『『アチョー!!!』』の元気な掛け声とともになす術なく…… 彼の無意味な細腕のガードはもちろん強者2人相手にはまったく意味をなさず……理不尽にもまたベッドへと押し倒された。

 

 

 

 

 

 

その青年の細腕と攻撃力のあまりない都合のいいやさしいだけの心では彼女らを、彼女を……迎え撃てるはずもなく────

 

ベッドの上にぼすり……やわい音を立てて一体となった両者は倒れ込む。

 

「よーし、──ド神子固め、」

 

【ド神子固め】:

それはただの両腕をぐるりと相手の両腕と胴もろともに絡めただけの抱き着きだが、海都にはどうにも振り解くことができない。

 

「どわっ!? ──ちょぐるじ…ど、どみこさんやめ…」

 

「あー、はは、──ド神子固め②、」

 

「つー!? ちょなんか痛いっすけど!?」

 

【ド神子固め】からの【ド神子固め②】:

それはさらにもう一段階力がはいり海都の胴体が締まる。遊びにしては痛い。

 

しばらく枕に伏せて呼吸するかのように、抱きついたままの海都の胸元でド神子がおおきくゆっくり呼吸している。

 

「すーふぅすーふぅ…はは、カレシの胸に飛び込む、──30、」

 

「……あのぉ……」

 

「あのおおおお、」

 

「いたたたた!??」

 

また一段──ド神子固めの締まりが強くなったのは、彼が期待値以下のツッコミ力で不足だったからだろう。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

空回りするほどに元気なチャイナ娘との謎のプロレスごっこのあとは、その延長線上。

 

海都の体は、今度はチームプレイで固められていた。

 

赤青絢爛なよそおいの2人は左右から、

彼の体の上をシンメトリーに区分するように寄り添って密着し、性技を披露している最中だ。

 

寄りかかる女性が両側から乳首を舐め吸い、キスしたり。

 

それだけではなく、

 

「「スリットすりすり~」」

 

チャイナ服の性質の代名詞であるセクシーなスリットから露出した彼女らの魅惑的な生脚それぞれが、海都のペニスをすりすりとさすりもてあそぶ。

 

2人の白いすべすべの生脚でのソレの破壊力は、一介の男子高校生相手にとって籠絡させられるには十分。

くわえて舐めやすい位置にある…乳首を舐めながらでは彼が耐えられるはずもない。

 

右から遊びながら奉仕している赤いチャイナ服の女性はシデンレイラ、白黒のツートン髪と情熱の赤の組み合わせは青よりも似合っている。ド神子いわくパンダに赤いチャイナ服が似合うのは当たり前。

 

左から半笑いで舐め舐めすりすりとしている…青いチャイナ服はド神子。海都のもつ白い盾が言うには死んだ魚のような目が欠点らしいが…顔だけはいいらしい。青の方が似合っているとシデンレイラがチョイスしたようだ。

 

そんなよそおい新鮮な2人の攻め方は合わせたように激しくなり、興奮してたった男子の乳首を舌で転がし吸い付くキスなどをしながら、赤と青の生地から露出した2人の脚が、腹沿いにビンと勃ったぬめる棒に圧をかけておしつぶし速めていく。

 

「「スリットすりすり~♡」」

 

「も、もうむぃあああああ♡♡♡♡」

 

チャイナ服を纏ったシデンレイラとド神子の生脚スリットコキと乳首舐めのコンボに耐えられない──。

海都は左右から挟まれて押し寄せる攻撃的な快楽に促されるがままに、あえなく射精した。

 

ふたりの生脚を汚す…大興奮の射精は──

 

「はは、めっちゃぶっとんだ、はは、」

 

「ふふ、やはりこの衣装の効果かい?」

 

「あぁあぁあ…」

 

海都の鳩尾の辺りまでそのザーメンの白線が飛んでいた。

 

最後にすごく濃厚なザーメンをひりだした。もう今日は本当に幾度射精したかわからない。

女性陣たちのあたえる快楽に浸かりつかれた海都は目元をとろんとしたまま惚けている。

 

そんな彼の出来上がった表情にくすくすと顔を見合わせ笑い合うのは、どこか女子っぽい習性だ。

 

この補給行為の一段落を終えたのか、海都を捨ておき…やがて2人の小話がはじまった。

 

海都を介して……初対面に近い2人の距離が少し縮まったのか。それとなく遠回しにシデンレイラは今回のダンジョン探索で気になっていたことをド神子へと尋ねた。

 

 

「そういえば、帰りが遅かったようかい?」

「あー、ちょっとねー、クリティカルショット案件だったわ、」

「それは……どういうことかい?」

「かいかい、足の裏がおもに、────かいかい、」

「……そうかい」

「あーそういや、なんか夏ちゃんとジャグチが外でまたチャンバラしてたけど、やる? パンダフルウーマン」

「遠慮しておくさ、死ぬにはまだ早いのでね(そのパンダフルウーマンは…もうそれでいくようですね、はい)」

「死ぬ? はは、あのときのヤバイオーラなら目の前の強い奴にもいいとこいけるじゃん、」

「……実は腕の多い鼠に一度脱出マジックするときに使ってしまったさ、今日はもうこれ以上は──うん、むりだね。ヤバイ切り札はルール共通概念に従いフツウはそう何度も使えないものさ(もっとも暴れ馬のスペードルを少し使えるように改良できたのも、巡り巡った牛頭梢彼女の相談ごとをこなしてきた影響でしょうが…楽天海都の回復オーラもあれば暴走することなく狙い通りに死の痺れは浄化できるようですね)」

「はは、そういやたしかに、切り札か。ド神子もクリティカルショット案件はヤぁバイぐらいつかれるからわァかるわ。やーっぱさ時空超えるよりイチゲキでおわらすのがいちばんはやくてつぅよいわ、アレなんだっけじごくのレフト…わすれたわ、はは、」

 

「…………こういう台詞はひじょうに陳腐でありきたりだがイチド私に言わせてくれるかい? キミが敵でなくてよかったと」

 

「はは、ほんとに使い古しの雑巾並にありきたりなヤツじゃん。敵ねぇ。────そもそもココの敵、カタキってのもだれかしらないわ、はは、」

 

ド神子に明確な倒すべき敵、カタキはいない、わからない。時後求の悪魔セカンドベアルもただの神牙流の当主であるじじいの遊びが自分に何故かめぐって降ってきただけで、カタキではなかった。

 

シデンレイラの目に映る彼女はにやっと笑いながらとくに変わらないが、秘めている事情は元ダンジョン救助隊のシデンレイラにとって少し察するところだった。

 

 

「……」

 

 

「あー、墓参りみたいなもんだから」

 

ツッコミもない、2人の間にぽつりとできていた沈黙を嫌いド神子はそういった。

 

微笑みを硬直させ押し黙っていたシデンレイラは耳に入ったその思いもよらないフレーズに一瞬真顔に戻り、──また口角をかるくあげていった。

 

「墓参り……。ふふ、それはいいね。この冒険はそれぐらい肩肘はらずにいるほうがきっといいさ、──みつかるさ」

 

「あー、はは、いえてる」

 

 

徐々に…おもわず…自然体に近いような笑い顔を浮かべた2人。

 

 

「ふふ…。あっ、やはりその青は似合っているね、この獅子くんがもっていた鉄板の機器でイチマイどうだい?」

 

「あー、こうみえてチャイナのド神子だからね、はは、アチョー!! …脚はあがるけど戦闘服だとさぁみいわ。あっ、──そういやまだ回復ちんぽ入れてない、やまだ、」

 

「じゃないやおーい、毛布くん、ははは起きて、ド神子だよちんぽたたせて──ド神子固め❸」

 

 

ぐっすりから、ずっぷり……青いチャイナ服を着た黒髪の美女が跨る。

みじかい眠りの…目覚めからワケもわからずど迫力に、その目がその顔がちかい。

 

青年はその屈託のない笑みに悟る、この種類の笑みは知っている……。

 

迫られて萎えないかぎり、補給行為はもうすこしだけつづくようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

にんげんやねずみたちが羽を休めている間にもブロッくんたちはカクカクせっせと働く……。黒紫の外装が個性豊かなオーラブロックで、カラフルに補修されていた。

まだところどころ、魔王城はピースが欠けている。

シデンレイラが描いたやぼうの完成にはまだ程遠い。

休めといえどオーラをおねだりし、ちこちこと寄ってくるブロッくんは四角かわいい。

離れても離れても一向に自分の元にたかって離れないので…月山はしかたなくオーラをゆずり、また彼らは一列になってどこかへと向かっていった。

 

 

見上げれば暗天の見える……欠けたブロックの天がチラチラと彼女らを覗く。

時刻は現世日亜国において午後8時。夕飯にしてはすこし遅くなった、腹をすかせた探索者たちによりいっそう豪勢な宴を。

 

急ピッチで仮設されたパーティー会場──ここに皆が集まった。

そして角ばったブロックでつくったカラフルカクカクな円卓の上に、今、紐解かれた。

 

軸に巻かれていた深い緑の表紙から右から左へと────黒く、力強く、縦書きに連なり露わになる。

 

絶対的人物を筆頭に────

 

 

▽

 

緑蜜ダンジョン部一同

 

部長兼顧問

雷夏

 

部員

楽天海都

牛頭梢

月山雨楽楽

シデン・レイラ

ムスイ

ド神子

チュチュン

ダンディ(鼠執事)

青い鳥

ヤドコンちゃん

マスターキャップちゃん

ブロッくん×12

 

▽

 

 

 

 

「気付けばすっかり大所帯になってしまったな、喜ばしい、夏ちゃん先生兼部長兼顧問は絶対的に喜ばしいぞ!」

 

「よろこば…っすね」

「あー、ド神子も入ってるの決定なんだ? 夏ちゃん、はは、」

「ダンジョンで鍛錬はしたが、そのヘンなのに入ったおぼえはないぞ雷夏」

「チュチュンもはいってる、ダンジョンブ」

「おー、みぎからさんばんでぇす」

「その巻物はどこで買ったの……部活だよねこれ…」

 

 

円卓にぐるりと集った一同はリアクションそれぞれに、自分の名がその本紙…雷夏の筆跡で確かに書かれているのを見つけた。

いつものホームセンターで買ってきた時代錯誤の品…これといって需要のなさそうな巻物を豪快に広げきった。

 

両手を堂々と円卓につき──赤目を真っ直ぐに輝かせる雷夏はおのおの方に返事はせず黙してただ笑った。

そして自分だけの時間をゆったりとつくり……間を置いて、威勢よく青髪の彼女は切り出した。

 

 

「では──これより生存会を開始する、絶対的にな!」

 

 

「せいぞんかいだと」

「せ、せ、せいぞんかい?」

「ふふ、せいぞんかいかい」

「おー、ちょっこしせいぞんした」

「チュチュ?」

「あーー、はは、生存会、──ぶ」

 

「ちょっとなんなのその会は…」

 

再びバンと、良い音をたて…両手を円卓につきなおした。

 

雷夏は生存会の開始を宣言した。しかし、ほとんどの部員たちはおうむ返しに疑問を呈する。月山は誰も深く突っ込まないので状況を読み……その突如出てきた生徒会ともちがうであろう…【せいぞんかい】…聞き慣れないワードをなんなのか率直に雷夏へと聞き直した。

 

「んや♡そのままだろツッキー、こたびダンジョン部ダンジョンの激戦バトルでちょーブジに生存の会!」

 

「はぁ……まぁなんとなくはわかるけど…。ん? ──生存ってことは…だれか死んでいたら、会はどうなるの?」

 

生存の反対は……月山は気になりおそるおそる先程から目の合っている雷夏へと再び……。

 

「んや? それはきっと──食欲がすこしなくなる!」

 

「でしょうね! ってすこしどころじゃないでしょ…」

 

「まぁまぁしんだらなんてありえないことかんがえても野暮の野暮じゃないかツッキー、みんな生存、生存会!」

 

「けっこうヤバかったんだけど……ま、そうかも…ごめん皆」

 

能天気だがいつものように雷夏先生は元気に笑い飛ばしている。そんな表情をされると、ネガティブを言っていた自分が野暮で悪いようにもどことなく感じ…月山は場の空気をすこし濁したことを皆に謝った。

 

「あの死の予感だ、気にしてとうぜん気にすることはないさ」

「まぁ、チューチューハウスは今にすればわァらえたわ、はは、」

「後ろを向く必要はない女子高生。いつものいつも以上の力を出し勝った、そして勝った経験が手に入った。それだけだ」

 

緑ジャージに着替えた赤髪の女は落ち着いた様子で席に座り足を組み、目を閉じながらそんなことを言う。

この女剣士には風格と説得力がある、そう見え、彼女のいう物事の考え方に少し感銘を受けた月山はしぜんと礼をかえしたが……。

 

「ありがと……ってちょっとそろそろスマホ返して!」

 

「…悩むな」

 

「悩まないのおお!! ぜったい後で返してよね!!」

 

足を組み腕を組み、えらそうに…片目だけ開けて馬鹿なことをいう赤髪に釘を刺しておいた。

体育会系の理不尽を行使し、女子高生の命である自分のスマホを返さないのでは何を言おうが響かない、響きやしない。

 

「あはは……いやでも生存できてよかったっすね…ほんと」

「あぁそうだなカイト生徒。しかししかしの夏ちゃん! 緑蜜ダンジョン部が絶対的に負けるわけがない!」

「おー、かっこいいでぇす」

「って言ってる本人が居なかったんだけど…!」

「んや?♡」

「んやじゃない…」

「わかった今度は絶対的にツッキーの助けに向かうぞ! 夏ちゃん先生! 兼、部長顧問!」

「そ、そうして……ってさいしょから居て…! 絶対ね! (って先生なのにこの部の部長だったのね…)」

「んや、わかった絶対的だ♡」

「はぁ……ほんとぜったいてき、よろしくぅ…」

 

相変わらず元気な赤目が言うには絶対的に助けてくれるらしい、今度こそは自分の目の見えているところで助けてほしいものだと…月山はツッコミながらも約束を取り付け表情を和らげた。

 

「ふふふ、あぁ! ではごちゃごちゃのゴッチャンいうのはもういいか♡はじめるぞー生存会!」

(ごちゃごちゃのゴッチャンって…)

 

ツッコミ過剰にならないようにバランス配分した誰かの心の中のツッコミをもらいながらも、雷夏は仕切り直し本題へと戻った。

 

生存会を始めるのだ。両手はまた円卓をバンバンと叩き、彼女の気を入れなおした熱血の様相をあらわしている。

 

 

そして繰り出された────

 

 

 

「せーーーーーーーー…ぞんっ!!!」

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

〝ぞんっ!!! ぞんっ! ぞんっ……〟

 

こだまする元気な声がやみ、混沌と静寂に生まれた──沈黙。

くすくすと…ちゅちゅんと……訝しむ目と────このおばかな沈黙に先陣を切った青いジト目とため息と……。

 

「それ、もしかしてみんなでやるヤツじゃないよね雷先生…」

 

「んや? そうだが♡」

 

青髪はその生徒からの野暮な問いに平然と答えた。即答した。

もしかしてのまさかのみんなでやるタイプのヤツなのだ。それを一人で先走り誰の相談もなしに今さっき披露をした。

月山が『はぁ?』と即答で返したのは言うまでもない。

 

「ふふ、おもしろいねカミナリナツ」

 

「はは、さすが夏ちゃんわぁらえるわ、」

 

「フッ日本語なだけマシだな」

 

「んやんや♡ははは、じゃ──せーのでいくぞ!!」

 

「じゃじゃないんだけど……これ本人だけが気に入ってたパターン…はぁ、やるけど…」

 

「っすね」

 

「チュチュ、せー…ぞんッりかい」

 

 

一同、意は固まったようだ────ぐるりと目を合わせじゃまな固唾をかたづけて────

 

 

「「せーーーーのっ」」

「「せーーーーぞ…」」

 

 

コトバはとちゅうで行き違い……かたまる……。

ちょうど半分ぐらいの声量で、(の)と(ぞ)にわかれた。

一同おふざけはなしのつもりで、こうなるのは予想していなかった。しかしこうもなると、場の沈黙からくすくすと笑いの空気が込み上げてきた。

 

「ちょっとぉ…まぎらわしいんだけど!」

 

「ははは、冗談だ夏ちゃんじょうだん! リハーサルは一回やっとかないとな、絶対的にぃ」

 

「はぁ、【いっせーの】にしてよね…!」

 

「おおちょっこしナイスアイディアつきやま」

 

「さぁすがツキヤマ、頭いいね、」

 

「ふふ、それは名案だ」

 

「月山さんそれめちゃくちゃいいっす!」

 

「ちょ、ちょっと…──馬鹿にしてんの? こんなので褒められても微妙なんだけど…って楽天くんちゃんと考えて発言してんのお!」

 

「え!? いや…」

 

今度は紛らわしいのをやめてちゃんと最初に言うべきコトバを決めた。あとはタイミングを合わせるための助走のコトバを言い、本命をピシャリと合わせるだけである。

 

一同、にやにやと……もういちど見合わせて、

 

 

「「「「「いっせーのーで」」」」

 

「「「「せーーーーーーーー…ぞんっ!!!」」」」

 

 

 

「「「「…………」」」」

 

 

 

何故、またちんもくが生まれる……ピシャリ寸分だけの違いで上手くいったはず……だがしかし、口に出してみてこれじゃないと分かるものもあるのだと一同のほとんどは思ったようだ。

 

 

「いっせーーのいらないな♡」

 

「確かにいっせーのが邪魔だな(一世一代ポーズは別だが)」

 

「ふふ、たしかにこれじゃクチバシの長いグリフォンさ」

 

「チュチュンもそうおもう、たのしいけど」

 

「……はぁ……なんとなくたしかにだけどっ」

 

「っすねぇ……あはは」

 

 

結局いっせーのは、なしに。

 

 

 

「「「「せーーーーーーー…ぞんっ!!!」」」」

 

 

 

皆で拳を、欠けた天に向かい突き上げた。

掛け声をそろえた緑蜜ダンジョン部一同の生存会は、その奇したこれからの彼女らの道のりも……まだまだはじまったばかりだ。

 

 

 

 

 

生存会……意気揚々と声を合わせ会の開始をもういちど宣言したものの、活気あふれる宴には飯が必要だ。皆が食べれる皆が喜ぶあの飯が……。

 

 

緑蜜ダンジョン部の一同はカレーをいただいていた。

チラチラと暗天ののぞく敷地内、雷属性のオーラボックスの灯が宴の席をあたたかくいろどる。

日本庭園の景石のようなインスピレーションを得て配置された高低大小…海都の部屋にあったベッドとおなじ素材のやわらかなボックス椅子に座りながら。

 

青髪がすくうスプーンが食器にカタカタと打ち鳴り、元気らしい。4度ほど小刻みに頷きながらカレーを何口か食した彼女は言った。

 

「ンーースッキリ濃いうまい! やっぱこれだなパパッとシルファンカレー!」

「玉ねぎいらずのパパッとシルファンカレー♪ …SF食品!」

 

「たしかあのいっとき話題になった…顔半分のみえない女性のCMのっすよね」

 

「ガライアの町にもビラがFS商団の所持する気球から景気良く撒かれていたさ。その存在は顔半分ミステリアスだが黒髪のショートカットが似合いきっとビューティー、その声はクール透明感満載できっと歌が上手い。そのしなやかでながい手そのカタチのいいうっすら微笑む唇はきっとセクシー、それに手持つカレールーパッケージのサイズ感がおかしい…と」

 

「あぁあのピアノ屋のおじさんと並び今もなおつづく伝説のCMで日亜のカレーのレベルを底上げした最高の絶対的カレールーだ。このルーの登場で全国の玉ねぎがえんえぇんとすすり泣いたらしいぞ」

 

「玉ねぎが泣くって…それをいうなら玉ねぎ農家でしょ…まぁわかるけど。でも玉ねぎいらないのはだいぶ助かるよねぇ。(それこそ切ってると涙でちゃうし。そういえばシルファンカレー発売以来、玉ねぎを入れる派と入れない派で宗教戦争が起こるぐらいになっちゃったとか裏で…玉ねぎ農家と日亜伝統カレーの会が結託しているだとか…って何を説明してるんだろわたし…はぁ)」

 

「あぁ玉ねぎ入れる派の抵抗が激しいらしいがまさかのまさかのまさか夏ちゃん! 今まで必須に思われていたカレー界の絶対的主役! 玉ねぎ様が雑味だったなんて盲点だからな、おかげでこのスッキリ濃いシルファンならではの味わいを可能にしている!」

 

「なんか月山さんも先生もめちゃくちゃ詳しいっすね…」

 

「わたしは別にだけどね…って何心の声読んでんの!」

 

カレー、シルファンカレー、略さず言うとSF食品のシルバーウルフファングカレーにまつわるエピソードトークで盛り上がりつつある生存会、そしてダンジョン部一同がともにする食事。

 

「ところでこのカレーって誰が? つくったんすか? めちゃくちゃうまいっすけど」

 

「もちろん夏ちゃん!」

「いいやド神子、」

 

「どっちもちがうでしょ…わ、わたしだけどぉー? あと」

「チュチュ、チュチュンもじゃがいも8つむいた」

「わたしもちょっこしにくぶちこんだらくてんかいと」

 

「あぁ、カレーといえば一年! 下級生がつくるものだからな! 初々しい下級生ちゃんたちが作るほどに、旨い!」

 

「それは同意しかねるけど…(カレーで部活っぽい縦社会されても…)マァ、──楽天くんはいなかったけどね!」

 

「えっ!? っと……すんません…」

 

いなかった理由があっても楽天海都はそれ以上なにも言えなかった。

 

他愛もない雑談をしながら、過ぎてゆく、笑う口を開いて味わう口に運んでいく。シルファンカレーは間違いなく保証された絶品の味わい、この生存会みなのために月山牛頭梢チュチュンら1年生らがつくったシルファンカレーはとてもおいしい…絶対的絶品であった。

 

現役緑蜜高校、高校生組が向かい合う中、少しはなれたブロックの席に腰掛けながら1人黙々と食し完食。

しっかり長々と手を合わせ、ご馳走様としずかにつぶやいた。

その赤髪の所作を見て、またくすり、なんてことのないことで微笑い声が宴の席に響き渡っていった。

 

 

 

ワインいっぱいといっぱいのチーズ。

シデンレイラと牛頭梢とチュチュンは真似するように足をクロスし組み3人椅子にならび、優雅につまみとともに食後の一杯を味わっている。

 

ちなみに子供達に振る舞われたのは緑蜜道の駅で売っているグレープスパークリングワイン、ノンアルコールのものなので法律上の問題はないということだ。シデンレイラからのささやかな奢りであった。

 

空のグラスをくぃと向ける。颯爽とあらわれたタキシード姿の鼠執事はどぽどぽと────天高くからその透明の曲線美に注いでいった。

げんきな紫飛沫を浴びながらシデンレイラはご機嫌に微笑っている。

 

「めっちゃこぼれてる…わらってるけど……(あとでシミになるヤツでしょ)」

 

「集中しろ」

 

「え? ごめ…ってなんでこうなってんの…」

 

「別に私は1人でもかまわん」

 

「あそう…ってわたしのスマホ人質にしたでしょ! でもなんで脅しておにぎり…さっきシルファンカレー食べてたよね?(いちはやく完食してたような)」

 

「これはしめぎりだ」

 

「なにそれ聞いたことないんだけど…」

 

月山はムスイに誘われて一緒におにぎりを握っている。

ムスイ本人が言うにはこれは、しめぎり、であってシメに食べるおにぎりだそうだ。

 

すごく集中しながら無心で月山の横目の彼女は握っている。握ったものは竹の皮に包まれ紐で縛られていく。まるでそれでひとセットの作業…手慣れたものだ。月山にとって竹の皮など生まれて見たことのない…日本昔ばなしの舞台裏のようである。

 

女子高生は見様見真似で赤髪の先輩の真似をしていく。

 

「小麦を食べてこなかったものでな、米ばかり食べていると米を好きになる」

 

「そ、そうなの…アレルギー?」

 

「いや、正しくはもうこれはクセだ。アレは特殊な家系でな。小麦の類を食べれば剣士は呪われると伝えられてきただけだ」

「なにそれ…ますます謎なんだけど……え?」

 

「──どうした?」

 

「かなり食べてた気がするんだけど…カレー…あのとろみって」

 

「カレーはありになったらしい。ちょうど今みたいなやり取りがあったな、フッ。グルテンフリーのものも最近は便利で売られている。────あぁそれに慣れぬことを死ぬまでに少しずつ慣らしていく……これもまた鍛錬だ。ここにはクレープ屋のせがれもいるらしいからな」

 

「そ、そう……(きゅうにめっちゃしゃべる…)で、スマホかえして」

 

「悩むな…」

 

「それ、地味に気に入ってないよね…はぁ」

 

女は一瞬口角を上げた、それを見て少女はため息をつく。そこからは隣り合わせの無言で…竹の皮のおにぎりセットが何組か完成していた。

 

 

 

がららららら、皿に景気のいい音を立ててまかれる。

 

雷夏はヤドコンちゃんに牛頭梢が買ってきたドッグフードの餌をやり、コンセントだらけの貝殻にいつもの黒いホットプレートを接続した。

 

『サボり魔のカイト生徒にはこれからデザートのクレープを焼いてもらうぞ♡』

 

というわけで、鉄板の熱気が高まり始まっていた。唯一の男子部員、サボり魔の男子部員…楽天海都によるクレープチャレンジが……。

 

「あえっとおれ…そういや遅くなるって連絡」

「もちろんカイトママには私が連絡しておいたぞ♡夏ちゃんが」

 

元気な赤目でサムズアップ、ホットプレート越しに向かい合う雷夏は既に他人の準備も万端だ。

クレープの生地に必要な材料も雷夏がカイトママに掛け合いそろえたらしい。

ラップのかけられた生地液のボールと、その他雷夏が取り揃えた甘いものが色々と並べられていたが。

ひとりの生徒のために先生らしさ雷夏らしさを全開で発揮している。

 

「どうしたぁカイト生徒? だまりこくってぇ? お熱いホットプレートごしに夏ちゃんに告白かぁ?」

 

「こ、こ…いやそうじゃなくて……すんません。いざこれだけの材料があると何を作ろうかと思って」

 

「ははは、なるほど! じゃぁ悩める生徒に夏ちゃん先生がずぽっと決めてやろう……んーー、んやんや…………カイト生徒の好きなヤツ!」

 

「お、俺の好きなヤツ…?」

 

「どうしたぁ…ないのか? あるでしょ! あるだろカイト生徒! ほらほら恥ずかしがらずに言っちゃえ♡」

 

「いや別に恥ずかしくはないんすけど…あはは……ちょっと先生、耳を」

 

「んや? なんだぁ珍しく積極的だな! すこしドキッとしたぞ、ふふふいいだろう。夏ちゃんのどっちの耳でもばっちこい! どっちが好きだ?」

 

「ど、ど、どっちでも! ……じゃあ右で」

 

「ほぉ右耳夏ちゃんかぁ♡────────ほぉ、なるほどな」

 

「っすね…」

 

「いいんじゃないか? しかし手間がかかりそうじゃないかソレは? 本当にできるのか?」

 

「好きなんで…慣れてるんでたぶんそんなにっすね!」

 

「ほぉ、英才教育だな! さすがクレープ業界の破壊神とよばれるほどのカイトママの息子!」

 

「いやいやそれほ…はかいしん?」

 

「あ、なんでもない♡なんでも夏ちゃん! 冗談ミルクレープ!」

 

「あははなんすかそれ、あはは」

 

「ははははは、それはおいといてカイト生徒。さっきのは耳を貸すほどじゃないぞ! なんだミルクレープ♡ってそれだけッセクシーにささやいてぇ! 夏ちゃんですら意味不明だったぞ! シチュエーションがぁ! シチュエーションがぁぁ!」

 

「え!? いや……たしかに間違っちゃいました…あはは」

 

「ははは天然か? もしかして夏ちゃんをからかったのか?」

 

「いやそんなつもどわっ!?」

 

「夏ちゃんのミルクレープうううう!! ははははは」

 

海都はにじりよる夏ちゃんに背後をとられ、やわいチョークをくらわされた。

 

作るのはミルクレープ、好きなのはミルクレープ。

わざわざ耳でささやくほどでもない、ミルクレープ。

 

 

 

▼

▽

 

 

 

計13枚────家庭用のホットプレートでも問題なくできるだけ薄く焼かれ、ある材料のミルクジャムを塗り重ねられた鍛錬のたまもの。

 

重ねて切られて、三角のひとピース。

 

あとは……この茶色いレース状の焼き目と山吹の生地に似合う仕上げの彩りを。

 

 

「苺は添えるだけ……できました」

「俺の好きな…ミルクレープ…! っす…。ね」

 

「おおお、これは見事な三角。んやんや苺を飾れば立派なものだ、クレープでもこうケーキのようになるか! ははは、まさしく積み重ねのデザートだなカイト生徒、私も地道に積み重ねるのは好きだぞ架電斬りっ! なんちゃって夏ちゃん!」

 

「あはは…っすね。俺もなんかこの生地を積み重ねる工程が好きなのかも……しれないっす」

 

「ははは、わかるぞー夏ちゃんセンスはわかるぞー。──よぉしカイト生徒、さっそくダンジョン部ッ! みんなを集めるぞ!」

 

 

それは積み重ねて成した、ささやかなケーキ。

のせられた赤い苺を見つめた赤い瞳は、ギラギラと元気に輝いている。

生存会のデザートは海都の好きなミルクレープ。

みんなにも好きになってほしいと不安ながらも…雷夏先生の邪気のない目を見て海都は思うのであった。

 

青髪は跳ねなびく────

 

わかりやすい大きな声が部室魔王城に響き、駆け抜けていく。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。